【舞台探訪】『Root Film ルートフィルム』&『√Letter ルートレター』ご縁の国島根を歩く舞台探訪

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2日目:
津和野から
温泉津へ


島根3日目、二泊お世話になった旅館のわた屋を出て朝の散策。前日の街歩きで舞台探訪自体はほぼ終わったものの、作中に登場するみのやというお食事処が定休日だったため、今日はこちらを訪問しなければいけない。しかしみのやの開店時間は9時30分。それまで舞台探訪とはあまり関係のない場所を回ってみることにした。キリシタンの殉教地という歴史を持つ乙女峠マリア聖堂は、明治元年に津和野に送られてきた隠れキリシタンたちへの迫害、拷問が行われた地。静かな緑の道を抜けると見えてくる広場には、当時の悲しい出来事がはっきりと記されている。ある意味、津和野で一番歴史の重い場所で、解放感のある広場を立ち去ったあともいろいろと考えさせられる場所だった。こういった場所を訪問した時、楽しかった、良かったという感覚にはもちろんならないが、行かなければ良かったと思うこともない。自分がほとんど何も知らない部分にカツンと硬いものが当たり、ヒビが入るような感覚になる。そのヒビをきっかけに、本や資料などを頼りに、自分なりの知識をつけたくなるのというのも旅の醍醐味だろう。

みのやに着いたのはちょうど開店した直後。結果的に、他にお客さんがいないタイミングで店に入れたのはとても幸運だった。『Root Film』で主人公たちがみのやを訪れて座る席は、特等席ともいえる場所で、そこに座れなければ同じような写真は撮れないことがわかったのだ。僕と同じように、舞台探訪をしたいという方がいれば、開店直後などに向かうことをオススメします。ここで食べたのは作中でも言及されていたふき飯。実は朝、わた屋の美味しい朝ごはんをいただいてきたのだが、舞台探訪に悔いを残すことはできない。食べきれるのだろうかと心配したが、ほのかに甘辛いふき飯はするすると完食できてしまった。奥さんには、栗ぜんざいを頼んでもらった。これは『Root Film』作中で女性陣の会話の中に登場する。

みのや(RF)


△ふき飯定食。舞台探訪では、なるべくゲームの登場人物が食べたものと同じものを追いかける。

車で次の宿泊地である湯泉津方面へと向かった。その道中で『Root Film』の舞台である、琴ヶ浜、大森町も抑えられるという計画だ。琴ヶ浜は、ゲーム内の説明によると「踏みしめる足元の砂からキュキュッと澄んだ音がする」とある。事前に情報を調べてみると、どこも確かに「砂をふむとキュキュッと音がする」といったことが書かれている。なんでも、鳴砂(なきすな、なりすな)と呼ばれる、石英粒などを含んだ砂がたくさんあり、それらが擦り合わされることで音がなるとのことだ。こうした情報を見ても、現地に行くまでは全然ピンと来なかったのだが、駐車場から砂浜に歩いて入り、少し歩いたところでキュッと音が鳴ったと思ったら、そのままキュッキュッキュッキュッという音が確かに聞こえてくる。靴が砂と摩擦して起こっているのだろうかと靴を脱いで裸足になってみても、その音の大きさは変わらない。さらには、眼前に広がる海の水は澄んでおり、解放感溢れる光景に驚かされた。潮の満ち引きの影響で、砂場に水が溜まっている場所では、インスタ映え写真などでも話題のウユニ塩湖的な反射すら見られる。砂浜の上に立っている人が、凄まじい解像感で水溜まりに映し出されている。

琴ヶ浜(RF)


琴ヶ浜で驚きの体験をしたあとは、かつては石見銀山の鉱山街として栄えた大森町へ。ここでは『Root Film』に出てきた路地の撮影と鉱山の堀り口である間歩の探訪をするつもりだった。路地については難なく撮影できたが、間歩の探訪について案内所に尋ねてみると、ちょうどガイドさんがいない時間だったようで、散策することは叶わなかった。ゲーム内では比較的さらりと登場する場所で、モチーフになっている間歩がどれかも特定できていなかったので見つけられたらいいなくらいの感覚だったのだが、舞台探訪は別にして間歩がとても魅力的なものに感じられたので、これは次回改めて行く場所としてとっておく。ちなみに、ゲームに登場する場所については、出発前にほとんどGoogleマップなどを活用して特定していたのだが、この間歩については結局どこかわからなかった。そしてさらに調べてみたところ、このゲームは島根の街を舞台にし、多くのスポットを取り上げているが、人が亡くなるシーンでは実在の場所をモチーフにした場所を使っていないであろうことがわかった。もしかしたらゲーム内に登場する間歩の画像も、実在のものをモチーフにしたものではないのかもしれない。
ここでの寄り道は、撮影した路地の近くにあった群言堂というカフェ兼ショップ。古き良き雰囲気を今風にアレンジした今風の和風カフェで、周囲の環境が見渡せる大きなガラス窓には解放感があった。大森町が持っているのは本物の古さだが、それをアレンジした今風のお店がここにあるとはと驚かされた。調べてみると群言堂は復古創新をキーワードにするお店で、この大森町のものが本店だが、関東や関西にも店舗展開をしているようだ。ここで食べたブドウとアールグレイのパフェは、瑞々しさいっぱい。インスタ映えしそうだ。

△アールグレイとブドウのパフェ。昔ながらの風情を感じる大森町で、この今風に洗練されたパフェが出てくるギャップに驚かされた。再訪したいカフェだ。

大森町(RF)


湯泉津駅付近は『Root Film』の舞台探訪スポットが多い。ますや、恵比寿神社については現地でもらった地図ですぐに見つけることができたが、作中に登場する龍乃前神社は見当たらない。今回の探訪に出発する前、資料を作成してあらかじめ行く場所を調べておいたのだが、いくつか実在の場所かどうかわからないものがあった。そのひとつがこの神社だったのだが、現地にきてもその所在はわからない。代わりに、ますやの目の前に龍御前神社という神社があるのだが、おそらくこれをモチーフにしたのではないかという推測をした。大森町の間歩と同じように、龍乃前神社も事件現場となる場所のひとつ。ここでの事件はかなり凄惨なため、実在の場所として使うことを控えたのか、許諾を得ることができなかったのではないだろうか。そこで、龍乃前神社の名前を龍御前神社と変え、外観もやや変えたのではないかと考えている。

△実在の龍御前神社。作中の神社とは名前も見た目も異なるが、夜神楽が行われるなど、設定的には近しいところが多い。

恵比寿神社については、旅館から20分ほど歩いたところにある。。港町でもある湯泉津の水辺を横切り、緑で囲まれた道路を歩き、薄暗いトンネルを抜け、それからしばらく歩いた先にある小さな恵比寿神社は、時の流れを漂わせる佇まいでひっそりと道の横に立っていた。道からは少し高いところに位置するこの神社は歴史ある建物であり、島根県指定文化財ではあるものの、『Root Film』がなければ知ることはなかったスポットだっただろう。
宿のご飯の時間までしばらく時間が空いたので、この後、作中に登場する湯泉津公民館や太田総合体育館のベースになった場所なども回った。ゲーム内で内部が使われている建物については外観を撮影するに止まったが、龍御前神社と同じく、温泉津に関しては実在の場所をアレンジしてゲーム内に登場させた節が見られる。
宿泊先のますやでは、3階の大きな部屋を用意していただいて贅沢なひと時を過ごすことができた。ちなみに、この豪華な部屋の中には作中で登場する場所を見つけることができなかった。おそらく宿の中でも一二を争うほどいい部屋に停めてもらえて幸せなのだが、一人のオタクとしては作中に登場した部屋のことが今も気になっている。ここも再訪したいスポットとして記憶し、次回はゲーム画面を宿の人に見てもらって確認してみようと思う。そして、このますやでは島根に来てはじめて旅館で夜ご飯を食べた。正直、僕は旅館飯があまり得意ではない。豪勢ではあるものの、個人的にあたりだと思う旅館が今までで少なかったことと、僕にとっては量が多すぎる。そんな個人的な事情もあって、旅館での食事には期待していなかったのだが、ますやのものはバリエーションに富み、素晴らしい食事の時間になった。朝ごはんでも、ご当地のものがちらほら登場し、海からあげたわかめを干したという板ワカメの珍しい食感は格別だった。パリパリに乾いたワカメを手で割り、ご飯の上にふりかけて食べる。ほんのり感じる塩味がたまらない。

恵比寿神社(RF)


温泉津の道路(RF)


ますや(RF)


▲ますやでは3階の広い部屋に宿泊。ゲーム内で旅館内の画像が登場するのですが、この部屋ではなさそうです。

▲旅館のご飯は食べきれずに残してしまうことが多いのですが、ますやのものは量がほどよく、そのうえ繊細で美味しい料理が続き、気づけば完食していました。

▲朝ごはんとして登場した板わかめ。手でパリパリと割ってご飯にかけて食べた。お酒のあてとしてもおそらく最高だろう。

そして、ゲーム内で映像として登場することはないが、この温泉津周辺はものすごい効能と言われるを持つ源泉が引かれていることでも知られる。中でも、外湯である薬師湯と元湯は、湯の花が固まっている茶色い湯船の中で濁った温泉湯につかることのできる貴重な施設だ。薬師湯、元湯の順で入ったのだが、元湯のお風呂は温度がとんでもなく熱かった。熱い湯、ぬるい湯、座り湯と三種類のお湯があるが、ぬるい湯も45度くらいありそうだ。僕は家のお風呂を43度にして入っているのだが、それでもぬるい湯ですら熱く感じた。皮膚炎、胃腸の病気など、現地に書かれている温泉の温泉の効能はさまざまで、湯治に来る人もいるらしいが、僕はこの手の効能をあまり気にしたことがなく、たまに温泉に入ってかぶれてしまうことがあるほど肌が弱いのでむしろ強い温泉を警戒している。ただ、そんな僕でも、肌はつるつるになったような気がする。ちなみに元湯には、温泉以外の設備がなく、蛇口なども用意されていない。かけ湯から洗髪、体を洗うまで、全て温泉から桶で湯を汲み取りこなすことになる。一般的な温泉や銭湯を想像している人からすると、なかなか上級者向けの温泉となるだろうが、風情はたっぷり。訪れたらぜひ一度足を運んでみることをおすすめする。

▲こちらは薬師湯。入口のところで男湯と女湯に分かれている。また、貸切風呂もリーズナブルに借りることができる。

次のページで出雲、松江周辺の舞台探訪を掲載

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浅葉 たいが

浅葉 たいが

ゴジライン代表。ゲーム、アニメグッズのコレクター。格闘ゲーム、アドベンチャーゲーム、RPGをこよなく愛する。年間100本以上のゲームを自腹で買い、遊ぶ社壊人。ゲームメディア等で記事を書くこともあるが、その正体はインテリアデザイナー、家具屋。バンダイナムコエンターテインメント信者かつ、トライエース至上主義者。スマートフォン版『ストリートファイター4』日本チャンプという胡散臭い経歴を持つ。

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