『燃えろ!ジャスティス学園』であの頃選べなかった「ひなた」を使い始めた【カプコン ファイティング コレクション2】

『カプコン ファイティング コレクション2』にゲームセンターで2000年に稼働した『燃えろ!ジャスティス学園』が収録されている。僕はこのゲームを、アーケード版の稼働時期にそこそこ熱心にプレイしていた。その後も思い出のレトロゲームとして引っ張り出してきて遊んだこともある。アーケード版の時代も、数年前に遊んだ時も、英雄、ロイ、隼人、九郎……、本作を遊んだ方ならすぐピンとくるであろう、暑苦しい強キャラたちを選び、選ばれ対戦を楽しんでいた。この時代の「強キャラ」というのは恐ろしいもので、最近の強キャラが可愛くみえるほど、ぶちぬけた性能をしていた。そして、若い頃にはワンプレイに必要な50円や100円でできるだけ長く遊びたいという気持ちが、強キャラを選ばせるということは珍しくない(はずだ)。

さらに言い訳をすると人の多いゲームというのは、性能の強弱を問わず、プレイヤーによって使用キャラクターがばらける傾向にあったと思う。『燃えジャス』はというと、僕の通っていたゲームセンターでは、人気は下のほうで、プレイヤーも限られていた。なので自然と強キャラばかりが揃う地獄のような環境が出来上がってしまったのかもしれない。

『燃えジャス』は駆け引きやコンボが独特で楽しいゲームである。そして、強キャラたちも(ほとんどが)使っていてとにかく面白い。こんなの許されるのかというような機動力を持っていたり、目を見張るような大ダメージコンボを狙えたり、ボタンを押すだけで相手に圧をかけられる強烈な通常技を持っていたりする。あとは、暑苦しいキャラクターたちも、強烈な個性と魅力を持っている。このゲームはストーリーもキャラクターも見応えがあるのだ。

でも『ジャス学』シリーズで好きなキャラはと聞かれると、僕は若葉ひなたと答えるだろう。

通信教育で覚えたケン・マスターズ格闘術を武器に戦う、元気いっぱいの女の子である。

▲『ジャス学』で筆者が一番好きなキャラクターである若葉ひなたちゃん。

『ジャス学』のスピンアウト作品として発売された『私立ジャスティス学園 熱血青春日記2』という作品がある。シリーズに登場するキャラクターたちと仲を深め、恋愛関係にすらなれる素晴らしいアドベンチャー色強めのゲームである。この作品のひなたがとてつもなく可愛くて、『燃えジャス』でもできればひなたを使いたかった。しかし『燃えジャス』のひなたは、一般的に本作でそれほど強くないとされるキャラクターだった。


『私立ジャスティス学園 熱血青春日記2』より

ゲームセンターでこの『燃えジャス』が稼働していた当時、僕は少しだけひなたの練習をしたことがある。その時の印象では、火力が低めで、コンボに発展性がなく、立ち回りも強キャラと比べると普通。そして独自のトリッキーな要素も少なめで、ネタ殺し能力も低そうだった。つまり、50円がかかった戦いにおいて「キャラ愛」以外の要素で選びにくいキャラクターだった。それから20年以上が経ち、オンライン対戦とトレーニングモードを備えた『ファイコレ2』が出てしまった。良いことなのか悪いことなのかはわからないけれど、昔ほど勝つことに飢えていない今なら、ひなたを使ってこのゲームを楽しめるかもしれない。

そう考えた僕は、トレーニングモードで少しひなたを動かしてみた。昔よりも格闘ゲームを攻略する能力も上がっていそうなものだが、僕がひなたに対して持った印象は、あの頃とそう変わらないものだった。これは強キャラとやるにはちょっと厳しいだろうなあ。キャラのポテンシャルを疑い、自力での攻略を諦めた僕は、ネット上の攻略や対戦動画を漁ってみることにした。

『燃えジャス』はしばしば、eスポーツのイベントのサイドトーナメントで大会が開かれたりしている。一部のゲームセンターでは対戦シーンも存在するようだ。本作でしか得られない面白さを求めて、まだやりこみを続けているプレイヤーもいるのだ。そして、ありがたいことに、そのやりこみは、オンライン上の攻略コンテンツや動画として、いつでも見られる形で記録されていっている。早々にひなたの強さを自分で引き出すことをあきらめた僕は、「燃えジャス、ひなた、攻略」などと検索を繰り返した。

▲今思うとジャス学こんなにたくさんキャラがいるんだよね…….。

先人の残してくれた立ち回りやコンボはなんとなく想像のつくものも多かったが、今ではフレームまで細かく気にした攻略が行われていることに驚いた。2000年の『燃えジャス』稼働時、フレームを気にして遊んでいた2D格闘ゲームは稀で、思い出せるのは「キング・オブ・ファイターズのリョウ・サカザキのアッパーが1Fとか2Fですげえ」みたいな話くらいだ。実際何フレかわからないまま、気にせず遊び続けていたくらいおおらかな時代であった。
さらに攻略を読み進めていくと「補正切り」という攻略を見つけた。「補正切り」とはあえてコンボを中断し、その後に二択などで大ダメージを仕掛けるというものだ。ひなたでそんなことできたっけと思いつつ内容を見ていくと、その補正切りが「打撃と空中投げによる二択を狙う」という性質のものであることがわかった。空中投げに成功したらそこから再度、打撃と空中投げの二択を仕掛けられるというのだ。「トリッキーな要素が少なめで、ネタ殺しが難しい」という印象が一気に覆った。空中投げが強いということは知っていたものの、その後の多彩な展開は目から鱗の攻略であった。初出はどこなのかわからなかったが、補正切りのバリエーションも実に奥深い。ここまで詳細な攻略を残してくれた方に心から感謝する。

▲相手を浮かせたところに空中投げを狙い、空中投げが決まったら追撃で再度浮かし直す。空中投げの対の選択肢は、ジャンプ攻撃やダッシュでの裏回りと実に多彩。先人の生み出した神攻略に感謝。

さらに、対戦動画を漁っていくと、この攻略を実際に取り入れているプレイヤーの試合動画を見つけることができた。そのプレイヤーの動きは丁寧で、コンボのチャンスを慎重に伺い立ち回っていた。強キャラを使うと大味な立ち回りでもなんとかなる場面が場面がある本作で、「そこまで慎重にやらなくても」というような動きだ。勝ちを意識すると、引き気味に戦うシーンが多いゲームではあるのだが、それにしても慎重だ。立ち弱Kを細かく使い、近づいたらしっかりヒット確認や、しゃがみ投げでプレッシャーをかけている。一度相手を浮かせたら、補正切りが炸裂している場面もあったが、補正切りばかりにこだわっているようでもなく、バランスの良い攻めを仕掛けている。さらには、補正切りを知っている相手用の選択肢も用意しているようだった。

もちろん強キャラ相手には厳しそうな場面も見られたが、僕が思っている以上に、ひなたはポテンシャルのあるキャラのように見えた。自分では到底想像もつかなかった攻略と、それを実践する深いやりこみに唸らされた。昔そこそこ遊んだはずの『燃えジャス』は、全然やりこめても、わかってもいなかったのである。

『燃えジャス』は2000年にアーケードで稼働し、ドリームキャスト版が発売されてから、アップデートが行われていない。この時代の格闘ゲームというのは、アップデートが行われることが稀で、もはやクラシックゲーム、レトロゲームとして認識されている現状で、新たな要素やバランス調整が加わることはない。強キャラは強キャラのまま、クソ技はクソ技のままあり続けることがほとんどだ。。しかし、対戦バランスが変化しないゲームは、やりこみの裏切らないゲームと考えることもできる。強キャラであっても、弱キャラであっても、練習したことがアップデートによって潰されることはない。そうしたゲームで見られる「そこまでやるのか」という研鑽に驚かされ、また遊んでみようかなと思う瞬間が稀にある。

昔『燃えジャス』を遊んでいたからこそ、やりこみを続けるプレイヤーの凄さがわかって良かったという安堵感と、どうして自分は途中で諦めてしまったんだろうという寂しさが一緒になったちょっと複雑な感情を原動力に、しばらく『ファイコレ2』で『燃えジャス』を楽しもうと思う。

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浅葉 たいが

浅葉 たいが

ゴジライン代表。ゲーム、アニメグッズのコレクター。格闘ゲーム、アドベンチャーゲーム、RPGをこよなく愛する。年間100本以上のゲームを自腹で買い、遊ぶ社壊人。ゲームメディア等で記事を書くこともあるが、その正体はインテリアデザイナー、家具屋。バンダイナムコエンターテインメント信者かつ、トライエース至上主義者。スマートフォン版『ストリートファイター4』日本チャンプという胡散臭い経歴を持つ。

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