【舞台探訪】『Root Film ルートフィルム』&『√Letter ルートレター』ご縁の国島根を歩く舞台探訪

3日目午前:
出雲近辺


ますやを出て向かったのは出雲大社方面。湯泉津から車で約1時間で、出雲大社へと到着した。ここでの目的は『√Letter』に登場する出雲大社駅。島根県といえば出雲大社というイメージを抱く方も多いかもしれないが、『ルート』シリーズでは意外と出雲のスポットが登場しない。しかし、島根に来たからには出雲大社に行かないわけにはいかない。出雲大社では、太鼓谷稲成神社で買った御朱印帳に、御朱印をいただいた。混んでいなかったのですぐにもらうことができた。
御朱印をいただいた料金は「お気持ちで結構です」と言われたのだが、なんせ僕は御朱印集めの素人。焦りながら身の丈にあったお気持ちの額を支払ったが、嫌な顔一つされなかった。歴史ある大きな神社だから当然のことかもしれないが、島根に来てから出会う人、話す人は、皆とても優しい方ばかりだ。島根の人は優しい人が多いのではないかという仮説は、旅の途中から旅の最後まで覆されることはなかった。車を運転していても、気遣いの素晴らしいドライバーにたくさん出会うのだ。

出雲大社前駅(RL)


出雲大社から車で稲佐の浜、日御碕灯台の順に移動することにした。『Root Film』に登場する稲佐の浜は出雲大社から車で数分、大国主神が武甕槌神(たけみかづちのかみ)と国譲りの交渉をしたと言い伝えられる場所だ。また、旧暦10月10日には、全国の八百万の神々をお迎えする浜でもある。稲佐の浜には、弁天島という小さな島がある。この島は、砂浜の上に存在感たっぷりに置かれた大きな岩のようになっており、その上に小さな祠がある。ここも稲佐の浜と同じく”映える”場所でもある。衣毘須神社でも感じたことだが、海と鳥居が一緒に視覚の中に飛び出してくる感覚はすごい。波や風の音が聞こえるなかで、心地よい空気の流れを浴びながら鳥居を見上げる体験は、現地でしか味わえない。

稲佐の浜(RF)


日御碕灯台まで車で走る間、島根にくるまでずっと気になっていたゲーム内のシーンを強く思い浮かべていた。『Root Film』で暗号のように示される謎のスポット「ひろげ300地点」のことだ。登場人物たちはとある事件の真相を調べる過程で、この謎の地点を見つけ、訪れるようになるのだ。ひろげ300地点は島根県に実在するのかというのがこの舞台探訪を始める前からの大きな疑問で、旅に出るまでの下調べでGoogleマップを使いほとんどの舞台を特定したのだが、ここだけは観光名所でもなんでもないため、実際に行ってみないとわからないという結論になった。そして、作中では、どうやら稲佐の浜の近くであることが描かれている。そして日ノ御埼灯台に向かう山道もまたひろげであることもわかっている。もし実在するのであれば、出雲大社から日ノ御埼灯台の道にあるのではないかと予想していたのだ。そしてこの予想は的中し、ゲームの中で見たひろげ300地点を僕たちは目の当たりにした。ゲームの中で見た構図と全く同じ場所を見つけ、そこにある公衆有線に「ここはひろげ30です」と書かれているのを見て、その場所がひろげ300であることを確信した。

ひろげ300(RF)


△ひろげ300地点ならぬひろげ30地点に置かれていた公衆有線。

日御碕灯台は『√Letter』の山場で登場するスポット。明治36年に建設され、地上から灯頂まで43.65m、高さ日本一の灯台らしい。思わぬところで日本一の称号を持つ灯台に出会い驚き、その中を登って上部の展望台に登れるということで階段を登ってみたが、これがなかなか急な階段で日頃から運動をほとんどしない僕にはなかなかしんどかった。その分、展望台の扉を出た瞬間に見られる開かれた景色は格別だった。ここはもともと、後のスケジュールを考えて、外から写真を撮ったらすぐに出発する予定だったのだが、いざ迫力ある灯台を目にしてしまうと、昇りたいという衝動が抑えきれなかった。

日御碕灯台(RL)

△階段を登って、展望台の扉の後ろに飛び込んでくる絶景。

出雲方面から松江に向かう前に済ませておきたい舞台探訪として、『Root Film』に登場する猪目洞窟がある。出雲国風土記にある黄泉の穴とされる場所だが、この場所は他の観光スポットからも随分離れた位置にある。僕たちが現地についたのはお昼前で、太陽の光がまぶしいくらいの晴れだったこともあって、現地の砂利がたくさんある浜の上でバーベキューをしている団体さんもいた。そんな理由もあって、最初こそ黄泉の穴的な怖さは感じなかったのだが、洞窟のほうをじっとみていると奥に何があるのかわからない底知れなさがある。実際には、奥行き30メートルくらいのもので、中に入ることもできたようだが、時間の都合と、洞窟探検をするにはあまりに軽装すぎることを断念。次があれば中を覗いてみたさもあるけれど、やはり少し怖い。

猪目洞窟(RF)


3日目午後:
松江


ここでようやく松江に到着した。ここからは『√Letter』絡みの場所が増える。松江市内を舞台とした場所が多く、観光名所的な場所以外もたくさん登場するので時間もたっぷりとる必要がある。まず最初に向かったのは『√Letter ルートレター』では神在庵として登場する神代そば。ちなみにこの店は、『Root Film』では実際のお店の名前そのままに神代そばとして登場する。『√Letter』での神在庵は気前のいい店主と、ひょうきんな店員の三平が登場し、作中のメニューとしては宍道湖の名物”宍道湖七珍すもうあしこし”(スズキ、モロゲエビ、ウナギ、アマサギ、シラウオ、コイ、シジミの頭文字をとったもの)にまつわる料理を食べるのだが、実際の神代そばは出雲そばを中心としたメニューになっている。ちなみに、出雲そばは製粉のとき甘皮まで挽きこむことで、濃く粘りのある蕎麦になっているのだとか。
メニューを見てみると割子そばとせいろの2種類が掲載されている。ただ、『Root Film』イベントCGをよく見てみると、登場人物たちは、割子そば的なものをそばつゆにつけて食べている。しかし、少なくとも実際の神代そばのメニューではこの食べ方をすることができない。作画のミスか、それともオリジナルにしたのか、はたまたメニューにはない裏メニューがあるのか。こうした細かい違いを楽しめるのも舞台探訪のも醍醐味だ。薬味とつゆをかけて食べる割り子そばは、体験としても楽しく、食べたあとに疲れを残さないさっぱりとした風味があった。

神代そば(RL,RF)


▲こちらが割子そば。つゆをかけて食べるタイプのお蕎麦です。

▲割り子そばをざるをばのように食べている『ルートフィルム』の登場人物たち。

神代そばのあとは、『√Letter』に出てくるカフェ・ウォーターワークスへ。作中では”ビッチ”に会いに来る場所だ。このゲームのキャラクターあだ名はあまりにも強烈だから、書いていてひやひやするが事実なのだから仕方がない。ゲーム中では特に食べたものの描写がなかったので、僕はパニーニ、奥さんはチョコミントのパンケーキを注文。神代そばでそばを食べたけれど、まだまだ食欲はある。舞台探訪をする場合、外から見るだけでは寂しいので、なるべくそこでの体験や食べられるものに触れるようにしている。
今回は何気なく頼んだ2つのメニューが大当たりで、パニーニは近所にあれば毎朝立ち寄りたいくらいだ。ほどよいパリパリ感のバンズの中に、質のいい素材が丁寧に入っている。チョコミントのパンケーキは、甘いもの好きのうちの奥さんが、その斬新さに感激していました。そしてこのお店で感激したのは、メニュー表の最初のページに『√Letter』を宣伝するチラシが入っているところ。実はここのマスターさんは『√Letter』やその実写版となる『√Letter Last Answer』にも本人役で登場しています。しかし、発売からしばらく経っているのにこの手厚い宣伝。このゲームは、関わった島根の人にも愛されている。

カフェ・ウォーターワークス(RL)


▲ウォーターワークスのチョコミントのパンケーキ。この組み合わせは合うのか……と思っていたら絶妙に合う。フードメニューも気になるものが多かったので、島根に来たら再訪したいと思います。

▲メニューのトップには『ルートレター』が!

ウォーターワークスを後にして向かったのは、縁結びの神社として知られる八重垣神社へ。ここは『√Letter』において、とあるキーマンと出会う場所でもある。作中では鏡の池という場所で、占い用紙に硬貨を載せて浮かべる占いの模様が描かれる。実際のこの占いも同じ仕組みで、授与所で占い用紙を購入して、神社の奥のほうにある鏡の池で占い用紙の上に硬貨を載せて浮かべる。そして用紙が15分以内に沈めば願った縁は早く結ばれるという仕組みだそう。『ルート』シリーズの面白いところは、舞台に使った場所で体験できることをゲームの中に魅力的に盛り込んでいるところ。僕もこの占いをしてみたが、1分かからず沈みました。中にはずいぶん前に浮かべた人もいるようで、そういう人はやきもきするのかもしれない。
そしてこの神社でもうひとつ達成しておきたいこと、それは『√Letter』内で描かれる金と白の招き猫を、おみくじで入手すること。この作品には、登場するスポットで入手できるお土産品やご利益のある品が登場するのだ。せっかくなので、それらもできるだけ集めてみようということで、おみくじにチャレンジ。この手のやつはゲームのガチャ文化に慣れすぎたのか、当たるまで引きたくなる。しかし、この手のご利益ものでそれって大丈夫なのだろうかと社務所の方に聞いてみたところ、心行くまで引いてくださいということだったので、1000円札を数枚突っ込んで招き猫のおみくじを引き続けました。白い招き猫はすぐ出たものの、金色の招き猫がなかなか出ず。数十回かかってようやく出た。

八重垣神社(RL)


招き猫のおみくじ(RL)


▲心行くまで引いてくださいといわれたので大人げなく出るまで引きました。

夕方は宍道湖の夕焼けを写真に取るという目的があったので、車を走らせて宍道湖方面へ。出雲市と松江市にまたがるこの大きな湖は、日本百景のひとつで『ルート』シリーズ両作品でも実に美しく描かれている。訪れる前はぼんやりと大きな湖を想像していたのだが、海かと間違えるような広大さに驚かされる。かつて水難者を供養するために建てられた袖師地蔵と、その先に見える宍道湖唯一の島である嫁ヶ島を夕日とともに収めたシーンが登場します。同じカットを撮りたいと思って宍道湖周辺をドライブしていたら、宍道湖夕日スポット「とるぱ」なるスポットを発見、しかも駐車場まである。松江市内には宍道湖の夕日鑑賞スポット的なものが標識で示されているのだ。正直この宍道湖に関しては、近くに住んでいたらどれだけ楽しいだろうと思うほどのスケールだった。実際に、夕焼けどきに散歩している人も多く、島根に住むのもいいかもしれないと真顔で考えてしまうほどのものだった。
『Root Film』の冒頭で見られる宍道湖のシーンは夕焼けスポットとはあまり関係のない場所で、探すのに骨が折れた。背景の左のほうに映っている建物の特徴的な形を目印に、ああでもないこうでもないといいながらたどり着いた場所で撮影した。

宍道湖(RL)


宍道湖(RF)


宍道湖の北側湖畔に面した温泉地は、松江しんじ湖温泉と呼ばれいろいろな旅館やホテルが立ち並んでいる。僕らが泊まることにしたのはなにわ一水。個室露天風呂から宍道湖を眺められる部屋という説明に惹かれて予約したが、これもとにかく格別だった。広い部屋で個室露天風呂は24時間入れますし、本当に目の前に宍道湖がある。部屋には双眼鏡までセッティングされており、眠るのは部屋の床から一段上がったベッドの上。

▲この宿に泊まるだけでもまた来たいと思うほど個室露天風呂が最高だったなにわ一水。

夕方からの余った時間を活かして『√Letter』の舞台探訪を再開したが、写真には収めたものの、体験を伴えなかったものがいくつかあったのは後悔が残る。舞台を回るだけなら今回の日程である2日ほどあれば大丈夫だが、体験も合わせるとなるとなかなか難しいスケジュールになってしまった。ただ、実際の場所を回ってみるだけでも、ゲームを制作した時点から細かい変化などを発見できるので有意義な散策となった。中にはなくなっているお店もあり、ゲーム中に描かれた姿と変わった場所もいくつかあった。作中のパティスリー・ピュアこと、パティスリー・ガレットは地元の人たちに大人気。こちらでは買い物することができたので、マカロンやチーズタルトなどを美味しくいただいた。

はくちょう号(RL)


カラコロ工房(RL)


島根県立美術館(RL)


松江駅前(RL)


山陰中央新報社(RL)


だんごや前(RL)


TSK山陰中央テレビ(RL)


京町商店街(RL)


乗船場(RL)


パティスリー・ピュア(RL)



松江市役所(RL)


時計台前(RL)


路地(RL)


夜ご飯はここまで魚料理が多かったこともあり、そろそろ肉を食べたくなってきたのでステーキ館 和へ。旅している場所の名産品を食べることが多いが、日程に余裕がある場合はその土地で愛されているであろう店にいくことにしている。
このお店は昔ながらのステーキ店という門構えで、店内には常連さんらしき人もちらほら見える。せっかくきたのだから一番いいやつを食べてみようということでヒレステーキを頼んでみたところ、驚くほど柔らかく、なにより2種類のソースの個性がすごい。辛いのが好きな方はこちらと言われた方がピリリと心地よく、多すぎるかなと思った肉が気がづけばなくなっている。食後にはグラスに入った牛乳が出てきてぐいっと飲む締め。店から出たあとしばらくの間、僕と奥さんは肉もソースも最高だったみたいな話をずっとしていた。

▲果てしなく美味しかったステーキ。

肉の余韻を抱えつつ、舞台探訪という言い訳を手に『√Letter』で”チビ”と会うことになる中村バーへ。実はこのバー、本作のプロデューサーである角川ゲームス社長・安田氏の友人の中村さんが経営しており、ゲームの方にも中村さんが本人役で出演している。店内はほの暗く、ややクラシックな雰囲気のあるバーでちょっと緊張したが、中村さんにゲームをきっかけにきたことを伝えると、ものすごくフランクに歓迎してもらった。ファンへのサービスということで名刺とコースターをもらうことができた。中村バーのメニューにはさまざまなお酒やカクテルが並んでいて、僕たちは何杯かそれを頂いたけれど、どれも優雅に作られ、美しい佇まいでテーブルの上に置かれる。フルーツの盛り合わせも上品で、こんなバーが近くにあれば絶対通うだろう。島根、やっぱり住んでもいいかもしれない。

中村バー(RL)


▲うちの奥さんはグラスホッパーをオーダー。驚くほど美味しかったそうです。

次のページでは松江周辺、黄泉比良坂の舞台探訪を掲載

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浅葉 たいが

浅葉 たいが

ゴジライン代表。ゲーム、アニメグッズのコレクター。格闘ゲーム、アドベンチャーゲーム、RPGをこよなく愛する。年間100本以上のゲームを自腹で買い、遊ぶ社壊人。ゲームメディア等で記事を書くこともあるが、その正体はインテリアデザイナー、家具屋。バンダイナムコエンターテインメント信者かつ、トライエース至上主義者。スマートフォン版『ストリートファイター4』日本チャンプという胡散臭い経歴を持つ。
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