真剣勝負を観戦するのは面白いですよね。知っている競技であればなおさら。
それにしてもeスポーツの高額賞金大会で見られる「ガードされると負けるぶっ放し」ってなんであんなにも美しいんでしょう。フルセットの最終ラウンド、コンボを喰らうと大ピンチになるような状態で強気な無敵技のぶっぱなしを見ると感動します。当たって流れを掴んで勝ちきるのも盛り上がりますし、その無敵技をガードされて体力が半分吹っ飛んで負けてしまうのも趣があります。観戦する側としては。
というわけで最近『餓狼伝説 City of the Wolves』の大会の視聴に夢中です。プレイもほどほどにやっていますが、観戦もアツい。
『餓狼CotW』はいい感じのコンボ始動技が当たると体力が5割吹き飛ぶ感じのゲームです。過去作にあったオタクっぽい要素は残したものの、ある程度のレベルまでは”力”でそれを破壊できてしまうノリノリな作品なんですよね。というわけで、格闘ゲームをかじったことがある方なら、いきなりメチャクチャ減る連続技やシンプルかつ強烈な起き攻めが飛び交うバトルを楽しませるのですが、1週間くらい遊ぶと「おもしれーけど、こんな激しいゲーム(勝ちが)安定すんのかよ……」という疑念も湧いてくることでしょう。

▲『餓狼伝説』シリーズ最新作がついに発売!このゲーム、今世界各地で行われている”予選大会”が激アツなんです。
しかしそんな激しいゲームで「安定」を求めてやりこみに身を投じるプレイヤーたちがいます。4月に発売されたばかりのこのゲームでは現在、優勝賞金が1億とか2億とかいうすげえ規模の大会である『Esports World Cup 2025』(EWC)や『SNK World Championship 2025』(SWC)の出場枠をかけた大会が行われているんです。優勝すれば数億円が手に入るチャンスということで、まずはその出場権を得るために、プロゲーマーはもちろん、強豪プレイヤーが世界各地の大会でバチバチと戦っています。予選通過はかなりシビアで、EWCは大会の上位入賞者のみ、SWCは大会の一位通過者のみという形が多いので、決勝付近まで手に汗握る戦いが楽しめるのです。今週はスウェーデンとオーストラリアに世界中から猛者が集結し、夢の切符をつかむために死闘を繰り広げているのです。
また、プロチームも力を入れており、先日行われていたEVO JAPANでは、このタイトルの上位入賞者たちがプロチームにスカウトされるといった動きもあったそうです。『餓狼』には夢しかねえ!
さすがにかかっているものが大きいからか、SNKゲームで活躍していたプレイヤーだけでなく、他タイトルの強豪プレイヤーも参戦していて、優勝予想なども困難な状況となっていて、この観戦がマジで面白いです。
ゲームは楽しむためにやるものであって、賞金をもらうためにやるものではないのかもしれない……けどさあ!2億もかかってると、そらみんなめちゃ真剣で、その試合の緊張感がたまらないんですよね。
部屋でアイスクリームを食べながら、負けたら終わりのデストーナメントを見る週末。最高です。
ぶっぱなしガードされて負けたあとに「マジかぁー」みたいな顔が配信に映るとぐっとくるものがあります。映画の『バトル・ロワイアル』とか好きな人にはとてもおすすめできます。

▲賞金がすげえことになってる『餓狼CotW』。去年あたりまで1億の賞金制大会ですげえ~とか言っていたのですが、『餓狼』はその2倍以上。
世界で勝利をもぎ取ろうと戦う選手たちのやりこみと、勝負事の悪魔が見せてくれる偶然のマリアージュのなんと甘美なこと。
とにかくダメージの高いゲームなので、一回の判断ミスから体力が溶けるようになくなるということが頻発するのがこのゲームの特徴。ちょっとゲームに慣れてくると「手癖で出した技を読まれて6割体力がなくなった」、「体力は十分あるから強気に無敵技を出したのを読まれてそのまま死んだ」みたいなシーンをいくらでも体験できるのですが、それはつまり負けた原因を自覚しやすいゲームということなんですね。
本作をちょっと遊んでおけば、世界各国で行われている超ハイレベルな試合の勝敗のポイントや緊張感を味わえるというわけです。
試合を見ながら「あ~、今の体力差に安心して、投げいっちゃったかー。我慢しとけばなあ」とかどや顔で起きてしまった事故を分析できてしまう『餓狼CotW』の罪深さよ。
というわけで、本記事では、『餓狼伝説CotW』の2億円バトルを楽しく観戦するための基礎知識をお届けします。
こんな面白い試合を世界各地でやっているというのに、日本向けの公式配信がないのは勿体なさ過ぎるだろSNKと思っているので、ここだけは早急になんとかしていただきたい。

▲小ジャンプ攻撃が地上技や投げに噛み合うと大事故が発生。体力4~5割があっという間になくなり、そのあと起き攻めもついてきます。
現状のキャラ情勢
現状では、ほたる、カイン、北斗丸、ビリーあたりが本作の強キャラとされています。
ほたるは動きとしてはあまりトリッキーな要素はないものの、飛び道具がシンプルにめちゃくちゃ強く、無敵技の発生フレームなんかも他のキャラクターより優遇されていたり、火力も高め、コマンド投げまで持っているという超つええスタンダードキャラです。発売当初は「もう全部ほたるでいいんじゃないかな」みたいな空気もありましたが、最強キャラクターということで対策が進んできていることと、トリッキーな一発芸がないため、最近の大会では苦戦するシーンも多く見られます。あとは、ほたるは『KOF』の超最強プレイヤーであるシャオハイ選手がメインキャラクターにしているので、地獄の同キャラの未来が垣間見えるのも趣あるところです。
カインは飛び道具と設置を持つシューティングキャラクター……かと思いきや、凄まじいコンボダメージと多彩なコンボ始動が最大の魅力。読み負けが死に繋がりかねない本作において、設置技をうまく使うことで保険をかけられるのも強みです。海外の大会を見ていると、ほたるよりカインを使う強豪プレイヤーが多いように見えるので、予選突破を狙ううえで対策をしっかりしておく必要がありそうです。なお、自分で使ってみると火力を出そうとするとコンボがなかなかに難しいことに気づくはず。これを安定させてるプロすげえわ……。

▲飛び道具も無敵技も突進技も投げのあとの状況も他のキャラクターより一段強いほたるさん。ただし、トリッキーな一手に欠けるため、プレイヤーのやりこみ以上の力を発揮しにくいとの噂も。崩しを投げに頼るシーンも多いため、相手の決死の垂直ジャンプとかみ合って負けてしまうことも。

▲待ちキャラかと思いきや、ちょっとカスったところから大ダメージを狙えるカインさん。海外に使い手の多いキャラクターです。

▲今大会優勝候補キャラクターとされるほたると北斗丸だが、このゲームで「安定」することは可能なのか今のところ不明。
北斗丸は「ノーゲージ無敵技を持たないのだけが弱点」とも言われるほど立ち回りの強さと安定したコンボダメージを持つキャラクター。スピードと多彩な奇襲技を活かして相手に触れに行く動きは対処が困難で、おまけに強力な飛び道具まで持っています。しかし、ノーゲージ無敵技がないことで、対空や切り返しに一抹の不安があり、相手の勢いを止めきれずそのまま負けてしまうというシーンもちらほら。
ビリーはリーチの長い技で相手の出鼻をくじくような戦術が持ち味ですが、守りに入った相手を攻め殺す手段もあるナイスミドル。ノーゲージの無敵技は持たないものの、リーチの長さを活かして近づかれにくい戦い方を取ることで、かなり安定感のある試合展開を作れます。
マルコとガトーも大会で活躍するシーンがよく見られます。マルコは強烈な中下の二択を持ち、二択に行けるシーンを作りやすいのも強み。立ち回りは上位キャラには分が悪そうですが、謎に強力な遠距離立ち弱Pで試合の流れを掴み、起き攻めで倒しきるというシーンも珍しくありません。最近では中下の二択を警戒した防御手段を取る相手が増えてきましたが、そこをさらに読んででかい一撃を叩きこむなど読み合いが回りまくっていて面白いです。
ガトーは攻撃判定の強い技で横押しをかけつつ、大ダメージコンボを狙うキャラクター。崩しにはコマンド投げや中段を持ちますが、どちらも読まれたときのリスクがあるため、素早い暴れ潰しの中にこうした崩しをうまく混ぜ込む工夫がよく見られます。横押しの強さを活かして、有利フレームをとれていないにも関わらず強気に前に出てくる戦術も地獄味があります。
そのほかのキャラクターは予選大会の上のほうではあまり見かけませんが、このゲームとにかく全キャラ攻撃面がインフレ気味なので、対策不足を破壊するだけのパワーがあります。上位キャラとの対戦にばかり気を取られ、キャラクター対策を怠っていると、中堅以下のキャラクターの戦術やネタにメチャクチャにされることもあるんです。億の夢がかかった大会で炸裂するわからん殺しis至高。見ている分にはね。

▲すげえ中下の二択を持つ漢・マルコ。さまざまな状況から二択にいけるため、相手のキャラを問わず滅ぼせることも。
手癖と甘えが狩られる瞬間、悲劇が始まる
最近の格闘ゲームでは主流となりつつある、「打撃と投げ」の二択はどのキャラクターでも強力。打撃をくらうとあまりにハチャメチャなダメージが出るため、基本的にガードで耐えたいところなのですが、そこにダメージこそ低いものの、攻めを継続できる投げが刺さるんですね。しかしこの投げ、安全かというとそうでもなく、相手が一点読みで小ジャンプなんてしようものなら、そこから大ダメージコンボをくらって起き攻めもついてきて……そのまま負けみたいなことも珍しくありません。
あとは、体力リードを大幅にしていたとしても、このゲームの体力ゲージは気休めでしかないので、「体力リードしてるから」といって、無敵技を打つかあ、投げるかあ、みたいなところに、相手の一点読みが噛み合うと「死」が見えます。格闘ゲームってどこまでやりこんでいっても読み合いになるシーンがあります。読み合いのシーンで、手癖や甘えが出てしまって裏目った瞬間、視聴者としてはたまらない逆転のドラマが生まれるのです。

▲打撃が怖すぎて投げが通るのは間違いありませんが、その投げ、実は命かかってます。
防御システムの使いどころに注目
本作では、対戦前に体力ゲージの「序盤」、「中盤」、「終盤」から、「S.P.G.ゾーン」を選択します。このS.P.G.ゾーンでは、攻撃力アップの強化効果を得られるほか、動作途中にアーマー判定があり、カウンター気味に炸裂すると追撃までできてしまう「REVブロウ」が使用可能に。REVブロウのモーションはキャラによってさまざまですが、基本的にガードしても反撃が困難な技が揃っており、某ゲームのドライブインパクトの8割マシくらい雑に使えるシステムになっています。そんな事情もあり、チャンスさえあれば相手の体力をS.P.G.ゾーンの適用外まで減らしにいくのが本作のセオリーのひとつとなっており、この攻防の緊張感はとても見ごたえがあります。

▲「S.P.G.ゾーン」の位置は発売初期は「序盤」が人気でしたが、今では中盤を選ぶプレイヤーも増加中。「S.P.G.ゾーン」中は、「REVブロウ」が使えるため、下手に攻めるとカウンターから大ダメージを受けてしまう。
相手の攻撃を直前でガードするとジャストディフェンス、連続ガード中にタイミングよく前方向を入れるとハイパーディフェンスが発動。この2種類の防御からは、必殺技やREVブローをガードキャンセルで発動できます。普通にガードしていては切り返しにくいラッシュなどもこの2種類のシステムをうまく使うことで、反撃に転じられるんですね。ジャストディフェンスの受け付けは長めではあるものの、その後のガードキャンセルまで考えるとかなり手元の忙しいシステムですが、ハイレベルな戦いでは見かける機会も増えてきています。
ちなみに、主にジャストディフェンスは、相手の攻撃を先読みしての「仕込み」で行われるため、その暴発を狙うような攻めも使われてきているので、こちらも見どころになるでしょう。

▲ジャストディフェンスやハイパーディフェンスで攻防を入れ替えにいくシーンも。ハイパーディフェンスはかなり高難度だが、予選でも徐々に狙うプレイヤーが増えてきている。
最後は「流れ」なのかもしれない
いろいろな大会を観戦していますが、ベスト4手前あたりまでは「2先」で試合が進行していくことが多いようです。この命の儚いゲームの2先って何かが起きる要素しかなく、たとえそれが優勝候補であっても、相手の動きに合わせられなくて負けた、負けたら終わりの大会とは思えないようなぶっぱなしを3回くらって死んだとかもよく見られます。今のは運がなかったなあーみたいなことも頻発するので、毎試合運命のルーレットが回っているかのような緊張感があります。
オカルト的ではありますが、本作で勝ち切るためには「流れ」のようなものを味方にする必要があるのかもしれません。

▲超攻撃的なゲームなので、流れをつかむのも大事なのかも。
「バランス調整」というファクターX
大会では基本的に強キャラが活躍しているのは間違いないのですが、EWCは7月、SWCはまだまだ先ということで、その間に「調整パッチ」が入る可能性はゼロではありません。つまり、現状強いとされるキャラクターがいきなり弱体化され、場合によっては最弱クラスになることもあるのがおれたちのよく知る格闘ゲームの在り方。さらに今後追加されるキャラクターが環境に一石を投じる可能性もありそうです。
バランス調整が来るか来ないか、来るとしたらいつ来るのか、そしてそれは予選大会のどの時点で、本戦までどれだけ時間のある時に行われるのか。仮に2億を狙うプレイヤーであれば気が気ではないファクターXですが、我々観戦者からすると、環境が突如ハチャメチャになるのも桃鉄のような風情があるわけで、僕なんかはケビンに無敵技つかねえかな……などと思いながら本作をゆるゆると遊んでいます。

▲サルバトーレ・ガナッチとか突如メチャクチャ強化されたりしないでしょうか。
『餓狼CotW』を買って予選観戦を楽しもう
格闘ゲームをかじったことがある方なら、『餓狼伝説CotW』の対戦をちょっと遊べば、世界各地の予選大会の観戦が数倍面白くなるはず。負けたら終わりの試合でめちゃくちゃ慎重に戦うプレイヤーもいれば、負けたら終わりとは思えないめちゃくちゃなスタイルで突破を狙うプレイヤーもいたりで手に汗握る戦いが楽しめます。多くの大会は配信で試合模様が観戦できるため、アイスクリームでも片手に試合観戦しようではありませんか。
以下は、EWCの予選日程を簡単にまとめたものです。SWCについても、情報がまとまり次第、予選日程を掲載しようと思います。
え、観戦じゃなく、2億を狙って戦いたい!?
ご安心ください。今からでも遅くはありません。
なぜなら本作は4月に発売されたばかりのゲームかつ、過去作のやりこみがあまり活きない類の超攻撃的なゲームなので、腕に自信のある方、自分を信じられる方は是非今からはじめてみてください。
プロの格闘ゲーマーになりたいという方がいるなら、マジで今年は『餓狼CotW』もワンチャン(死語)あるんじゃないかなと思ったり。
『餓狼伝説 City of the Wolves』EWC予選枠
予選大会名 | 日程 | 開催地 | 予選通過枠 |
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EVO Japan 2025 SNK公式トーナメント | 2025年5月9日〜11日 | 日本 | 2 |
Brussels Challenge Major Edition 2025 | 2025年5月17日〜18日 | ベルギー | 2 |
Combo Breaker 2025 | 2025年5月23日〜25日 | アメリカ合衆国 | 3 |
Headstomper 2025 | 2025年5月30日〜6月1日 | スウェーデン | 1 |
Battle Arena Melbourne 15 (BAM15) | 2025年5月30日〜6月1日 | オーストラリア | 2 |
CEO 2025 | 2025年6月13日〜15日 | アメリカ合衆国 | 3 |
Hessen Crash XXII | 2025年6月20日〜22日 | ドイツ | 1 |
City of the Cream LIVE | 2025年6月21日 | メキシコ | 1 |
SCS 2025 北京 | 2025年6月(詳細未定) | 中国 | 未発表 |