【MAAB特別企画.03】ゲームセンター好きが語る「今と昔」。『ミリオンアーサー アルカナブラッド』がアーケードにこだわった理由とは【琢磨尚文氏・石井ぜんじ氏対談】

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●全国大会「血聖大戦2018」を開催する理由


石井氏:全国大会をいち早く発表しているのを見て驚きました。やる気だなと(笑)

琢磨氏:大会ってやっぱり楽しいですよねと格闘ゲーマーの自分は思うんです。ただ、一方で、みんながみんな大会を目指すわけではないことも知っています。僕自身が、もともとあんまり大会に興味を持たないタイプだったんですよね。格闘ゲームを継続的にプレイしはじめてから大会に興味持つまで、6、7年かかりました。なんか周りに強いプレイヤーもいて、そいつらが大会に出て優勝してたりはしたんですけど、こいつらとやってりゃいいやっとなってる時期がなぜかあって。でも、きっかけは忘れましたけど、一度出てみたら、この空気はいいなあと感じたんです。それは、誰かが継続して大会をやっていてくれたからなんですよね。だから、自分も作る側に回ったので、大会はやっていきたいと思います。

石井氏:大会の場を体験しているからこそ、早い段階で大会開催を実現したんですね。

琢磨氏:そうなんです。全国で店舗予選をやって、エリア決勝をやってというフォーマットにもこだわりましたね。いろんなプレイヤーがいろんな場所から出てきて、決勝大会でぶつかって、観ているプレイヤーはそれを応援するというのが楽しいだろうと思って。枠がそれほど多くないので、強豪プレイヤーの遠征なんかも出てくると思いますが、それはそれで熱いかなと。東京から遠征に来たプレイヤーを、地元のプレイヤーが迎えうつ時の変な熱気って、僕は迎え撃つ側で観ることが多かったので、あれはあれで良いなと思うんですよ。

——スクウェア・エニックスが格闘ゲームの大会をやるというのは、自分にとっては大きなニュースですね。勝ちたいとかそういうのではないですけど、なんだか面白そうだなと思います。

石井氏:なんだか面白そうってとても大事ですよね。ゲーメストで大会をやり始めた頃は、「成果」とかそういうのをあまり考えていなかったんですよ。それだけ時代に余裕があったのかもしれませんけど、「面白そうだからやってみようぜ」というのが大きかったんです。古い話ばかりで申し訳ないんですが、ゲーメストがマルゲ屋でやっていた『ストリートファイターII』の大会なんかは、「知らない人と対戦する」という文化があまりない時代にやっていて、最初は反響とかも予想できてなかったんです。

△稼働直後に開催が発表された「血聖大戦2018」

琢磨氏:『ストリートファイターII』の対戦人気を受けてのものではなかったんですね。

石井氏:『ストリートファイターII』って、まずは一人用としてみんなに遊ばれていたんです。だから「対戦攻略」という視点もない時期に、対戦モードがあるから大会やってみようぜという企画の上がり方でしたね。対戦の面白さを知っている人ももちろんいたんですが、当時はまだポピュラーなものではなかったんです。『ストリートファイターII』の対戦シーンがはっきり目に見える形で出てきたのは、稼働からしばらくしてからのことなんですよ。もともとは、北米向けに対戦モードを作っていたそうですし、日本人はシャイだから流行らないだろうというざっくりとした分析もありましたね(笑)

※9 マルゲ屋:ゲーメストを刊行していた新声社が出店していたショップ。さまざまなイベントが開催されていた。

琢磨氏:マルゲ屋の大会にはどれくらい人が集まったんですか?

石井氏:マルゲ屋の大会には、数百人が集まりました。当時数台しかなくて、運営としては20人もくればいいだろうくらいだったんですよ(笑)今なら確実に怒られている案件です。そこで、「ほんとはみんなやりたかったんだね」みたいな感覚を始めてつかんで、これはもう全国大会をやりましょうという話が出来上がりました。おそらくみんな、知り合い同士では遊んでいたりしたんでしょうが、知らない人と対戦して力を試すというのははじめてという人が多かったんじゃないでしょうか。賞金とか賞品とかではなく、「なんか面白そう」とか「腕試しをしたい」みたいな感情で、これほどの人が集まるんだなと驚きました。

琢磨氏:『アルカナブラッド』の大会に関しても、告知を出した瞬間に、「出たい」といってくれる人がいてくれて嬉しかったですね。優勝したら何がもらえるのか、どうしてもらえるのかとか告知はしていないのに、そこに体験を求めてきてくれるというのはありがたい限りです。現在、盛り上がりを見せつつあるe-sports的な流れとはちょっと違うかもしれませんが、ウチなりの楽しいものにしたいと思います。e-sports的な大会に興味がないというわけではないんですが、『アルカナブラッド』はスタートしたばかりのタイトルですし、ひとまずは国内展開なので、まずは賑やかな大会を目指しました。

石井氏:e-sportsと言うと、高額賞金というイメージですが、今の所日本では法律なんかの問題もあって、難しいという話もよく聞きますね。

琢磨氏:賞金については、今回の大会でも用意はしていますが、それはエリア決勝大会を勝ち抜いた方に、交通費や宿泊費として使ってもらえる規模になっています。若いプレイヤーは、エリア決勝大会を勝ち抜いて、自腹で関東に出てくるというのはなかなかハードルが高いと思うんですよ。全額負担してあげられているかというとそうでもない可能性もあるのですが、力になりたいという想いはありますね。

石井氏:最近は、交通費が支給される全国大会も減りましたよね。とても良い試みだと思います。それに、ゲームの大会って、高額賞金がないとプレイヤーが来ないというわけではないですよ。あればあるで嬉しいんでしょうが、なくてもそこに楽しさや刺激があればみんな来ますから。格闘ゲームって、そういう感覚を外に伝えやすいコンテンツのような気もしますね。熱量みたいなものが、いろいろなところから漏れてきているような気がします。

——それは僕も感じますね。いろいろな記事を、いろいろなメディアでやるんですが、PVだけで見ると格闘ゲームってすごいんですよ。PVが熱量というわけではないんでしょうけど、ゴジラインの活動を始めてから、格闘ゲーマーの方から応援してますと声をかけてもらうことも増えたんです。あったけえな、格闘ゲーマーって、いつも思ってますよ。

琢磨氏:リアルイベントに行くと、それは感じますね。インターネット上では叩かれたりもするんですが、いざ現場に行ってみると、みんな優しいんです。気を使ってくれてるんですかね(笑)

石井氏:インターネット上の評価や意見というのは、開発の人はどう付き合うか難しいところでしょうね。ネガティブな面がクローズアップされやすくて、匿名だったりするから、結構刺々しい意見も多い。だから、僕は、ちゃんと良くできているゲームは「良くできている」って言わなきゃと思いますよ。これはこれで、「そんなことない」という声が飛んできたりもするんですが、ささやかな発信も大事だなと思います。ゴジラインなんかは、そういう点こだわっているように見えますね。

△稼働前に行われた『ミリオンアーサー アルカナブラッド』の無料体験会にて、実況解説としてマイクをとる琢磨氏(右側)。血聖大戦のエリア決勝予選会場にも訪れ、プレイヤーとの交流を深めていた。

——面白そうだからやっているだけで、理念みたいなものはないんですけどね(笑)ただ、好きなものを紹介したいし、好きなものを一人でも多くの人が遊んでくれると嬉しいなとは思います。でも、いろんなところで言っているんですが、未だに腹が立つようなクソゲーには出会うんですよ(笑)でもそこで、「クソゲー、許さん!」みたいなことを、自分らが書く必要はないかなと思ってます。勝手に炎上したりするというのもあるんですが、作った「誰か」のことを考えてしまうんですよね。褒めることはありませんけど、取り上げたりもしないですね。

琢磨氏:メーカー側の僕がいうのもおかしい話ですが、相手は人間というのは大事な考え方かもしれませんね。僕も『アルカナブラッド』については作り手側ですが、ほとんどの商品に対しては消費者なので、最近は発信に気をつけています。

石井氏:簡単に発信できる時代だからこそ、自分の好きなものを衰退させることになっていないかというのは意識したほうがいいですよね。自分が好きなジャンルのゲームを遊んで、気にくわないところがあったとして、それをただ闇雲に叩くことでストレスは解消されるかもしれないけれど、そのジャンル自体が衰退する可能性だってあるんですよ。言うなとは言わないけれど、伝え方というものがあるなとライターをやっていて思います。

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