【プレイレポート】36歳の『メモリーズオフ -Innocent Fille-』プレイレポート

ギャルゲーに最も熱を入れていのは、中学、高校時代だっただろう。二次元のヒロインたちがとても愛おしく、それについてくるちょっとした恋愛ストーリーも心地よく感じていた時期だった。当時の自分でも、ギャルゲーのご都合主義な展開は現実とはかけ離れているとはわかっていたけれど、それがすべてではなかった。その時自分が身を置いていた学校生活や青春にわずかに重なる部分は確かにあったし、それがどんな過程を通っていたとしても、ヒロインたちの好意はプレイヤーである自分にとっては嬉しいものだった。出会って一週間もせずに主人公のことを好きになるヒロインも愛おしかった。

『メモリーズオフ -Innocent Fille-(イノサンフィーユ)』
発売日:2018年3月29日(※Steam®版は2018年予定)

機種:PlayStation®4 / PlayStation®Vita / Windows PC(DMM/Steam®)

価格:通常版:7,800円(税抜)、限定版:9,800円(税抜)

DL版:7,000円(税抜)※Windows PC版はダウンロードのみ。
予約通販限定 ラストメモリーズセット:50,000円(税抜)(※完売済み)

CERO C(15才以上対象)

△『メモリーズオフ』の最新作が2017年3月29日に発売。

初代『メモリーズオフ』と出会ったのもその頃で、「主人公の彼女が亡くなっている」という設定が当時珍しかったのと、そこからの話の着地のさせ方も一風変わったものになっていた作品ということで強く印象に残るゲームだった。2作目として発売された『2nd』は、かなり期待を寄せて購入した。『メモオフ』といえばこの作品という人も多いだろう、この作品では、あからさまに好意を寄せてきているヒロインがいるにもかかわらず、他のヒロインを選ぶことによって起きる修羅場的な展開が鮮烈で、ヒロインたち一人一人がとにかく可愛らしかった。それから僕はずっとシリーズを追いかけている。好きなキャラクターのグッズはひたすらに集めたし、イベントにもたくさん参加した。追いかけている間に、さまざまな名作にも出会った。

△10周年の際に購入したPERFECT VOCAL COLLECTION。

そして、ついに先日、シリーズ最新作であり、「ラストメモリーズ」と銘打たれた『メモリーズオフ -Innocent Fille-』が発売された。この作品の発売までには、さまざまな紆余曲折があったことが予想できる。前作に当たる『メモリーズオフ ゆびきりの記憶』以降に新作の話はなかなか聞こえてこなかったし、新作らしい映像がイベントで発表されたこともあったが、それからまた沈黙の期間が続いた。最近では「没になったのでは」という噂も流れていた。それが昨年、PS4、PS Vita、Steamというプラットフォーム対象に新作として発表され、3月という発売日も間もなく告知された。僕は36歳になっていた。
追いかけていた新作の発売はとても楽しみだったけれど、その内容については正直、ちょっと後ろ向きだった。自分自身が歳をとり、『メモオフ』の甘い物語を楽しめるのだろうかという懸念があったからだ。(『メモリーズオフ5』、『メモリーズオフ6』、『ゆびきりの記憶』の間に僕は、大学生活を送り、社会人になり、最新作の『メモリーズオフ -Innocent Fille-』が出るまでの間に結婚までした。)
ギャルゲーを集めることは続けているものの、遊んでいると冷静になっている自分がいることも自覚していた。ドラマの恋愛ものはめっきり見なくなったし、映画もラブロマンスは、評判を確認してから見るようになった。ギャルゲーでよくある切なさや葛藤といった心を揺さぶる要素は、今の自分に果たして刺さるのだろうかと思っていた。『メモリーズオフ』シリーズの物語のヒロインたちは、いろいろな悩みに真剣に向き合っているが、大人になった僕からすれば、それは物語の中のありふれた悩みだったり、穿った解決法をすぐに思いついてしまうようなものばかりだからだ。

これはもう、キャラクターが可愛いという勢いだけでやりきるしかないのではないかと思って遊び始めた『メモリーズオフ -Innocent Fille-』の物語は、案の定、序盤からとても甘く、青春時代にありがちな思春期の葛藤と、ギャルゲーにありがちな恋愛模様が漂うものに感じられた。もちろんこれは僕の感想であって、ギャルゲーを初めて遊ぶプレイヤーには、これくらいのわかりやすさも必要だろうと思った。本作のターゲットは、どちらかというと若いプレイヤーや、ギャルゲーに初めて触れるプレイヤーなのではないだろうかとこの時点では考えていた。この作品には、『メモリーズオフ6 Next Relation』に登場した、嘉神川クロエというヒロインの妹である嘉神川ノエルがヒロイン(攻略対象)として登場するが、もう僕の気持ちは彼女の成長を見届けるお父さんのようだった。

△嘉神川ノエルちゃんの成長に感動する一周目。明らかにギャルゲーの楽しみ方として間違っている気がする。

 2人目のヒロインルートは、1周目以上に甘く、「ギャルゲーのお約束」的な出来事が続くものだった。この時点で、歳をとって自分自身の変わった感覚を強く自覚してしまい、少し寂しくなったが、最後まで遊びきったら違うものが見えてくるかもしれないという期待もあった。ギャルゲーでは、いろいろなルートを遊んだ後に、「トゥルーエンディング」とも言えるものが解放されることがあり、そこで真のエンディングを観ることができる可能性だってあるのだ。アドベンチャーゲームは、全部遊んでみないとわからないということは、過去の名作たちを見ても明らかだ。最後の最後に用意されているエンディングがもしあるのだとしたら、それが製作者の一番描きたかった物語である可能性が高い。

△登場人物たちの抱える想いや悩みは、わかりやすくプレイヤーに伝わってくる。一周目のプレイは、ストレートなギャルゲー成分をたっぷり浴びるものとなった。

△ひとまず全部のエンディングをみることに。

それからは、エンディングリストを埋めるために、トライ&エラーを何度か繰り返した。しかし、いろいろな選択肢を試したものの、なかなか新しい展開を観ることができなかった。最近のギャルゲーには珍しく、本作は選択肢の数がなかなか多く、その上「R.A.I.N.s」という「どのヒロインを切り捨てるのか」という強烈な選択も迫ってくる。この「R.A.I.N.s」の選択は、ヒロインが好きとか嫌いとかそういう短絡的なところで登場せず、ここでこのヒロインを切り捨てるとあとあと大変なことになりそうだという地点で登場するそのうえ時間切れもある。このシステムが分岐に関わってくるので一筋縄ではいかない。

△こちらが「R.A.I.N.s」の画面。どちらを選ぶのかというよりは、どちらを振り切るのかという意味合いが強いように感じる。

目標はトゥルーエンドということで、それっぽい選択肢をこなしつつ物語を進めていると、とあるルートに迷い込んだ。そのルートは過去の『メモオフ』シリーズを遊んだことがある人のために用意されたかのような展開で、不覚にもぐっと来てしまった。ネタバレを避けるために詳細は避けるが、シリーズのとある重要な人物にスポットが当たった、とても素敵な物語となっている。甘さや賑やかさは相変わらず過剰に感じられるものの、その匙加減に迷いはない。ファンが見たかった一つの『メモオフ』の答えがそのルートには用意されていると言っていいだろう。しかし、このエンディングを見終えても、まだCGリストはかなり空いている。この時点で、トゥルーエンディングに相当するものが用意されていることを確信した。

Column 01:
過去作からのつながり
 『メモリーズオフ -Innocent Fille-』には、過去作のヒロインたちが登場する。彼女たちとの会話では、過去作の主人公が誰と恋人関係になったかということに言及されるシーンもある。当時のプレイヤーの推しや選択とは違う「ヒロイン」が選ばれている可能性もあるものの、これはあくまで本作における「歴史」とのこと。MAGES.社の人気シリーズである科学アドベンチャー風にとらえるなら、一つの「世界線」として考え、過去作の世界とのつながりを楽しんでみてはいかがだろうか。

朝の3時頃に、本作の最後の物語にたどり着いた。正直、回収しきれていないのではと思っていた要素を、伏線として、見事にそのルートで拾っていく。何のために登場していたのかいまひとつわからなかった要素を、美しく、素早くまとめ上げていく。
本作の物語は、明るく甘い恋愛を描いた「LIGHT SIDE」と、重い物語を描いた「HEAVY SIDE」が用意されていると事前の情報として知っていたが、最後の物語は紛れもなくHEAVYだ。基本の線はギャルゲーらしく、ヒロインたちの甘い恋心に彩られているものの、話の方向性は一変する。発売前に公開された本作のセカンドトレーラー内や、初回限定版のパッケージ裏などに使われている素材から、どことなく血の気配を感じとっていたが、なるほどそう来るのかと思わされる展開が待ち受けている。本作の開発元であるMAGES.社の科学アドベンチャーのような空気が一瞬よぎるこの最後の物語は、多くのプレイヤーに驚きをもたらし、本作のキーフレーズの一つである「これは、かけがえのない― そして負けない、「想い」 (コイゴコロ)」に、改めてぐっと来るはずだ。やっぱり、アドベンチャーゲームはすべての物語を遊んでみないとわからない。

△パッケージ裏にも使われている意味深なカット。このカットから、今回の『メモオフ』がただのギャルゲーではないことが想像できるはず。

僕はとにかくこの作品に満足した。昔、『メモオフ』の主人公たちと同世代だと感じていた頃に感じていたギャルゲーらしさが弾けているかと思いきや、今風のサスペンス色の強い物語でただのギャルゲーではない部分もしっかりと魅せてくれる。そして過去の『メモオフ』シリーズを追いかけてきた自分に、ひとつの着地点を用意してくれたことも嬉しかったからだ。
本作の制作に関わっているのは、過去の『メモオフ』シリーズを支えてきた
プロデューサーやディレクター、シナリオライターや作曲家たちだ(スタッフロールを見ると、広報やその他の項目にも過去作の『メモオフ』関係者が多い。新しくスタッフとして関わっている方にも、『メモオフ』が好きという方が多いようだ。)。これは僕の勝手な想像だが、きっと制作サイドも昔と比べて歳をとっていて、今作の『メモオフ』をどのような場所に着地させるか悩んだのではないだろうか。ただ甘いだけの恋愛ものでは今の時代に響きにくいことは、科学アドベンチャーシリーズを手がけるMAGES.のスタッフなら百も承知だろう。
しかし、『メモオフ』というタイトルを掲げた以上「ギャルゲー」でなければならないという縛りも出てくる。これは、開発や事業としての計画を立てる上で大変な縛りだったと想像できる。結果、僕たちの手に届けられた甘いライトサイドの物語と、ヘヴィサイドのちょっと今風なサスペンス展開、そして『メモオフ』ファンのノスタルジーを掻き立てる要素の配置など、あの手この手で幅広いターゲットを狙った作品となっている。この物語のバランス感覚に、ギャルゲー職人たちの職人魂を感じるほどだ。正直、自分には甘すぎるルートもあるけれど、全体を通して遊んで心にじんと響くのは、そうした真摯な制作の跡があちらこちらに見えるからかもしれない。

coiumn 02:
『メモリーズオフ -Innocent Fille-』のサウンド

本作のゲーム内BGMは阿保剛氏、主題歌、エンディングテーマの作詞作曲は志倉千代丸氏が手掛けている。『メモオフ』シリーズには欠かせないクリエイターが手掛けるサウンドは、本作の物語をすくいあげるような繊細な楽曲となっている。主題歌を収録したCD『レジリエンス』は好評発売中。ゲーム内BGMは、初回限定版に封入されている特典CDや、ゲーム内のミュージックモードで鑑賞することが可能。

△主題歌が収録された『レジリエンス』の限定版には、過去作の『メモオフ』ボーカル曲が多数収録されている。今作の主題歌、エンディングテーマのボーカリストは彩音さん。『メモオフ』らしさを詰め込んだ、珠玉の一枚となっている。

『メモリーズオフ -Innocent Fille-』はやっぱりギャルゲーっていいよなと思うと同時に、『メモオフ』というシリーズの懐の深さを知ることができる素晴らしい作品だった。昔、ギャルゲーにはまっていた人、『メモオフ』ファンには、是非とも遊んでほしい。某所のレビューにも書いたけれど、ちょっと甘すぎる展開も、たまにはいいものです。あと、ギャルゲービギナーの方、若い方々にも是非本作を手にとってもらいたい。「さすがにねーよ」と思う展開が途中にあるのだって、ギャルゲーの魅力。ちょっと夢を見るような気持ちで、ヒロインたちとの楽しいひと時を過ごしてみてはいかがだろうか。

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浅葉 たいが

浅葉 たいが

ゴジライン代表。ゲーム、アニメグッズのコレクター。格闘ゲーム、アドベンチャーゲーム、RPGをこよなく愛する。年間100本以上のゲームを自腹で買い、遊ぶ社壊人。ゲームメディア等で記事を書くこともあるが、その正体はインテリアデザイナー、家具屋。バンダイナムコエンターテインメント信者かつ、トライエース至上主義者。スマートフォン版『ストリートファイター4』日本チャンプという胡散臭い経歴を持つ。

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