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まさかのリマスター版『風雲スーパータッグバトル』が発売!しかも幻のSPECIAL VERSIONってマジすか!?今だからわかるその作りこみに感動した

東京ゲームショウでいきなり『リアルバウト餓狼伝説2』のリマスター版がSteamで発表されてびっくりした方も多いのではないでしょうか。
オンライン対戦やトレーニングモードを搭載したこのリマスターは【NEOGEO PREMIUM SELECTION】 の第一弾とのこと。一時代を築いたNEOGEOアーケードゲームの名作タイトルに新機能を加え、プレミアム製品として蘇らせていくプロジェクトだそうですよ。こういうのをどんどんやっていくわけですねSNKは。文化の保存という意味でも大変すばらしい試みでありがたい。

しかし、「一時代を築いたNEOGEOアーケードゲームの名作タイトル」かあ。じゃあ次は『龍虎の拳』とか『KOF』とか『月華の剣士』でも来るのかな。なんて思ってた人は僕だけではないはず。

SNKくん『第二弾は『風雲スーパータッグバトル』です』

そっ、そうきたかあ~。SNKは狂ってしまったのかもしれない。

いや、1995年からずっと狂っているのかもしれない。

少し自分のゲーセン昔話をします

SNKが「実戦空手道とブーメランをくみあわせたまったくあたらしい格闘技」である風雲拳『風雲黙示録 ~格闘創世~』を世に送り出したのは1995年のこと。
この風雲拳のフレーズは格闘ゲーム史に残るものとなっていて、僕たちあの頃のアーケードゲーマーはいまだ「〇〇と〇〇を組み合わせまったく新しい〇〇」みたいな表現を使ってしまったりしますよね?よねえ?

▲1995年にゲームセンターで稼働した『風雲黙示録』。このゲームのオープニングを伝説的なものにしたのがこの風雲拳の紹介テロップだ。画面はアケアカ『風雲黙示録 ~格闘創世~』より。

ただ、肝心のそのゲームの人気ときたら、超人気ゲーム『ザ・キング・オブ・ファイターズ』(以下KOF)に押され気味で、がっつり対戦したという人は当時少ないのではないでしょうか。このタイトルが斬新かつあまりにも面白すぎたのが悪い。そういえば『KOF』のことを『ザキン』とか『ザッキン』とか『キンターズ』とか謎の略称で呼んでた時代もこの頃だったような気がしますね。みなさんはなんて呼んでました?

僕は当時格闘ゲームはなんでもとりあえず遊んでみるキッズだったので、『風雲黙示録 ~格闘創世~』についてはCPU戦と対戦を少々たしなんだ記憶があります。その時の感想は、子供ながらに「なんだこのわけのわからんゲームは……」というものでした。とにかくキャラクターや世界観が”濃い”、そしてシステムも当時の2D格闘ゲームを置き去りにするような斬新さを持ち合わせていて、理解が追いつかなかったのです。当時の『餓狼伝説』シリーズではおなじみのラインシステムが盛り込まれているのですが、このラインにいくつかの種類があって……。キャラクターがぶらさがるようなラインがあったりして、数プレイで面白さを掴むのは至難の業という感じのゲームだったんですね。そんなこともあり、僕が通っていたゲーセンでは、ほとんど対戦が発生しませんでした。

1996年になって、『風雲黙示録』の続編が出たときはめちゃくちゃびっくりしたんですよね。
しかも、その続編は『風雲スーパータッグバトル』というタイトルで、2on2のタッグバトルになっていたのですから。1996年ももちろん『KOF』はめちゃくちゃに人気でした。96はゲーム性が大きく変わり、操作性も独特ということで癖がすごいゲームだったんですが、KOFというだけで大盛り上がり。そして『風雲スーパータッグバトル』もまた『KOF』の盛り上がりに飲まれてしまった。SNKは自ら『KOF』という最強のライバルを生みだしてしまっていたんですね……。

ただ僕と友達は『風雲スーパータッグバトル』を結構対戦したんですよ。「バトルシステムが独特だけどわかりやすい、コンボの繋がり方も爽快、結構いいゲームなのかもしれない」とか思わせる何かがあったんでしょう。でも、その何かを掘り下げる前に、「永久コンボ」と「性能の狂ったボスキャラ2人」がこのゲームの対戦環境を滅ぼしてしまったという悲しい事件がありました。

まず、ジョーカーというキャラクターの永久コンボがスゴすぎました。1995年発売の『餓狼伝説3』の伝説的永久コンボであるテリーのしゃがみCクラックシュートのようなタイプの永久で、始動となる突進技がクラックシュートの10倍くらい強い。

▲ジョーカーの突進技は終わり際をヒットさせると立ちCがつながり、そこから突進技がつながります……。結構適当に出しても終わり際が当たるので、そのまま試合も終わります。

そして追い打ちとして、この頃のSNKの得意技である「狂った性能の隠しキャラ」の使用コマンドがどこからともなく伝わってきてしまいました。しかもこのゲームの隠しキャラは2人いて、2人とも狂っています。ボスキャラはなんと、タッグではなく1人で戦うという仕組みになっていたのですが、その強さは普通のキャラの5人分くらいあるほどすごかった。結果として「このゲーム、タッグである必要ないな」みたいな地獄ゲーと化してしまったのです。

隠しキャラである真・獅子王の突進技“ビーストブロー”は、連発するだけで試合を終わらせかねない壊れ技です。おそらく、本作を未プレイの方が真・獅子王と相対したのなら、1試合したあとに「もう同キャラ戦をやるしかない……」と決意を新たにできるはず。

▲『KOF ’95』のオメガ・ルガールの40倍くらい理不尽な強さを持つ真・獅子王さん。「ダイナマイー」というボイスの出る技を連打するだけで今夜どころか明日も勝てる。

当時の『風雲スーパータッグバトル』は、斬新なシステムと爽快感のあるコンボを搭載したゲームだったものの、『KOF』の陰に隠れてしまったり、対戦されていたとしても永久コンボとボスキャラによって焦土となってしまったりしたのではないでしょうか。当時、強すぎるキャラクターを「禁止」とするハウスルールが設けられているゲーセンもありましたが、『風雲スーパータッグバトル』はそんなハウスルールが適用される前に、対戦シーン成り立たなくなっていました。

2025年『風雲スーパータッグバトル』の作りこみに驚く

そんな悲しい出来事から30年近くが経ち、まさかの『風雲スーパータッグバトル』リマスターが電撃発表されてしまいました。ゲーセンで50円とか100円を入れていた時代は、勝つことにこだわるあまり、永久コンボや隠しキャラをすぐ選んでしまうどうしようもないキッズだった僕もいまや43歳とかになってしまうくらい時が流れていて怖いです。

「そういやこのゲーム、システムとかは斬新で良かったんだよなあ」みたいなことをしみじみと思い出しつつ、トレーニングモードをガチャガチャやっていると、いまだ斬新に感じる要素もあれば、当時にしてはすごいことやってたんだなあと驚くような作りこみも垣間見えてきます。おそらく『風雲黙示録』も『風雲スーパータッグバトル』も大ヒット格闘ゲームを連発していたSNKが、「同じようなゲームを作るまい」と作ったゲームだったのでしょう。そのチャレンジ精神を感じたポイントをいくつか挙げてみましょう。

まず、素直に表現のクオリティが高いですよね。当時はゲームセンターで遊ぶ2D格闘ゲームに「グラフィックがすごい」なんて評価軸で向き合ったことがほとんどなかったんですが、今見るとグラフィックの作りこみがえぐい。いまや古いゲームなので「味がある」と言ってもいいんでしょうけど、今この『風雲スーパータッグバトル』のような2Dグラフィックの格闘ゲームが出てきたら「おっ」と立ち止まるような気がするんですよね。アクションもめちゃくちゃ格好よくて、動かしていて楽しいです。あと、SNKのサウンドはこの頃も今もやっぱすげえ最高なんですよね。『風雲スーパータッグバトル』に関しても、世界観とバトルの緊張感を混ぜ込んだ素晴らしい音が鳴るんです。

▲グラフィックやサウンドなどの表現のクオリティはマジで高いです。すっかりレトロゲームのはずなのに、今みても格好いい……。

▲実はこのゲーム、『餓狼伝説』などでおなじみのキム・カッファンの子孫であるキム・スイルも登場するんですよね。テコンドーと棒術を組み合わせて戦うキャラクターです。

バトルシステムも当時にしては斬新で、今の時代でも評価されそうなものがちらほら。まず、「スーパータッグ」というだけあって、タッグシステムには力が入っています。本作では2人のキャラクターを選びタッグを組んで戦わせるんですが、どちらか一人の体力が無くなると敗北となります。
待機中のキャラクターは体力が徐々に回復していくので、永久野郎とかボスキャラ以外の普通のキャラで対戦する場合は、“交代”をうまく使うほうが良いという作りになっているんですね。交代については、通常の交代に加えて、エマージェンシータッチという攻撃判定つきの交代なども用意されてて奥が深めです。

▲地面の上に赤・青で表示されているのがそれぞれのタッグエリア。この上でのみ控えのキャラクターと交代が可能。

「コンボを決めていて楽しい」というのは格闘ゲームには欠かせない要素だと思っていますが、ここもしっかり押さえられています。本作のコンボの楽しさを作り出している要素のひとつが独特のボタン設定です。本作では、弱パンチ、弱キック、武器攻撃、交代ボタンの4ボタンが主な操作ボタンとなっています。そして、強攻撃は→にレバーを入れながら弱攻撃ボタンを押すことで発動します。
弱攻撃から強攻撃はスムーズにつながるキャラも多いので、しゃがみ弱×2から6+弱と入力することで、しゃがみ弱×2・強攻撃が成立するんですね。これ実は『KOF ’97』で出来るようになった“通常技キャンセル特殊技”に近いコンボシステムなんですよね。96年発売の本作で既に垣間見えていることに驚かされます。
しかも強攻撃から、武器攻撃→レバー入れ武器攻撃→必殺技とつながるキャラなんかもいます。こういう通常技のつなぎを本作では、「ラッシングコンビネーション」と呼ぶようです。この頃既に見られた弱・中・強とつながっていくチェーンコンボと似たシステムですが、ラッシングコンビネーションはレバー入れ攻撃がいいアクセントになっていて操作が楽しいんですよね。しゃがみ弱×2→6+A→武器攻撃→6+武器攻撃【C】必殺技!みたいなリズミカルな感じで入力できるコンボはかなり気持ちいいです。

▲通常技が「ベベベベ」と気持ちよくつながるキャラは操作していて楽しいです。

防御システムも謎に充実しています。その場で相手の攻撃を避ける動作をする“スウェー”と、前方に移動しつつ攻撃を回避する“回り込み”は、戦略的に使うことでかなり強力な防御手段になります(ちなみにボスキャラのジャズウは回り込みに隙がないので……、あとは察してください)。そのうえシステムとしてガードキャンセルがあるので、「待ち」はきわめて強い戦術で、それをどう崩すか考えるのも面白いところでしょうか。

ダウン時のリバーサルは、起き上がりモーションをキャンセルしてだせるっぽく、現代令和の2D格闘ゲーム攻略セオリーである「詐欺飛び」なんかをシステムが破壊してくるのも地味にすごいポイント。この時代に詐欺飛びを前提にした戦術が流行っていた記憶はありませんが、この謎の仕様のせいで時代を先取りしている感を醸しだしています。

▲強力な防御システムが揃っているので、立ち回りで困ったらとりあえずスウェーや回り込みに頼るのも良さそう。

今のゲームから見ると粗削りではあるものの、当時にしてよくこれだけ作ってるよなーと感心することしきりです。当時のスタッフの方がいたらインタビューしたいくらいです。
2025年まで面白さや作りこみに気づけなくてごめんよ……ということで、永久コンボ持ちのジョーカーと、狂った性能のボスを禁止にして、格闘ゲーム仲間のおっさんたちと遊んでみたところ、みんな「いやこれ結構すげえな」みたいなj反応をしております。ゲームの展開はスピーディーだし、一撃が重いので技をヒットさせたときの爽快感も強め。理不尽な性能の技もあるけれど、それ以上に防御システムが強いので、ゲームに慣れてくると意外とじっくり戦えるようになっています。なにより、キャラクターの性能にちゃんと個性があるのが良い感じです。

あと、風雲拳の設定がイロモノすぎて見落とされがちですが『風雲』シリーズのキャラってみんな味がありますよね。『風雲黙示録』の主人公のハヤテはもちろん、『風雲スーパータッグバトル』のロサも色気と格好良さを兼ね備えててすごいイイ感じです。今風のデザインではないんだけど、しっかり記憶に残るシルエットをしているし、動きもイメージ通りで使っていて楽しいキャラクターになっています。『風雲』シリーズのキャラクターって、他のSNK作品にたまに登場するんですが、毎回すごい存在感あるんですよね。『ネオジオバトルコロシアム』の獅子王とか超格好いいんですよ。

2025年にこのリマスター版が出なければ、『風雲スーパータッグバトル』の魅力の半分もわからないままだったと思います。当時気づいておきたかったなあ。

▲リマスター版にはギャラリーモードも収録。当時全く意識していませんでしたが、手書きのビジュアルめちゃくちゃ格好良いです。

▲SNKは『風雲』キャラの格好良さを信じている節があり、ときどきた作品に出張してるんですよね。『ネオジオバトルコロシアム』には、獅子王が参戦しています。(画面はXbox360版のもの)

まさかのSPECIALモード移植!!!
みんなも『風雲スーパータッグバトル』をやろう

オープニング画面をボーっと見てたらとんでもないことに気づいてしまいました。

まあこの画像を見てください。

SPECIAL VERSION
4人タッグプレイOK!

なんと今回のリマスター版、一部ゲーセンで稼働したとされる4人同時プレイ可能なSPECIAL VERSIONなのです。オフライン時限定のようですが、プレイヤー2vs2に分かれて真のタッグバトルを楽しめてしまうというワケですね。こんなの1996年に作ってたの時代を先取りしすぎてて怖い。

SPECIAL VERSIONが移植されるって初めてのことなのでは。
このことに喜べる人もそう多くないと思いますが、すごすぎるぜSNK。

【NEOGEO PREMIUM SELECTION】マジイイ感じです。
『リアルバウト餓狼伝説2』では、昔結構遊んだゲームにもう一度熱くなれました。
『風雲スーパータッグバトル』では、昔気づかなかった作品の魅力に気づけました。
僕のような90年代をゲーセンで過ごした人にはたまらない試みですよこれは。
『風雲黙示録』もまた遊びなおしたくなってきました

でも、欲を言うなら、90年代ゲーセンを知らない方にも遊んでほしい。特にこの『風雲スーパータッグバトル』なんかは、今遊んでも格闘ゲームとして笑える面白さがあると思います。
格闘ゲームって、友達を誘って遊べば大抵の作品が楽しいです。軽率に「『風雲スーパータッグバトル』やろうぜ」と友達を誘って遊んでみるのはどうでしょうか。最初に真・獅子王を使い、ダイナマイーを連打して、「ダメだこのキャラ……」と感じたら、普通のキャラクターに目を向けてみましょう。

なんとこの【NEOGEO PREMIUM SELECTION】『風雲スーパータッグバトル』は、「ローンチディスカウント」キャンペーンを実施中!2025年10/12 2:00AM~10/19 2:00AM (JST)の間、25%オフで購入できるらしいです。

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浅葉 たいが

浅葉 たいが

ゴジライン代表。ゲーム、アニメグッズのコレクター。格闘ゲーム、アドベンチャーゲーム、RPGをこよなく愛する。年間100本以上のゲームを自腹で買い、遊ぶ社壊人。ゲームメディア等で記事を書くこともあるが、その正体はインテリアデザイナー、家具屋。バンダイナムコエンターテインメント信者かつ、トライエース至上主義者。スマートフォン版『ストリートファイター4』日本チャンプという胡散臭い経歴を持つ。

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