2025年9月25日から28日(25日、26日はビジネスデー)にかけて開催中された東京ゲームショウ2025のハピネットブースにてアクションゲーム『エトランジュ オーヴァーロード』が出展。本作は原作を謎の小説家・喜多山浪漫氏、イラストを『Re:ゼロから始める異世界生活』などで知られる大塚真一郎氏が手掛けている。そしてプロデューサーは日本一ソフトウェアの社長を務めた新川宗平氏というユニークな布陣になっている。そのうえ、ゲームの開発は『STAR OCEAN THE SECOND STORY R』で知られるジェムドロップとくれば、この新規IPに期待せざるを得ない。
本記事では、TGS2025に出展された試遊のプレイレポートと、キーマンである新川宗平氏へのインタビューをお届けする。
異色の悪役令嬢もの
『エトランジュ オーヴァーロード』のあらすじ
まず、本作のストーリーをご紹介しよう。
公爵令嬢エトランジュ・フォン・ローゼンブルクは、王族暗殺未遂の罪で処刑され、目が覚めると地獄に落ちていた。ところが彼女は動じず、その場にいた悪魔たちを一蹴し、カリスマ性を発揮して配下にしてしまうのだった。彼女は地獄での第二の人生を謳歌し始める。ここまで読めば、本作が「悪役令嬢もの」であるとわかる人も多いはず。
「悪役令嬢もの」というと、近年のエンタメの中でジャンル化するほどポピュラーになっている。
本作はその中でも、いろいろな方に新鮮な気持ちで楽しんでもらえる作品を目指しているという。特にゲームは、「総合エンターテインメント」的な作品を目指して作られており、短い試遊時間ではあったが、「ただのアクションゲームではない」ことがひしひしと伝わってきた。

▲主人公のエトランジュ。稀代の悪女として断罪され、処刑の末に地獄に落ちたが、地獄でもそのカリスマ性を発揮してしまう。
遊びやすく痛快なアクション
ユニークな要素も満載!
本作のアクションパートは、ステージ攻略型となっているようで、ゲーム画面はステージを見下ろすような形で表示される。アクションパートを進めることで、ストーリーが進行していくという仕組みのようだ。ステージのクリア条件がさまざまに用意されているのも面白いところで、敵を倒すというシンプルなルールのものから、出てくるアイテムを回収ポイントまで持っていけた数を競うというルールのステージも確認できた。このルールでは、自軍と敵軍にスコアが表示され、敵軍よりもはやく規定の量のアイテムを運ばなければならない。味方がスムーズにアイテムを運べるよう、道中の敵を排除する遊びが楽しかった。

▲操作が簡単で遊びやすいが、ゲームは全く単調ではなく、ステージには色々な遊びが詰め込まれている。
アクションパートで操作するキャラクターそれぞれに能力が異なるが、どれもボタンひとつで発動できるので非常にとっつきやすい。今回の試遊ではエトランジュ、スイーティア、ヒャッハー、アリア、の4体が操作できた。これらのキャラクターを敵の種類や状況に応じて、リアルタイムで入れ替えていくという戦略が本作の基本になりそうだ。
今回の試遊版で使ったキャラクターの性能をざっくりと解説すると、エトランジュは闇魔法を扱うことができるようで、通常攻撃は放射状に魔法の矢を撃つ。そして必殺技でメテオの雨を降らせるというキャラクターになっていた。スイーティアは味方の体力を回復してくれる能力を保つため出番が多そうな予感も。そしてヒャッハーは弓矢を携え、遠距離攻撃で敵を射抜きつつ攻撃できる。アリアは巨大な斧を持ち、近接攻撃が得意な雰囲気。

▲わらわらと出てくる敵を次々に倒していくという状況も多い。爽快!
本作独自の要素として、“SUSHIレーン”というものがある。SUSHIレーンは5つの線で描かれたレーンで、レーンの上にはアイテムが流れてくる。このアイテムに触れることでキャラクターを強化したり、回復することができる。つまり、本作はキャラクターの切り替えと、SUSHIレーンのボーナスをうまく使って攻略するという仕組みになっている。加えて、ステージによってはレーンに機銃などのギミックや攻撃アイテムが流れていることもある。SUSHIレーンに何が流れているかという要素も、ステージの戦略を変化させる楽しい要素になっている。
ステージを進めていくと、敵の攻撃が苛烈になってきて、気を抜くと味方がやられてしまっているということもあった。近づいて蘇生してあげなければならないとなると焦りはじめることもあった。攻撃・アイテム回収・蘇生・ギミック処理と、思ったよりもずっと忙しいゲームだが、その忙しさが楽しさにつながっているのは間違いない。キャラクターだけでステージを打開しようとしていた最初こそやや難しさを感じたが、SUSHIレーンを活用するようになってからは、「痛快で面白い」本作の良さがひしひしと伝わってきた。まさしく「アクションが苦手な方でも楽しく遊べる作品」と言って間違いないだろう。

▲こちらがSUSHIレーン。この上に流れてくるアイテムを活用することで、ステージ攻略が楽に、そして楽しくなる!
また、本作は最大4人で遊べるマルチプレイにも対応しているとのことなので、友達とワイワイガヤガヤ盛り上がれるのも面白そうだ。
試遊では触れることができなかったが、本作の醍醐味のひとつになるであろうミュージカルシーンも気になるところだ。公式サイトですでに公開されている動画を観る限り、ギャグ風味で破天荒な空気が伝わってくるが……。プロデューサー・新川宗平氏は、ミュージカル要素をゲームに持ち込んだ作品も過去に手掛けており、高い評価を得ている。その新川氏が久々に手がける、ミュージカル要素はどのようなものなのか、今後の情報公開が楽しみな作品でもある。
ゲームプロデューサーとして帰ってきた!?
新川宗平 氏にエンカウント!

▲新川宗平氏。日本一ソフトウェアの社長を務め、2022年に辞任。久々にお顔を拝見しました!
——うわー!新川さんじゃないですか。新川さんとしてはお久しぶりです。インタビューさせてもらって良いですか?
新川:良いですよ!確かに新川宗平としてはお久しぶりですね。なんでも聞いてください。あ、このコメントが掲載される頃には、『エトランジュ オーヴァーロード』の原作者である喜多山浪漫の正体が新川宗平であることが明かされています。
——うわーついにバラしてしまいましたか。びっくりしている人もいそうですよね。と…、とはいえウチの記事で喜多山浪漫先生のインタビューを取っていましたが、「絶対コレ新川さんのこと知ってる人すぐ気づくよな」と思っていました。喜多山さん、というか新川さん正直すぎるんで、そのまま書くと絶対わかると思うんですよね。ウチが正体を隠せていたのかは謎ですが、発表おめでとうございます(笑)
新川:ありがとうございます。喜多山浪漫は消えるわけではないので、ご安心ください。小説も書き続けていきます。
参考記事:【インタビュー】前職はゲーム会社社長!?そして小説家へ!謎多き作家「喜多山浪漫」先生にインタビューしてみた
——『エトランジュ オーヴァーロード』のプロデューサーとして新川さんの名前を見た時はびっくりしました。これはゲーム業界に帰ってきた!ということで良いんでしょうか。
新川:わたしはどこにも行っていませんよ(笑)ただ、日本一ソフトウェアを辞めて、しばらく表に出てこなかったのは事実ですね。その間、いろいろな仕込みや勉強をしていました。辞める前に小細工なんてしているわけでもないですから、辞めてすぐに「これが新川宗平の関わっている新作です!」みたいな展開になることはあり得ませんからね(笑)覚えてくれている方、心配してくれている方がいてくれて嬉しいです。そして、『エトランジュ オーヴァーロード』のプロデューサーであることを明かしたのをきっかけに、また皆さんとお話しできるようになって嬉しいです。
——『エトランジュ オーヴァーロード』はどのような経緯でプロデューサーを担当することになったのでしょう。
新川:喜多山浪漫の作品をプロデュースしているのが新川宗平という立ち位置なんですよ。『エトランジュ オーヴァーロード』を皮切りに、喜多山浪漫原作、新川宗平プロデュースというものがいろいろ世に出ていくと思います。セットで覚えてもらえるとありがたいです。
——『エトランジュ オーヴァーロード』では、プロデューサーとしてどのような役割を担当されているのでしょう。
新川:原作をいかにオープンに広めるかというところを担当していますね。具体的にいうと、原作という出発点からゲームやコミカライズといったメディアミックスに導くことです。そしてメディアミックスがゴールではなくて、プロモーションなどもわたしのできることをやっています。『エトランジュ オーヴァーロード』であれば、悪役令嬢ものですよね。悪役令嬢ものというと、乙女ゲームからの派生ジャンルみたいなところがあるので、その方面に強いブロッコリーさんと実は親和性があるのではないかとか考えてみたり。ブロッコリーさんが協力してくれるのであれば、従来のブロッコリーさんのゲームとはまた違ったファン層を取り込めるものをやろうとか考えたり。あとは、ゲームは経験を活かせる場でもありますから、どのような形でゲームを作っていくかというようなことを提案することもあります。
——ジェムドロップさんが本作の制作を手がけています。参加の経緯についてもお聞かせください。
新川:ジェムドロップさんの北尾社長は、日本一ソフトウェア時代の同僚なんです。彼はわたしよりだいぶ早く会社を去っているんですが、私が社長を辞めたときに、心配して北尾さんが連絡をくれたんです。その連絡をきっかけに、一緒に下呂温泉に行って、ご飯を食べて、お酒を飲んで、色々と語り合ったという思い出があります。そのとき、「まだまだやるつもりだから、なにか一緒にやりませんか」というようなことを言ったら、「手伝うよ」って言ってくれて。『エトランジュ オーヴァーロード』では、久々のタッグを組むことになりました。
——『エトランジュ オーヴァーロード』は、ジェムドロップさんらしいアクションの手触りの良さと、いろいろな具材を混ぜ込んでうまく調理する腕前を感じました。そして具材の中には、「ミュージカル」といった新川さんがかつて手がけた名作の気配を感じる要素もあります。こちらは、新川さんの提案でしょうか。
新川:ミュージカル要素は、自分のゲームにおける作家性のひとつかなと思っていますね。昔の作品とはまた違う、新しいゲーム内ミュージカルをお見せしたいと思っているので、楽しみにしていてください。BGMや歌も多いので、限定版のCDは大ボリュームになってしまいました(笑)『エトランジュ オーヴァーロード』は総合エンターテインメントを目指して作っているので、面白いと思うものはなんでも入れていきたいくらいの気持ちでやっています。ホロライブ所属のVTuber、角巻わためさんと白上フブキさんが演者として出演してくれているのですが、これも楽しい要素になると思いますよ。お二人の収録に立ち合いましたが、想像をはるかに超える良いものになりました。

▲ホロライブ所属の人気VTuber、角巻わためさんと白上フブキさんが本作に演者として参加!角巻わためさんはなんと主題歌も担当!
——『エトランジュ オーヴァーロード』はアクションアドベンチャーというジャンルですが、新川さんがアクションゲームを手掛けるというのはちょっと意外でした。
新川:ジェムドロップさん、ブロッコリーさんといった新しい座組でやる作品ですから、今までと同じことではなく、新しいことをやっていこうかなと。いこうかなというか、やらないといけないなという気持ちがあるからですね。ジェムドロップさんはアクションも得意ですので、クオリティに関しては心配しなくても大丈夫です。ちなみに、わたしの話をすると、アクションゲームはジャンルとして好きではあるんですけど、難しいなと感じることもあって。そういう意味では苦手なジャンルでもあるんです。そんなわたしのような人が楽しく遊べるアクションゲーム、総合エンターテインメントを目指しているので、ご期待ください!「SUSHIレーン」という独自のシステムをある程度うまく使えばステージをクリアーできるようになっていますし、アクションゲーム好きの方は、SUSHIレーンをほぼ無視してステージをクリアーするというような遊びもできます。決して、簡単なだけのゲームではないということも言っておきたいですね。
——ストーリーは原作に近い形になるのでしょうか。
新川:世界観やストーリーはもちろん似ていますが、表現はやはりゲームならではのものになっていて、会話やストーリーのテンポは全く異なります。小説は地の文が多めですが、ゲームは会話を中心に進んでいきますから、テンポの良い会話劇とストーリーを楽しめると思います。あとは、ネタバレになるので多くは語れませんが、原作にはない展開もあります。『エトランジュ オーヴァーロード』をすでに原作やコミックで楽しんでいただいた方にも、遊んでよかったというような作品になるはずです。
——今日はお会いできて嬉しかったです!そして、変わらずお元気そうでよかったです。
新川:こちらこそ。独立したわたしの自由な心が『エトランジュ オーヴァーロード』に反映されていると思うので、昔のわたしを知っている方は、「自由にやってるなあ」と思いながら楽しんでください。日本一ソフトウェアについては、いきなり辞めたのでいろいろ想像する方もいるかもしれませんが、円満に辞めていますよ。辞めてからも、日本一ソフトウェアのアメリカ法人のアドバイザーをやらせてもらっていますからね。
——最後になんでそんな気になるネタをぶっこんでくるんですか(笑)聞いてはいけないことかと思って、聞きたいのを我慢していたんです。今度詳しく、また別のインタビューで教えてください!
新川:かしこまりました(笑)
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