ゲームを最大限に楽しむ集団・ゴジラインは、全員が(おそらく)”社会人”。
私、浅葉34歳もいろいろ疑われがちですが、一応ですね、家具屋のような、インテリアデザインのようなことをやっています。
中には、朝早くから出社し、満員電車に揺られているメンバーも少なくない。そんな生活は、30歳が近づくと、回復と疲労のバランスをとるのが徐々に難しくなってくる。いかにやりがいのある仕事といえど時折感じる体の疲労は年々強くなり、人として紐づくものが多くなることで予期しないアクシデントも増えていく。全てガマンできるほど、人間はタフではない。
おれ「今週は、『牧場物語 3つの里の大切な友だち』が発売されます!買おう、やろう、みんなで野菜を交換しよう!インターネット通信で交流できるから、安心だね」
ナカジマ「どこから湧いてきた、いつも思うけどメーカーから金もらってんのか?」
おれ「いや、おれといえば”牧場”が似合うゲーマーみたいなところあるでしょ。君たち、都会の喧騒に疲れてないかい?」
ナカジマ「別に。おれこの間沖縄いってきたし」
ミズシナ「あんた今徳島だろ、ゲームじゃなくても、リアルに牧場あるんじゃねえの」
おれ「徳島は都会だから。”そごう”だってあるし、ゆめタウンとかいうでかい商業施設もある。ちなみに、ミズシナさん、このゲームはオシャレもできるんですよ。服とか着替えられる。あ、でもお前の好きなトルネードマートはなかったな、すまん」
ミズシナ「トルネードマートっていいたいだけだろあんた」
おれ「今回の牧場物語は、3つの島があって、南国チックなのもあるっぽい」
ナカジマ「来月はEVO(世界最大規模の格闘ゲーム大会)でアメリカいくしな。おれ自身、ゲームの世界に逃げなくても旅人なわけよ」
風情に疎い男・ナカジマは、この時点でまったく興味を示していない。
いつもならこいつはチョロいはずなのに。
これは大きな誤算だ。
おれ以外の誰かが買うと言い始めないと、ゴジラインのメンバーたちは動かない。
誰か一人、”崩す”必要がある。何か、ウリになる文句を考えなければ。
考えを巡らせようとしたそのとき、弱弱しい声があがった。
大久保ゴジラ「牧場、おれを呼んでいるのか。癒されたい」
おれ「心に闇を抱える哀れな子羊、牧場、呼んでますよ」
大久保ゴジラ「今から予約します。癒されたい」
ナカジマ「疲れてるのかこの人」
何もせずに、心に闇を抱えた男・大久保ゴジラが釣れた。
「婚姻届けで起き攻めされた」、「胃にブラックホールを感じる」などという危うい発言が多い彼も、牧場に来れば、清々しい毎日を取り戻せるはずだ。
おれ「オワジマ、隠さなくてもいい。お前も疲れてるだろ。普段、明るそうにしてるけど、お前は心に闇抱えてる」
ナカジマ「いや、全然」
おれ「仕方ない、お前に、牧場の秘密、教えるわ。よく聞け」
ナカジマ「それだけ聞こう」
おれ「『牧場物語』は、女の子のプレイヤーが多い。つまり、『牧場物語』をやることで、お前の運命のパートナーが見つかるだろう。牧場で作った野菜を持ち寄っている間に、愛が生まれ、リアルで会える。そしてお前は結婚式に、僕たちは『牧場物語』で出会いましたとスピーチし、おれも涙する」
ナカジマ「あんたそれ、『モンハン』買わせるときも、『どうぶつの森』買わせるときも同じようなこと言ってたぞ。このワンパ野郎が」
おれ「お前のようなゲームジャンキーは、ゲームを許容してくれる女の子じゃだめだ。ゲームを一緒に遊んでくれる女の子じゃないと。あと、おれとかが遊びにいって、ゴロゴロ転がりながらキレてても、笑顔で許してくれる女の子。つまり、こういう娘は、”牧場”にいる可能性が高い」
(おれとナカジマが対戦すると、チンパンジー化をどうしても止めることができない。『ストリートファイターZERO2』のバーディ同キャラを対戦しているときは、いつもバーディになりきって必殺技を繰り出すたびに「バーディ!」と叫んでいる)
ナカジマ「信用ならねえ。ちょっと浅葉さんと久保マンが、やりこんでそのこと証明してよ。ファンメールとか来るようになったら、おれも”牧場”行くよ」
おれ「後悔することになるぞ。出遅れたことをな」
ナカジマ「遊んでるの低年齢層も多いだろうから、3つの里と大きなお友達にならないように気をつけろ」
格闘ゲームのやりすぎて、人の心を失った男ナカジマ。
トルネードマートのある世界でしか生きられなくなったミズシナ。
おれと大久保ゴジラは、二人のことを牧場で待ち続けるだろう。
ゴジラインでは、しばらくの間、『牧場物語 3つの里の大切な友達』の記事もお届けしますね。