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22019年9月12日(木)~15日(日)の4日間、幕張メッセで東京ゲームショウ2019――通称”TGS”が開催された。ゲームに携わる様々な企業が出展を行い、何十万人ものゲームファンが来場する、国内最大級のコンピューターゲーム祭典だ。
企業の看板を掲げ、豪華絢爛に飾られた特設ブースでは、最新作のお披露目や体験プレイ、特別ゲストを招いてのステージイベントが行われる。また、近年は巷での”eスポーツ”の話題性も後押しして、格闘ゲームやDCGといった対戦ジャンルのエキシビジョンマッチやガチの大会が、会場の熱気を一段と盛り上げている。
そのTGS初日、“日本ゲーム大賞”のステージイベントが行われた。過去一年間に発売されたゲームの中から、優れた作品を表彰する催しだ。 今回、年間作品部門の大賞に輝いたのは『大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL』。そして優秀賞には『Marvel’s Spider-Man』、『SEKIRO:SHADOWS DIE TWICE』、『Detroit:Become Human』、『JUDGE EYES:死神の遺言』など文句無しの名作が顔を連ねている。名だたる受賞作の中に、ひとつのソーシャルゲームの名があった。
それがスマートフォン用RPG『メギド72』(以下、『メギド』)である。
サービス開始日:2017年12月7日
プラットフォーム:iOS/Android
開発元:メディア・ビジョン 運営元:DeNA
『メギド』のサービス開始は2017年末だが、ソーシャルゲームではリリース日に関係なく話題性の高い作品がノミネートされるようだ。ちなみに、2018年の”日本ゲーム大賞”で優秀賞に選ばれたソーシャルゲームが『Fate/Grand Order』だったと言えば、その敷居の高さが伝わるだろう。
サービス開始当初こそ「度重なる失態によるサービス終了の危機」「運営の宣伝が下手すぎて有志が全力で布教活動を行う」「タイトル画面で主人公とヒロインが号泣しているが、何で泣いてるのかよく分からない」とソシャゲ界隈を騒がせたタイトルだった。だが、ゲームの運営が軌道に乗り、ある種「落ち着いて」からは、時折コアなファンの愛の叫びが聞こえるくらいで、話題に上がることは少なかったように思う。
筆者がこのゲームと出会ったのは偶然だ。ここ最近オススメ記事を書くほど熱狂できるゲームに出会えないなー、スマホも買い換えたし何個かソシャゲやってみるかー、と適当にDLした中の一本でしかなかった(その前に知人から猛烈な勢いで布教を受けたが)。それもここ3か月程度の話で、だからこそ「最近の『メギド』」の話ができるのではないか、と思い、本記事を書くことにした。初期の騒動や問題のことは詳しく知らないので、先輩方には「最近始めたプレイヤーが最近のメギドを楽しく遊んでいる」様子を語っているものだと思って、生暖かく読んで欲しい。一応ストーリーは最新話までクリアしている。
せっかく賞を取ったんだから箔を付けて紹介しよう、と思って書き始めたら文体が固くなってしまったので、適度に力を抜いていきます。どこか抜けているというか、肩肘を張り過ぎないところも「メギド流」だ。
ちなみに、次のページに初心者向けの簡単なゲーム攻略を書いています。「読むのだるい!」とか「今すぐ始めたい!」と思った方は、すぐにゲームをDLして、下の方から次のページに飛んでみてください。
『メギド』は、2017年12月にサービス開始したスマートフォン用RPG。キャッチコピーは「絶望を希望に変えるRPG」。合言葉は「勝算」。開発元はかつて『ワイルドアームズ』シリーズを手がけたメディア・ビジョン。
旧約聖書にも登場する”ソロモン王”と、彼が使役した72柱の悪魔をモチーフにしたゲームだ。プレイヤーは悪魔を使役する指輪を持った半裸で刺青だらけの少年”ソロモン”となり、協力者である悪魔“メギド”達と共に故郷の村から旅立っていく。
本作には、人間(ヴィータ)の世界“ヴァイガルド”、悪魔の世界“メギドラル”、天使の世界“ハルマニア”、という3つの世界が存在する。悪魔は他の世界を侵略したがっていて、もし天使と悪魔の最終戦争”ハルマゲドン”が勃発したら、二つの世界に挟まれた”ヴァイガルド”が戦場になってしまう。あの手この手で侵略行為をはたらく”メギドラル”の野望を阻止して”ヴァイガルド”の平和を守るのが、プレイヤーであるソロモンに課せられた使命なのである。
しかし”メギドラル”も一枚岩ではない。はみ出し者であったり、特別な事情を抱えていたりする者は”メギドラル”を追放され、魂だけの状態で”ヴァイガルド”へ送られる。“追放メギド”と呼ばれる彼ら・彼女らは人間として生を受け、人間として育ち、やがて何らかのきっかけで悪魔だった頃の記憶を取り戻す。今や”ヴァイガルド”の住人になった“追放メギド”こそ、本作でソロモンと共に戦う仲間キャラクターだ。“追放メギド”達は、ソロモンの指輪の力を借りることで、一時的にメギド本来の力を取り戻す。
5人一組のパーティを作り、いくつかのステージで構成されたクエストを攻略してストーリーを進めていく、オーソドックスなスマホRPGだ。
既に本作の虜になっている先輩プレイヤー、通称“モンモン”達が新規プレイヤーを勧誘する際に必ず使う文句がある。
「配布キャラだけで十分遊べるから」。
実際、そうなのだ。現在7章まで実装されているメインストーリーの序盤~中盤で加入するキャラクターが普通に強い。「最強キャラクターランキング」なんてソシャゲでありがちなものを作れば、最上位ランクに入るキャラクターが軽く数人は無料で加入する。「こいつがいればほとんどのクエストがクリアできる」と言われる最強クラスのアタッカーでさえ無料だ。
そういったメインストーリーの重要キャラ以外にも、毎月開催される難易度の低いイベントクエストをクリアすれば既存キャラクターの別性能バージョン(リジェネレイト体)がクリア報酬で加入する。さらにゲーム開始時のガチャは引き直し放題で、目当てのガチャ産キャラが3人は揃えられるから、これで戦力は十分整ってしまう。
じゃあ、どうして課金してまで新しいキャラを引く必要があるのか?
そのきっかけは、無料配布かもしれない。ストーリーで活躍したからかもしれない。無料の石やチケットで、偶然引いたからかもしれない。twitterを流れるゲーム画面のスクリーンショットや、誰かの熱い布教が目に留まったからかもしれない。 経緯はどうあれ――お気に入りのキャラに出会ってしまったからだ。
一度惚れたら最後、ズルズルとメギド沼の底へ引きずり込まれていく。何故そうなってしまうのかについては、『メギド』最大の売りである、遊び応え抜群のバトルシステムに触れるのが早いだろう。
『メギド』のバトルは「コマンドの取り合い」だ。ターンが開始すると、両陣営の間に5つの攻撃コマンド“フォトン”が出現する。フォトンは、攻撃しつつ奥義ゲージを僅かに増加する“アタック”、キャラクターごとに異なる特殊行動ができる“スキル”、攻撃せず奥義ゲージを大きく増加させる“チャージ”の3種類がある。行動させたいキャラクターの上までドラッグし、一つ取れば次は相手が取る、という風に場のフォトンを交互に拾っていく。5個全て取りきると二順目が始まり、合計10回分の行動権を奪い合うことになる。
場のフォトンを全て取り終えると、素早いキャラから「取ったフォトンを下から順番に」使っていく。フォトンは1キャラクターに最大3個積むことができ、全キャラクターに順番が回ると、二順目に入って次のフォトンが使える。キャラクターの行動順は常に表示されているし、取得したフォトンはキャラの頭上に積まれるので、「戦闘開始前に相手の行動が把握できる」というのが本作の戦略性の高さを担う最大の特徴だ。
例えば、相手が1体に「チャージ→チャージ→アタック」とフォトンを3つ積んで奥義を狙うのが見えたとする。ならばこちらはその1体に火力を集中させ、三順目が回る前にそいつを倒してしまえばいい。成功すれば、敵の数が減るだけでなく、3個分のフォトンを無駄遣いさせたことになる。他にも、状態異常の“感電”中はスキルが使用できなくなるから、厄介なスキルを使う相手がいたら、先に動けるキャラで”感電”状態にしてやればいい。本作は状態異常の種類が豊富で、様々な妨害が可能だ。
ランダム性の高い状況で、どのキャラクターにフォトンを回し、どの順番で行動させるべきか――“自軍の理想の行動”を目指すのか、それとも相手の妨害を重視するのか。臨機応変な対応が求められるバトルシステムである。
ここで話が一つ上の項目に戻る。“自軍の理想の行動”というのがキモなのだ。
『メギド』のキャラクターにはレアリティが存在しない。一部排出率の低い特殊キャラは居るが、格別に強いというわけでもない。全てのキャラクターが平等に☆1から始まり、育成すれば最高ランクの☆6に到達できる。ステータスやスキルの強弱はあるが、だいたい”個性”の範疇だと言える。つまり、「好きになったキャラは絶対に使える」ゲームなのである。
筆者の話をしよう。開始直後に引いた(現在開催中のイベントで主役の)“ベヒモス”というメギドがいる。犬だか狼だかに変身するキャラなのだが、妙に気に入って育て始めた。口調はぶっきらぼうで好戦的だが、意外と面倒見がいいし律儀だし投げた物は追いかけてキャッチするし、コワモテに見えて可愛い奴なのだ。
ベヒモスの特徴は、ヒット数が非常に多い通常攻撃である。1ヒットごとの倍率は低いから単体では高いダメージを出せないが、他のメギドの中に「攻撃のヒット時に固定追加ダメージを付与する」というスキルを持ったキャラがいる。1ヒットごとに効果が乗るから、ベヒモスにかければ一度のアタックで莫大なダメージを叩き出せる。「シナジー」というやつだ。筆者はそのサポート役のメギドを持っていない。まだベヒモスの真価を発揮させてやれないのだ。だから「Rアスタロト来てくれー!」と神様とか運営様とかに祈りながら「召喚ッ!」とガチャを回す。
「好きなキャラクターのポテンシャルを最大限に引き出して、バトルで暴れさせてやりたい」。 ここが“沼”のひとつの入り口だ。
ちなみに『メギド』のパーティは、キャラクター5体にそれぞれ、恒常効果と固有コマンドを兼ね備えた“オーブ”を装備させて完成する。全部で10枠、本人を抜けば9枠も“推し”を活躍させる編成を組む余地がある。
メインクエストでは、各ステージごとに普通のRPGならボス級の個性・特殊ギミックを持った敵が待ち構えている。ノーマル、ハード、ベリーハードの三段階の難易度があり、VHはキャラを最高レベルまで育てても突破が難しいくらい敵が強いが、アイテムのドロップ率などクリアの恩恵も大きい。できればVHをクリアしたいが、どのプレイヤーも全てのメギドを持っているわけではない。手持ちの戦力から10枠、メギド5体とオーブ5つ、どうすれば勝てるのか“自軍の理想の動き”を頑張って考え、実戦では相手の行動を妨害しながらランダムに出現するフォトンを選んでいく。
「敵が強い」から攻略法を考える。切り崩す方法を模索する。ただ最高レアの強キャラを横に並べて有利属性にマウントを取れば全部クリアできるというわけではない。スキルが実質1キャラにつき1種類なので、他のスマホ用RPGに比べると1体がやれることは少ない。だからパーティ全体で考える必要がある。
筆者はこれを、カードゲームでデッキを組む感覚に似ていると思った。『メギド72』は、このパーティ編成を考え、キャラを育成することがとても楽しいゲームなのだ。
まだ『メギド』に特別思い入れが無かったプレイ開始直後、よくある「リセマラランキング」的なものを検索して、うへっ、と思わず眉をひそめた。
攻略サイト的な場所に載っているキャラのイラストが、野暮ったいというか、あんまり好みじゃなかったのだ。とは言え、筆者はソシャゲをシナリオ目当てでプレイする人間なので、攻略が楽になるなら…と、出るまでガチャを引き直した。
個人的にここが『メギド』の少し損をしている部分だと思っているのだが――初期に実装されたメギドは☆1のイラストがやや物足りない(最近実装されたメギドは最初からイラストが魅力的だ)。が、進化を重ねるとイラストが豪華になっていくのがソシャゲの常である。『メギド』では、指定されたアイテムを全てプレゼントするとキャラを一段階進化させられるのだが、☆4で一度ポーズが変わり、最大進化の☆6でさらにもう一段階ポーズが変わる。
☆6のイラストはすごい、とてもいい(語彙力の喪失)。
他に候補がいないから仕方なく性能目当てで使っていたキャラを、戦力のために育てていたら、そのうちめっちゃ好きになっていた、ということが『メギド』ではとてもよくある。 上述の通り、本作のバトルは難易度が高く、完全クリアのために見た目が好みじゃないキャラクターを使わざるを得ない場面も出てくる。高難度のステージは死闘だ。最初は「さすがにこの見た目は無いだろう」と思っていたキャラがそうやってギリギリの戦いを制しながら進めていくうち、「蠍パンチめっちゃ格好いい…」ってなる。
『メギド』のシナリオには、独特の味のようなものがある。よく言われているのが、残酷さや容赦の無さだ。人間の世界”ヴァイガルド”は文明レベルが決して高くなく、乾いた荒野や鬱蒼とした森など、うら寂しいロケーションが多い。大地のエネルギー的なフォトンが豊かな地は栄えているが、貧しく暮らしている人々だったり、自分の目的のために他人を利用するような悪党がのさばる世界でもある。それに加え闘争を好む悪魔の干渉や、モンスターにあたる“幻獣”の脅威にさらされている。
とにかく読み応えのある『メギド』のシナリオは、メインストーリー、イベントシナリオ、キャラストーリーの三種類に分類できる。このうち、権謀術数が渦巻く”メギドラル”の脅威にソロモンが立ち向かうメインストーリーが最も異色だったりする。
“追放メギド”は人間として”ヴァイガルド”で産まれ、やがてメギドだった頃の記憶を取り戻し、とあるきっかけでソロモンに呼ばれるまでは自分自身の人生を送っている。メインストーリーで合流してからも、各々の生活があるメギド達はソロモンと別れて行動し、必要に応じて彼の元へ召喚される形を取っている。 メインストーリーは、言わば「ソロモンの物語」だ。しかし、ソロモンの知らない所で、ソロモンと出会う前、あるいはソロモンが知らないメギド達の物語がある。それがメギドを入手すると読めるキャラストーリーや、イベントクエストであり、そこに関わってくるのは”ヴァイガルド”で暮らす、ごく普通の人間達である。
他のソシャゲと比べて、とにかく登場する”モブ”の量が尋常じゃないのだ。
“ヴァイガルド”という過酷な世界があり、元の世界を追われた”追放メギド”達が、ごく普通の人間に混じって生きている。様々な人々の様々な生き様が描かれる。時には”追放メギド”同士の間に思いがけない関係性があったりする。加えて最近は「メインストーリーで過去のイベントやキャラストーリーを回収し始めた」。メインストーリーで登場したメギドのキャラストーリーを読んでみると、その時の心情が分かってエモさが軽く数倍に膨れ上がる。
『メギド』のキャラクターは皆、有名な悪魔の名こそ冠しているものの、丁寧に構築された世界で命を吹き込まれた一人の人間なのである。
コンシューマの最新ハードで発売されたゲームで、グラフィックが綺麗なのにキャラクターのモーションがカクカクしていて、ぎこちなく感じてしまうことは割とよくある。難しい部分なのだろう。ところで下の動画を見て欲しい(音ズレは勘弁してください)。
この“ニバス”は筆者が性能目当てで指名チケットを使ったパーティの主力キャラなのだが、勝利モーションがどこで停止しても絵になりすぎて最高に可愛い。あと、クネクネ腰を振る踊り子みたいな恰好をしたチャンネーの動画も、twitterとかで見たことがある方がいると思う。この辺は特別贅沢に動いている方なのだが、全体的に3Dモデルの出来が良く、ゲーム中のキャラクターに愛嬌を感じられるのもまた、魅力のひとつと言えるだろう。
シナリオテキスト、イラスト、3Dモデルとモーション、様々な角度からのアプローチで一人一人のキャラクターを輝かせているのが、『メギド』というゲームなのだ。だからこそ、外から眺めているだけでは本当の良さに気付けず、逆に一度触れるとズブズブ沈んでいく“沼”のようなコンテンツであり、その真髄を見出した方が居たから本作が優秀賞に選出されたのだろう。
現在、受賞記念キャンペーンでメギドとSSRオーブ確定ガチャチケットが無料配布されている。“沼”に飛び込むなら今だ。フルオートプレイがあるうえ、一度完全攻略したクエストを戦闘無しでクリアできるチケットが簡単に入手できるから、時間拘束もあまり気ならない。
あと最近、イベントをプレイしていると変な歌が流れ始めます。ハイドロボムの歌(曲名:カタチを成す想い)はとにかくぶっとんでてやべえのですが、シトリーのラップでみんなに感謝してるところがめっちゃラップっぽくってすげえと思いました(語彙力の喪失)。
最初に「リセマラランキング」的なサイトで野暮ったい顔を見た時は、うへぇ、ってなった。
☆5.5までは「まあ、悪くはないけど…」と、性能重視で使っていたのだ。
☆6になったらなんかめっちゃ可愛くなったのだ。
彼女がいなければクリアできなかったクエストは数知れず、最大の功労者だ。
マルバスはいいぞ。
なにより、 強くて、可愛くて、性格がいい。
次ページではこれから始める『メギド』攻略を掲載!
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2さいとう
多人数よりも一人用のゲームを好み、体験やストーリーを重視しては無駄にウンウンと頷く。
でも面白ければジャンル問わず何でも触ってみるタイプ。
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