【ゲームレビュー】『アークナイツ』を一か月プレイしたら地獄を見た話

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分類の都合でレビューと書いたけど、これは日記帳みたいなものだ。

ある日偶然出会ったゲームが面白くて、ハマって、楽しんだ。その時の気持ちを忘れないうちに書いておこうと思った。そろそろゲームを始めて二か月が経つ。だから、これは少し前のお話だ。

『アークナイツ』



サービス開始日:2020年1月16日
プラットフォーム:iOS/Android
開発元:Hypergryph 運営元:Yostar

▲『明日方舟』として先行サービス開始した中国版は「大陸版」と呼ばれている。近未来風のデザインと、本作独特の美しく薄暗い色調で、天災と、特殊な力を秘めた鉱石にまつわる、人々が暮らすには過酷な世界が描かれる。

【キャラクターがかわいくて、かっこよかった】

筆者はあまり多くのソーシャルゲーム手を出す方ではない。ただ、外見が気に入ったキャラクターを見かけた時に、リセマラで確保だけして、いつでも鑑賞できるようにしておく、というのをたまにやる。ネット広告でよく見る、ウサミミの女の子のゲーム。『アズールレーン』のYostarが運営する中国製ソシャゲ。“局部壊死”とかいう物騒な章題でSNS界隈をざわつかせた。『アークナイツ』に触れる前の認識はその程度だった。

きっかけは、ツイッターの広告に映ってたキャラの見た目が、めちゃくちゃ好みだったからだ。ここが良い、とかではなく、どこか一か所違ったら刺さらなかったかもしれない、完成度がどストライクだった。しかも丁度良く(広告に出ているのだから当然だが)ピックアップガチャを開催中。アプリをダウンロードするには十分な理由だ。

▲後にその”チェン”という名前のキャラが、ウサミミの子とイラストレーターが同じで、第二の主人公とも呼べる超重要キャラだと知る。いや、どこがと言わず、全部ぶっ刺さったんですよ。

 

【ゲームが普通にめっちゃ面白かった】

『アークナイツ』のバトルは、正統派のタワーディフェンスだ。敵の大群が味方の”拠点”を目指して進行してくる。敵が”拠点”に侵入するたびライフが減っていき、ゼロになったら敗北する。プレイヤーは、四角いマスに味方キャラ(オペレーター)を配置して、敵の進行を妨害できる。一人のキャラがブロックできる数は決まっているから、新しい敵が来る前に攻撃で数を減らしていく。味方の配置には、時間経過で増加していくコストを消費して、強いキャラほどコストも高い。

攻撃力が高い前衛、防御力とブロック数に優れた重装、遠距離と空中の敵に対応できる狙撃と術師、など役割を持ったキャラを最大12人編成して、ステージに挑む。キャラは、コストやステータスだけでなく、常時発動のパッシブ能力やゲージを貯めて発動するスキルの効果に個性があり、ステージに合わせて使い分けていく。今どき珍しいほど“普通”のルールだ。

▲ステージには地上と高台があって、狙撃や術師のような遠距離キャラは高台にしか置けない。まずは地上ルートを重装で固め、高台から遠距離キャラの高火力を浴びせるのがセオリー。

正方形のマスで区切られたステージの構成は、かなりシンプル。美麗なイラストのキャラクターも、バトル画面ではSDにデフォルメされる。「中国製だから超絶クオリティが高いだろう」などと勝手な幻想を抱いていたから、正直な話、最初の印象は「画面がショボい」だった。

しかし、基本ルールが分かりやすく、ステージがシンプルだからこそ、サクサク進める楽しさがあった。事前に敵の進行ルートが表示され、先読みでキャラを配置できる。こういうパズル的なゲームは製作者からの出題だと思っていて、クリアした時に「してやったり」「おれは頭がいい」とドヤるのが、気分がいい。そんな感じでプレイを進めるうち、最初のマイナスイメージが逆転していった。

ステージ構成・難易度調整が絶妙なのだ。基本ルールが単純なぶん、厄介な特性を持った敵のバリエーションで勝負を仕掛けてくる。こちらとしては、まずキャラクターを育成したいから、経験値が美味しい”曜日クエスト”の最高効率ステージのクリアを目指す。すると、必然的に低レベルでの攻略になるから難易度も上がってしまう。そこで試行錯誤しながら何度も挑戦するのだが、本作は敵の進行に関してランダム要素がない。一部のボス以外、必ず同じルート、同じ順番で敵が現れる。味方のスキルもランダム性があるのはごく一部で、だから毎回同じ条件で再挑戦できるのだ。失敗しても減るスタミナはほんの僅かだし、毎日30枚まで回復する”演習チケット”を使えばタダで練習ができる。

▲ゲームが進むにつれ、特殊なギミックを持つ敵や、セオリーが通用しないステージが増えてくる。画像はイベントの後半ステージだが、大量の飛行ドローンを迎撃しつつ、地上も守る必要がある。

タワーディフェンスがそういうジャンルなのだけど、「すごく誠実なゲームだな」と思った。ステージの製作者がフェアに勝負を挑んでくる。プレイヤーの努力を裏切らない。(一部のボス以外)運が絡まない。編成のバランス、配置する順番、キャラの向き、スキルを発動するタイミング……戦局を変える要素は膨大で、頭を使ったぶんは必ず“手ごたえ”になって返ってくる。ステージの見た目がシンプルなのは、操作に対するレスポンスの良さと引き換えだ。本当に難しいステージでは、0.何秒のタイミングが勝敗に影響することがある。むずい。

高台を優先的に狙う敵だったり、隣接するマスに範囲攻撃を飛ばす敵だったり、味方のブロックをすり抜けたり、特殊な敵が増えてくるとセオリー通りにはいかなくなる。メインストーリーは現在6章まで実装されているが、4章の時点で既に「めっちゃムズいんだが!」と悲鳴を上げていた記憶がある。でも心配ない、ネットで検索すればステージの攻略動画が上がっていて、その通りにプレイすれば絶対にクリアできるからだ。…はい、筆者、結構カンニングしました。

ちなみに、本作ではフレンドのサポートを借りずに完全クリアすると、次からその時の操作を再現するオートプレイが解禁される。また、倍速機能があるので、快適なステージ周回が可能だ。だが、ここに落とし穴がある。0.何秒単位のタイミングでクリアすると、倍速をかけたオートプレイが安定しないのだ。「美味しい素材がドロップするステージを頑張ってクリアしたね? じゃあ次は、オートが安定する手順を探そうか」という流れになる。どちらかと言えば、こっちの方が本番だ。そう、一粒でニ、三回もの達成感が味わえるゲームなのだ(オート失敗して頭を抱えながら)。

『アークナイツ』のバトル画面は確かにショボい。だけど、それと引き換えに得られるゲームプレイが、めっちゃ面白かったのだ。

▲低レベルなのに急いで挑戦するから激ムズになるだけで、ステージの推奨レベルまでキャラが育っていれば適度な歯ごたえを楽しめる。中には400体もの敵を迎え撃つチャレンジステージもある。

 

【シナリオもめっちゃ良かった】

『アークナイツ』の魅力のひとつに、独特な世界観がある。まず、舞台が現代の地球ではない。動物の耳や鬼みたいな角を持った種族が暮らす惑星で、源石(オリジニウム)という特殊な鉱石が主要なエネルギー源になっている。鉱石を組み込んだ武器の使用者や、鉱石の力を体内に宿した者は”アーツ”という魔法を行使できる――と、ここまでは割とよくある設定だ。

本作の特徴は、体内に魔法の力を得ることが“鉱石に感染する病気”として扱われている点だ。源石に感染すると、内臓が侵され、皮膚に源石が露出し、最終的には死に至る(感染者の資料では臓器の輪郭についてよく言及される)。治療法は発見されていない。また、感染者の死体は、それ自体が鉱石病をまき散らす感染源となってしまう。野垂れ死ぬことすら周囲に危険を及ぼすため、鉱石病と判明した時点で社会から隔離されるか、人々から迫害の対象にされる。

▲移動都市の住民には当然、貧富の差もある。聖書の洪水そのものではないが、解決策のない危機におびやかされ、大地も、人々の心も荒んだ世界は破滅に瀕している。

また、”天災”と呼ばれる激しい自然災害が各地で頻発していて、天災の跡には源石が残されていく。人々はこの天災から逃れるために、要塞のような”移動都市”の上で生活している。ゲームタイトルにある”アーク”とは、旧約聖書で大洪水から逃れるために作られた”ノアの箱舟”のことで、この移動都市もモチーフのひとつ…と考えられる。

プレイヤーの分身は「ドクター(博士)」と呼ばれる製薬会社の研究者だ。とある移動都市で本作のヒロイン”アーミヤ”に救出されるが、記憶喪失になっていて、戦闘の指揮能力以外の知識を持たない。前述のように、『アークナイツ』の世界観の中心は“病気”である。そこでプレイヤーが所属する組織が”ロドスアイランド”という製薬会社なのがユニークだ。表向きは鉱石病の治療薬を開発する会社だが、実際は源石に関係するトラブルをまとめて請け負う組織で、暴れる感染者がいると聞けば”基地”である移動要塞で乗り込み武力で解決する。設定の時点でかなりぶっ飛んでいる。

▲記憶喪失のドクターを導くのが、ヒロインのアーミヤ。CEO(最高経営責任者)の愛称で呼ばれている。中国語版の口調が原因でブラック企業ネタでいじられる。でも実際にドクターが休んでいると「終わってない仕事があるからまだ休んじゃだめですよ」と圧をかけてくる。こわい。

メインストーリーでは、クーデターを起こした感染者の組織”レユニオン”との対決が描かれていく。物語の中心には常に感染者の境遇がある。差別や偏見、本来救うべき感染者と戦わなければいけないジレンマ、主義主張のぶつかり合い。海外のゲームだからだと思うのだが、全体的にセリフ回しが固く、淡々というか理屈っぽく生真面目すぎる印象を受ける。表示できる文字量も多いから、翻訳小説を読んでいる感覚に近い。

だが、国産のゲームと違ってその場のテンションや言葉遊びやパロディが少ないぶん、物語やキャラクターそのものが持つ魅力が深いところまで伝わってくる。素材が持つ本来の味で勝負してくる。スケールは大きいから、軍事的な話とか、政治の話とか、悲惨な境遇や心情とか、小難しい話が出てくると、この堅苦しいテキストが実に”雰囲気に合っている”のだ。悪の親玉を倒せば世界が平和になる、みたいな解決策が一切見えないため、こういう救いのなさは、日本のゲームにはない、かなり新鮮な感覚を味わえる。

▲全ての感染者を扱うロドス製薬会社は、その性質上、収容した感染者を組織の一員として雇ったり、他の組織から応援が駆けつけてきたりする。後方部隊から前線への移動という形もあり、本作のガチャは”雇用”という形式になっている。

『アークナイツ』は人を選ぶゲームだ。とこの後も何度か言うと思う。難しいタワーディフェンスの時点で合わない人はいるし、この翻訳テキストが苦手な人も多いはずだ。逆に、刺さる人にはとことん刺さる。重厚なシナリオをゲームに求める人なら、きっと期待に応えてくれるだろう。

…ちなみに、全てのソシャゲの宿命だが、序盤のシナリオはあまり出来が良くない。本格的に面白くなるのは本編5章以降で、物語が大きく動いた最新の6章はすごくエモかった。

筆者も本編の序盤で挫折して、以後はスキップしていたのだが、当時開催されていた半年遅れの正月イベント『洪炉示歳』を読んだらめっちゃくちゃ面白くて、そこからハマった。なのでイベントから入るのがオススメ…と言いたいのだが、本記事公開時に行われている『ウルサスの子供たち』は洒落にならないくらい重いので、気をつけて欲しい。

これはゲーム部分が面白いから言えるのだが…本作の設定は本編だけ読んでいては気づかないものが多く、そもそも上に書いた世界観さえ公式サイトを見ないと全体像が掴めない。たぶん、自分から深く潜ろうとしないと見えないものが多いゲームなのだ。

プレイヤーは自分の好みに合わせて、”近未来が舞台のサバゲ風コスプレエモミミ美少女タワーディフェンス”として遊ぶこともできるし、散りばめられた設定を読み込んで奥深い世界について考察することもできる。物語が好きなコアゲーマーの欲求を揺さぶりつつ、ちゃんと応えてくれる懐の深い作品だ。

▲キャラの親密度が上がると新しい側面が見られるのはソシャゲのお約束だが、解禁される情報量が多いうえ、その記録は断片的。ドクターの過去さえ清廉潔白なのか怪しいものだ。本編だけでは把握できない世界観の全容を、脇道に散りばめられた断片から読み取っていく形式は、コンシューマの『ソウル』シリーズに似ている。

ところで、本作の特徴のひとつに、”殺伐で荒廃した雰囲気”がある。災害や戦場、不治の病が主題にあるため、死の影が常にどこかに付きまとっている。バトル以外のBGMは全体的に落ち着いていて、どこか末期的な静けさを覚える。そんな中、後述する”基地システム”では、部署に配属したキャラに触れるとハイタッチできるのだが、その時のセリフが、なんだか優しいのだ。

外は物騒だし、さまざまな問題が山積みの厳しい世界だけど、医療に携わるロドスやドクターの周辺には、確かな優しさが感じられる。そういう、やっぱり珍しい雰囲気のゲームだ。

▲ドクターの正体も謎に包まれているが、キャラクターとのやり取りから、バブみを感じたらオギャり、基地のあちこちで奇行に走る、わりと自由な性格であることが伝わってくる。

【効率を求めるリソース管理が面白い】

『アークナイツ』はかなり人を選ぶゲームだ。理由のひとつに、“スタミナの自然回復がめちゃくちゃ遅い”という特徴がある。そのうえ、スタミナ回復アイテムが貴重。薬だから使用期限が短い。

スタミナドリンクをがぶ飲みして素材クエストを全力で周回する、みたいなプレイをするには、ガチャ用の石を割らなきゃいけない。オートプレイの代わりにステージのスキップ機能はないから、一日のプレイ時間が少なく済むのは、忙しい人に優しい仕様なのかもしれない。

そこで周回の代わりに用意されているリソース集めの手段が”基地”システムだ。プレイヤーは手に入れた建築材を使って基地を拡張したり、アイテムを作る製造所や通貨”龍門幣(ろんめんへい)”を獲得できる貿易所などの施設を建造し、自由に配置できる。

この基地の収入がバカにならない。基本的には製造所で純金を生産し、貿易所で龍門幣と交換する。余った製造所で経験値アイテムにあてるのがセオリーで、ステージを周回する代わりに、基地から自動で生産されるアイテムで補給しろというわけだ。

▲基地の施設は自由に配置できる。スペースは限られていて、配分はプレイヤー次第。キャラの疲労を回復する宿舎は家具を置いてカスタマイズでき、フレンドの基地を訪問するシステムもあるから、オサレな部屋を作れば人にドヤれる。

本作の通貨、”龍門幣”の価値は計り知れない。レベル上げ、素材の加工、あらゆる場面で要求される。それに比べて、素材クエストで消費する本作のスタミナ”理性”の量はあまりに多い。筆者のレベルだと最大126で一回30消費、得られる通貨は7500。ちなみにキャラの進化に18万使う。レベル上げにもっと使う。『アークナイツ』はキャラの育成こそがメインコンテンツだ。遊び続ける限り、リソース不足に悩まされる。

筆者が以前プレイした某ゲームでは、オタクがキャラの魅力を長文で語る「怪文書」という文化があった。スタミナ消費がとにかく大事なこの『アークナイツ』では、龍門幣やアイテム一個につき、どうプレイすれば効率良くスタミナを消費できるのか、大陸版のユーザーが確率から検証した「論文」の翻訳が回ってくる。

『信長の野望』や『Civilization』などの戦略ゲームで、自分の領地が豊かになることに幸せを感じる「内政屋」と呼ばれる気質のゲーマーがいる。『アークナイツ』は徹底したリソース管理ゲーだ。スタミナ回復の窮屈さが合わない人は多い。一日に何度か基地をチェックして、生産品を回収するのが面倒な人もいるだろう。

だから人を選ぶのだが…少し時間が経つと生産が終わっていて、基地をポチッとタップすれば素材や金が増えている。それで、ほんのちょっぴり幸せな気分になる。理性は回復してないけど、基地の生産品がありそうだから、またゲームを起動してみる。「内政屋」気質のオタクにとっては天国みたいなゲームなのだ。

▲画像はキャラ進化時の要求素材。ちなみにスタミナ消費の効率では、龍門幣ステージが最高で、経験値ステージはあまり良くない。「そんなの知らねえ、数日後じゃなくて今進化させたいんだよ!」と、ガチャ用の石を齧(かじ)らなきゃいけない時もある。仕方ないのだ、だって理性が無いんだから。

また、本作ではフレンドポイント(FP)が尋常じゃなく重い。毎日ラインナップが変わる”購買部”でアイテムを購入できるのだが、1個につき理性30の価値がある育成アイテムがポンポン並ぶ。改めて言うが、筆者はいま最大126だ。FPは他のゲーム同様、サポートが他の人に使われると手に入るが、ごく僅かだ。家具を置いて基地の快適度を上げると、入手量が一気に増える。”手がかり”というシステムがあり、7種類全部集めるとFPが大量に獲得できる”情報共有”が行える。また、情報共有中のフレンドを尋ねることでもFPが獲得でき、”手がかり”をフレンドに譲ってもFPが貰える。

“効率”のため、友情すら活用し、細かい努力を積み重ね、スタミナの少なさを補べく収入を増やしていく。これは、そういうゲームでもある。

▲7種類の”手がかり”は、入手しやすさが違う。特に4番が足りない。みんな4番を持ってない。運良く4番を手に入れた時、フレンドに「恩を売っておく」か「自分のために使う」か、”効率”が問われる。なお、恩を売る場合は「覚えてもらいやすい名前」にするのが効率を上げるテクニックだ。

【ある日、地獄がやってきた】

本題に入ろう。

筆者は初期投資にこだわるタイプだ。最初にまとめて苦労をして、残りを楽に進めるのが好きだ。『ドラクエ』でカジノのある町についたら”グリンガムのムチ”が取れるまでスロットを回す。だから、キャラの育成より基地の拡張を優先し、効率を重視してイベント限定ステージの育成素材や、龍門幣ばかり稼いでいた。

それから、ソシャゲでは強キャラ厨だ。最高レアの中で特に強いキャラを狙ってガチャを回し、他の下位キャラは育てないタイプだ。ちなみに、レア度の高いキャラは育成コストが高く、☆6キャラ一人を最大まで育てるあいだに、☆4キャラを3人くらい育てられる。『アークナイツ』のプレイを始めてからだいたい一か月。そうやって序盤に引いた☆6のキャラをゆるゆると育てている時に、そのイベントはやってきた。

“危機契約#0”

簡単に言えば、本作のエンドコンテンツに相当する超高難易度イベントである。

開催期間は2週間。常設1個と、日替わりで7種類のステージが実装される。

普通にステージをクリアするのは簡単だった。本編を5章までクリアした戦力があれば余裕。だけど、ただクリアすることに価値はない。『危機契約』というイベント最大の特徴が、プレイヤーが自分で縛りを作り、ステージの難易度を上げられることだからだ。難しくすればするほど、クリア時の報酬が増えていく。

契約の内容は一日ごとに変化する。敵の攻撃力や移動速度の増加、遠距離キャラに察知されないステルス能力の付与、HPや攻撃力半減など味方の弱体化、編成人数の減少、特定の職業使用不可、等々。契約の数を増やすと”等級”が上がり、同じ内容でもハンデが大きくなるほど1個の契約で得られる等級は増えていく。つまり、初心者でも上級者でも変わらず、自分の身の丈に合った難易度のゲームを楽しむことができる。

そんなことはなかった。

等級を上げてクリアすればポイントが貰える。そのポイントは特設ショップでアイテムと交換できた。ショップの品揃えがくっそ豪華だったのだ。本作はリソース管理との戦いだ。報酬が美味しい、ただそれだけで、頑張ってクリアを目指す理由になる。日替わりステージの最高報酬は8等級で、4等級と8等級にそれぞれ特別報酬が用意されていた。こんなの4か8を目標にするしかないじゃないか。

日本版は大陸版より半年ぶん遅い。だからステージ内容は既にバレているし、全ステージの攻略動画がネットに上がっていた。しかし、『アークナイツ』で需要がある攻略動画は、プレイヤーのガチャ運に左右されにくい☆4以下の”低レア縛り”だ。筆者は強キャラ厨で、似た性能の低レアは育てないタイプだった。Youtubeで攻略動画を見てみる。育ててないキャラしかいねえ。ツイッター公式アカウントへのリプライに貼られている攻略編成を見てみる。その最強キャラ持ってねえそのレベルまで育ってねえ。参考にならない。

ただ、手持ちの高レアキャラはある程度(平均昇進1Lv40)まで育てていたから、頑張れば、もしかしたらクリアできそうだった。危機契約のステージはなんと”理性”を消費しない。期間中は何度でも遊び放題なのだ。やさしい。報酬の最大は8等級だが、契約の数はそれより多く、好きな組み合わせで制限を課せた。ひとつ付け替えただけで戦略は大きく変わる。つまり選択肢が多すぎるのだ。地獄の始まりだった

▲ここは防御デバフを使う遠距離攻撃持ちの敵が大群で来るステージで、左の高台に射程の長い狙撃を置くのが正攻法だった。契約のせいで配置不可になっている。

朝、早めに起きる。日替わりステージが更新されている。挑戦する。失敗。編成を変える。4等級は余裕。契約内容を変える。失敗。配置場所や、スキルの発動タイミングを変えてみる。7等級まで行ける。もうひと押し。契約の種類を全部見直してみる。改めて編成や配置を変えてみる。クリア動画は見られるから、それを参考に、自分の手持ちに合わせてどうアレンジすれば突破できるか考える。同じステージはもう一度回ってくる。一回目は4等級が限界だった、次は8等級を目指せ。猶予は一週間。足りないキャラを探せ、育てろ。進化させる余裕は無い、スタミナ回復に使う石は無い、可能な範囲で回答を探せ。二個目の目覚ましが鳴る、時間切れだ。夜にまた試せ。

▲ここは右上から”時間経過でHPが減少する代わりに超強化されるマス”を踏んだ敵が降りてくるから、減速させるキャラで自滅を狙うか、強化マスの手前で止めるのが正攻法だった。契約のせいで編成人数は4人。小細工してる場合じゃない、合流地点で焼き払え!

これが2週間続いた。

正直な話、めちゃくちゃ楽しかった

フレンドのサポートを使えるのが大きくて、自分が持っていない最強クラスのキャラを借りれば8等級に届くステージが出てきた。マジできついのだけど、頑張って考えればギリギリでクリアできる。8等級でクリアできた時の達成感がハンパない。何度フレンドに感謝しながらクリア編成のスクショをツイッターに上げてドヤったか覚えてない。それは2週間続く毎朝の地獄だったけど、考えすぎて脳内麻薬がドバドバ出てたかもしれないけど、考えて考え抜いて、地獄を乗り越えた時は本当に嬉しかったのだ。

▲クリア画面。右下にいる、フレンドから借りたエイヤフィヤトラというキャラが特に強い。友達のエイヤ。とーもーだーちーのーエーイーヤー!8等級をクリアした時に毎回叫んでた気がする。

最後にゲームの参考になるよう、常設ステージの攻略動画を載せてみる。常設は20等級以上乗せられるのだけど、自分は8が限界だった。

ここは上下2ルートがあり、上には炎のダメージ床が設置されている。まずは下を先鋒と治療で塞ぎ、コストを回収しながら序盤をしのぐ。敵を押し出す特殊キャラを配置して、下ルートの敵を上へ追いやり、地形ダメージで処理する。上ルートに防御力の高い敵が来るから、燃える床の手前に重装を置き、地形ダメージを与え続ける。黒いバクダン虫は倒すと爆発して周囲に大ダメージを与える、後半で特殊キャラのスキル回転が爆発に間に合わなくなるから、序盤で回収したキャラを出してバクダン虫を手前で止める。みたいな戦略だ。編成は高レアが多いのだが、レベルが低いので、育った低レアキャラでも同じ動きは可能だ。

プレイを始めて、だいたい一か月と2週間。この辺でなんとなく理解した。このゲームは三か月に一度来る、天災みたいなこの”危機契約”イベントに備えて育成を進めるのが目的で、育成を頑張ったぶんだけ、ここの報酬で使った素材が返ってくるのだと。それが一番”効率”がいいはずだ。次は全部のデイリーで8等級を取ってやる。

『アークナイツ』は、合わない人には合わない代わりに、好きな人にはぶっ刺さるタイプのゲームだ。これは筆者がプレイしてめっちゃ楽しかった、という話なのだが、もしこの記事を読んで興味を持ったら試しに遊んでみてほしい。本作には”月パス”という課金要素があり、購入すると毎日ガチャ石とスタミナ回復アイテムが支給される。これが破格にお得で、逆にこれを買わないとゲーム進行に大きなハンデを背負ってしまう。毎月の610円を惜しまなければ、ぶっ刺さるゲーム体験を楽しめる…かもしれない。

これから始めれば、次の危機契約まで時間がある。たっぷり準備をして、開発からの挑戦に立ち向っていけるだろう。

フレンドは大切に。

※次ページでは恒例のこれから始める『アークナイツ』攻略を掲載。始める人はリセマラだけでも読んでみてください。

 →「一年後にもう一度アークナイツをレビューしてみた」記事はこちら

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さいとう

ゴジラインの座布団運び兼格闘ゲーム中級者枠。
多人数よりも一人用のゲームを好み、体験やストーリーを重視しては無駄にウンウンと頷く。
でも面白ければジャンル問わず何でも触ってみるタイプ。

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