『しあわせ荘の管理人さん。』を購入し、3日かけて2キャラクリアー(恋人エンド)した浅葉です。残すはあと1キャラクター、そろそろこのゲームについて語ってもいい権利を得た頃合いではないでしょうか。
もともと本作はプレイステーションVR対応ソフトとして予定されていたのですが、発売前になって突如VR非対応、もしかしたら後日対応するかもしれないという発表が飛んできたソフトです。そんな事情もあり、本作は発売前から「完全体」ではないことが明らかになっているため、このソフトに純粋な「楽しさ」を求めて挑んでいるプレイヤーは少ないかもしれません。しかし、私のように、その奇天烈さや、チャレンジコンテンツとしての価値を見出すゲーマーからすると、「遊んだことを語りたい」ゲームであることはまちがいないのです。
発売日:2018年1月11日
プラットフォーム:プレイステーション4
ジャンル:アドベンチャー
価格:パッケージ7800円+税、ダウンロード7500円+税
D3 PUBLISHER
今回の記事では、『夏色ハイスクル』をトロフィーコンプリートしているギャルゲーマーであり、ちょっとしたディースリーパブリッシャー通である私が、本作のプレイレポートをお届けします。
プレイヤーは、管理人として、しあわせ荘なる施設で90日間働くことになります。90日の間、しあわせ荘の掃除したり、設備を充実させたりしつつ、女の子たちと交流し、好感度を高めていくわけですね。
しあわせ荘にはヒロインの女の子が3人居住していますが、ちょっと放っておくと、廊下にゴミが落ちていたり、蜘蛛の巣が張っていたり、椅子が倒れたりしています。3人のヒロインのうち、誰かが「やっている」と考えるとミステリ的な楽しみ方ができるかも知れませんが、その答えは最後まで明かされません。この3人以外にも住人がいるのかもしれませんね。
●3人の魅力的なヒロイン
発表された時は濃ゆい、今風ではない、どの層を狙ったのかわからないなどの酷評も見られた本作のヒロインたちですが、いざ相対してみるとみんなそれぞれに可愛いです。モデリングは決して悪くないし、唇や目の質感もとても良いです。しかも、おれが最初に攻略対象として選んだ、橘・バルバラ・クリスティーネちゃんは、声優が釘宮理恵さんなんだぜ!
この手の3Dを使ったギャルゲーでは珍しいピンクの髪がキュートな竹山日真里ちゃんも、自分のことを「ヒマちゃん」とか言ってきてとても可愛いです。アニメや漫画などを趣味にしているオタクガールかつ、独特のファッション、それでいて肝心なところで外さない恥じらいの精神。一見チョロいと思っていたこのヒロインは、攻略がなかなか大変でした。
黒髪のお嬢様である桜井静香さんは、声優さんが『CLANNAD』の渚役として俺の中で神声優認定がされている、中原麻衣さんです。一見、スタンダードなお嬢様キャラクターと思いきや、酔っ払うイベントなどでガンガン攻めてきます。
余談ですが、本作の主題歌はヒロインを演じた三人の神声優さんたちが歌っておられますので、文句なしの神主題歌となっております。
主人公の元には、毎日チャリチャリとお金が入ってくるので、それを使ってしあわせ荘の「充実度」を高めるためのお買い物をすることになります。殺風景な廊下を華やかにするために、サボテンや絵画を買ったり、ジムにバランスボールやダンベルを買ったりするんですね。そして、それを見た女の子たちは気分を良くし、主人公への信頼度ももりもり上がっていくという寸法です。
そして、しあわせ荘の住人さんたちは、親御さんから預かった大事な娘さんたちですから、管理人として、彼女たちの「安全」にもこだわらなければいけません。プールや廊下、ジムに監視カメラを仕掛けて、不審者たちから彼女たちを守ります。いえいえ、これだけでは不十分ですから、更衣室にもカメラを仕掛けますし、彼女たちの不在を見計らって部屋にも監視カメラを仕掛けます。30代後半のゲーマーは、これ『臭作』やんけ!と思うかも知れませんが、本作のCEROはDでございます。
また、「ブラー」という便利アイテムを使うことで、管理人業務を少しだけ円滑に進めたり(掃除をさくっと終わらせてくれる等)、ヒロインたちの下着姿を眺めたりすることができます。このブラーについては、中盤以降、余るくらい作れるので、ケチらずにもりもり使うことができました。ヒロインの心を読んだりするブラーなどもあるのですが、この要素自体が「攻略」の本筋から少し外れているのは寂しい限り。プレイに慣れてくるころには、お掃除ブラーくらいしか使わなくなっていました。
以上が、このゲームのざっくりとした説明ですが、プレイヤーは90日間、この業務をこなすことになります。1日に実行できるコマンド数は6つ、だいたい1日プレイするのに10分くらいはかかります。長めのイベントが発生するともっとかかります。普通にプレイすると、クリアーするまでは15時間〜20時間くらいかかります。某ゲーム雑誌のメーカーアンケートによると、1キャラクターにかかるプレイ時間が5~6時間となっていましたが、おれのプレイ方法では15時間くらいかかります。なぜだ!開発者がプレイしていない説と、おれがプレイ効率をあげる方法論を知らない説、どちらが正しいのでしょう。
このゲームはVR対応を急遽とりやめたのか、危うい部分がたくさんあります。突如ヒロインがラブ・デラックスを発動して、髪の毛が画面のこちら側にいるプレイヤーを目掛け襲いかかってきたり、ヒロインから突如繰り出されるクイズに正解してしまうと、同じセリフがループして進行不能になる助けてくれ岡部倫太郎的なイベントなど、予想外の挙動が頻出します。頻出しすぎて、一人目のヒロインをクリアーする頃には、これらの挙動がプレイヤーにとってはもはや当たり前のことになっており、もはや違和感すら感じなくなってきます。
あとは、プレイした方ならわかると思いますが、テンポの悪さも壊滅的です。オンラインゲームなどを含め、数々の作業ゲーに向き合ってきたおれも、そのテンポの悪さと単調さになかなかしんどさを感じています。もともとVR対応として作っていた部分が、作品のテンポを著しく落としており、とにかく時間がかかるのです。プレイヤーの会話時間を考慮した間などは、かなりストレスを感じます。選択肢やオブジェクトを選ぶ際に「アイコンの上にポインターを一定時間置く」といった操作が要求されるのですが、この部分だけでももうちょっと素早い決定方法が用意されていれば随分違う気がします。
さらに、本作は、ギャルゲーのセオリーっぽく1キャラ集中型では、ヒロインたちの恋人エンドにたどり着けない仕様らしく、だらけたプレイを許してくれません。おれは一周目で見事にこのトラップにかかり「ノーマルエンド」を見ることになりました。このややシビアなゲーム難度については、D3のゲームではよくあることなのですが、親切機能としてついている「オートセーブ」がなかなか曲者で、快適なやり直しを阻害してきます。本作のオートセーブは、使用中のセーブデータに自動で最新の進行状況を上書きするというものなので、かなり細かくデータを分けていないと、やり直すことすらできないのです。俺のような悲劇の管理人を生まないよう、以下にざっくりとした自分流の攻略を掲載しておきます。
2018.1.15日版
・ヒロインの恋人エンディングは目当てのヒロインの「信頼度100」だけでは達成できないので、他のヒロインの「信頼度」も最低50くらいまではあげる。施設の充実度はなるべく高い位置を目指す。
・他のヒロインの充実度は70以下くらいが目安。「お誘い」系は、目当てのヒロインのみクリアーする。
・施設の充実度は、とにかく「高いもの」を置くことで上昇させる。序盤は安いもので運用し、後半一気に付け替える。
・40日をすぎたあたりからお金が余り始めるので、「懸賞」に複数口応募する。(1位、2位同時当選狙い)
・懸賞で得た「最新」、「ハイテク」アイテムを設置し、さらに充実度を高めていく。
・リターンのブラーを複数所持する。ヒロインとの会話で、好感度が低下する音がしたら即リターンを使ってやり直す。
・進行不能バグに遭遇した際は、リターンして別の選択肢を選んで回避
・恋人エンディングをミスったときのために、70日くらいからこまめにセーブデータを分ける。
以上のことを守れば、まず目当てのヒロインの恋人エンディングにいけるはず。
いろいろなゲームメディアなどを徘徊してみたのですが、本作をクリアーしたうえで書かれた形跡のあるプレイレポートはほとんど発見できませんでした。攻略についても全く役に立ちません。ゲームのだめなところはオブラートに包むのがゲームライターやゲームメディアの常識だったりもしますが、この作品はそういう問題以前に、そもそもエアプ記事が横行しているような気配すら感じます。RPGやアクションならまだしも、アドベンチャーゲームは最後まで遊ばないと、レビューなんてできません。プレイレポートを書く場合は、1キャラクター分のクリア証明を画像を貼るというレギュレーションを課してほしいですね(真顔)。
そもそもデバッグしたのだろうかと思うクオリティなので、アプデではなにとぞスキップモードの実装か、90日間の管理人生活を30日にしていただくことをお祈り申し上げます。
作品の全体的な出来栄えについては、「D3 PUBLISHERのギャルゲーである」ということを考えれば、だいたい予想の範疇です。本作が7500円であることや、VRに対応できなかったことなどは、このメーカーならありうるダイナミックな三振のようなものなのです。しかし、そのダイナミックな三振は、あまりに豪快すぎて、ある属性の人たちを引きつけてしまうのです。あの三振は凄かったと語りたいがために、本作を遊んでいるという方も多いのではないでしょうか。『地球防衛軍』が面白かったから、プラマイゼロ!
個人的には、本作のところどころから感じるD3 PUBLISHER的な無茶苦茶さは嫌いではありません。救いようのないモブキャラクターを入れることで、「お前たちが遊んでいるのはこういうゲームなんだぞ」ということをプレイヤーにわからせようとする男気のあるゲーム性や、ギャルゲーとは思えないシビアな難度や膨大な作業量などは、このメーカーのギャルゲーの「持ち味」です。おれ自身、D3 PUBLISHERのギャルゲーの思い出の多くは、その作業量に紐付いていて、本作もついついトロフィーコンプリートを目指そうとしています。そうすると膨大な作業が立ちはだかり、それに成し遂げるための「攻略」を模索するという楽しみがいつもあるのです。(本作の場合は、1つのセーブデータをうまく切り分けることで、複数エンディングが見られることが判明したので、この方向で、トロフィーコンプリートを進めたいと思っています。)
おれは、このゲームを人に薦めたりはしませんが、1キャラでもクリアーした人となら、楽しく、笑い転げるような話ができると思います。そしてそこで言いあうでしょう、「『しあわせ荘』、そんなに嫌いじゃないよ」と。ギャラリーモードなどは実際、VRで出していれば楽しいだろうなあと思う要素なので、こちらは今後万が一あるかもしれないアップデートに期待です。本編については、VR対応してしまうと、15時間VRの装置をかぶりっぱなしに挑戦するプレイヤーが出てきてしまう可能性があるので、未対応で良いかと思いました。