【今さらレポート】「今」だからこそやり直したい『真・三國無双5』.01

「『真・三國無双8』が発売されそうな今こそ『真・三國無双5』を再評価するタイミングだと思うので、記事書いても良いすか」と打診したところ、「よくわかんないけど、面白そうだからOK」という非常に前向きなGOサインをもらったゴジライター、遼智子(りょーとし)です。『真・三國無双5』(以下『無双5』と表記)はシリーズ中でも大きな変化を見せた作品で、シリーズファンからは「これは無双ではない」という声が当時あったのも事実です。しかし当時、『無双5』が初めての無双シリーズだった私はそんな声を露知らず、やりこみを重ねました。今回の記事ではこの『無双5』の奥深さを、皆様にお伝えしようと思います。

『真・三國無双5』
発売日:2007年11月11日
プラットフォーム:プレイステーション3、Xbox360
ジャンル:タクティカルアクション
コーエーテクモゲームス

『無双5』での劇的な変化は、賛否両論大きく分かれるものとなりました。好きなキャラクターを使って、強い技で敵をバサバサ斬り倒す爽快感がそれまでの『無双』シリーズの醍醐味であるとするのなら、その点で本作の変化はあまりにも急激すぎたのです。プレイステーション3という当時の最先端ハードで制作するにあたり、モデリングを組み直したがためにキャラクターの数は減り、それまでのキャラクターの分かりやすい攻撃の個性だった「チャージシステム」は、「連舞システム」と呼ばれる新しい攻撃のコンビネーションへと生まれ変わりました。この2つの変化は、シリーズの多くのファンからすれば、「自由度の低下」のように感じられたのではないでしょうか。

△今や10年前のゲームとなった『無双5』。『無双』シリーズから無くなって久しい勝利ポーズも今や懐かしい思い出。しかし、『無双8』が現実に”視えている”今、またこの作品をやりこむ意味がある(はず)。

△あまりにも急激な変化ゆえに、当時はついていける人が少なかった『無双5』。今回の記事では、このゲームの持つ独自の魅力に触れていきます。

しかし、本作をじっくりと遊んでみると、「やることがわかればとても楽しい作品」ということが見えてくるのです。『無双5』では、今までのシリーズにはない戦場の自由度が加わりました。いきなり総大将を斬りに行くのはもちろん、高所から飛び降りて敵軍を奇襲したり、川を泳いだり梯子を上ったり、味方の指示や救援要請をすべて無視したり、敗北条件を満たさない限り実に自由なプレイができるのです。
しかしこれは、逆を言えば「何も分からない状態でいきなり戦場に放り出される」ということでもあります。『無双5』にはチュートリアルが無かったこともあって、発売当初は多くのプレイヤーが何も分からないまま戦場に駆り出され、わけも分からぬまま自分が死ぬか味方が次々と敗走していったことでしょう。

△無双5はシステムを刷新したにも関わらず、取説書の操作説明以外何もなかった。その操作説明も非常に簡潔なものだった。

当時はまだゴジラインのようなオタク向けゲームメディアが浸透していなかったこともあり、多くのプレイヤーは『無双5』というゲームの目指したものが見えないまま(目に見えやすい欠点が大きかったこともあり)辞めていった人も多かったと思います。このことに関しては、「チュートリアルを入れておけば良かったと後悔している」という旨の発信も見られました。
『無双』シリーズファンに慣れ親しんだ、カジュアルな遊び心地がなくなったことで、PS3版やXbox360版の評価は大きく分かれることになりました。その後、コーエーはPS2版で「SP版」というアップデート版(のようなもの)を発売します。PS3向けに作ったゲームをPS2に落とし込んでいるので表現の面などはダウングレードとなっているのですが、「大きな方針の変更」として「無双モード(いわゆるストーリーモード)を重視する」という方針が打ち出された作品になっていました。さらにSP版の発売に伴い、6キャラ分の新規モーション追加(と新規ステージ、シナリオ追加)が行われました。特に新規ステージ、シナリオの方に顕著な「方針の転換」があり、他の既存ステージと比べて明らかに「味方の指示」と「キャラクター同士のシナリオ固有会話」が増量されました。
こうした変化は、PS3版の反省の一つである「チュートリアルも指示も無い状態で戦場に放り出されるので何をしたらいいのか分からない」を踏まえた結果だったのでしょう。これはまさにその後のナンバリングの特徴である「分かりやすいステージ」と「シナリオ、キャラクター性の重視」として受け継がれていったのです。更にシステムも連舞システムからチャージシステムに戻り、『無双5』で刷新したものは次々と失われていきました。当時の筆者は『無双5』の挑戦を公式が否定していくような感覚を覚え、少し歯がゆい思いをしたことも確かです。しかし、『無双8』の情報を見ていると、また新しい挑戦の息吹を感じます。『無双5』の「挑戦したけれど結果的に後退してしまった」轍を払拭する挑戦であるとすら筆者は考えています。戦闘システムの刷新、一本道シナリオからの脱却、この2点は新しい「挑戦」なのです。

△違うゲームには違う遊び方がある。『無双8』はまた『無双5』とは違うゲームになるだろうが、新しさはきっと見せてくれるはず。

筆者はこの記事で当時、挑戦として打ち出された『無双5』が確かに持っていた奥深さをお届けします。そしてこの記事を読んでくれた方が『無双8』に触れた時、その新しさを「いつもと違うな」程度に通り過ぎずにいてくれると嬉しいです。『無双5』がちゃんと遊べるいいゲームであると認識を更新することで、そういう視点が養われるのです(理論がつながってない?そんなこと知らん)
『無双5』が、連舞システムが目指したかった戦いのスタイルとは何か。それはどう遊ぶことで面白いゲームになるのかということを、筆者の観点からざっくりとお届けします。他ナンバリングの『三國無双』と同じ感覚でプレイしても、『無双5』の世界では全く上手くいきません。それは野球のバットを握って卓球をやろうとしても楽しくないのと同じことです。

『真・三國無双5』の挑戦を振り返る
『無双』連舞システムとは何か -チャージシステムとは違う戦いの方針-

『無双』シリーズに数多く採用されているチャージシステムは、簡潔に言うと△ボタン(チャージ攻撃)を押すまでに押した□ボタン(通常攻撃)の回数によってアクションが変化するシステムです。対して連舞システムは□ボタン(連攻撃)がそもそもループ性のある終わりのない攻撃であること。△ボタン(強攻撃)が追加入力や長押しの有無で変化する別種の攻撃であること(つまり、□ボタンとの関連性を持たない攻撃である)と全く異なるシステムです。

△「連舞」システムは、ボタンを押し続ける限り攻撃し続けてくれるシステムとなっています。

連舞システムは、シンプルに派手なアクションが楽しめるチャージシステムと異なり、かなり癖のあるシステムです。「連舞システム」は、「連舞ランク」という要素と密接に関係しており、この「連舞ランク」は、敵から強属性の攻撃を受けることなく攻撃を当て続けることで上昇していく仕様になっています。初期レベルでは2までしか上がりませんが、最終的には1→2→3→∞と上昇していきます。連舞ランクが上がるほど攻撃力が上昇し、連攻撃・強攻撃の追加入力が解禁されるほか、強溜めなどの一部の行動が強化されます。初期状態から強い行動が出せるチャージシステムと違い、連舞システムは間違って敵の強攻撃に引っ掛かると連舞ランクが下がってしまうため、やみくもに武器を振り回しているだけでは攻撃力を保てません。

△左下の縦に伸びたゲージが、連舞レベルを表す。写真は、最大の「∞」レベルまで高めたもの。

攻撃力の低下はともかくとして、「ずっと攻撃がつながるなら、一生□押してりゃ勝てるのでは」と思われるかもしれません。しかし、そんな神ゲーはありません。最初に、『無双5』はガードが全方位対応となっています。つまり、敵がガードしている場合はちゃんと強攻撃でガードを崩しに行くか、敵がガードを解くのを待つために攻撃の手を止める必要があります。他ナンバリングのような後ろを取ったら簡単に崩せるなんてこともありません。そして強攻撃は敵味方含めて出がかりに隙があるので、ガード>連攻撃>強攻撃>ガード…の古くからあるシンプルな三すくみが成立します。まずこれが『無双5』の考え方の基礎です。
そして、敵の割り込みが□連打マンを許しません。敵の割り込みは自キャラのリーチ外からも飛んでくる他、自キャラの攻撃の死角である空中からも飛んできます。それが雑兵単位で高頻度に実行されるため、あっという間に妨害されます。数の暴力の前で、連打はあまりに無力です。
これらの基本的な考え方の上に、多数の敵による弱・強入り混じった攻撃の嵐、万能アクションの回避、優秀なカウンター技の弾き、読み合い拒否の最強技無双乱舞、強力な特殊技が加わり、とても圧のある戦場が出来上がります。無双5は低難易度からでも敵の攻撃頻度がかなり高めに設定されており、安直な立ち回りではこの圧ある戦場を生き残れません。特にこの記事で前提となる最高難易度「修羅」では一分と持たず戦死するでしょう。では、この圧と殺意に溢れる戦場を生き残るにはどうすればいいのか?それを考え始めた時、無双5の奥深さに初めて触れることができるのです。

△油断すると即、死につながるシビアな修羅の世界。それをプレイヤーの腕前で乗り切るハードアクション、それが無双5ワールド。何度理不尽死してキレても諦めず再挑戦できる中毒性がこのゲームにはある。ちなみに単独行動時は敵の行動ルーチンが変化するので難易度が激増します。

△プレイヤーの行動に応じて敵味方のセリフが流動的に変化するのが無双5の魅力。単騎で大活躍すると上記のような特殊セリフが発生します。単独行動が難しい無双5なだけに、シンプルながら燃える演出です。

恐ろしいことに、この連舞システムには、操作説明に書いていない非常に重要な事項があります。それは連攻撃をガード(L1ボタン)と回避(R1ボタン)でキャンセルできることです。回避(ローリング)によるキャンセルは後のナンバリングにもありますが、ガードでキャンセルできるのは後にも先にも『無双5』だけの特殊な仕様です。(エンパイアーズではガードキャンセルができないので注意!)
この連攻撃の自由度の高さを活かしたヒット&アウェイを用いて無双ゲージを稼ぎ、危なくなったら完全無敵の無双乱舞で逃げ切って敵将を討ち取る。それが『無双5』の立ち回りの基礎であり終着点です。無双乱舞で楽できるところはとことん無双乱舞で楽をするのが吉。ゆえに無双ゲージの管理が非常に大切です。上位キャラはともかく、下位キャラは敵将へのダメージソースの大部分を無双乱舞に依存することになるでしょう。

△回避の使い道は非常に多い。敵の攻撃の回避以外にも、敵に対する自分の位置を調整することで戦場を掌握しやすくする効果がある。敵の攻撃(もしくは攻撃準備の発光)を見てから回避で対処するのは、修羅攻略には必須のテクニックとなる。ゴロゴロ転がって覚えていきましょう。

△無双乱舞(〇ボタン)は発動中完全無敵で、食らい抜けや隙消しもできる万能技。ゆえに無双ゲージの管理は慎重に行いましょう。通常の立ち回りの殆どは、いかに無双ゲージを溜めるかに集約されていきます。攻撃の激しい無双5では、完全無敵の恩恵は計り知れません。

連舞システムには他にも、ガード状態からの攻撃の展開が多彩なのが特徴です。回避と合わせて、攻防のメリハリが非常にはっきりしたアクションを楽しめます。ガード中に歩けるようになった他、攻撃をガードした硬直中に□or△ボタンで弾き返しor弾き飛ばしというカウンター攻撃が可能です。こちらは動作中無敵でかつ連舞ランクによる性能の影響を受けないので、非常に安定しています。特に武器属性が付与され、広範囲を薙ぎ払える弾き飛ばしは強力です。受付時間はかなり甘めなので慣れればすぐに安定します。
全方位ガードの実装は、ハードの進化で敵雑兵が大幅に増加したことで全方位から襲ってくるから、という理由で実装されたものと思われますが、結果として「弾きというカウンター行動がいつでも安定して繰り出せるようになった」ことで攻防のメリハリという他の無双ゲーとは明らかに異なる魅力が現れました。
無双5は「ガードが非常に強い無双」なのです。こういった点も無双5の新しい挑戦の一つと言えたでしょう。

△武器属性が敵の動きを封じる雷や氷であれば、反撃に持ち込むことも可能な弾き飛ばし。連攻撃を敵の攻撃の寸前でガードキャンセルし、即座に弾き飛ばしができると非常に『無双5』が”できる”感を演出できます。守勢でも流動的に無双ゲージを稼げるので、そこからの無双乱舞による反撃のカタルシスは癖になります。

また、『無双5』固有のアクションとして、非ガード硬直中にガードボタンから□or△ボタンを押すことで「殺陣」攻撃を発動できます。これがなかなか優秀な投げ技で、掴みに成功した際の投げモーションが完全無敵となっています。完全無敵を活かした安全な無双ゲージ稼ぎの他、連攻撃からのコンボ、敵の危険な攻撃の回避、敵のスーパーアーマーを捕える、などなど用途はプレイヤーの腕に応じて広がっていきます。

△□の殺陣はガードされるが発生が速い。△の殺陣は発生が遅い代わりにガードを無視して掴める。なお、敵将に殺陣で止めを刺すと取得できる経験値にボーナスが入ります。キャラクターによっては殺陣で投げた後に追撃もでき、ダメージソースとなる。

動画のみどころ
△連攻撃のガードキャンセルには無限の可能性があります。連攻撃や殺陣攻撃に繋いでコンボになる他、敵の攻撃をギリギリでガードしてカウンターも狙える。ジャンプ攻撃は殆どのキャラに気絶付与があるので、ガードキャンセル→小ジャンプ攻撃でコンボのつなぎに使ったりできる。この動画ではコンボ継続中に追加ダメージを与える炎属性を活用した立ち回りをしています。

無双5は何といってもプレイヤーの慣れや上達に応じて多様なアクションが楽しめるようになるのが魅力です。上述したとおり、『無双5』を他の『無双』シリーズと同じ感覚でプレイするとあっという間にゲームオーバー行きとなります。『無双5』を楽しむのに必要なのは他の『無双』ゲーの考え方を捨てることなのです!(なんだこの記事は)『無双5』の楽しみ方はいわゆる無双ゲーのような押し付けるプレイではなく、敵の攻撃の波を潜り抜けてターゲットを撃破するいなすプレイを目指すことなのです。普通の『無双』がラオウならば『無双5』はトキです、激流に身を任せ同化するのです。

今回は『無双5』のアクションの方針と魅力について語りました。次回は無双5が他にはないアクション的魅力を持ちつつもなぜアクション面で評価されなかったのかという理由を踏まえつつ、このゲームを楽しむのに必要な準備やオススメキャラについて掲載していこうと思います。そんなシビアなのは『無双』ゲーじゃないと思ったあなた、そうです、本作は今までの『無双』ではなかったのです。でも、今までの『無双』と違うから、面白くないのかというと、そうではありません。このハード・コアな世界に慣れると、ぬるいゲームでは満足できなくなるのです。

△次回は、もう少しマニアックな『無双5』の話をお届けする予定です。

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遼智子

作品の奥に眠るやりこみ要素に魅力を感じるタイプのコアゲーマー。自らのやりこみをデータ化し、度々ゴジラインメンバーに披露しているが、誰もついていけない領域に達していることが多く、流されてしまうことが多い。やりこみ力のあるコアなゲームは常時募集中。

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