宇宙は「そら」、真紅は「スカーレット」とルビが浮かぶ、男の中の男、浅葉です。
このあいだ、実家の掃除をしていたら、謎のオリジナルキャラクターの落書きが施された中学時代の国語の教科書を見つけ、胸が熱くなりました。必殺技の名前とかも書いてあって、壮絶な痛さを感じます。
そんな仄暗い過去を持つおれが、その世界観を愛してやまない中二病格闘ゲーム『UNDER NIGHT IN-BIRTH Exe:Late[st]』(アンダーナイトインヴァース エクセレイト エスト)が発売されました。ゲームセンターで稼働していたものに、新キャラクターや、丁寧かつ格闘ゲームの深遠まで踏み込むチュートリアルやミッションを搭載した作品です。
発売日:2017年7月20日
プラットフォーム:プレイステーション4
プレイステーション3(ダウンロード版のみ)
プレイステーションVita(ダウンロード版のみ)
ジャンル:2D格闘アクション
価格:PS4パッケージ版:6,800円+税、
各種ダウンロード版:5,800円(税込)
発売元:アークシステムワークス
開発:フランスパン
プレイステーション4版とプレイステーション3版のみ、クロスプラットフォーム対戦あり
この作品は、登場人物のみならず、必殺技やゲームシステム名まで中二病で、眩き闇は「パラドクス」、忘却の螺旋は「アムネシア」、光輪は「リヒトクライス」。主人公のハイドさんの必殺技も、円環の凶渦は「ブラックオービター」、虚空ヲ分カツ断層-壱層は「ベイカントシフト-ファースト」と、とてもイカしています。システムだって抜かりなし、体力ゲージは「ヴァイタルヴェゼル」、ボタンを弱→中→強と順押しすることで繰り出すコンボは「パッシングリンク」、強い必殺技を繰り出すために使うゲージは「イグジスエンハンス」。これはもうプレイするおれたちも、この中二病の旋律に身を任せ、「爆ぜろ」とか「散れ」とか叫びながらプレイせざるを得ません。
妄想を書き溜めた中二ノートを書いていたり、頭の中でひっそりと中二の世界に生きてたりした人なら、抑制されていた魂が解放されるような興奮を味わえます。世界観を演出する音楽も、どことなく中二的ビートを感じさせるものとなっており、数回バトルを終えれば、楽曲が頭に刻み込まれるはず。ちなみに、パッケージ版の早期購入特典はサントラとなっているので、早めのBuyをオススメいたします。マジで音楽イケてますから、気になる人は、今日あたり色々な人がPS4のブロードキャストで配信していると思うので、そのサウンドに触れてみてください。
と、一見中二病を患っている人、患っていた人に向けたかのようなゲームですが、「格闘ゲーム」として本作を見ると、とてもしっかり作られていることに驚きます。本作は、ややコンボが長めのゲームで、独特のシステムも多い作品ですが、格闘ゲームの「ワビサビ」とでもいうべき駆け引きは、他の格闘ゲームを遊んできたプレイヤーにもしっかりと響くものになっています。
2D格闘ゲームコミュニティでは、いわゆる「立ち回り」が戦略の軸となり、コンボの難度はそれほど高くない「立ち回りゲー」と、コンボの難度がやや高く、起き攻めなどにもテクニックを要する「コンボゲー」、「起き攻めゲー」という分類は、最近でもよく耳にします。
この分類でいくと、一見、「コンボゲー」という部類に押し込まれそうな本作ですが、実際に遊んでみると、実に渋い「立ち回り」要素の方が際立ちます。
一見難しそうなコンボの多くは、「格闘ゲームでキャンセルがスムーズにできる人」であれば、ちょっと練習すればできるようになりそうなレベルのものが多く、「格闘ゲームを遊ぶのは初めて」という方にとっても、非常にいい塩梅のものが多いです。(コマンドが全般的に簡単で、いわゆる波動拳、昇龍拳、半回転コマンドでほとんどの技をカバーできます。一部、波動拳コマンドと半回転コマンドの技を併せ持つキャラクターがいて、限定的な状況で難度が高いキャラクターもいますが、操作性の良い作品です。)
そして驚くべきは、本作のセオリーやシステムを教えてくれるチュートリアルモード、キャラクター個別のコンボやガードの揺さぶりを練習できるミッションモードのクオリティ。最近はチュートリアルモードやミッションモードが充実している格闘ゲームも増えてきましたが、キャラクター別のコンボをこうしたモードで覚えていると、「このコンボ、一体何に使うんだろう」と疑問が湧くようなものや、ちょっとやり込んでみると「無駄なコンボだった」と気づかされるものも多く感じます。そんな中、本作のコンボには、しっかりと用途が書かれており、難度別に分けられているという配慮がされています。もちろん、めちゃくちゃやりこんだレベルでの最適解ではないものもありますが、それでも「使っていける」コンボが多く収録されているのは本当にすごいことです。
真の意味で「チュートリアルが充実している」格闘ゲームだと思います。
さらに、上級者向けのチュートリアルでは、「ジャンプ攻撃仕込み投げ抜け」や「詐欺飛び」など、コアな格闘ゲームファンならゾクゾクするメニューも目一杯用意されています。これらは、カジュアルに遊ぶうえでは求められる場面もなく、ゲーム内に入れてしまうことで、敷居が高く感じてしまうというリスクも想定できますが、個人的には、チャレンジ精神溢れる素晴らしい試みだと思います。某アルカディア編集部がなくなった今、格闘ゲームの攻略本というのはほとんどでなくなり、一時期は攻略のプラットフォームであった掲示板やwikiなども、タイトルによってはなかなか目当ての情報を探るのが難しくなっています。そういった状況で、本作のような「攻略まで含んだ格闘ゲーム」が出てきたのは、とても意義のあることだと思います。(もちろん、こうしたスタイルが絶対に正解だと言い切るわけではありません。ゲームによって、特に、完全新作のゲームであれば、「攻略する楽しみ」を残すために、あえてこういうモードを入れないというのも理解できる方向性です。しかし、アーケードゲーム市場で揉まれた『UNDER NIGHT IN-BIRTH』というタイトルは、この方向性で出てきてくれたことを嬉しく思います。)
敷居はめちゃくちゃ広く、底は果てしなく遠いタイプの格闘ゲームなので、一人でも多くの格闘ゲームファンの方、もちろんビギナーの人にもプレイしてほしい作品です。格闘ゲームビギナーには、ちょっと難しすぎる作品ではないのかと思うかもしれませんが、本作のチュートリアルやミッションを全て理解し、クリアーすれば、恐ろしいほどの格闘ゲームの筋肉のようなものが備わっていると思います。格闘ゲームを始めたいという人には、あえてこの作品をオススメしたい。できれば、一緒に遊べる友達をお誘い合わせのうえ、本作をガチャガチャと遊んでみてください。この作品で、「そこそこ勝てるな」という状態になれば、おそらく他のゲームも抜群の吸収力で上達していくと思います。
ちなみに、本作には、GRD(グラインドグリッド)という、「戦況」をあらわすシステムが搭載されています。これは『UNDER NIGHT IN-BIRTH』シリーズのユニークなシステムの一つで、GRDゲージをどう管理するかということを考えながらプレイできるようになると、他のゲームにはない「立ち回りの緩急」が生まれます。このシステムがあることで、上級者同士の試合が単調にならず、戦いに変化が生まれるのですが、この話はまた次の機会に。そこまで難しいことを考えなくても、技さえスムーズに出せるようになればいきなり面白いです。
格闘ゲーム好きのゴジラインも、本作に関しては浅瀬でパチャパチャと遊び始めたばかりのプレイヤーが多いので、ゆるく一緒に遊んでくれる人を募集中です。ゴジラインを「狩りたい」という人も多そうなので、「用心棒」的プレイヤーも用意しておかなければ!