【ゲームレビュー】今夜は『さかあがりハリケーンPortable』の話がしたい

金髪ツインテールのめちゃkawaヒロイン・綾瀬 奈都希(あやせ なつき)ちゃんが好きすぎて、『さかあがりハリケーンPortable』が新しいプラットフォームに出るたびに購入して遊んでいる。

▲これが美少女ゲーム界の誇る金髪ツインテールヒロイン・綾瀬 奈都希ちゃんである。主人公のクラスメイトであり、生徒会副会長でもあるが、頑張りが空回りするところがドジ可愛い。知らない方は今日覚えたうえで本作をプレイしていただきたい。

オリジナル版であるPC版の発売は2008年。これはいわゆるエイチゲーム、大人のゲームだったので、コンシューマーハードへの移植に際して、全年齢対象向けにアレンジされたのが今回ご紹介する『さかあがりハリケーンPortable』である。

もともとプレイステーションポータブル用ソフトとして2011年に発売されたこのアレンジ版は、2016年にPS Vita版、そして2021年にはPS4とSwitchでも遊べるようになった。

アレンジ版の素晴らしいところは、大人ゲーム版のエロシーンをざっくりカットしただけの移植ではなく、ほかの埋め合わせが用意されており、そのうえ新ヒロインまで追加されている仕上がりっぷりにある。筆者は移植されるたびに遊んでいるが、昨年末に遊んだときには「おれにもまだ人と少年の心が残っていたんだな……」みたいな中二病的驚きと感動の合成物が体の奥底からせりあがってきた。
昨年末はNetflixで『イカ・ゲーム』とか『地獄が呼んでいる』とか殺伐残虐デスゲーム的なものを見続けていたので身体がこの作品のような清涼剤的物語を求めていたのかもしれない。
今回の記事では、『さかあがりハリケーンPortable』の話をする。

『さかハリ』はおれたちに失われつつあるものを取り戻してくれる

本作でプレイヤーの分身となる主人公・皆川 巧(みながわ たくみ)は、自分の目的のためには周囲を巻き込んで状況を一変させてしまう事から、ついにはその行動を問題視した男子校から退学処分を受ける。地元の学校である竹月学園へと追いやられてきた巧は、新天地で監視と教育を兼ねて「委員長」という大役を押し付けられることになる。
しぶしぶながら委員長の役目を引き受けた巧は、教室の隅に置かれた目安箱に興味を抱く。かつて生徒の意見や要望を聞き入れるために設置されたという目安箱だったが、今はほとんどの生徒に忘れ去られ教室のオブジェと化しているという。しかし、それを開けてみると、おつかいのような願いが書かれた紙が入っている。彼は自分の好奇心からそれらを引き受け、持ち前の行動力で次々とこなしていく。目安箱の願いを書いたのが誰か見当がつき始めた頃、箱の中に「この場所を、楽しくしてほしい」という新たな願いが投じられる。巧はこの願いを叶えるために奔走し、その着地点として、この学校で実現されたことのない「文化祭」を開催することを思いつく。

▲巧の幼馴染でありヒロインの一人・守永 ゆかり(もりなが ゆかり)ちゃん。巧の家の食卓を任されている。学校では生徒会長として辣腕を振るうが、破天荒な巧の考えとは対立することも多い。

▲巧のクラスメイトの大澤 柚(おおさわ ゆず)ちゃん。台風である巧に巻き込まれ、文化祭を実現する活動を共にすることになる。

▲初対面の主人公と和やかに会話したものの、すぐに人を寄せ付けない態度へと豹変した謎多きヒロイン・深咲 涼(みさき りょう)。

▲主人公をダーリンと呼びつきまとってくる楠 ハル(くすのき ハル)。ギャルゲー的ファンタジーを凝縮したようなキャラクターだが、このキャラは移植時にシナリオに大きな変更が加えられた(後述)

主人公の巧は実にエネルギッシュな人物で見ていて飽きがこない。彼は「面白いこと」が大好きで、物事をやるかやらないか決めるとき、その判断基準となるのは自分にとってそれが「面白い」かどうかだ。面白いと感じたことには異様な熱心さで取り組み、ほかの人では思いつかないような方法でそのハードルを突破したりする。物語の序盤ではこの痛快な一点突破力がおおきな見どころとなるが、不特定多数の生徒たちや大人たちを相手にしたとき、巧は大きな挫折を味わうことになる。巧が考える「面白さ」には、彼の独りよがりな感覚が多分に入っており、そのまま削り出したようなアイディアは大衆には響かない。そのうえ進学校として「文化祭をやらない理由」が堂々とある大人たちにとっては簡単に受け入れられない。実行に移すとしても、予算などの現実的な問題もある。そして巧に反発する者たちは、時に心が折れそうになるくらい痛烈な一撃を浴びせていく。
しかそ巧は折れない。彼自身の力で踏ん張ることもあれば、仲間たちも必死に支えてくれる。
折れそうになって立ち上がって、そうして困難を乗り越えていくドラマと、ギャルゲーの心地よい恋愛要素が素晴らしい塩梅で混じっているのが『さかハリ』の良さだ。
ギャルゲーということで巧の周りはハーレム状態で、リアリティがないとか語り始めるのは無粋というもの。
ファンタジー的な展開も多いけれど、ギャルゲーはそれでいいんだ。しかし全くリアリティがないかというとそうでもなく、ファンタジー的ラブコメディの中で描かれる巧やヒロインの心情描写がときどき刺さるような鋭さを持っている。

▲主人公の巧は「面白さ」重視の生き方。まっすぐで気持ちのいい主人公だが、時に暴走気味となってしまい、周囲の人から反発を招くことも。

▲本作のシナリオ上の大きな目的である文化祭を実行するうえでの課題は多岐に渡る。これらを解決してはじめて、文化祭実行の道が開けるのだ。

『さかハリ』から逃げるな

おれが本作をはじめて遊んだのは恐ろしいことに10年以上前。その頃もギャルゲーの中の舞台として描かれる「学園」なんかは遠い昔の話で、一時期はそろそろ学園ものに感動できなくなってくるのかもな……なんて思っていたが、40歳を迎えた今も意外といけることがわかってきた。むしろ若い頃よりも、学園ものの作品の中のキャラクターたちが見せてくれる青臭さがひたすら眩しく感じてきて、べたべたすぎる恋愛描写にこれがいいんだよ……なんて思いながら噛みしめるように遊べるようになった。若い頃ちょっとだけあった気恥ずかしさが完全に消え、冬場に暖を取るこたつのように、ぬるぬるだらだらとプレイに没頭した。今年はこういうギャルゲー果汁100%濃縮還元な作品をもっと遊ぼうなんて思い始めている。
逆にギャルゲーに慣れてきた頃にハマっていたサイコサスペンス的なやつとかSF的なやつは、今遊ぼうとするとちょっときついと感じる作品も増えてきた。新作ですら、いまいちハマれるものが減ってきた。このジャンルの良質なエンタテインメントに触れすぎたせいか、サスペンスやSFの大一番であるギミックに白けてしまうことが多いのだ。凄惨なデスゲームとか言われてもよほど変わったことをしないと新鮮さはないし、サイコサスペンスも海外ドラマであきれるほど摂取してきて、それらを上回らないとなかなか心には残らない。いやーそれあの作品でも同じの見たなあなんて思ってしまったら最後、ちょっとやそっとの恋愛描写では興味を取り戻すことは難しい。
最近サスペンスやSFゲーが刺さらないなと思っている方にも『さかハリ』は刺さるのではないか理論を今宵から提唱していきたい。

▲もうギャルゲーとかする年ではないとか思う方も、だまされたと思って是非遊んでください。

『さかハリ』通になるならオリジナル版との違いを楽しむのも良し

冒頭に書いたように『さかあがりハリケーンPortable』は、大人のゲームである『さかあがりハリケーン LET’S PILE UP OUR SCHOOL!!』のアレンジ移植版である。この手のギャルゲー移植はエロシーンを雑に抜いてぽんと投げつけてくるものが多い中、この移植は神がかり的取り組みで、思えば最初に移植されたプレイステーションポータブル時代はこういう良移植がちらほらあったんだよなと思いを馳せる。

新ヒロインは主人公の悪友である綺羅 泰徳(きらやすのり)の妹である綺羅 凛(きら りん)で、ギャグみたいな名前だけど、とても麗しいお嬢さんかつ、”歌うこと”をテーマにした彼女のシナリオもかなりエモい。イベントCGこそ少ないが、エンディング近辺の演出はほかのキャラにもくれよ……くらいの完成度を誇っている。この点だけでも、オリジナル版を遊んだエロゲープレイヤーも遊んで損のない作品になっているのだが、アレンジされたいくつかのシナリオも見逃せない。特に大きくアレンジされているのはヒロインの楠 ハル(くすのき はる)のシナリオで、オリジナル版ではエロゲならではのなかなかの超展開がプレイヤーを驚かせてくれたが、アレンジ版となる本作では大きく書き換えられている。つまりこのヒロインについては、オリジナル版と本作で2通りのシナリオが楽しめるというわけだ。あとは、大人のシーンがカットされた補填として、その他のヒロインにも新シーンが追加されていたりする。
つまりオリジナル版を遊んでいる人も買って良し、新規はこの作品だけプレイしてもいいし、大人の『さかハリ』をしたくなったらFANZA GAMESとかで買うといい。

▲右側が悪友の綺羅 泰徳、左側がアレンジ移植版の新ヒロイン・綺羅 凛。

▲ハルルートは、オリジナル版との違いとして一番大きな変更要素。初見は主人公以上に破天荒なキャラだが、個別に行くと良さが醸し出されるので全ルート見ることをお勧めする。

『さかハリ』は全ヒロイン良さがある神バランスギャルゲー

ギャルゲーのヒロイン選びは一点突破、目当てのヒロインルートが良ければすべてよし委員会に所属しているおれだが、本作のヒロインたちの各ルートはどれもギャルゲーのど真ん中を投げ込んできたりするので嫌いになれない。いやむしろ好きである。あるヒロインを攻略しているときは、なんなのこいつ……と思っていても、違うルートにいくと、なかなか可愛いところもあるな、むしろ好き。みたいな感じになり、すべてのルートが終わるころにはすさまじい多幸感に包まれているという具合だ。そんなわけでビジュアル的に気になるヒロインが一人でもいれば買ってOKだろう。
サブキャラクターも超よくて、黒髪謎ツインテール風味の歩先輩とかは攻略対象になってほしかったくらい惜しい存在である。

▲サブキャラとして勿体ない歩先輩。30年後とかにリメイクされたら攻略対象になっていてほしい。

ギャルゲーとして安心できる品質の上に、個人的に最強ヒロインである金髪ツインテールである綾瀬 奈都希ちゃんが備わることで完全無欠のゲームとなっている。このゲームの誰がメインヒロインなんですかって言われるとパッケージを飾りまくっているこの娘だとおれは確信しているのだが、そのツン&デレのバランスときたら当時にしては結構異様で衝撃的だった。セリフとかも早口なところと、スピード緩めなところとの緩急がたまらなくいい。デレてからの病み寸前みたいなところすら愛おしい。

あれ、おれこの記事で何を言いたかったんだっけ。

金髪ツインテールヒロインは正義かつ、綾瀬 奈都希ちゃんはかわいい。
現行ハードで『さかハリ』が遊べるっていうのはなんとも贅沢なものだ。
プレイステーション10とかSwitchの後継機の後継機とかが出ても『さかハリ』がその時代のプレイヤーに向けて、移植されたりすると最高だろう。

▲神ヒロインの一挙一動から目が離せない。

■タイトル:『さかあがりハリケーンPortable』
■ジャンル:ヒロイン巻き込まれ型ハリケーン学園ADV
■発売中
■原画:ねこにゃん
■シナリオ:木緒なち、陸奥竜介
■プラットフォーム:プレイステーション4、ニンテンドーSwitch、プレイステーションVita、プレイステーションポータブル
■価格:PS4パッケージ版6,578円(税込み)、PS4ダウンロード版6,270円(税込み)
PS4完全生産限定版9,878円(税込み)
ニンテンドーSwitchダウンロード版6,270円(税込み)

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浅葉 たいが

浅葉 たいが

ゴジライン代表。ゲーム、アニメグッズのコレクター。格闘ゲーム、アドベンチャーゲーム、RPGをこよなく愛する。年間100本以上のゲームを自腹で買い、遊ぶ社壊人。ゲームメディア等で記事を書くこともあるが、その正体はインテリアデザイナー、家具屋。バンダイナムコエンターテインメント信者かつ、トライエース至上主義者。スマートフォン版『ストリートファイター4』日本チャンプという胡散臭い経歴を持つ。

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