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【メモオフ】『メモリーズオフ』の「卒業式」にいってきた話

      2018/04/17

2018年4月14日、品川区の荏原文化センターで「第八回 澄空市、藤川市合同卒業証書授与式」が行われた。一見、どこかの学校の卒業式に見えるこのイベントは、19年の歴史を持つギャルゲー『メモリーズオフ』の卒業式で、『メモリーズオフ -Innocent Fille- ラストメモリーズセット』を予約した人限定のイベントとなっている。つまり、これはギャルゲーの卒業式なのだ。
俺たちファンは卒業生。今日、僕たち、私たちは、『メモオフ』から旅立ちます、というわけだ。

△荏原文化センターで行われた「メモオフ」卒業式。入り口の案内板だけみれば、リアル学校の卒業式に見えなくもない。おれたち、今日、『メモオフ』から卒業するんだよな。

『メモリーズオフ』というタイトルは、MAGES.の自社IPということもあって、一風変わったキャンペーンやイベントを行うことで知られている。前作にあたる『メモリーズオフ ゆびきりの記憶』では、同社の女性広報さんが1000人のファンとゆびきりを目指すというものすごくパワフルなイベントが行われていたり、発売記念イベントなども積極的に行われてきた。『メモリーズオフ6』の発売記念イベントには、平野綾さんや後藤邑子さんも来てたんだぜ。
しかしそんな『メモオフ』も、本当に久々の発売。新作としては7年ぶりとなる『メモリーズオフ -Innocent Fille-』は、「ラストメモリーズ」という単語が殊更強調された作品となっている。つまり、本作は、シリーズの「ラスト」、「最後」というニュアンスなのだろう。
そして今回、シリーズの「最後」という覚悟を持って作られた本作にふさわしいイベントとして、「卒業式」が用意されたのだ。割とひっそりと開催されたイベントなので、イベント自体はゆるっとしたものになるのかと思いきや、ところどころでオタク的に感動する演出やコメントなどがあり、なんとも不思議なイベントだった。今回は、この卒業式に、取材とかではなく「ファン」としていってきた私・浅葉(36歳)がざっくりとレポートする。

浅葉の『メモオフ』プレイレポートは以下
【プレイレポート】36歳の『メモリーズオフ -Innocent Fille-』プレイレポート

△ラストメモリーズセットに付属していた招待状。

イベントの開始は16時からだが、開場後の「前座」と称して、開発陣がステージに登壇。ここだけでしか聞けない開発秘話などを披露してくれた、ゼネラルプロデューサーの市川和弘さんが「校長」、プロデューサーの柴田太郎さんが「教頭」、そして『メモリーズオフ -Innocent Fille-』のディレクターである相澤こたろーさんが自称「用務員」としてゆるいトークを繰り広げた。卒業式なのに、いきなりここで「ファンディスクを作りたい」と市川さんに訴える柴田さん、相澤さんからはとてつもない作品愛と、ユーザー目線に近いものを感じてこちらまでグッときてしまった。市川さんも、言葉を濁しつつも、「要望が大きければ」という返事を見せてくれた。この時点で、「卒業式」という言葉の寂しさは少し紛れていたような気がする。「最終作の企画自体は2013年くらいから動いていたけれど、いろいろあってこの時期になったという」大人の事情をほのめかすトークなども聞けたのもよかった。(おれは以前、某メディアで、『メモオフ』シリーズのインタビューに携わったことがあるんだけれど、その時から、作りたい、という意思はひしひしと感じていたからだ。)

△異様にそれっぽい卒業式の冊子類。

司会進行は、武石あゆ実さん(三城柚莉役)。時折天然っぽい間違いを開場に投げかけ、みんなを笑わせてくれた。その笑いに包まれている間、なんだか本当に「ギャルゲーの中の卒業式」にいるような感覚だった。『メモリーズオフ -Innocent Fille-』は、主人公が転校してきて、その紹介が体育館のステージ上でされるところから始まるという、ギャルゲーのある意味テンプレのような場面からスタートするのだが、まさにそのシーンのようなくすぐったい感覚があった。
開式の辞では、校長の市川プロデューサーが、『メモオフ』の中の選択肢を選ぶこと、シリーズを遊び続けてくれたことを「ネタ」にしたスピーチで、会場を盛り上げた。「みんな大きくなりましたね」的なコメントには、思わず笑ってしまった。実際あの場の平均年齢は30歳を超えていたのではないだろうか。市川さんも、ギャルゲーにでできそうなダンディな校長のような出で立ちで、ここでも、おれは36歳にしてギャルゲーの主人公だった。この市川さんのコメントは、素晴らしい迷文であり名文なので、公式サイトなどで紹介されることを祈っている。
校長の開式の辞のあとは、志倉千代丸さんと阿保剛さんから届いた祝辞が読み上げられた。シリーズの楽曲を制作してくれたクリエイター陣だ。「あの」志倉さんの祝辞ということで、会場では読み上げられる前から「ネタ」を期待して、笑いが溢れていたが、読み上げあられたのは、意外にも、とても真摯な祝辞だった。以前、志倉さんのtwitterで『メモオフ』への熱い想いを語ったつぶやきを見ていたものだから、不意を突かれてちょっと涙腺が危なかった。阿保さんの祝辞も、しっとりと、会場の雰囲気を「卒業式」へと向かわせてくれた。ネタなのか、ガチなのかわからない卒業式は、最高のスタートを切った。

トークパートでは、「在校生代表(演劇部)」として、鈴木裕斗さん(三城莉一役)、千本木彩花さん(嘉神川ノエル役)、武石あゆ実さん(三城柚莉役)、那須めぐみさん(今坂唯笑役)、間島淳司さん(稲穂信役)らが登壇。那須さんと間島さんからは、『メモオフ』の思い出トークが届けられた。19年前に収録したスタジオを覚えている声優陣や、市川さん、柴田さんの思い出話は、古くからのファンにはたまらない。
最新作で、主人公の親友役として登場した鈴木裕斗さんはガチの『メモオフ』ファンらしく、もうそこにいる年季の入ったギャラリーたちにしかわからないようなネタや想いを織り交ぜたトークで会場を温めてくれた。千本木彩花さんは、イベントではユニークな受け答えを連発。ややクールなノエルのキャラクターとはずいぶん違った方だなと一瞬思ったけれど、そういえば『メモリーズオフ6NR』で描かれたノエルは、本来かなり明るく、天真爛漫な魅力に溢れキャラクターだったなと思い出して、驚いた。『メモリーズオフ -Innocent Fille-』のノエルは、序盤こそ感情が読みにくいものの、後半はガンガン推してくる。その内面を表現する役者として千本木さんはこれ以上ないキャストだったのではないだろうか。こじつけのようだが、ギャルゲーマーは行間を読む能力に長けているのだ。おれがそう思うから、そうなのだ。

△ラストメモリーズ『メモリーズオフ -Innocent Fille-』は、PS4、PS Vitaで発売中。過去作を遊んでいなくても楽しめる作品です。過去作を遊んでいると、もっともっと楽しめますが、興味のある方は、本作から過去の『メモオフ』シリーズを遡るのもアリかと。

『メモリーズオフ ゆびきりの記憶』で主題歌等を担当したZweiのステージは、途中からオールスタンディングのライブへと変わり、『小指のパラドックス』で会場の熱は最高潮に。シリーズの中でも、「変化」にこだわった『ゆびきりの記憶』のこの楽曲は、そのメロディが一瞬で新しいものへの期待感を膨らませ、歌詞はやっぱり『メモオフ』らしさを含んでいて、とても素晴らしい。そしてなんと、Zweiと彩音さんのコラボによる『想い出はゆびきりの記憶へ』も観られました。アーティストとしての雰囲気は、もう全然違う彩音さんとZweiが、『メモオフ』ファンのために熱唱してくれたステージ、最高でした。
彩音さんのステージでは、『レジリエンス』、『あがらない雨はないんだよ』、『ORANGE』が歌唱されました。おそらく、ステージを見る『メモオフ』ファンからすると、『メモオフ』らしい曲、マイベストというのは人それぞれで、彩音さんが何を歌うのかというのを楽しみにしていたファンも多いはず。彩音さんが選んだのは『ribbon』、『ORANGE』でした。このステージで彩音さんが、「自分の中の思い出の曲」をピックアップして歌ってくれた楽曲が聞けたのは幸せだった。なんせ、すごい曲数があるものだから、選ぶのは大変なはずなのだ。(おれはここで『ロマンシングストーリー』が来るのではと思っていた。)
音楽パートでは、出演者の暖かい面をたくさん観ることができて、おっさんとしては非常に感動してしまった。たくさんの楽曲を歌ってきた彩音さんは『メモオフ』愛溢れる人だと知っていたけれど、Zweiのお二人も「卒業式」という冗談なのか本気なのかわからないイベントをしっかりと盛り上げ、いろいろな感情を揺さぶってくれた。おれはその昔、Zweiのお二人が『メモオフ』の楽曲を歌うステージに観客としていたことがあるのだが、お二人とも凛々しく、パンクロックな見た目をしていたので、「ギャルゲー現場とは空気が合わないのでは。大変そうだな」とか勝手に思っていた。しかし、そのステージでは圧倒的なパフォーマンスと、観客を心地よく巻き込む声かけを披露してくれた。一人のオタクとしてライブに行ったおれ
は「オタクに優しいかっけえお姉さんたち」と当時すぐに認識を改めた、今では彼女たちのライブをとても楽しみにしている。『小指のパラドックス』には、「全ての場面を消しはしない」という強いメッセージがあるけれど、まさにこの日のステージは、きっと忘れることのできない思い出になるだろう。
閉会の辞では、市川校長から「卒業式とはいえ、みなさんが思い続けていれば、また何かあるかもしれない」というコメントも飛び出た。イベント開演前の開発陣トークにあった「ファンディスクをやりたい」、「今作にはない夏ルートをやりたい」といった発言を受けてのものだろうけれど、とても嬉しかった。おれたち卒業に来たのに、全然卒業ってコメントじゃないじゃないかと思いつつも、やっぱりこのシリーズには続いて欲しい。市川プロデューサーのざっくばらんとした受け答えは、時にヒヤヒヤするけれど、何かをやってくれるような気がして、いつも応援している。
2時間の卒業式はあっという間に終わった。帰り際に、ラストメモリーズセットの特典である、額装イラストを受け取った。シリーズにおいて、さまざまなキャラクターデザインを務めたささきむつみさんと、松尾ゆきひろさんの額装イラストだ。両イラストレーターの今の表現力が存分に生かされた額装イラストは、どちらもとても美しく、卒業の記念品としては最高の一品だ。できれば、今まで作品に関わった全てのイラストレーターさんの分も用意して欲しかったくらい!

△サインいりの額装イラスト。

この日の卒業式は、笑いもありつつも、やっぱり一つの区切りだったような気がする。ファンディスクや続編がもし発売されたら、この日の卒業式は笑い話になりそうな気もするけれど、それでも忘れ得ぬイベントには変わらないだろう。そういえばこの日、東京の予報は雨、イベントが終わる頃には、少しパラパラと雨が降っていたのもなんだか象徴的だ。『メモリーズオフ』では「雨」が悲しみや切なさを表現する言葉としてたびたび登場する。そして、物語はいつも「上がらない雨はない」ことを教えてくれた。もし続編やファンディスクが出ることがあれば、この日の雨を思い出しながら、晴れの喜びを噛みしめるだろう。
こんな大がかりなイベントをやってくれる製作陣に感謝しかなくて。製作者の顔が見えるゲームには賛否があるだろうけど、『メモオフ』に関しては、やっぱりこの人たちが作っているという不思議な安心感がある。正直、19年もの間、学園もののギャルゲーを続けてきたというのはとてつもないことです。長い間、ギャルゲーを真剣に作ってきた職人さんたちに、ひとまず、「おつかれさまでした」と声をかけたくなるようなステージでした。「おれ『メモオフ』卒業式にいってきたんやで」というと、笑いながらも、卒業式やってくれるギャルゲーってすげーなと言ってくれる人も多い。このゆるさと、どこまで本気かわからない曖昧な感じも、『メモオフ』の魅力なのだ。

以上、オタクが早口気味に書き上げた、卒業式レポートでした。
これからは「卒業」したOBとして、とりあえず本シリーズの普及活動に勤しみたいと思います。
こんなおっさんが未だに、熱く語れてしまうギャルゲーってなかなかない。ストレートの豪速球をためらいなく投げ込んできて、とにかく甘々だったりするんだけれど、そこになんかギャルゲーとしての風情を感じてしまう。若い人も、おっさんゲーマーも、みんな、是非一度この、不思議なゲームを遊んで欲しい。
曲がりくねった話が面白い今の時代に合わせて、曲がりくねった話もあるけれど、しっかりとギャルゲーとしての芯を失わない、とても貴重な作品だと思います。

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浅葉 たいが

浅葉 たいが

ゴジライン代表。ゲーム、アニメグッズのコレクター。格闘ゲーム、アドベンチャーゲーム、RPGをこよなく愛する。年間100本以上のゲームを自腹で買い、遊ぶ社壊人。ゲームメディア等で記事を書くこともあるが、その正体はインテリアデザイナー、家具屋。バンダイナムコエンターテインメント信者かつ、トライエース至上主義者。スマートフォン版『ストリートファイター4』日本チャンプという胡散臭い経歴を持つ。

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