夏だしホラーゲーム特集やろうよ!という一本の電話が浅葉氏から届いたのは今月頭のこと。こんにちは、末端メンバーのさいとうです。格闘ゲーム以外担当の僕ですが、実はホラーゲーム大好きマンでもあったりします。浅葉氏からの電話を受けてあれやこれやとタイトルを選んでいる間にあっという間にこんな日にちに。忙しい時の時間の進み方、まじホラー。
終わりが近づいているとはいえ、まだ夏。うだるような暑さ。じりじりと照りつける日差し、木々から聞こえてくるセミの鳴き声、夏の風物詩は健在です。昼間は太陽の下でポケモンを探している方も多いと思いますが、夜は空調のきいた涼しい部屋で幽霊を相手に背筋なんか寒くしてみてはいかがでしょうか。
今回紹介するのは、ジャパニーズホラー的な恐怖を詰め込んだ人気作『零』シリーズのうち、Wiiで発売された『零~月蝕の仮面~』です。
『零』シリーズはコーエーテクモゲームスから発売されているホラーアクションアドベンチャーゲームです。シリーズを一貫する特徴として、主人公が美少女であることと、“射影機”と呼ばれる特殊なカメラを用いて幽霊を撮影するゲーム内容であることが挙げられます。美少女が主人公、と書きましたが、コーエーテクモが作るゲームの女の子の可愛さは、本サイトを読んでくださっている方々には『DEAD OR ALIVE Xtreme3』というゲームでよく御存じなのではないでしょうか。本作においてもそれに関してはお墨付きで、可愛い女の子とホラーゲームの恐怖を同時に楽しむことができる、お得な作品となっています。
本作では、カメラで幽霊を撮影することで、ダメージを与え、退けることができます。「何故、幽霊を写真で撮影するとダメージを与えられるのか」的な原理に関しては、写真に撮られると魂が抜き取られる、なんて俗説があるあたりからなんとなく察することにしましょう。そういうものなんです。
例えば弾数に制限があるサバイバルホラーゲームでもそうなのですが、普通、恐怖の対象に遭遇した時に人間が取れる最も安全な行動は、“逃げる”ことです。
ですが本作に登場する悪霊の多くは見えない力で扉をふさぐ力を持っているものであり、また主人公は幽霊を撃退する手段をその手に持っています。必然的にプレイヤーは“幽霊”という脅威に相対せざるを得ない状況に放り込まれます。このゲームにおいて、恐怖を追い払う手段とは、脅威の対象である“幽霊”をレンズ越しに注視し、撮影することなのです。
このジレンマと絶妙な噛み合いを見せているのが、“フェイタルフレーム”というシステムの存在。主に敵の幽霊が攻撃する直前のわずかな瞬間にシャッターを押すと、とても強力な攻撃で大ダメージを与えることができます。最大の攻撃を与えるために、最大の恐怖と相対し、動きのパターンを観察し続けて、攻撃を受ける刹那のタイミングを狙って撮影する。これこそが『零』の醍醐味となります。恐怖を直視するというのは、なかなか簡単なことではありません。ですが、それこそが危機的な状況を打開できる唯一の策なのです。ホラー作品の鑑賞をするときに、あまりにも怖いシーンからは目をそむけて、落ち着いたところでもう一度画面を観るという人も多いでしょうが、本作はそれを許しません。恐怖を直視しなければ、先に進めないこの仕組みこそが、本作を強固なホラーゲームとして成立させているのです。
『零』シリーズは、第一作の主人公である雛咲深紅を中心としてストーリーが繋がっているのですが、本作『零~月蝕の仮面~』は他作品の繋がりからはほぼ独立したものになっていて、適度な難易度もあって、シリーズ入門にはうってつけのタイトルになっています。
本作のストーリーは、かつて島で神隠しに遭った5人の少女たちのうち2人が謎の死を遂げ、その謎を解明するために残る3人がそれぞれ再び幼少期を過ごした島の廃病院に戻ってくる、といったもの。忘れられた記憶は霊となって彼女たちの前に現れ、隠されていた病院の裏の顔へと誘います。果たして神隠しの真実とは。病院の奥で行われていた儀式と、少女たちの関係とは。本作のタイトルにも含まれている“仮面”がどういう形で物語に関わってくるのか、個々のキャラクターがよく作られているため、物語も十分楽しめるものになっています。
過去の作品では、巨大な館や、異界に取り込まれた村など、和風建築的な場所が多かったのですが、今回の舞台は西洋風の精神病院です。もちろん日本家屋みたいなロケーションもばっちりです。病院なので患者が眠る寝台や、手術室のようなものもあり、精神病院なので入院している患者はひと癖もふた癖もあるもの。そのうえ時代が時代ですから、やばい治療法なんかが日常的に行われていた場所でもあって…!病院ならではのあの手この手を使ってプレイヤーの恐怖を煽りにきます。
ちなみにシリーズのお約束として、凶悪な災厄を鎮めるための儀式に失敗して辺りの人間が死に絶え、魂がさまよう呪われた場所になった、というのが舞台に共通する設定になってきます。理由もわからず苦しみに囚われたまま浮かばれずに徘徊している霊なんかも多く、彼らそれぞれに生前のバックボーンが用意されています。
本作以前のPS2で発売されていた『零』は初代『バイオハザード』のような固定カメラとカメラを覗いた時の一人称視点で構成されていましたが、本作からは主人公を後方から映す、いわゆる“ビハインドビュー”が取り入れられました。それに伴い、wiiリモコンが主人公の持つ懐中電灯と連動して、向けた位置を照らしてくれるようになっています。
具体的に言ってしまうとwiiリモコンで行えるのは上下の操作だけで、左右はスティックで入力することになるのですが…それでも、このシステムによってプレイヤーと主人公の一体感が増し、より直感的にゲームで描かれる恐怖を体験できるようになりました。何か落ちていそうな台の上や、何かが潜んでいそうな暗がりへと、wiiリモコンを向ける。ゲームの映像を追いかける視覚だけでなく、ゲームを攻略するうえで必要な何気ない動作ひとつが、プレイを通して恐怖を味わう手応えとなって、その手に直接フィードバックされるのです。
そんな懐中電灯は作中で“霊石灯”という武器としても登場します。こちらはファインダーを覗くことはないものの、ボタンを長押ししている間パワーをチャージでき、離した瞬間に光を発して範囲内の霊にまとめてダメージを与えられるというスゴい武器で、主人公のうちの一人、霧島長四郎がこれを使用します。敵の近くで発動した方がダメージが高く、攻撃発動時に爽快なSEが鳴るので僕の周りでは鈍器と呼ばれています。
本作はwiiで発売されたゲームソフトなので、互換性のある現行機のwiiUでもプレイできます。ただし、前述の通りwiiリモコンを使ったゲームなので、周辺機器としてwiiリモコンとセンサーバーが必要になってくることには注意が必要です。本作のアクションゲーム部分はFPS(一人称視点シューティングゲーム)に近いので、『スプラトゥーン』で培ったシューティングの腕を、怨霊相手に試してみるのも夏の夜の遊びにいいのではないでしょうか。
ちなみに本作にはバグが存在していて、やり込み要素である霊リストのコンプリート及びそれに伴った特典アイテムの入手が不可能になっていることが原因で評価が下げられていることが多いのですが、ぶっちゃけフルコンプリートを狙う廃ゲーマー以外には関係ないので、内容の面白さに関しては僕が太鼓判を押させてもらいます。部屋の電気を消して一人でヘッドホンを装着して恐怖に震えながら遊ぶもよし、友達を呼んで怖さを紛らわせながら賑やかに遊ぶもよしな、この夏オススメの一本です!
ところで、『零~月蝕の仮面~』はさすがにWiiソフトなのでグラフィック面では現行機のゲームに劣ってしまうのですが、WiiUでも『零~濡鴉ノ巫女~』というシリーズ最新タイトルが発売されています。こちらは自殺の名所となった霊山と“水”がモチーフとなっていて、美麗なグラフィックの女の子が塗れて服が透けたり、それに伴って霊が強力になるようなシステムが搭載されています。ハードをお持ちの方は、シリーズ屈指の人気作のリメイクであるWiiソフト『零~深紅の蝶~』と合わせて是非遊んでみてください。
え、ホラーが苦手?
大丈夫、最初はびびりまくっていた僕もこのシリーズをやっているうちに耐性がつきました!
面白いゲームは恐怖を超えます。
さいとう
多人数よりも一人用のゲームを好み、体験やストーリーを重視しては無駄にウンウンと頷く。
でも面白ければジャンル問わず何でも触ってみるタイプ。
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