【インタビュー】『ファントムブレイカー:オムニア』はまだまだ進化する!スパイシーアップデートの内容や、IP譲渡の経緯を盛プロデューサーに聞いてきた

2022年4月に発売された『ファントムブレイカー:オムニア』に、この夏大きな動きがあった。
エイプリルフールの時期に発表された”スパイシーアップデート”とよばれる大型アップデートが適用されることが判明したのだ。
また『ファントムブレイカー』のIPが、オリジナル版を開発・販売してきたMAGES.から、オムニアの販売を手掛けたロケットパンダゲームズに受け渡されたことが発表された。
アップデートは嬉しいニュースだが、IPの譲渡とはいったい……。

https://twitter.com/RocketPandaJA/status/1541796920955441152

本記事では、『ファントムブレイカー』の制作を手掛けたMAGES.の盛プロデューサーに、スパイシーアップデートの詳細と、IP譲渡の件について尋ねたインタビューの模様を掲載する。

interviewee
盛 政樹 氏
通称:サカリP。1992年、今は無きデータイースト社にアーケードゲームのプランナーとして業界入り。以来、四半世紀以上に渡って様々なジャンルのゲーム開発に携わる。特にアクションゲームやシューティングゲーム、そして海外ゲームの造詣が深く、また、プロデューサー、ディレクター、プランナー、シナリオライターと様々な業務を同時並行でこなす。不眠症気味らしく、ゲームのアカウントネームではInsomniaを名乗っているが、今作の「Omnia」とは偶然の一致だと語る。

スパイシーアップデートの詳細について

――『ファントムブレイカー:オムニア』発売から3か月が経過しましたが、盛さんのTwitterなどから”スパイシーアップデート”と呼ばれるアップデートが行われることが判明しました。こちらは、4月の海外のゲームイベントで公開された動画に、スパイシーアップデートという単語が躍っていたのですが、当時私はエイプリルフールのネタなのかなと思っていました……。

盛:そうですよね(笑)タイミング的にはネタだと思いますよね。でも、本当にスパイシーアップデートがこの夏に配信される予定です。

――スパイシーアップデートの具体的な内容についてお聞かせいただけますか?

盛:まず、アップデートの名前になっている「スパイシー」にちなんだ要素として、「バトル中の状況に応じて、DJによるスパイシーな実況風ボイスが入る」という新要素が追加されます。こちらの実況風ボイスは、海外のノリにしているので、言語設定に関わらず英語でのみ収録されているのですが、それほど難しくない単語なので日本の方も楽しめるものになっています。考えるより感じてほしいですね。今まで遊んでいた『ファントムブレイカー』らしくないという方も当然いらっしゃると思うので、ユーザー側の意思でオンオフが可能です。あとは、オンにした場合も、「スパイシー度」を選べるようになっています(笑)

▲スパイシーアップデート適用後は、スパイシーな実況風ボイスを楽しめる。スパイシー度を選択可能で、高くするとよりスパイシーな実況を楽しめるとか。

――スパイシーな実況風ボイスの元ネタとなったのは、発売前に公開されたPVでしょうか。

盛:はい、その通りです。オムニアの発売前のプロモーションで公開した、ノリの良い実況風動画を元にした機能ですね。この動画は、ロケットパンダゲームズさんが通常の格闘ゲームのプロモーションとは違う雰囲気のものを目指して制作したのですが、思っていた以上にバズったんですよ。有名なYouTuberの方なども拾ってくれるなど、意外な動きも見られました。これはとても嬉しいことなのですが、あの動画をはじめてみたユーザーさんが「こういうノリのゲームなのだと受け取る可能性もある」という意見がロケットパンダゲームズのほうから出てきたんです。特に、反響のあった海外では、あの動画で初めて『ファントムブレイカー』を知った方も多いわけですから。

――確かに、あの動画を最初に見ると、『ファントムブレイカー』のイメージが異なるかもしれませんね。

盛:そこで開発の途中に「スパイシーな実況ボイスを入れられないか」という相談が来たんです。ただ、その気持ちは痛いほどわかるのですが、発売日に間に合わせるというのは難しいタイミングで、そのせいでまた発売日がずれてしまうというのも違うのではないかという判断で実装を見送りました。しかし、発売後にもアップデートをしていくという計画はありましたから、今回のタイミングで追加することにしました。

――スパイシーなボイスとともに遊ぶ『ファントムブレイカー』も楽しそうですね。その他に、アップデートで変化する部分はあるのでしょうか。

盛:遊びやすくなる機能がいくつか追加されます。対戦時の”再戦機能”の追加や、トレーニングモードに、キャラクターの簡易セレクトなども入れました。ユーザーさんの要望をロケットパンダゲームズさんが集めてきて、内容を吟味し、そして実装するという形でアップデートを施しています。
意外なところでは、「コマンドリストが欲しい」という要望をいただきましたね。『ファントムブレイカー』は必殺技コマンドが共通なので、開発中はコマンドリストを重視していなかったのですが、不要だと思っていたのですが、技名を確認できるというのは確かに重要なのかもしれませんね。トレーニングモード中にコマンドリストを確認できるように改修していますので、この機会にいろいろな技名を見ていただけると。実は、本作の隠しキャラクターである真稚(シンワカ)の技名は、私が過去に開発に関わった『水滸演武』のネタが入っていたりします。今回からこういう小ネタがあるというわけではないのですが、技名を見ていろいろ想像してもらうのも面白いと思います。

▲待望の再戦機能が追加!対戦メインのプレイヤーには嬉しい機能だ。

▲トレーニングモード中にキャラクターの簡易選択が追加。キャラクター別コンボなどを調べる際に重宝しそうだ。

▲トレーニングモード中にコマンドリストを表示できるように。盛プロデューサーこだわりの技名なども確認できる。

――そうだったのですね!技表、今回しっかりと確認してみます。ちなみに、今回のアップデートで、キャラクターの性能変更などはあるのでしょうか?

盛:もちろんあります。”アップデート”というと、格闘ゲームファンの方は、キャラクターの性能変更が行われることを期待していると思いますから、こちらも適用する予定です。オムニア発売後の動向を見ていると、皆さんいろいろなキャラクターで対戦を楽しんでくれているようで、「早急にバランスを調整しなければいけない」という状況では感覚はなかったので、少し時間をかけさせていただき、より面白くなるような、そしてキャラの個性を更に強めるような調整を施しています。
この性能調整のアップデートは、スパイシーアップデートが適用された時点では、一部キャラクターのみに適用されます。その後、タイミングを見て残りのキャラクターの調整を行うという計画です。アップデートが先に施されたキャラクターと、残されたキャラクターの間でも、楽しく対戦できるような塩梅になっているので、まずは第一弾アップデートを楽しんでもらえると嬉しいですね。

▲キャラクターの性能変更も行われるとのこと!

――盛りだくさんのアップデートですね。エイプリルフールのネタじゃなかったんですね(笑)

盛:こういう活発なアップデートは、ロケットパンダゲームズさんの力によるところも大きいですね。今回のスパイシーでは、ロケットパンダゲームズさんの方で開発体制を組んで、共同で作業に当たりました。どんどんユーザーさんの意見を拾ってきては実装できないか検討していくんです。なんでもかんでも採用する、ということは難しいのですが、できる範囲でより良い作品にしていこうという姿勢、思いを強く感じました。とはいえ、実際に開発にも手を出してみると、やはりゲームは色々複雑にできているということが分かったようで、オリジナルのゲームを生み出すのもすごい、とお互いでリスペクトし合ってました。

『ファントムブレイカー』のIPを
ロケットパンダゲームズが取得

――6月28日には、ロケットパンダゲームズが『ファントムブレイカー』のIPを取得したことが発表されました。こちらは、どのような経緯で実現したのでしょうか。

盛:前回のインタビューでお話させていただいたように、ロケットパンダゲームズはゲームのパブリッシング事業を新規に始めたいという展望を持っていました。私と社長のM.Pandaが懇意だったこともあって、『ファントムブレイカー』をパブリッシングしてみませんかと提案したのが『オムニア』のきっかけです。そして『オムニア』を開発していくうちに、IPごと引き取りたいという相談をされたんです。私やMAGES.が、ロケットパンダゲームズと一緒に開発をしていく中で、お互いの信頼感というのも強固なものになりましたし、『ファントムブレイカー』の今後を考えると、ロケットパンダゲームズさんに引き継いでもらいたいという気持ちも強かったので、MAGES.に承認してもらいました。

――IPの未来を考えた、前向きな譲渡だったということですね。

盛:自分としては最初からそのつもりでしたが、MAGES.のほうも、『ファントムブレイカー』を快く送り出してくれたのは嬉しかったですね。『ファントムブレイカー』という作品は、ファンの方に支持されつつも、新しい展開をなかなかお見せできませんでした。誰が悪いというのではなくて、MAGES.の企業戦略の中に組み込みにくいというのは事実としてあって、IPとして眠らせておくだけになる可能性も十分にありました。それなら『ファントムブレイカー:オムニア』を作るために尽力してくれたロケットパンダゲームズさんにお譲りするのがIPとしてもファンとしても幸せだと思うんですよ。
MAGES.としては、せっかく生み出したIPですから、それを大切に保管しておくという道もあったと思うのですが、IPの未来を考えた選択をしてくれたのだと思います。譲渡がスムーズにいったことについて、MAGES.とロケットパンダゲームズには本当に感謝しています。『ファントムブレイカー』のような作品に関わらせてくれたうえに、未来を考えた選択を受け入れてくれたMAGES.は、「新しいものを作る」ということに対して自由な会社なんですよ。私もMAGES.で、今後も新しい作品やIPを作っていきたいですね。

――MAGES.、そして盛さんと『ファントムブレイカー』の関係は今後どのようなものになるのでしょう。 

盛:『ファントムブレイカー』との付き合いはまだ続くのだと思います。先ほども言いましたが、スパイシーアップデートから、プログラムなどの開発に関わる部分も完全にロケットパンダゲームズ側に移ったんです。そういう状況ですから、もうロケットパンダゲームズ側は、こちらの意思を確認しなくても新しい要素やアップデートを入れられるのですが、いまだにコミュニケーションをとってくれます。「どう思う?」「どうしたらいい?」と相談してくれたりするのですが、それはやはりMAGES.とファンが育てた『ファントムブレイカー』らしさを大事にしてくれているからだと思います。
つい最近も、アメリカのイベントで、M.Pandaと『ファントムブレイカー:オムニア』のトークイベントに登壇してきました。その場でも「『ファントムブレイカー:オムニア』は子供みたいなものだと思っている」と言ってくれて、いい人にもらわれて本当に良かったと思いました(笑)
それに、MAGES.との関係でも、今後ロケットパンダゲームズさんのほうから、お仕事としてMAGES.に依頼をいただければ、『ファントムブレイカー』でも協力ができますし、ほかのタイトルでもやぶさかではないわけです。

――ロケットパンダゲームズがこのタイミングで、IPを取得したことを発表したということは、『ファントムブレイカー』のこの先があるのではと期待してしまいますね。

盛:そこは自分も楽しみにしています。新しい作品が生まれるというのももちろんですが、『オムニア』での奮闘を見ていると、プロモーションなどにも注目したいですよね。スパイシーな動画を公開したり、漫画(https://phantombreakeromnia.com/ja/manga/)を作って公開したり、かつての『ファントムブレイカー』ではやりたくてもできなかったことを次々と見せてくれましたから。

▲こちらが公式サイトで公開中の漫画の1コマ。

――漫画のほうは、私も読ませていただきましたが、今までの『ファントムブレイカー』では描かれていないシーンが、スリリングに描かれていて面白かったですね。『ファントムブレイカー』って、現時点で話としては完結していないので、未来の話も描けそうですが、今まで起きたことの裏側の話なども見てみたいですね。いろんな切り口で、新しい話を作れそうなコンテンツだなと感じます。オリジナル版を作る際に”広がり”のようなものを意識していたのでしょうか?

盛:私は作品の物語や設定を考えるときに、ゲームで描かないことも含めて細かく作りこむんですよ。そういった癖が、あとになって新しいことを考える際に、この設定は使えば話が動かせるという発見をもたらしてくれることがあります。あとは、アドベンチャーゲームを作っているときに、その話でほかのジャンルのゲームができないかなということを考えたりする癖もあるんです。
たとえば、トンキンハウス時代に制作した『Missing Blue』では、武器商人の妖精という設定のキャラクターを作るときに、その妖精が自キャラとして動くシューティングゲームの構想を同時に組み立てていました。こういった作り方の癖が、ちょっとずつ物語を広げたり、ユーザーさんからみて、ここも見てみたいと思ってくれるものになっているのだとしたら嬉しいですね。

――今後、ロケットパンダゲームズさんの描く新しい『ファントムブレイカー』の世界も楽しみですね。

盛:今後新しいプロジェクトがあるとして、『ファントムブレイカー:バトルグラウンド』のように、ゲームジャンルを変えたものが出てきてもおかしくないでしょうね。ただ、私もロケットパンダゲームズも、『ファントムブレイカー』は格闘ゲームから始まって、いまだ多くのプレイヤーが支持してくれているというのは意識していますから、応援してくれる声があれば、格闘ゲームとしての『ファントムブレイカー』プロジェクトが動く可能性も大いにありそうです。
逆に自分ではその格闘ゲームに囚われすぎていたところもあって、いい意味でそこを打破してくれれば新しいジャンルとして生まれ変わる可能性もあるのではないかと思っています。可能性の宝庫ですね。

――『ファントムブレイカー』シリーズのプロデューサーを務められた盛さんから、ファンの方へのメッセージをお願いいたします。

盛:私自身の力不足もあって、『ファントムブレイカー』をこれ以上発展させて、皆様の元にお届けするのは限界に近いかなという状況の中で、今回のIP譲渡は最良の選択肢だったのではないかと考えています。ロケットパンダゲームズさんは、ユーザー第一の精神を持つ会社ですし、皆さんも安心して今後の動きに注目してもらえればと思います。

――ありがとうございました。(了)

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浅葉 たいが

浅葉 たいが

ゴジライン代表。ゲーム、アニメグッズのコレクター。格闘ゲーム、アドベンチャーゲーム、RPGをこよなく愛する。年間100本以上のゲームを自腹で買い、遊ぶ社壊人。ゲームメディア等で記事を書くこともあるが、その正体はインテリアデザイナー、家具屋。バンダイナムコエンターテインメント信者かつ、トライエース至上主義者。スマートフォン版『ストリートファイター4』日本チャンプという胡散臭い経歴を持つ。

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