ニンテンドーeストアの説明にある「5秒に1回ハプニング!?」、「ハチャメチャ」という要素に釣られて『チョコボGP』に手を出した。「5秒に1回ハプニング」というのは、本作はレースゲームではあるものの、ただ走るだけではないことを意味する。つまり、魔石やアビリティといったレース展開を引っ搔き回す要素がレースをハチャメチャにするというのだ。
『ファイナルファンタジー』の世界観やキャラクターを持ち込んだポップなレースゲームということもあり、思い出の中に生き続けるおじさんたちを召喚して遊んでみたのが昨日のこと。
最初のほうは、イヤー古き良き感じでいいですなあ、『マリオ●ート』風味があって遊びやすいとか好き勝手な感想を言い合い、「いやでもこれ令和の時代に地味な気がする。それに、5秒に1回ハプニングはさすがに言い過ぎでは」みたいな結論に至りかけたのだが、その後「キャラクターー解放」をやるためにストーリーモードを遊んでみたところ、このゲームにはいろいろなシステムやテクニックが存在することを知った。そしてそれらを駆使すると、確かに5秒に1回ハプニングが起きており、攻撃や妨害が飛び交う画面はド派手に変貌、CPU戦ですら盛り上がれるすげえゲームということがわかってきた。
そんなわけで、一人でも多くのプレイヤーをこのハチャメチャレースに誘うべく、レビュー的な記事を掲載する。
魔法とアビリティが飛び交うハチャメチャレース
本作のレースはただ走るだけではない。速く走るだけではこの世界では生き残れないのだ。生き残りの肝となるのはずばり”魔法”で、これはコース中に設置されたマジカルエッグから入手できる”魔石”を使用して発動できる。入手した魔石に対応した魔法が発動可能になり、魔法を発動したらストックしておいた魔石がなくなるという仕組みだ。
魔法はファイア、ブリザド、サンダー、ヘイストといった『ファイナルファンタジー』の世界でおなじみのもので、ファイアは火の玉を打ち出し、ヘイストは自分の一時的に自分の速度を高めるなど、ユニークな効果がそれぞれに用意されている。さらに魔法は、同じ魔石を集めることで効果が3段階まで強化され、たとえばファイアなら、ファイラ、ファイガと変化する。ファイアで打ち出す火の玉はそれほど大きくないが、ファイガで打ち出されるものは、この世の終わりを感じるくらいデカい。
魔法と並ぶもうひとつのハチャメチャ要素が、各キャラクター固有のアビリティだ。こちらはレース中に溜まっていくゲージを使用して発動可能で、猛スピードで加速したり、剣で周囲を薙ぎ払ったり、魔法攻撃を跳ね返すバリアを貼ったり、周りに見境なくミサイルをばらまいたり、巨大化して車をかついで走り出したりしてもはやこのゲームのキャラクターたちに、真面目にレースをするという気持ちは1ミリもないことがよくわかる。
魔法とアビリティがハチャメチャなハーモニーとなり、一筋縄ではいかないサーキットのうえで予測不可能な出来事を起こすのが本作のレースの面白さ。筆者はレースゲームをあまりプレイするほうではなく、レース中に身体が傾くタイプのプレイヤーだが、本作は対戦が実に楽しい。1位をとれることは稀だが、レースがメチャクチャになって棚ぼた的に1位が取れたりすることもあるのだから恐ろしい。
タイムアタックなどの硬派なモードにも注目
ハチャメチャなレース部分に目が行きがちだが、レースゲーム好きにはたまらないタイムアタックモードも実装されている。タイムアタックモードでは、選んだコースを3周するタイムを集計し、自身の記録を世界に発信できる。コンマ一秒を争う戦いを楽しめるというわけだ。
自分の走った様子を記録した「ゴースト」をアップロードしたり、他のプレイヤーのゴーストデータをダウンロードして走れるなど、上達とモチベーションアップにつながる仕様も搭載されている。
タイム短縮には、本作に用意されているさまざまなテクニックを駆使する必要がある。スタートブースト、ドリフトといったレースゲームではお馴染みのシステムのほか、コースによっては”エアトリック”で加速ボーナスを得るというテクニックも重要となる。エアトリックは、段差などにジャンプした際に、空中で決めポーズを見せつける要素で、これに成功すると着地後に加速ボーナスを得られる。オタクになってくると、エアトリック→着地で加速ボーナス→そのままドリフト→などで加速を継続してサーキットを駆け抜けることが可能となっている。
ハチャメチャなレースの対戦では、魔石やアビリティに目が行きがちだが、こうしたテクニック面も確かな武器になる。タイムアタックに興味がないという方も、他のプレイヤーのゴーストの走りから、ハチャメチャなレースを生き残るための道筋を見出したりできるだろう。
やめろその曲はおれたちに効きすぎる
チョコボといえば『ファイナルファンタジー』世界の住人。そのチョコボが疾走するサーキットというと『ファイナルファンタジー』世界にちなんだものも多く、そこを駆け抜けている間に、おれたちの心をかって揺らしまくった『ファイナルファンタジー』サウンドのアレンジが鳴り響いて、走りながらテンションが最高潮に達してしまうのがこのゲームのズルいところ。ビッグブリッジを走っている間に『ビッグブリッヂの死闘』のアレンジが鳴り響き始めてしまったら、このゲームを好きにならずにはいられないのだ。サントラはeストア限定版で先行販売されており、単体販売は3月23日発売。正直このゲームで聞くまではサントラまではなあ……と思っていたのだが、さきほど慌ててサントラを予約してしまった。
また、本作の主題歌らしい『チョコっとグランプリ』という曲には、謎の中毒性があり、こちらも大変気に入っている。ポップな世界観を表現した楽曲で、これもサントラでヘビロテしたい一曲。このゲーム、サウンドの部分が大変すばらしいから、メーカーにもそれを動画とかでめちゃPRしてほしい。そしたら人に紹介するときに、これよくね、みたいに公式のURLを貼り付けられるのに……。
総評:買って良かったチョコボGP
3/10日現在、オンラインモードのひとつである64人トーナメントが楽しめるGPモードでバグが発生しているが、プレイヤーマッチなどは快適に動作している。(レース中に突然ゴールしてしまうという類のバグで、筆者も何度か起きた。いきなり一位おいしいです、みたいなこともあれば、いきなり一位をほかのプレイヤーにとられてびっくりすることもある。)この不具合はいずれ直ると考えると、カジュアルに楽しめるハチャメチャなレースゲームとしては買って損のない1本だろう。また、硬派なタイムアタックをやってみたいという方は、こちらをメインの遊びに据えても十分すぎるほど楽しめるはず。
一部で話題の課金周りについては、課金で購入した”ミスリル”という石的なものを消費して、キャラクターや乗り物のカスタマイズなどに使用するアイテムや”プライズパス”を購入可能というのがざっくりとした仕組み。(円とミスリルの交換レートは、1円1ミスリルくらい。)
プライズパスを所持していると、プレイに状況に応じた報酬としてキャラクターや乗り物のカスタマイズなどが手に入る。プライズパスは800ミスリルで購入可能だが、ソフト購入後のログイン特典として800ミスリルが配布されるので、最初のプライズパスは実質無料的な位置付けとなっている。
プライズパスの上の”プライズパスプレミアム”というのも用意されており、こちらはお値段2400ミスリル(円)。こちらでは、プライズパスでは段階を踏んで得ていく報酬の一部分をショートカットして入手可能。つまり、課金すればプライズパスをさくっと進めさせてくれる仕組みだ。と、ここらへんの要素を見ると、「フルプライスなのに課金ゲー」みたいな感想があるかもしれないが、課金要素にレースを有利にする要素は今のところ見当たらず、あくまで見た目の満足アイテムが中心なので、パッケージさえ買ってしまえばレースで不利になることはなさそう。ただ、最初のプライズパスが実質無料とはいえ、クラウドの使用権がここに含まれているのはちょっと気になるが……。今後もこの形でキャラ追加があるなら、欲しい人は都度プライズパスに課金することになるのだろう。
課金周りに関しては、カスタマイズアイテムなどが中心とはいえ見方によっては課金ゲーであることも事実なので、そこにフラストレーションを感じる方は、いろいろと情報収集してみてから購入するかどうか決めると良さそうだ。
と、細かい点も最後にネチネチと書いてしまったが、『ファイナルファンタジー』が好き、かつて『チョコボレーシング』を遊んだ、『マリオ●ート』が好きという方なら作品の中に光るものをたくさん見つけられるはず。世界観が楽しめるストーリーモードはややあっさり気味だが、ハチャメチャなレースに情熱を燃やせる方はおそらく長く遊べるタイトルになるだろう。64人のトーナメントのGPモードは、現状バグがあるものの、それでもスリリングな戦いが楽しめる。マッチングも素早いので、この部分が完全になれば、本作の真価が発揮されることは間違いない。
また、友達と一緒に遊ぶというシンプルかつ最強の楽しみ方をすると、このソフトの価値が何倍にも膨れ上がる。こういうゲームが、オンラインで遊べるようになるというのは本当に嬉しい進化で、20年くらい前の『チョコボレーシング』では想像もできなかったような遊び方ができている。昨晩は8人のプレイヤーでボイスチャットをつなぎ、ワーワーとしゃべりながら朝を迎えてしまった。今日もおそらくやるだろう。ひとつ言うのなら、プレイヤーマッチの部屋でレースが終了したら、再戦する機能さえつけばパーフェクトに幸せだ。(現状あっさり解散してしまい、部屋を立て直さなければならない。)
また、レビュー内にも書いたが、筆者はひたすらにレースゲームが下手という自覚があるのだが、このゲームは楽しめている。なかなかすごいゲームだと思う。
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CHARACTER DESIGN: TOSHIYUKI ITAHANA/RUBI ASAMI