Xbox360で日本のRPGが存在感を示していた頃ってもう10年以上も前なんですね。それは年をとりますわ。
つい先日、Xbox Oneの下位互換に『インアン』こと、『インフィニット アンディスカバリー(Infinite Undiscovery)』がやってきました。発売当時はトライエースが開発した新規IPということで、アクションは『スターオーシャン』風味で心地よく、フィールドでの戦闘がシームレスに始まることに驚いたものです。マップはエリアに分かれていて切り替わりにロードが入りますが、カメラをぐりぐりと回せるので初プレイはフィールドを歩き回るだけで楽しかった。街以外はほぼほぼ戦闘が絡む広大なフィールドで、敵のわらわら加減も絶妙。主人公しか操作できないとはいえ、仲間の派手な技が飛び交う爽快な戦闘は爽快感もある。ハクスラ的な要素も少なからずあるため、繰り返し戦闘することになるのですが、プレイヤーを飽きさせないスピード感も備わっています。思い出深いアクションRPGのひとつです。
ただ、大好きな作品ではあるものの、昔遊んだ時はXboxの”実績”コンプリートに情熱を燃やしていた時期なのです。実績というのは、プレイステーションの”トロフィー”の先駆けのようなシステムで、ゲーム内で特定の行動や成績を達成すると得られるポイントのようなもので、このゲームですと”全ての魔法を習得せよ”とか”所持金が9999999”になるといったものもありました。この手の戦闘回数や収集要素系のものはそれほど苦しくなかったのですが、ヒロインを抱えて逃げ回るパートをノーダメージで乗り切るとか、投石機を使って段差の上にいる相手をひたすら倒すとか、防衛クエストで被害をゼロにして切り抜けるといった、リトライのストレス要素が高いものにずいぶん苦しめられた記憶があります。最近のゲームほどセーブポイントが親切ではなく、イベントスキップやリスタートに恵まれていたわけでもなく、やり直しのテンポはイマイチ。さらに、トライエースのゲームの実績やトロフィーは「異なる難度のクリア」があるうえに、クリアしたとしても引き継ぎ要素がない場合が多いのです。本作では、難度ノーマルとハードは茶番みたいなものですが、ベリーハード解放のためにクリア必須。しかしベリーハードでは一部実績の達成が困難なので、ノーマルも半端にやりこむ必要があるという仕組みなんですね。そんなわけで実績コンプまでやった結果、面白いゲームだったという以上にリトライと戦っていた思い出が。今回は実績を気にする必要もないまったりプレイ。なんだか新鮮です。
実績やトロフィーはやりこみの指標になります。トロフィーコンプリートしているとほどほどにやりこんだなと思えるので、好きなゲームはなるべく実績やトロフィーの取得を狙います。ただ、実績やトロフィーの中には、あまりにもゲームの面白さからかけ離れたものが用意されていたり、またはその達成に何度もリトライを強いられるのに、リスタートの仕組みがきっちりできていなかったりもします。こうした実績やトロフィーは達成した時に得られる喜びも大きいのですが、後に残る思い出も作業や苦難の記憶になることが多い気がします。『スターオーシャン4』とか大好きな作品ですけど、一番覚えているのはバトルコレクションという実績やトロフィーくらいにしか役立たない収集要素を必死に集めたことと、バーニィレースというレースゲーム的なミニゲームを何時間もプレイしたことです。トライエースのゲームは文句なく面白いのですが、実績やトロフィーはハクスラや育成の楽しさを超えた作業が顔を出してくる場合が多い気がします。ここらへん今後の作品で変わってくれないかなあと個人的には思っております。実績やトロフィーに縛られているだけでしょうといえばそうかもしれませんが、実際この仕組みのないゲームって、最近ではどうやりこんでいいかわからなくなってきています。これはもしかしたら、プレイヤーとしてやりこみについて考えるのを止めつつあるのかもしれませんね。
自由に遊ぶ本作はとても楽しいです。今遊んでもアクションRPGとしてストレスが少ないですし、何より物語がいいですね。主人公のカペルと、それにそっくりな英雄のシグムント。二人の関係の秘密と、登場人物たちの精神的な成長が大きなテーマなのですが、ところどころに力の入ったセリフが出てきてじんと来ます。物語の途中で、カペルはとある喪失から、絶望に捉われ自暴自棄になります。そんな彼が心を取り戻すきっかけを与えるのがヒロインのアーヤです。カペルはアーヤと一夜を共にすることで自分を再び取り戻すんですね。この流れは、男の子として正直すぎるのではとプレイヤーの間でネタにされたりもしますが、僕はこのシーンが大好きなのです。カペルとアーヤが助け合いながらスタートする序盤を通って信頼が強まっていき、仲間以上の感情が生まれている。そして、片方が傷ついて自暴自棄になった時に、行動を通じて気持ちを確認することで拠り所のようなものを取り戻していく。誰かが自分を必要としてくれていることを、冒険の果てにこの形で確認するというのがなんとも尊いと思うのです。萌えヒロインのいるRPGの中でも指折りの名シーンだと思っています。複数のヒロインがいるゲームではなし得ないシナリオなので強烈に印象に残っています。
この作品が下位互換で遊べるようになったのは本当に嬉しい!いつか遊び直したいとは思っていて、下位互換という仕様が発表された時いつか『インアン』も来るだろうと思っていたのですが、『ロストオデッセイ』、『ブルードラゴン』が対応しても、トライエース作品は全然その気配がありませんでした。諦めかけていた頃に、下位互換対応が一区切りという発表とともに『インアン』と『スターオーシャン』がやってきたのです。ずいぶん昔のゲームですが、まだまだ懐かしいだけの作品ではありません。ストーリーだけなら、それほど長くないゲームなので、是非手に取ってみてください。