1987年に稼働した横スクロールアクション『サイコソルジャー』をご存知だろうか。
SNKの人気格闘ゲーム『ザ・キング・オブ・ファイターズ』にも登場する麻宮アテナが初登場した作品といえば、プレイした経験はなくともピンとくる人がいるだろう。(1986年に稼働した『アテナ』の主人公は、麻宮アテナのご先祖さま)
1987年に、FM音源の上にボーカルを乗せて鳴らすという仕組みを用いた画期的なタイトルではあったのだが、僕がそのことを知ったのは初プレイから随分あとになってから。アクションゲームとしての手触り、忘れられないテーマソング、超能力を扱う女子高生、技術的なことは抜きにして、本作を構成する要素が全身に突き刺さったのだ。
発売元のSNKのゲームは、今までにいろいろな形で移植版が発売されており、名作格闘ゲームのほとんどは現行のハードで遊ぶことができる。しかし『サイコソルジャー』は、国内ではいままでプレイステーションポータブルの『SNKアーケードクラシックスゼロ』でしか遊ぶことができなかった。しかもこの移植は、完全移植ではなく二人同時プレイをオミットしたものとなっているし、携帯ハードなのでやはり迫力にかける。(それでも当時は嬉しかった)
そんな理由で家庭で『サイコソルジャー』を楽しむのはなかなかハードルが高い状態が続いていたが、2019年になって海外のみの発売ではあるが『SNK 40th アニバーサリーコレクション』の収録作になったり、国内でもプレイステーション4とニンテンドーSwitchのアーケードアーカイブスとして移植版が登場したのだ。ハードの差ということもあり、アーケード版と音の部分では響きに差があるものの、これは紛れもない『サイコソルジャー』である。完全な『サイコソルジャー』を求めるには、アーケード環境でのプレイが必要だが、新たに体験する人や、ほどよい追体験にこだわるのならばこの機会を逃すのはもったいない。
ゲームシステムはいたって単純。前後移動は左右、ジャンプは上、段差を降りるのは下。繰り出せる攻撃は2種類で、通常攻撃に当たる”サイコビーム”と、必殺技的な扱いの”サイコボール”。いずれもボタンを押すだけで発動できる。これらの動作を使い分け、横スクロールするステージに登場する敵を倒したり、障害物を破壊したり。時には上下移動で敵や攻撃をやり過ごしたりしながら進んでいく。
道中で登場するアイテムを取ることで、アテナがパワーアップするという要素もある。より強力なビームを打ち出すことができる”サイコソード”や、キャラクターを返信させる”スペシャル・アイテム”を取るとテンションが上がる。必殺技のサイコ・ボールも、アイテムと同じように道中に出現したものを集めていくのだが、ストックが増え、エネルギーと呼ばれるゲージが溜まっていくと、攻撃の挙動や性能が強力になる。サイコボールのストックとエネルギーを最大まで溜めた状態のサイコボール発動は”究極奥義弾”というものに変化し、画面上に螺旋を描くように弾を打ち出す。このシステムの爽快感に昔驚いたものだが、2019年になった今でもその感覚はそう色褪せていない。レトロなゲームではあるものの、アクションゲームの楽しさが詰まっている。
完全移植の肝である二人同時プレイも少し遊んでみた。オリジナル版の『サイコソルジャー』では、二人同時プレイをするとラグが発生し、ゲームが鈍化するポイントが多かったのだが、それも再現されているように見える。本来ほどほどにスピーディなはずのゲームがもっさりしたものに変わるのは、当時を知らない人からすれば気持ちの良いものではないかもしれないが、オリジナル版を知る人からすれば、素晴らしい移植ということになる。僕は一度も、二人プレイでこの作品をクリアーしたことがないので、これから攻略してみるつもりだ。
とうに諦めていたタイミングで、素晴らしい移植版が出てきたのは幸せだ。やはり『サイコソルジャー』は素晴らしい。
未プレイの方がいれば、是非この機会に遊んでみてほしい。
ちなみに、僕はいまだ麻宮アテナが好きだ。『ザ・キング・オブ・ファイターズ94』の中国チームとして彼女が登場した時はデザインの大幅な変更に少し驚いたが、麻宮アテナとしての要素は失われていなかった。超能力、女子高生、隣にいる椎拳崇、そしてステージBGMとして採用されたサイコソルジャーのテーマ。94の中国チームは、あまり強くはないと言われていたが、バグを利用してサイコボールを連打するテクニックなど、ちょっとひねった攻略テクニックなどが多数あり、ずいぶん楽しむことができた。
その後も、やっぱり麻宮アテナのことが気になって『ザ・キング・オブ・ファイターズ』シリーズでは、最初に彼女を選んでみることにしている。ただ、このキャラクター、シリーズ作品では性能的に恵まれていることが少なく、メインとして使い続けていたのは94、2002くらいだった。あとはいつも簡単に使えるキャラクターに移ってしまったのだが、最近はキャラクター性能をあまり気にせず、好きなように格闘ゲームを遊んでいるので、最新作の14ではまたアテナを使っている。見た目や設定、演じる声優ももさまざまに変化してきたが、彼女の芯のようなものは変わっていないように感じる。途中から追加されたアイドルという設定も、超能力、女子高生とのシナジーに満ちている。『ATHENA ~Awakening from the ordinary life~』や『Days of Memories』シリーズ、最近発売されている『SNKヒロインズ』などでもそれぞれに変化や進化が見られたが、やはり彼女たちはみんな麻宮アテナだった。
変化と進化を楽しめる、稀有なゲームヒロインである麻宮アテナ。永遠の『サイコソルジャー』は、これからも輝く存在であってほしい。