2D格闘ゲーム『サムライスピリッツ』シリーズをご存知だろうか。
武器による攻撃の応酬を楽しむという、格闘ゲームとしては一風変わったシリーズ第一作がゲームセンターで稼働したのは1993年のこと。斬撃でごっそり大ダメージを与える爽快感の虜になった人も多いはず。
今回の記事では、シリーズ2作目、1994年に稼働した『真SAMURAI SPIRITS 覇王丸地獄変』(以下『真サム』)をプレイし続ける・D3D氏にお話をうかがった。
今回の記事のきっかけとなったのは、2019年に『サムスピ』シリーズの新作が登場するというニュース。
PVを見たとき、頭の中にまず浮かんだのは”『サムスピ』らしい”という月並みな感想だったが、よくよく考えてみると、「何をもって『サムスピ』らしい」かがわからなかった。
おなじみのキャラクターがいること、技のダメージが大きいこと、美しい剣閃。いろいろと理由を挙げることはできるが、もっともらしいことを言うことはできても、核心に迫ることはできないだろうという予感もあった。
『SAMURAI SPIRITS』PV
『サムスピ』シリーズといえば、歴史の長いタイトルで、格闘ゲームとして発売された作品だけでも10作を超える。
作品によりキャラクターやシステムも変わるため、思い出もプレイヤーによってさまざまだろう。だからこそ簡単に、「これが『サムスピ』らしさです」と語ることはできないのだ。
それならばということで、『真サム』に向き合う一人のプレイヤーに話を聞いてみることにした。20年以上に渡って『真サム』をプレイしつづけるD3D氏であれば、なんらかの『サムライ』感を持っていることは間違いないだろうし、その中に我々が納得できる「『サムライ』らしさ」があるのかもしれないと考えたからだ。なぜ『真サム』なのかという素朴な疑問と、25年以上に渡るプレイの成果とはどのようなものなのかという好奇心をぶつけたところ、返ってきたのは濃厚な『真サム』愛と、想像もつかない最新の攻略だった。
奥深い斬り合いの世界を、記事から感じ取ってもらえれば幸いだ。
D3D 氏:『真SAMURAI SPIRITS 覇王丸地獄変』の魅力に惚れこみ、その深みを目指して日々プレイを続けている。攻略サイトの運営も行っており、現在の『真サム』対戦文化を支える存在でもある。
攻略サイト:真刃繚乱
聞き手:浅葉たいが
『真サム』の本当の姿
――最初に『真サム』を遊んだのはいつ頃になるのでしょうか。プレイの経歴などもお聞かせください。
D3D:プレイ歴でいうと、稼働から今までですね。もともと初代『サムライスピリッツ』を触っていた流れから、『真サム』も稼働初期から遊んでいたんです。そこから対戦にのめりこみ、このゲームの奥深さを知ってしまって、離れられないでいます(笑)
――:稼働から今までずっとですか!?途中でプレイをやめて、戻ってきたというわけではないのでしょうか。
D3D:ゲームセンターになくなってしまった時期は、対戦できなくなったりもしたんですが、それでも家などで調べものをしたりしていましたね。ほぼ毎日、いやもう毎日このゲームのことを考えています(笑)ただ好きだからというわけではなくて、このゲームにずっと可能性を感じているんです。最近は、高田馬場ミカド(東京・高田馬場にあるゲームセンター)がレトロなゲームを盛り上げようと頑張ってくれていて、そのおかげで対戦できるのが嬉しいですね。昔遊んでいた人がまた戻ってきてくれたり、新規プレイヤーも増えているんですよ。対戦したい、遊んでみたいという人は、ミカドに足を運んでみてください。
――新規プレイヤーが増えているというのは凄いですね。僕も稼働した頃は、『真サム』の対戦を楽しんでいました。ただ、僕のホームゲーセンでは、がっつりと対戦を楽しめるほどには流行っていなくて、右京とかシャルロット、幻庵あたりを使うとすぐ人がいなくなってしまっていました。いわゆる強キャラクターが強いゲームだなということで、諦めてしまった人も一定数いたように感じるのですが、今の対戦情勢はどうなっているのでしょうか。
D3D:右京とシャルロットは強いですね。幻庵は昔ほど評価の高いキャラクターではなくなりました。右京は、最強キャラクターと言っていいと思いますし、シャルロットも右京ほどではないですが強いです。ただ、おそらく浅葉さんが遊んでいた頃にはなかった戦術やテクニックが見つかったり、取り入れられたりして、この2人を使っても、そこまで簡単に勝てるゲームではなくなってきています。あくまでも「そこまで」、ですが(笑)
――:そういうのが聞きたかったんです(笑)
D3D:この2キャラクターの話をする前に、現在の『真サム』の立ち回りの基礎についてお話しますね。このゲームの闘いの軸となるのは「大斬り」「気絶」「回避行動」の3つだと思っています。そして、『真サム』というゲームは、ざっくりいうと「大斬りを当てるゲーム」なんです。他のゲームで言うところの「飛び込みからの連続技」的なものが、常にボタン一発で飛んでくる状態だと思ってください。大斬りは発生は遅いですが基本的にはリーチが長いので、小・中斬りの牽制の外から斬りつけることが出来る。この「相手の剣先を見切って大斬りを叩き込む」というのが醍醐味の1つですね。
――なるほど。なんとなく光景がわかります。
D3D:しかしそうなると、相手としてはつまり「空振る間合いでは技を振らない」となってきますよね。そこで、「ダッシュ投げ」の出番です。「大斬りが怖いから慎重になる」その瞬間に走り込んで投げるわけですね。しかし、ダッシュ投げはあくまでも投げですから。投げるためには大斬りの強みであるリーチの長さを捨てて踏み込まなければなりません。そこで、小・中斬りや蹴りによる牽制が活きてきます。踏み込んでくる瞬間を出の速い小斬りで止める。または、大斬りほどではないにしてもリーチのある中斬りでそもそもダッシュを抑止する。で、最初の「その牽制を見切って大斬りを当てる」に戻るわけです。
――読みあいが一周回ったというわけですね。けん制技で相手の足を止めて、ダッシュ投げを狙うという攻防は、『真サム」以降の『サムライスピリッツ』でもよくある光景です。そこから即死したりするゲームもありました(笑)
D3D:『真サム』の場合は、投げも打撃を当てる場合の布石というイメージですね。ちなみに、この基本的な読みあいの中で距離調整や奇襲に使われるダッシュですが、『真サム』の大きな特徴として「ダッシュ中は常にガードを受け付けてくれる」という性質があります。ダッシュ中に攻撃が飛んできても、ガードを入れておけば防ぐことができるんです。『サムライスピリッツ』はこのダッシュの出掛かりに隙があったのですが、『真サム』はこの隙が無くなったことにより、ダッシュが地上戦の軸となっています。初代『サムライスピリッツ』は「歩く」ゲーム、『真サムライスピリッツ』は「走る」ゲームだと言えるかもしれませんね。
――『サムライスピリッツ』と『真サム』は、似て非なるゲームということでしょうか。
D3D:そうなんです。初代『サムライスピリッツ』と『真サムライスピリッツ』には、システム的な「中段攻撃」がありませんし、ケズり技もほとんど存在しませんから、ガードがかなり安全な防御手段なんです。初代『サムライスピリッツ』は一撃を取り戻すのが非常に難しく、それ故に「一撃も食らえない」という独特の緊感があります。『真サム』はダッシュと投げのシナジーが良いため、ガードは比較的崩せるようになりました。よくこのシリーズを表現する言葉として「一撃が重い」と言われますが、初代『サムライスピリッツ』は「一撃の”価値が”重いゲーム」、『真サムライスピリッツ』は「一撃の”威力が”重いゲーム」だと思っています。ちなみに、現役の『サムライスピリッツ』勢の方もいて、素晴らしいやりこみを見せてくれます。僕も遊んでいた作品ではあるのですが、機会があれば現役の方に話を聞いてみてください。
――1作品の間に、大きな変化が起きていたんですね。魅力の2つ目として挙げていただいた「気絶」というのは、『真サム』でたびたび見かける現象ですよね。気絶すると、その次のコンボで倒しきることも珍しくありません。
D3D:『真サム』では「最初にダメージを食らった時点から、キャラごとに決められたリフレッシュ時間以内に受けた実ダメージの総量が、キャラごとに決められた気絶耐久力を超えると気絶する」という仕組みになっています。覇王丸と右京の対戦を具体例として挙げてみましょう。右京は気絶耐久力値が64、リフレッシュ時間は4秒です。覇王丸の遠立ち大斬り「斬鉄閃」の威力は30ですので、これが右京にヒットした場合、右京側の残り気絶耐久力値は64-30=34となります。つまり「最初に斬鉄閃を食らった瞬間から4秒以内に34以上のダメージを食らうと、右京は気絶する」という事です。残り34ですから、もう一発斬鉄閃を食らってもギリギリ4残って耐えますね。でもその次はもう小斬り一発食らっただけでも気絶します。でこの気絶耐久力値を回復させるにはどうすればいいか。ここに絡んでくるのが「リフレッシュ時間」です。先ほどの例でいうと、右京は斬鉄閃を食らってから4秒以内に34のダメージを食らうと気絶しますが、同時に「4秒後には64まで全快する」という意味でもあります。「最初にダメージを食らった時点から」という点も面白い要素で、「最初の一撃を小攻撃にしてしまうと、気絶させるのが難しくなる」という事です。
――現在よくあるゲームのように、気絶値が徐々に減少していくというタイプとはちょっと異なるんですね。先に当てる技も考えることで、気絶を狙いやすくなると。
D3D:先ほどの組み合わせで再度具体例を挙げますと、例えば覇王丸側が当てた技が「斬鉄閃」ではなく「遠距離しゃがみ小斬り」だったらどうなるか。遠距離しゃがみ小斬りの威力は9です。という事は64-9=55となり、「4秒以内に55のダメージを出さないと気絶しない」という事になります。最初の例では34で良かったわけですが、難易度が飛躍的に上がるわけです。大斬りは、威力は高いけれど当てにくい。言い換えれば「当たる状況を作るのに時間がかかる」と言えます。しかし戦術としては「小技で刻んでから大斬りを狙う」より、「大斬りを当ててから小技で刻む」方が勝ちやすいわけです。現実世界で例えると、1か月以内に34万円稼ぐのと55万円稼ぐのとでどっちが難しいか、という事ですね。
――わかりやすい!回避行動というのは、前転や伏せのことでしょうか。
D3D:はい。本作の回避行動は、「ダッシュ」「バックダッシュ」「前転」「後転」「伏せ」「下段避け」、多いですよね(笑)実はこれらの行動のほとんどは、隙がそれほど大きくありません。「バックダッシュ」と「下段避け」以外は基本的にいつでもガードへ移行できます。「前転」「後転」に関しては成立した瞬間から全身無敵・半身無敵が付くものが大半です。このゲームは、武器を使って戦うので、リーチの長い技が多いんですが、攻撃判定の持続時間、特に斬撃の持続時間が非常に短いんです。ホンの一瞬でも回避できれば相手の斬撃は空を切り、こちらの攻撃が通るようになります。先ほど話したように、ガードが非常に硬いゲームですが、ガードではチャンスがなかなか回ってこない。そこで多彩な「回避行動」を利用して相手の斬撃を躱し、チャンスを作り出す。この回避行動の豊富さが真サムの3つめの魅力だと考えています。
――3つの要素が絡まることで独特の勝負が生まれているというわけですね。
D3D:『真サム』は「大斬り」を狙うゲームなんです。それは何故か。「気絶」のプレッシャーが生まれるから。ではそれを当てるためにはどうするか。相手の攻撃を「回避」すること。しかし「回避」は失敗すれば斬られてしまう。この3軸が、『真サム』というゲームの神髄だと私は考えています。この仕組みの中でやる斬り合いが、本当に楽しいんですよ。
――シンプルですが、奥深さが伝わってきます。大斬りを決めたときの爽快感って、ちょっと他のゲームでは味わえませんもんね。では、右京とシャルロットは、この基本ルールの中で強いということなのでしょうか。
D3D:右京の強さを簡単に言うとすると、「最強の通常技と最強の飛び道具と最強の突進技を持っている」という事になります。まず最強の通常技・遠距離立ち中斬りは、リーチが非常に長く、その上発生もとても速い。更にそこから残像踏み込み斬りがつながってしまうキャラが多い。つまり、長さが中斬り・速度が小斬り・威力が大斬りという冗談みたいな性能です。真サムは「大斬りを狙うゲーム」と言いましたが、右京は「中斬りを狙えばよい」という事になるんですね。これに加えて、最強の飛び道具・燕返しも強力です。燃焼させてダウンを奪えるうえ、軌道が変則的かつ撃ち分けられる。更に本体は飛び道具とは別の攻撃判定を持っている。ジャンプ方向を問わず空中のどこでも任意に撃つことが出来て、バックステップ中でも撃てる。要素を並べていくだけでも圧倒的な性能です。
――それに加えて、残像踏み込み斬りもあるという(笑)
D3D:突進技なのに先頭に食らい判定が無い。連続技にしやすい。ガードされても隙が小さい。中残像踏み込み斬りなどは2回ガードさせて状況五分です。これはつまり、「投げ以外にガードを崩せる選択肢を持っている」という意味でもあります。ケズリが弱いゲームなんですが、右京はケズリが強いんですよ。中斬りで押し・燕返しで逃げ・残像踏み込み斬りで戻ってくる、という動きに苦労された方も多いんじゃないでしょうか。
――まさに僕らがやってた頃の最強キャラクターの姿です。
D3D:しかしそんな右京ですが、弱点としては「カウンターダメージに弱い」という点が挙げられます。最初のほうに話した、簡単に勝てるキャラクターではないという理由のひとつがココですね。
――右京の技にカウンターをとったときのダメージが高いということですか?
D3D:その通りです。たとえば、燕返しや残像踏み込み斬りはカウンターダメージ補正が1.5倍。遠立ち中斬りは1.2倍です。右京を相手にしたときは、これを活かすことになります。先ほどの斬鉄閃でまた考えてみましょう。1.5倍ですから、つまり残像踏み込み斬りを斬ることが出来れば30*1.5=45となります。この場合、右京の気絶耐久力値の残りは19ですから、これはもう次に中斬り食らったら気絶してしまいますね。右京の技と正面から斬り合っても勝ち目はないので、右京の間合いでは下手に手を出さない。伏せや前転で躱し、あるいは右京の攻撃の外から一撃を叩き込んで気絶させること。これが基本対策になります。
――『真サム』、天才が作ったのかもしれませんね。カウンターダメージ補正という概念、似たようなものだと特定技のリスクをあげるために一律でついていたりするんですが、このゲームの場合は、技ごとなんですね。
D3D:そうですね。ズィーガーや王虎などはかなり面白い数値のつけかたをしていて、主力の通常技はおおよそ0.7~0.8倍前後。1.0を下回っているのがスゴいですよね。つまりこれらの技は、カウンターをとられたら棒立ちで食らうより減らなくなるんです。そのかわり、ハイリターンな大技には、カウンターダメ―ジ補正が高めにつけられたりしています。
――そんな細かい補正のつき方が(笑)プレイしている時は気づきませんでした。今の大斬り、減ったなー、みたいな感覚でした(笑)シャルロットについてはいかがでしょうか。彼女にも、システム的な弱点があるのでしょうか。
D3D:シャルロットは遠距離しゃがみ強斬りがとてつもなく強いです。他の技も全般的に発生が早く、リーチが長く、隙が小さい。さらに、このゲームにしては珍しくジャンプが速い。通常技や行動の1つ1つが単純に高性能なんですね。ただ、いいことづくめではなくて、弱点もちゃんとあるんです。代表的なところですと、崩しの要である投げの威力が低い、ケズリ能力にも乏しいこと。ここぞというところの瞬間火力もちょっと物足りません。そして一番致命的なのが、気絶しやすいことです。シャルロット自身は気絶耐久力値が51しかありませんから、逆転しにくく、逆転されやすいキャラクターということになりますね。
2000年以降に見つかった、驚愕のテクニック
――このゲーム、謎のパラメーターがいろいろと設定されているんですね。システム的な弱点をついていけば、この2キャラクターを押し返せるということでしょうか。
D3D:そうですね。幸いなことに、他とは明らかに抜きんでているその2人に関しては防御面に致命的な弱点があったので、「強いのは確かだけど、攻略法はある」という状態です。まあ、その弱点を突くまでが非常に大変なわけですが(笑)なまじ攻撃面が優秀過ぎるが故に手を出したくなる。だからそこを回避して一撃を叩き込むという面白さがありますね。そして、回避に関しては1つ、2000年に面白い技が見つかりました。「ダッシュ前転キャンセル伏せ」というものです。
――名前的に、凄そうなテクニックですね(笑)
D3D:伏せは通常「2N2」で出すわけですが、その直前に前後いずれかが入力されてしまうと出せなくなるんです。細かな例外を敢えて無視してざっくりいうと、「歩いてから伏せることはできない」「ガード後に伏せることはできない」という事になります。1999年まではこれがかなりの足かせとなっていました。これが2000年になって、「ダッシュ前転(663)を伏せで直接キャンセルできる」ことが発覚したんです。1999年まではダッシュに対して「長くて隙の小さい技」で正確に牽制すれば、仮にガードされても押し戻せる。前転で抜けられても前転より先に行動可能になれる技であればその後投げてしまえばいいという状況がありました。これが一気に崩されたんです。
――ダッシュによる接近がより強力になったというわけですね。
D3D:そうなりますね。伏せは成立と同時に食らい判定が非常に小さくなる上、伏せそのものには一切の硬直がありません。どんな技でも、伏せで躱されたらシステム的には反撃を取られるわけです。そして、前転には基本的に全身無敵がある。しかもキャンセルできるのはこの無敵時間中なんです。これは事実上、「ダッシュで懐に飛び込んでくる相手を安定して止める方法がほぼ無くなった」という事になります。特にその恩恵を受けたのが覇王丸でした。覇王丸はダッシュ自体が忍者並に速い上、相手の牽制をこの行動で避けた際には近しゃがみ大斬り→弧月斬(または烈震斬)というとんでもない威力の技が確定します。特に怒り状態で決められた時などはその一発で気絶することが殆どです。で、その気絶に天覇封神斬で勝ち、と。その他のキャラクターも、この技によって立ち回りの幅が一気に広がりました。「革命」と呼べる技でしたね。
――おお、これは凄い(笑)迂闊に技を振れませんね。2000年に新テクニックが見つかっているというのも面白いですね。
D3D:2000年といわず、細かいものなら現在でもほぼ毎月のように見つかっています。最近のもので言うと2018年には、前転キャンセルダッシュというものが実用化されました。出来ること自体は昔から判ってはいたのですが、実戦レベルで使えるようになった。斬り合いの間合いから前転でいきなり全身無敵を作り、牽制を抜けてダッシュから投げに行きます。この技はズィーガーと特に相性が良いですね。投げが入ったらその起き上がりをヴルカーンでケズることが出来る。投げ以外にも入力的にファイアーストゥームが出せる。前転から直接ヴルカーンで燃やしてもいい。確認さえ正確ならティーガーコップも狙える。非常に強いです。
今から『真サム』をやるなら、この7人の侍から選ぼう!
覇王丸
D3D:一番おすすめしたいのは覇王丸ですね。何と言っても遠距離立ち大斬り「斬鉄閃」が気持ち良い。この技自体がめちゃくちゃに強いわけではなく、ちゃんと狙って使わないと当たらないというところが味わい深いかと。ダッシュが気持ち良いのもおすすめしたい理由ですね。遠距離しゃがみ小斬り、遠距離立ち中斬り、遠距離立ち大斬り、ダッシュ投げの4つだけでも相当遊べますよ。このキャラクターに、『真サム』というものが集約されていると思って良いと思います。
柳生十兵衛
――十兵衛、柳生心眼刀のロマン、というわけではなさそうですが、どういったところが魅力なんでしょうか。
D3D:十兵衛は、キャラクターとして飛びぬけて強いわけではないんですが、
牙神幻十郎
D3D:幻十郎は覇王丸より全体的にやや遅い代わりに、選択肢が豊富なキャラクターです。三連殺があることで、地上で斬り合いながら、いきなり前後の二択を仕掛けられるのが大きな個性になっています。前後二択で威力も高く、何と言ってもダウンが取れる。つまり、読み勝ち続けるならワンチャンスからずっと転ばし続けて勝つことが出来るわけです。弱点としては三連殺はカウンターダメージが1.5倍あることと光翼刃に化けやすい事です。
――よく光翼刃の暴発に苦しみました。暴発を少なくするコツなどはあるのでしょうか。
D3D:歩いてすぐ繰り出すのではなく、歩いて待つか、歩いて少し下がって打つという入力を心がけるといいかもしれませんね。上級者でも暴発する要素なのですが、練習することでだいぶ緩和されるはずです。単純に強い技というわけではないですが、ちょっとした繊細さもあるので、使いこなせるようになると楽しいですよ。
千両狂死郎
D3D:次は、千両狂死郎ですね。覇王丸よりもリーチがやや短いんですが、技が全般的に強めです。もう少し正確にいうと、食らい判定が伸びない行動が多いんですね。特に、遠距離立ち大斬りが強く、この技は伏せを斬ることが出来るのも優秀なポイントです。戦い方としては、相手を前に押していくのは難しいのですが、引きながら戦うと非常に強い。この、「引きながら」というのは何気に重要で、つまり基本的に「ガードしている」という事になります。この辺が初心者にも嬉しいところかなと。弱点としてはダッシュがやや遅いので、リードされるとやや大変になるところと、気絶しやすいという部分です。普段は技の強さに物言わせてブンブン振り回せるんですが、ひとたび何か食らうとしばらく大人しくしないといけません。気絶を絡めた攻防を知るのに良いキャラクターですね。
――システム的な弱点というのも、新鮮な着眼点ですね。90年代にプレイしていた頃は、ぴよりが運だと思っていました(笑)
ナインハルト・ズィーガー
D3D:ズィーガーもオススメです。強みとしては、防御力とケズリ性能が非常に高いところ。投げが使えなくても相手のガードの上から体力を奪うことができます。技そのものは弱めですが、防御力を活かして相打ちを取るというスタイルを得意としています。ティーガーコップからの3段技は、斬鉄閃より当てるのは難しいものの、威力が高いので逆転力もあります。起き上がりのケズリも含めると大体2倍くらいの威力ですね。その分、決める難易度が上がっていると。小技とケズリで辛抱しながら、ワンチャンスを逃さず一気に粉砕するというカタルシスがたまらないキャラクターですね。
服部半蔵
D3D:半蔵は、攻撃力こそ低めですが、リーチが長く隙が小さい技を軸にした立ち回りが持ち味です。隙が少ないので大技を食らう可能性も低いですが、
ガルフォード
D3D:ガルフォードは、リーチが短いキャラクターですが、ダッシュの性能が高いんです。足を止めて戦うと弱いんですが、
D3D:バックスタブと影舞は一部状況で確定しますからね。一度発動すれば、しばらくの間立ち回りが目で見えなくなるので、とても強いです。ガルフォードの場合は、犬の位置でわかるから弱いという意見が昔ありましたが、逆に犬がいるから、囮として使えるので全く問題ないです。ぬいぐるみを使うと、犬も消せるので、これもネタ殺しとして使えたりしますよ。
――隠し技って、コマンドが難しいだけじゃないんですね。当時は、失敗することのほうが多くて、戦術としては認識していませんでした。
D3D:ナコルルのアペプチカムイリムセも、対幻庵への削り技として使いますね。ナコルルは、しゃがんだ幻庵を投げられないので、これに頼ることもあります。ぬいぐるみについては、投げ無敵を活かすことができます。たとえば、覇王丸の大斬りをくらったあとに、相手がダッシュしてくる状況。ここは、投げを受けても危ない、手を出すと前転伏せで狩られてしまう。そこでぬいぐるみで両対応するんです。あとは、起き上がりに、コマンド投げを重ねてくる戦術への切り返しですね。説明だけすると超強い防御方法なんです。ただ、コマンドが難しいので、この技を軸に戦術を組み立てるというのは難しいですね。
『真サム』って面白い!
しかし成功イメージは重要なのでUPはしておこう。
経験上、2027年辺りで実用化している気がする。 pic.twitter.com/exGKBT8JEs
— D3D (@D_3D) March 2, 2019
――また、『真サム』を遊びたくなってきました。
D3D:細かいテクニックは置いておくと、このゲームはシンプルに遊んでも面白いんです。たとえば、相手に技を叩き込むチャンスがあったとして、そこに「連続技」を狙うよりも、シンプルに大斬りを決めたほうがいい場合もあります。難しいコマンドは苦手という人も、キャラクターを選んだり、プレイスタイルを工夫すれば、勝てるプレイヤーに成長していくと思います。技術をあまり覚えなくてもかけひきを楽しみやすいというのは、大きな魅力だと思いますね。
――『真サム』をこれからやりたいという人がいたら、アーケードアーカイブス版等もオススメなのでしょうか?
D3D:アーケードアーカイブスは、アーケード版に忠実なので、練習や対戦には活用できます。身近に遊べる人がいる場合はオススメですね。あとは、都内の方であれば、高田馬場ミカドのほうに僕はほぼ毎日います(笑)五月の連休には、高田馬場と池袋のミカドで『サムライスピリッツ』シリーズの大会が行われます。こちらも、盛り上がると思います。
――大会、楽しみにしています!ありがとうございました。(了)
インタビューを通じて、『真サム』はもちろん『サムライスピリッツ』のイメージが大きく変わった。とにかくダメージの大きいゲームなので「大味」という言葉で片づけてしまいがちで、自分の思い出といったら、強い技を振り回したり、派手なコンボを決めることに寄っていたが、そこから先へと進んでいくと、また違った景色が見えてくることを知った。
ダメージが大きいからこそ、お互いに繊細な立ち回りとなり、試合に独特の緊張感が生まれるのだ。そして、『真サム』はその中でも遊びやすい作品といって間違いないだろう。
D3D氏はなんと、いろいろなキャラクターを使って、本作を楽しんでいるという。当面の目標は、ミカドで開催される大会で「全キャラクターを使って優勝する」ことだそうだ。厳しい組み合わせも存在するものの、それが不可能と言えるようなゲームバランスではなく、そのうえいまだに新たな発見がたくさんあるというのだから、達成される日がいつか来るのかもしれない。
新作を遊ぶもよし、旧作で深みを追求するもよし。興味のある方は『サムライスピリッツ』の世界に飛び込んでみてはいかがだろうか。