【TGM4】アリカ主催『TETRIS THE GRANDMASTER4 -ABSOLUTE EYE-』開発陣&プレイヤー座談会レポート

「誰も体験したことがない究極の『テトリス』を楽しめます」

2025年4月4日にアリカから発売された『TETRIS THE GRANDMASTER4 -ABSOLUTE EYE-』のSteamストアページにはこう書かれている。そんな大げさなと思う方がいるかもしれないが、プレイしたことのある方、もしくはこのゲームを知る方ならこの文言こそが本作の本質だと感じるかもしれない。

『TGM』シリーズは毎回尖りに尖っている。20年ぶりの最新作『TGM4』が出たというのに、まだ過去作のやりこみは完結していないというほど奥深いゲームなのだ。

●参考動画:アガラナイの滝 さん
MASTER GRAND-MASTER! Rounds-Eight (Standard)

奥深いゲーム性と、痺れる難度にとりつかれたプレイヤーも多い。1作目から遊び続けている方もいれば、その難度や歯ごたえを聞きつけて挑戦してみようと飛び込んできた若手の方もいるという。
『TGM』はいたずらに難しいというわけではなく、入り口は優しく、気が付けばどんどん沼にはまっていくような作りになっているのだから恐ろしい。

本記事では、その沼にはまってしまっている現役プレイヤーたちと、『TGM4』の発売元であるアリカの開発陣が同席した座談会の模様をお届けする。
座談会の会場は青山の中華料理店「礼華 青鸞居(らいか せいらんきょ)」で行われた。煌びやかで美味しい料理をいただきつつ『TGM』を語り合うというなんとも贅沢な集いとなった。

プレイヤーには、RTA in Japanで走者を務めたはるくさん、コーリャンさん、アガラナイの滝さん。そして解説を務めたりょくちゃさんとjin8さん。Classic Tetris World Championship(クラシック・テトリス・ワールド・チャンピオンシップ、略称CTWC)に出場するため渡米したさいとさんらをお招きした。(CTWCではTGM4の大会も同時開催され、コーリャンさんとりょくちゃさんも併せて渡米した)

左からさいとさん、りょくちゃさん、コーリャンさん、アガラナイの滝さん、はるくさん。一番右はアリカの平嶋プロデューサーことjin8さん。座談会はアリカが手配してくれた中華料理店「礼華 青鸞居(らいか せいらんきょ)」で行われた。

▲食べながら、飲みながらで行われた座談会は終始和やかな雰囲気で進行した。座談会では「料理美味しすぎるでしょ!」、「これ何ですか?美味しい……」みたいなやりとりも頻繁にあった。

礼華 青鸞居(らいか せいらんきょ)


※写真は公式サイトより引用。
ダイニングホールと個室を備えた中華料理レストラン。青銅器風の壁、アンティークの鳥かごや絵画がお洒落でモダンな空間を演出。
これからの季節は上海ガニが楽しみなお店。
〒107-0062 東京都港区南青山2丁目27−18 パサージュ青山 1階

『TGM』の魅力とは

――今日はよろしくお願いします。まず、簡単に自己紹介をお願いいたします。『テトリス』歴、『TGM』歴など教えていただけると。

さいとさん:さいとと申します。『テトリス』歴は2018年くらいからなので、7年くらいでしょうか。『TGM』もこの頃からやっています。活動としてはNES版『テトリス』のオフラインイベント「わくわくNESテトまつり」を主催させていただいてます。

りょくちゃさん:『テトリス』歴は20年くらいで、親が持っていたゲームボーイ版からのめりこんでいきました。5歳くらいの頃ですかね。『TGM』は10年くらいはやっています。あとは『テトリス』を作る側の経験もありまして、『テトリス® エフェクト・コネクテッド』のマルチプレイヤー・リードゲームデザイナーを担当しました。

コーリャンさん:わたしは1988年に出たセガの『テトリス』からなので、37年とかですかね。『TGM』は2作目から遊んでいます。いろいろな『テトリス』をかじりながら遊んでいます。

アガラナイの滝さん:テトリス歴は、2017年からで8年ですね。中学生の頃からはじめました。『TGM』は『テトリス』に触れはじめて半年くらいのときに、アリカさんのGM認定試験挑戦ムービーを見てからのめりこんでいきました。りょくちゃさんが当時書いてくれていた攻略記事をきっかけに、いろいろな出会いがありました。

はるくさん:テトリス歴は物心ついた頃、ファミコン版の『テトリス』からです。35年くらいやっていることになりますね。『TGM』は、高校に入ってゲームセンターに行く頃、2000年頃からですね。難しいけどやってみるかという付き合いのスタートでした。本格的にやりはじめたのは『TGM3』で、それ以前は『ぷよぷよ』のほうに力を入れていたんです。

jin8さん:スコアネームjin8です。『テトリス』歴はゲームボーイ版からスタートしているので、35年くらいです。ゲームセンターで最初に触ったテトリスが『TGM』です。『TGM3』のロケテストなんかはコーリャンさんたちとご一緒しましたよね。今は平嶋として、『TGM4』のプロデューサー兼プログラマーをやっています。

――皆さん『TGM』のどのようなところに魅力を感じていらっしゃいますか?今日は多人数での座談会ということで、「答えがかぶらないように」するのは大変だと思いますが、気楽にお答えいただけると嬉しいです(笑)

はるく さん:じゃあ、みんなが言いそうなところから。『TGM』シリーズに共通して言えるのは「ストイックなところ」ですね。難しいだけじゃなくて、プレイに応じた達成感がありますし、プレイしていると練習すべきポイントや意識するべきポイントが見えてくるんですよ。あとはゲーム側が段位等の報酬を用意してくれているところですかね。わたしは音ゲーをやっているんですが、その達成感に近いものもありますよね。音ゲーマーで難しい曲に挑戦するのが好きという方も案外ハマるんじゃないですかね。

コーリャン さん:初代『TGM』のアーケード版をいまだに楽しくプレイしている方も多いですからね。「終わりの見えない自分との戦い」を楽しんでいる人がたくさんいます。自分もまあまあプレイしているほうだと思うんですが、初代のワールドレコードなんかを見ていると、だいぶ差があるんですよ。そのワールドレコードが遠い以上「極めた」とか「果てを見た」とかは言えないですから、まだコツコツと遊んでいます。

アガラナイの滝さん:僕はもともと、難しいゲームというのが好きなんです。負けイベントのような普通にやっても倒すのが困難なボスをどう倒すかとか、すごく難しいステージをどういうプレイで切り抜けるかというようなことを楽しんでゲームをしていました。”『TGM』はなかなかに難しそうなテトリスだ”ということでチャレンジしはじめたんですが、奥深さに驚かされましたね。理不尽なだけではない難しさのあるゲームなので、とてもやりがいがあります。

▲『TGM』シリーズの難度に惹かれてはじめたというアガラナイの滝さん。RTAJでは走者として見事な走りを見せてくれた。

りょくちゃさん:僕もアガラナイの滝さんと同じで、難しいゲームが好きなんですけど、僕の場合は『TGM』と出会ったから難しいゲームが好きになってしまったのかもしれません(笑)もともと、『テトリス』はいろいろなものを遊んでいたんですが、『TGM』とはインターネットの動画で出会ったんですよ。うまくプレイしている人を見て、格好いいなあと。それって画面だけじゃなくて、集中しているプレイヤーの姿も含めて格好いいんです。そこも大きな魅力かなと思いますね。

はるくさん:アガラナイの滝さんやりょくちゃさん、さいとさんはわたしから見ると若手なんですが、若手のプレイヤーが出てきていると知ったときは嬉しかったですね。若くてうまいのがでてきたから、コミュニティが盛り上がるかなと。

さいとさん:『TGM』の魅力でいうと、ゲームセンター発祥のゲームということもあってか、コミュニティがあって、しかも参入者に優しいというのがありますね。僕が駆け出しのプレイヤーだった頃も、本当にいろんなアドバイスをもらったんですよ。先輩たち優しいなあと。物凄いうまいプレイヤーがいたとしても、偉そうじゃないんですよね(笑)お互いこのゲームの難しさを知っているからこその言葉選びとかアドバイスをしてくれる方が多くて。

――jin8さんはいかがですか。

jin8:開発側なので黙っていましたが、やっぱり繰り返し遊べるところが魅力ですよね。コミュニティに関しても、今日揃ったプレイヤーの顔ぶれをみると、世代もいろいろですよね。

コーリャンさん:日本の『テトリス』、『TGM』コミュニティでいうと、僕が『TGM2』で遊び始めた頃も優しい方が多かったですね。難しいゲームなのに、プレイヤーは優しい。壁みたいなものもなくて、圧倒的にうまい人も、プレイの上でつまずいたことならちゃんと答えてくれる印象があります。『TGM』は難しいからと敬遠している人も、コミュニティは優しいので是非遊んでみてください(笑)

はるくさん:Steamになって、コミュニティの姿は見えにくくなっていると思いますけど、Xにもいますし。『テトリス』系のイベントに顔を出している人もいますよね。Steamという新しいプラットフォームになったので、アーケードでは縁がなかった方も遊んでほしいですね。そして驚かせてほしいです(笑)

コーリャンさん:『TGM4』に関しては昔から遊んでいる人ほど感慨深いでしょうね。2009年にロケテストがあって、そのあと音沙汰がなくなって。2015年あたりにも気配は感じたんですが、そのタイミングでも発売されることはなかったですし。

アリカ:お待たせしました(笑)我々としても『TGM4』を諦めたわけではなくて、作っているような感覚もありましたし、当時の「今のテトリスガイドラインのルールの中で出しても面白いのか」というような葛藤もあったんです。2024年に、ようやくいろいろなことが噛み合って、これなら面白いことができそうだということで走り始めた感じですね。もちろん、その時にはテトリスガイドラインの中でやっていくぞという覚悟もありました。あんまり大きな声では言えないんですが、『テトリス』ってグローバルなIPなので、雑には扱えないんですよ。そのためのガイドラインなんですが、ユーザーさんや見方によっては「なんで?」と思うようなこともあるんです。たとえば最初の『TGM』とかを今の時代に新作として出そうものなら、ガイドライン的にはNGということもあるんです。そういったガイドラインを遵守しつつ、『TGM4』では、過去に出した仕掛けを使いまわすということをあまりしないよう意識しました。『TGM4』ならではの体験に振っている部分も多いのですが、そこが「人に受け入れられる難しさ」なのかどうなのかというような議論を三原と平嶋の間でよくやりましたね(笑)結果、「人の力を信じよう」ということで、いろんな意味でギリギリの難度で据え置いたところも多いです。

RTA in Japan

――RTA in Japanでは『TGM4』がタイトルとしてはるくさん、コーリャンさん、アガラナイの滝さんが走者を務め、りょくちゃさん、jin8さんが解説を担当されていました。どのような経緯でRiJに参加したのでしょうか。

はるくさん:せっかく新しい『TGM4』が出てくれたのだから、盛り上がって欲しいという思いもあって応募してみました。わたしはトッププレイヤーというわけではないんですが、誰も応募しなそうだったので、ちょっとやってみようかなと。ルール自体はマスターチャレンジがシンプルで良いということで、すぐに決まりました。時間内に目標を達成するというのは、知らないタイトルであったとしても、見ている人は楽しいですからね。

コーリャンさん:まずはるくさんが応募して、Xのほうで募集をかけてくれたんです。で、僕とアガラナイの滝さんがそこに飛び込んだ形です。2017年のRiJに『TGM』で出ていたこともあって、うまくいけば面白いものを見せられるのではと思っていました。とはいえ、一番大変だったのは、走者としてハードルの高い目標を設定したアガラナイの滝さんだったと思いますが(笑)

はるくさん:わたしとコーリャンさんはマスターへのチャレンジで、アガラナイの滝さんはグランドマスターへのチャレンジになりましたからね。アガラナイの滝さんはグランドマスターを狙えるだけのプレイヤーなので、せっかくなのでそこを見ていただきたいなと思ったんですが、かなり大変なことだったと思います(笑)

アガラナイの滝さん:普段通りやればいけるかなくらいの感覚だったのですが、やはり大きなイベントということで緊張もありましたね。手は震えますし、思考もいつもと違うような感覚でした。それに、が採用しているギミックの攻略法というのが、1回でもミスをすれば最初からやり直しというタイプのものなんですよ。ハマるとぐっと伸びていきますが、失敗すると目も当てられないくらいに何も出来ないままゲームオーバーみたいな方法だったので、「時間内に成功させる」というのはかってないプレッシャーでした。あとは、自分が大きな試験を控えているタイミングで、練習時間が直前になるまで取れなかったんですよ(笑)

りょくちゃさん:前日、僕の家に泊まって最後の調整をしていたんですけど、緊張が伝わってきましたね。

――解説はりょくちゃさんと、jin8さんが担当していました。どういう経緯で解説することになったのでしょうか。

りょくちゃさん:僕は、はるくさんが『TGM4』で企画を立ち上げたときに、秒で「解説します!」と(笑)面白そうなイベントだったので。イベントの直前には解説記事を書いたりもしました。

参考記事氷漬けテトリスに立ち向かえ!TGM4 Master Pikiiの攻略法を全解説(note)

コーリャンさん:ものすごく早いゲームなので複数走者に対して解説は1人じゃ大変かなということで、jin8さんにも打診したんですよ。元プレイヤーであり、今は開発の方ですが、RTAJにはメーカーの人が出ていることもあるので、とりあえずお願いしてみようと。快く協力していただけて、当日の雰囲気も良かったですね。

――jin8さん、依頼を受けた際の感想はいかがでしたか?

jin8さん:今日はjin8としても、アリカの開発陣の一人としてもいますし、コメントが難しいですね(笑)依頼を受けたときは、自分に務まるのかなと心配はしていまし。楽しいイベントなので、それを冷ますようなことになったら嫌だなと。開発なので、面白くないようなネタバレをしてしまうとまずいじゃないですか。そんな心配ごともあったので、事前に深めの打ち合わせをしました。そのあと、体調を崩して、当日はリモートでの参加になってしまったのは大きな反省点です。

▲RiJの『TGM4』企画は、はるくさん(中央)が応募したことがきっかけで動き始めたそう。平嶋プロデューサーことjin8さん(手前)は解説者として参加した。

さいとさん:当日、走者が3人並んでいるのは見ていて感慨深かったですね。走るわけでもないのに緊張していました。アガラナイの滝さんがキーボードで、コーリャンさんとはるくさんはアーケードコントローラーで走っていたんですが、デバイスの違いは見ていて面白いポイントかなと思いました。人によってそれぞれですし、『テトリス』の種類によってデバイスを変える人もいますよね。わたしはXboxのコントローラーを使っています。

コーリャンさん:僕はアーケードゲームとして『TGM』に入ったので、『TGM』はアーケードコントローラーで遊び続けていますね。RiJのときは、横の人に揺れが伝わるとよくないかなと思って、アーケードコントローラーの膝置きを練習しました(笑)アガラナイの滝さんはPCゲームは基本キーボードで操作するんですよね?

アガラナイの滝さん:そうですね。PCゲームは基本キーボードで、しかも自分が普段使っているやつじゃないとしっくりこないんですよ。

りょくちゃさん:僕も『TGM4』はキーボードでやることが多いですね。これまでのシリーズはアーケードゲームなので基本的にレバー操作ですが、『TGM』は素早く正確な操作が求められるゲームなので、移動をボタンのように行えるキーボードはやっぱりやりやすいかなと思っています。

アリカ:Steamになるということで、操作デバイスが多様化するだろうなという予測は早い段階でしていたんですよ。もちろん、キーボードも想定していたんです。とはいえ、『テトリス』はガイドライン通りに作らないといけないということもあって……。正直、葛藤した部分もたくさんあります。あと、これは笑い話なのですが、「〇〇というテトリスはダブルキーボードでの操作に対応している」みたいな要望が寄せられたんです。でも、調べてみると〇〇はダブルキーボードに対応していないんですよ(笑)Steamに『TGM』を解き放ったことで、想像もしない要望がたくさん来ました。でも言われるだけも悔しいので、「なんとかしてキーボードで1P、2P同時にできるようにならんかなー」と言ってたら、プログラマーが「8台までつなげられるようにしました」とか謎の仕様を盛り込もうとしてきて。結局4台までにしました(笑)抜き差しができるから8台まで認識してもいいんですけどね。

――RiJを無事終えた今の感想をお聞かせください。

はるくさん:無事に終わって良かったです。みんなで走り切れたのは嬉しかったですね。年々盛り上がるRiJの中で走るというのはなかなか緊張しました。次はだれか違う人が応募してくれて、わたしは解説とか、見る側でもいいなと思ったり(笑)

アガラナイの滝さん:試験よりも緊張したと思います。試験の結果と違って、RiJは走る過程と成功するかしないかをさらけ出すイベントなので、失敗はしたくないなーという思いで一杯でした。次があればまた何か挑戦してみたいですけど、『TGM4』はとにかく難しいゲームなので、変わらず緊張していると思います。

コーリャンさん:プレイスタイルの違いもお見せ出来てよかったなと。なかなか自分から動くプレイヤーじゃないので、乗っかる形になっちゃいましたが、楽しかったです。ぶっちゃけてしまうと、緊張はあまりしなかったです(笑)

jin8さん:現役だったら一緒に走りたいなという気持ちはふつふつとありましたね(笑)作るのももちろん楽しいんですが、RiJはそういう気分にさせてくれる熱い場所でした。音声トラブルとのときに、自分が黙っちゃったのは申し訳なかったですね。台本ベースでやっていたところがあるので。

りょくちゃさん:音声トラブルはありましたが、内容として面白い回になったと思います。心残りがあるとすれば、プレイヤーとして出ても良かったなあと(笑)Master Pikiiという見ごたえのあるギミックがあるのですが、ここは自分も別のスタイルのプレイをお見せしたかったですね。『TGM』って、人によってプレイスタイルが変わるゲームなのも良いところだと思います。でも『TGM4』はまだ難しすぎる気もしますが……。Cycloneのギミックは多少簡単になりましたが、それでも難しい(笑)

アリカ:今回はどういう歯ごたえのものを作るかと考えたときに、「こういう時代だから解析もされるだろう」と半ば諦めているところもありました。これまでの『TGM』が時代もあって、高評価を得るためにいろいろ模索しながらプレイするゲームだったのに対して、『TGM4』が出る現在は、「こうすればゲーム側が良い評価を出してくれるとわかったうえで遊ぶ」ということになるだろうと思っていました。そこで、アップデートすることで新しい難しさを提供したり、仕組みはわかっていても一筋縄ではいかないようなものも盛り込んだりもしています。Cycloneなんかは、従来の『テトリス』や『TGM』がうまければうまいほどハマるんですよね。頭がわかってしまうのに手が先に動いてしまうという。結果難しすぎたものもあって、一部調整はしましたが……。それでも、「人の力を信じている」ゲームなんですよね。絶対クリアーできないようなものは入れていないつもりです。

――平嶋Pと三原さんの間で、難度を決める際にどのようなやりとりがあるのでしょうか。

アリカ:「無理ですよこれは三原さん」、「わかった。でも平嶋くんが現役だったら、これクリアできる能性ある?」、「現役ならいつかクリアーできるかもしれませんね」みたいなやりとりを経て、「昔の平嶋くんがクリアできるかもしれないなら、他のプレイヤーもきっと誰かがやってくれる」みたいな感じで調整したところもあります。もちろんこんな冗談みたいな調整ばかりではなく、いろいろなテストを経てやっていることもありますね。誰もクリアーできないようなゲームを作るのって実は簡単なんですよ。たとえば格闘ゲームとかでも、絶対に勝てないCPUは作りやすいんです。でも、絶対に勝てそうにないけど、人の力で突破口を作れる相手を作るというのは難しい。作り手側としては『TGM』はそのぎりぎりを目指していますね。それにまだ発売された半年も経っていませんから、今の「難しい」が「慣れたらいけるかな?」に変わる日が来るかもしれません。1か月後か、1年後か、10年後かはわかりませんが……。

▲座談会中、多くの参加者から美味しすぎて溜息が出た一皿。上に載っているのは「松茸」です。

CTWC

――CTWCに参加することを決めた経緯についてお聞かせください。

さいとさん:有志が開催しているNES版『テトリス』のオフラインイベントでわくわくNESテトまつりというものがあって、このイベントに海外から参加してくれた人がいたんですよ。そこでの国際交流を経て、自分も海外に行ってみたいと思ったのが僕のきっかけです。もともとは、NES版『テトリス』のトーナントに挑むためにCTWCに参加することにしたんですが、4月に『TGM4』が発売されて、CTWCでのサイドトーナメント開催が発表されたのは驚きました。ちなみに、コーリャンさんとりょくちゃさんはCTWCに何度か参加している先輩だったので、同行いただけたのはとても心強かったですね。

▲CTWCに出場したさいとさん。

――CTWCはNES版『テトリス』のイベントとして盛り上がっていますものね。コーリャンさんはいつ頃から参加していたのでしょうか。

コーリャンさん:わたしが最初に参加したのは2016年ですかね。その頃も熱気はあったんですが、ここ最近は規模がすごいですね。プレイヤーの数もどんと増えました。

さいとさん:今年のCTWCなんかはもう、日本の大きめのeスポーツイベントくらいの規模でした。コーリャンさんは2016年くらいからNES版『テトリス』に取り組み始めたんですよね?

コーリャンさん:そうですね。2013年にSQRさんが、小平のゲーセンにNES版『テトリス』の面白さを教えてくれたのがきっかけなんですが、そこからしばらく本気で取り組むまでは時間がかかりました。2016年にようやく着手するんですが、その時に向いている要素があるなと思ったんです。NES版『テトリス』はミノの移動速度が遅いんですが、連打ができれば早く動かすことができるんです。自分は連打はまあまあ得意なほうだったので、「90万点出したら、CTWCに行ってみようかな」とか言っていたら、翌日90万点がでちゃったんですよね(笑)

りょくちゃさん:最近は新しいテクニックや新しい強豪プレイヤーがどんどん出てきていて、これも盛り上がっている要因なんでしょうね。若手のプレイヤーなんかもバンバン出てきています。

コーリャンさん:最近では、ローリングという入力テクニックを使いこなすプレイヤーが現れてきて、ゲームシーンは大きく変わってきていますね。ローリングというのは、ボタンの上に手を置いて、パッドの裏側から指で振動を与えるというものなのですが、これが極まってくると一般的な連打よりも早く連打入力ができるんですよ。ただ、これを修得するのがまず結構難しいという。

はるくさん:NES版『テトリス』は本当に毎年といっていいほど状況が変わりますね。つい最近も、解説記事を書いてみました。

参考記事:【2025】平成元年発売のテトリスの世界大会と、約20年ぶりの日本のテトリスシリーズ新作が大変なことになっている

▲りょくちゃさん(左)、コーリャンさん(右)。CTWCで渡米した経験を持つ。

――NES版『テトリス』は国外のレベルが極めて高いと聞きます。

りょくちゃさん:その通りですね。僕は正直、今年のCTWCのNES版『テトリス』で上を狙うのは厳しいかなと思っていて。やりこみの差があるなと。そこで『TGM4』がサイドトーナメントとして発表されたのは、タイミング的に嬉しかったですね。出たばかりの新作で力試しができるというのもわくわくしました。

さいとさん:わたしの場合は、NES版『テトリス』と『TGM』で、頭を切り替えるのが難しいので、どういうバランスで練習するかは悩ましいポイントになりました。参加表明はしたもののNES版『テトリス』は予選を突破できるか怪しい状態でしたから。

コーリャンさん:発表されたルールが結構インパクトのあるものだったんですよね。『TGM4』のいろいろなルールを遊ばせるみたいな感じで。短期間で練習しなければいけないんですが、そこにやりがいを感じましたね。

アリカ:CTWCの運営から誘っていただいたのがきっかけで『TGM4』がサイドトーナメントになったんですが、ルールに関しては運営側にお任せしたんですよ。予選と本戦でルールが違うという思い切ったトーナメントだなと我々も驚きました。『TGM4』プレイヤーにはわかると思うのですが、仕様としてミノが消える場面があるんですよ。その場面で観戦していたテトリスカンパニーのヘンクさんが、アリカの広報に「ミノが消えているときに何が起きているかわからないから、実況や観戦用のモードを作るのはどうかと三原に提案してくれ」とおっしゃっていたそうです(笑)参加してくれた皆さんは、ルールにどのような印象を受けましたか?

コーリャンさん:自分の得意ではないゲームモードも種目としてあったので、勝ち切るのは難しいだろうなとも思いました。ただ、総合力みたいなものを試しにきているのかなと感じました。

さいとさん:発売から間もない状態で、いろいろなルールで競うとなると、今まで使ったことのないテトリス筋が使われるのかなと思いました。自分自身が立ち向かえるかはもちろん、このルールに強いプレイヤーのプレイがどんなものになるかは興味がありましたね。

りょくちゃさん:自分が慣れていないゲームモードでは苦戦するだろうと思いつつも、『TGM』は日本に分があるのは確かなので、勝つことも意識していました。日本の強豪プレイヤーが少なかったのも追い風になりましたね。

『TGM4』制作秘話・ちょっと出し

――せっかく皆さん集まっているので、アリカさんのほうからここだけの話をお願いします。インタビュー記事には載ってしまいますが……。

アリカ:『TGM』シリーズは、仕様について隠し事しかないゲームなんですよ。三原の作るゲーム自体そういう形式のものが多くて、平嶋には「仕様書を滅多に書かない」と言われるほどです。なのであまり語れることはないです。ごめんなさい。ひとつここだけの話をすると、謎のエクストラボタンについては、「使ってくれてもいいけど……」というボタンです。使わなくてもクリアできるとは思っていますが、グレードを詰めたあと、タイムを詰める段階で使う人が出てくるかなとも思っています。ただ、結構癖のある、危険なボタンなので、「使ったら戻れなくなる」おそれもあるんじゃないかなとか心配もしています。開発側でも効果を全部把握していない人がいるボタンなので、気になる人はいろいろ試してみてください。

――制作秘話みたいなものはいかがでしょうか。

アリカ:皆さんが愛してくれていた『TGM』シリーズと大きく異なるのは、Steamということで”環境差”が生まれやすくなっているところです。ブラウン管よりも遅延のある液晶モニターで、そのうえプレイヤーによってスペックが違いやすいPC、モニター、操作デバイスなんかを想像していくと、遅延や操作の感覚が変わるとゲームが揺らいでしまう『TGM』は辛いところもあるんです。いろいろと検証しながら今の形にしたのですが、現状も操作感について意見をいただくことが多くて、本当に繊細なゲームだなと痛感しています。

――『TGM』は方向キーやレバーの操作が極めて繊細ですものね。

アリカ:いままでのブラウン管が最良の環境だったとすると、『TGM4』は液晶になったことで入力してからミノが動きだすまではやっぱり1フレーム以上は遅くなっているわけです。長年遊んできたものと1フレーム違うかどうかが大した問題にならないジャンルもありますが、『TGM』はこの1フレームを感じ取って「何か違う」という人が出てきてもおかしくないんです。実際『TGM』の1、2をアーケードアーカイブスで移植していただいたときには、どうしても発生する遅延によってゲームが変わるということはわかっていました。「アーケードアーカイブスとアーケードのスコアを比較する」ということに納得感がない以上、やっぱりそれは別物だと考えています。どちらを遊んでも『TGM』は上達すると思いますが、スコアなどにシビアに挑む場合はアーケード版はアーケード版で、アーケードアーカイブス版はアーケードアーカイブス版として楽しんでもらえればと思っていますね。

――サントラも発売になりましたが、こちらの制作話などありますでしょうか。

アリカ:サントラはスーパースィープさんにお任せしているので、あまり語れることはないのですが、ゲームに対してサウンドを作ってもらったときにいろいろあったことはお話できます。サウンドの発注というのは、こういう場面で使うということを指示するんですが、作ってもらったものを聞いたら、「これはこっちの場面がいいかも」と考えはじめたんですよ。そこで作曲してくれた細江慎治さんに軽く確認をしたところ「好きに入れ替えていいですよ」と言われて、いろいろ入れ替えたんです。曲のイメージが違ったというのではなくて、自分たちの作っているゲームも日々変わっていましたから、それに合わせたというような意味もあるんです。が……、これをやったことでですね、CD化のときに「あの曲どこで使いました?」というものがすごく多くて。確認作業はちょっと大変でした。

▲座談会が終わる頃には、「こんな座談会ならいつでもやりたいですね、ワハハ」みたいな発言もあったとかなかったとか。トリュフは人を饒舌にするのかもしれません。

TGMをみんな遊ぼう

――そろそろ締めくくりの時間になってきました。この記事で、『TGM』に興味を持ってくれるプレイヤーもいると思うので、メッセージをお願いします。

はるくさん:意外と優しいゲームですよ、ですかね(笑)そしてコミュニティも優しいです。RTAJやCTWCの配信を見て興味を持ってくれた方がいたら、まず遊んでみてほしいですね。

コーリャンさん:歴史のあるゲームなので入りにくいと思う方がいるかもしれませんが、『テトリス』は『TGM』に限らず、熱意のある人や上手い人が若い人からどんどん出ていますしね。

さいとさん:リアルイベントが身近にある人は覗きにいってみるのも良いと思います。わたしが『テトリス』を続けているのって、コミュニティの力もあると思うんですよ。気さくなプレイヤーが多いので、少しだけ勇気を出して、一緒に遊ぶ仲間を増やしに来て欲しいです。

りょくちゃさん:僕は結構いろいろな『テトリス』を遊ぶんです。ひとつなにかの『テトリス』を遊ぶと、ほかの『テトリス』にも興味がわくので、楽しい趣味だと思います。

アガラナイの滝さん:はじめた頃、操作や攻略もよく見たり、聞いたりしていました。うまいプレイヤーが無意識にやっていることなどもチェックしていましたね。そこから「自分の直感に落とし込むまでひたすらやる」ということを意識して練習したんです。直感的に操作や攻略が再現できるようになると、一気に面白さが広がるので、繰り返し遊んでみてほしいですね。『TGM』には、一定の条件を満たさないと落とされてしまうような仕組みもあるので、そこが成長を感じやすいポイントだと思います。

――ありがとうございました。

▲礼華 青鸞居さん前にて集合写真を頂戴しました!座談会も盛り上がりましたが、食事の味にも盛り上がった一夜でした。

 

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