最近、ゲームブロガーと紹介されることの多い浅葉です。
今回の記事では、超常科学アドベンチャーゲーム『Occultic;Nine-オカルティック・ナイン-』のプレイレポートをお届けします。
本作は、原作を志倉千代丸氏が務め、MAGES.社から発売されるアドベンチャーゲームで、タイトルの通り「オカルト」をテーマにしたゲームとなっています。
本記事のネタバレ成分は低めです。
発売日:2017年11月9日
プラットフォーム:プレイステーション4、プレイステーションVita、Xbox One
ジャンル:アドベンチャー
価格:PS4/PSvita通常盤7800円+税、ダウンロード版7000円、初回限定版9258円+税
Xbox One通常盤7800円+税、ダウンロード版6980円
MAGES.
急加速する異形の物語
超常科学アドベンチャーというキーワードから、『シュタインズ・ゲート』や『カオス・ヘッド』と言った、科学アドベンチャーシリーズと呼ばれる作品郡を想像する方も多いはず。本作は、厳密には科学アドベンチャーシリーズには分類されない作品ですが(科学アドベンチャーシリーズ郡の特徴のひとつである、世界観の共有が行われていないため)、「起きた事象を、科学的な視点から眺めてみる」というシリーズの醍醐味は色濃く継承された作品となっています。一見、超常現象にも見え、オカルトとして捉えられてしまいそうな出来事に対し、「なぜそうなったのか」という問いをキャラクターとプレイヤーに仕掛けてきます。
次々と主人公の周りに集ってくる女性キャラクターたちや、序盤のゆっくりした物語展開からは、ハーレム系ギャルゲーを遊んでいるような感覚を味わいますが、ある地点から物語は急加速し、スリルとサスペンス溢れる世界の扉が次々と開いていきます。キャラクターをしっかりと描写し、プレイヤーが愛着を抱いてきた頃に、想像もつかないような物語の渦に投げこまれるため、心が大きく揺さぶられます。『カオス・ヘッド』や『カオス・チャイルド』のように、美少女であっても疑ってしまうような心理をプレイヤーにもたらし、ゲーム内で目撃するいろいろなことを疑ってしまう段階になれば、もうすっかりこの作品の虜になっているはず。
ストーリー
世の中にあふれたオカルティックなインチキをバッサリ!のハズが……。
幽霊、UFO、UMA、超能力や黒魔術、都市伝説や超常現象と呼ばれる数多の不可解な出来事。
それらを信じるオカルト心棒派と、世の中にあふれたオカルトというインチキを科学的に暴き、論破しようとする者たちが集い、論争するブログ「キリキリバサラ」。
我聞悠太(がもん ゆうた)は「キリキリバサラ」の運営者。
その崇高な目的は、オカルトをネタにアフィリエイトで稼ぐこと。
自身はオカルトなんて信じちゃいないが、儲けになりそうなブログネタの取材に行った先で、他殺死体を発見する。
狼狽しながらも誰にも見つからずに逃げ出した悠太だが、図らずもそれは「ニゴロ事件」とも関係し、「幽霊」の存在に関わる大きな陰謀へと巻き込まれた事件となるのであった。
(公式サイトより引用)
アフィリエイトブログというユニークな題材ではあるものの、扱いの難しいものをゲームの一つの軸にしているのも面白いところです。主人公・我聞悠太の運営するアフィリエイトブログ「キリキリバサラ」はモラル的な問題などを含めて、批判の対象になることが多いまとめサイト型のものですが、その内側ではどのようなネタづくりが行われているのか、どのように影響力を増していくのかといったことが、うっすらオブラートに包みつつ語られます。アフィリエイトブログを運営する主人公の思考は、幼稚に垂れ流されていきますが、その中には鋭いメッセージや分析を含んだものもあり、ゆるっとした序盤も視点を変えてみれば、見どころがたくさん見つかります。(遊んでみればわかりますが、本作はアフィブログを正面から肯定する作品ではありません。)
科学アドベンチャーシリーズなどでも、「インターネットが拡散する情報」が何をもたらすのかということに焦点が当てられていましたが、今作では、コメントを争わせる「まとめサイト」ならではの話の飛躍や怖さや体験することができます。
アフィトリガーとラジオチューニング
本作は、単純な選択肢によって分岐するタイプのアドベンチャーゲームではありません。主人公・我聞悠太の運営するアフィリエイトブログ「キリキリバサラ」に、どのような記事を載せるかによって物語が分岐していきます。このブログに載せる記事は、物語中に集めたキーワードをもとに作成することになり、ここで「アフィトリガー」という本作独自のシステムを活用することになります。キーワードは会話中にわかりやすく登場し、プレイヤーはそのキーワードを記憶することができます。キーワードの記憶数は最大で9つなので、取捨選択が必要になるため、狙った分岐を起こすには、一工夫必要になってきます。
このキーワード集めと、記事の作成は、新しい遊びながらも、どこか懐かしい探索型アドベンチャーゲームを思い出すプレイフィールをもたらせてくれます。普段私はスキップを駆使してサクサクと物語を読み進めていくのですが、本作はやや慎重にプレイを進めました。とはいえ、キーワード選定や分岐のコツさえ分かれば、それほど悩ましいシステムではなく、それほど複雑な分岐もないため、物語を楽しみたいという方は、攻略などを見ながら進めれば、ストレスなくエンディングまでたどり着けるはずです。
また、本作には、このアフィトリガーの他にも、キーアイテムである「ラジオ」を使ったユニークなゲームシステムが存在します。主人公・我聞悠太が、父親から託されたクラシックなラジオ・スカイセンサーのダイヤルを合わせることで、作中アニメである『マスターマストマーダー』を見られるといった遊び要素が用意されているのです。このダイヤル合わせは、コントローラーの左右スティックを使って行うのですが、これがとても不便で、でもなんだか懐かしく、この操作性にしたことに意味を感じるような塩梅になっていて、なんとも不思議なプレイフィールを味わえます。ラジオは、ゲーム中のほぼどこでも起動することが可能で、ほとんどの場合、何も受信することができないのですが、特定のタイミングで、特定のダイヤルに噛み合わせた時だけ、何かが起きる仕組みになっています。この要素のコンプリートは、ある仕組みに気づくまでなかなか大変かもしれません。
このラジオは、SONY社のスカイセンサーと呼ばれるラジオをモチーフにしたもので、これがとても魅力的かつ、ノスタルジーを掻き立ててくれるアイテムとして描写されており、遊んでいると実物をを手元に置いてみたくなります。(ウチにもかって、一台あったような気がするので、現在捜索中です。)
メディアごとの体験を味わう
物語が最高速に達する中盤以降からは、やめどきを見失ってしまい、そのまま一気にクリアーまで駆け抜けました。科学アドベンチャーシリーズを遊ぶ時もいつも同じような感覚で、早く続きが見たい、早くこのもどかしい状態から解放されたいという思いで、いつも徹夜してしまいます。アニメ版を見ていない方であれば、後半のいろいろな壁が一気にぶち破られていくような流れには驚くはず。プレイヤーとキャラクターが抱えていたフラストレーションが吹き飛ぶ、物語のカタルシスのような瞬間が訪れるはずです。
この『Occultic;Nine-オカルティック・ナイン-』はノベルやアニメで先に物語が展開されていますが、ゲーム版の本作もそれをなぞるように進んでいきます。しかし、テキストアドベンチャーならではの細やかな描写やBGMを合わせたシーン運びは、ゲームならではの贅沢な体験となっています。一部で使われているムービーやUIなどもかなり個性的なデザインをしているので、ここも密かな見どころです。先ほどのカタルシスについては、自分のペースで遊べ、自分の選択が分岐を作り出す「ゲーム」という分野だからこそ、より強烈なものに感じるはずです。
また、一部ですが、ノベルやアニメと展開を変えている部分もあるため、ノベルやアニメで『Occultic;Nine-オカルティック・ナイン-』の世界に触れた人でも、新鮮に感じる部分も用意されています。逆に、ノベルやアニメでしか体験できないこと、得られない情報などもありますから、ゲームから入って、他のメディアミックスを楽しむのもアリです。個人的には、キャラクターがとにかく魅力的な作品なので、メディアミックスを含め、今後の展開にも期待したい作品の一つです。
そうそう、本作をプレイステーション4版で買うなら、ドラマCDや設定資料集のついた限定版がオススメです。