ゴジラインのお友達ゲーマーというかゲームオタクたちが集うLINEグループ”406ゴジライン”でも、ゾーイ(水着バージョン)を求め、ガチャに挑んだものが続出した。
しかし、0.043%の壁は思いのほか厚く、20人近くの『グラブル』プレイヤーがいるというのに、ガチャからの排出報告はない。
何人かが、おれと同じく”天井”(9万円課金することによって得られる、好きなキャラクターをピックアップできる権利)へと挑み、達成し終えた頃には、ゾーイ(水着バージョン)を”天井”以外で入手することは難しいのではという空気が流れ始めた。
そして、その空気を察知した悪魔たちが、素早く蠢き始める。
ゾーイ持ち「ゾーイ(水着バージョン)、Kawaiiすぎる。持ってないやつおる?」
有識者「めちゃ強いですからね。次回の古戦場イベントでも活躍しそうですよ。あ、おれは前の機会に出してます」
ゾーイ持ち「”天”行けば確実に取れるんですよねえ」
平均年齢は高いものの、キッズ精神の持ち主が多いおれたちのコミュニティでは、煽る者もいれば、すぐにキレる者もいる。この持つものから繰り出される「煽り」は、鋭い刃となって持たざる者へと突き刺さる。ヒリつくゴジライン内『グラブル』コミュニティ。
おれたちはいつも、ギリギリのところで絆を確かめ合わずにはいられないアウトローなのだ。
天井に昇るべきか、踏みとどまるべきが。
精神を削り合うLINEバトルは、千年戦争の予感を感じさせたが、そこにもたらされた至言がオタクたちを突き動かす。
「みんなで天井いって、十天衆、目指しましょう」
『グラブル』には、イベント限定で手に入るアイテムをベースにすることで、ガチャ産ではない十天衆と呼ばれる超強力なキャラクターたちが存在する。その数にして10人。
おれたちのコミュニティにおいても、水着ゾーイを欲する人数もまた、10人を超えている。
このコミュニティなら、10人の天井者が現れることもあり得るはず。
10人の天井者こそ、おれたちのコミュニティにおける十天衆たり得るはず。
点火から爆発までは早い。
「先月大量に課金したから、今月は辞めておこう」、「無(理のない)課金でいくよ、おれは」
、「さすがに二ヶ月連続で9万円課金するのはないかな」、「お金の大事さ、小学校で習ってるから」などと良識者の皮をかぶっていたならずものたちが、次々と理性という鎖を解き放っていく。
結果、170人いる”406ゴジライン”というゲームコミュニティで。
15人の天井到達者が現れ。
その15人の全てが、ガチャからゾーイ(水着バージョン)を排出することなく、天井を迎え。
そして、ゾーイ(水着バージョン)を選んだ。
十天衆を作るどころか、15人の咎人が生まれてしまった。
初任給を”天井”に突っ込むという剛の者も現れた。
天井到達者「ゾーイ(水着バージョン)、確かにkawaii。でもこれ、どうやって使うんですかね」
おれ「わかんねえ。でもKawaiiからいいよ。そのうち、心と心で通じ合う。あと俺、『ストリートファイター5』じゃ豪鬼使いだから。”天”することは運命だったってワケ」
有識者「せめて使いどころを調べてからガチャ引けよ。でも、kawaiiからいいか」
使い方も、活かし方もわからない15人の天井到達者たちの旅は始まったばかりだ。