コアな格闘ゲームファンであれば、
おれがアドバイスすればもっと面白い格闘ゲームにできる
このゲーム、バランス調整したやつ誰だよ
おれに調整させろ
などと考えたことがある方も少なくないはず。
今回の記事では、
メーカーのバトルプランナーがなんぼのもんじゃい、おれのほうがいいアイディアとバランス感覚を持っている。プログラムやスクリプトとかいうことはよくわからねえけど、おれをバランス調整に呼べ!
といった歪んだ熱い思いを解消してくれるであろう神ゲー『格ゲー野郎 Fighting Game Creator』(プレイステーション)をご紹介します。
なんとこの作品では、”格闘ゲーム”バトルプランナーの気分をプチ体験できるんですね。
画面だけ見るとよくあるタイプの技が揃った2D格闘ゲームに見えますが、この作品の真の魅力はキャラクターの通常技、必殺技、バトルシステムを自分で選んで、組み合わせられる”エディットモード”にあります。つまり、簡易『格ゲーツクール的』な作品になっているんです。
『格ゲーツクール』のほうは、このソフトよりも根本的な部分からキャラクター作成をするため、作品として遊べるようになるまでにはかなりの時間がかかりますが、この作品であれば1キャラクターあたり10分くらいで組み立てることができるので、「作って、すぐ」遊べます。
PS Storeのゲームアーカイブスでダウンロード販売されているので、PS3をお持ちの方であれば、すぐにでも楽しめます。
興味がわいてきた!おれの神調整を見せてやるといきなりPS storeに飛びつきそうな方がいるかもしれませんので、最初にこのゲームを最大限に楽しむための”環境”の話をしておきます。
このゲームは、一人で遊んでも、せっかく作ったキャラクターが強いのか弱いのか、面白いのかありきたりなのかわからないので、2人以上でのプレイを推奨します。一日かけて、友達とわいわい遊べば、スルメのような面白さがわかるはず。
カスタマイズできるキャラクターの数も多いので、4、5人で遊んでも楽しいですよ。
今流行りの『ストリートファイター5』の対戦会などで知り合った格闘ゲーマーに、「ウチで『格ゲー野郎』やりましょう」と誘ってみるのもいいかもしれませんね。
・必ず2人以上の格闘ゲーマーで遊ぶこと
遊ぶ相手を捕まえたら、早速エディットモ―ドで遊んでみましょう。
エディットモードで最初にやることは、キャラクターのベースタイプとプロフィールの決定です。
本作には7人のベースキャラクターが存在します。エディットモードでは、このベースキャラクターにあらかじめ用意された技を振り分けて作成していくので、ベースキャラクターを選んだ時点で、ある程度キャラクターの方向性は決まってきます。空手家タイプのキャラクターを選べば、波●拳や昇●拳、竜巻旋風●のような技を選べますし、レスラータイプのキャラクターを選べばバリエーション豊かなコマンド投げから好きなものを選べます。ただただ強キャラを作りたいという人は、このベースタイプ選びで勝負は7割方決してしまうので注意してください。
ゴジラインメンバーのミズシナとナカジマをざっくり作ってみたのが、以下の画像です。設定がしっかり反映されています。
次に、通常技をエディットします。弱、中、強の3ボタンに、あらかじめ作られている技を割り振りしていきます。1キャラクターあたり、かなり多くの技が用意されているので、選び甲斐があります。方向キー+攻撃ボタンで発生する特殊技も設定可能です。
通常技の性能はさまざまで、相手を浮かせるもの、吹き飛ばすものなどはもちろん、空中からいきなり急降下するような技もあります。
この通常技、特殊技、必殺技については、一回のエディットでピタリと決まることはまずないので、最初はさくっとエディットを終えるのがオススメです。
通常技の次は、必殺技エディットに移行します。必殺技を3種類、超必殺技を1種類セレクトするのですが、1つのキャラクタータイプに10種類以上の必殺技が用意されているので、通常技以上に頭を悩ませるパートになります。
必殺技3つというのが絶妙で、飛び道具、対空とつけてしまうと、コマンド投げか、突進技かといった悩みが発生します。
ここも、バトルで試してみないとわからない部分が多いので、最初は好みのものをさくっとセッティングしてしまいましょう。
昔からの格闘ゲーマーであれば、一見どこかで見たことがある必殺技が多いことに一瞬で気づくと思われますが、異常に隙が少なかったり、攻撃範囲が見た目以上に凄まじい技が多数存在します。全体的に、アッパー調整気味な技が多く用意されているんですね。
最後に、バトルシステムを決定します。ここでは、前転移動や攻撃すかし、攻撃さばきといった、バトル中に使えるシステムのオンオフを設定します。どこかで見たようなシステムがめじろ押しで、当然どれも実戦で役立つシステムばかりです。これらのシステムを全てオンにしてなんでもアリのゲームにしても面白いですし、あえて制限をくわえてストイックな部分を演出してもいいかもしれません。キャラクターごとに使えるシステムを変えることもできるので、性能差をつけるスパイスにも使えます。
通常技、必殺技、バトルシステムまで設定したらひとまず、闘うための下準備が完了。早い人であれば、1キャラ10分くらいで組み立てられるはず。
キャラクターの顔にマスクをつけたり、ストーリーモード風のものを作る機能もあるので、トコトンこだわるぜという方はこちらも試してみてくださいね。
2、3人キャラクターを作ったら、いよいよ”調整”に入ります。
この作品はトレーニングモードがないという致命的弱点を抱えているため、仕上げたキャラクターをテストするには対戦モードしかありません。
トレーニングモードがあれば、文句なしの神ゲーだったのに!というのは間違いないんですが、そこはこの作品の良いところをみて目を閉じましょう。
開発中の作品なので、まだトレーニングモードができていないと想定して、対戦モードを使っていろいろとバランスを見てください。
2人以上で遊んでいれば、この過程から面白さが加速していきますから!
この工程から、目的によってゲームの楽しみ方が変わってきます。
強いキャラクターを作るのは、意外と簡単です。強そうな技を組み合わせて、システムをてんこ盛りにすれば、それなりに強いキャラクターができあがります。
しかし、バランスの良い作品を作ろうとすると、途端に”調整”が難しくなります。中には、どうカスタマイズしてもあまり強くないキャラクターがいますし、ちょっと性能の良さそうな技をつけたら、ぶちぬけた強さを発揮するキャラクターもでてきます。つまり、ある程度バランスがとれたゲームを作るためには、ベースキャラクターの差をある程度考慮して、程よいところに全キャラクターを寄せていく必要があるんです。
正直、このバランスの良い作品をとるための作業は、かなり人を選びます。
そもそも、このゲームの一部の技やシステムは、ゲームバランスを破たんさせかねない性能になっているので、それらを使わないようにキャラクターをエディットしなければいけません。反撃の極めて難しい無敵技を持つロボットや、ちょっとチューニングを間違うと永久コンボになるカンフー女など、危険な存在がもりだくさんです。こういう要素を排除する工程では、デバッカ―の疑似体験のようなものができます。できているはずなんです。
実際の開発現場では当然、ダメージを下げたり、技の発生フレームを変えたりと、細かい対処をすることも可能なんでしょうが、この作品の場合、強すぎる技やシステムは排除することでしかバランスを維持できないようになっています。そもそもフレームの図り方とかわからねえけど、おれに調整させたら神ゲーができるという力強き思想を持つ人にも優しい作りです。ありがたいことです。
動かしていて面白いキャラクター、対戦していて面白いバランスを両立するというのは、かなり難しい作業です。
この作業に楽しみを見いだせる人や、やりがいを感じる人は、もしかしたらバトルプランナー向きなのかもしれません。すみません、適当書きました。
あとは、以下のような、説明書に載っていない(ほぼ)共通システムもいくつかあります。
・ガード中に方向キーを前方向に入れることで、ゲージを使ってガード硬直を軽減(隠しシステム)
・一部キャラは、ダウン中に方向キーを真上か斜め後ろ上方向に入れておくことによって起きあがりの遅延が可能
・やられ状態に、立ち、しゃがみの切り替えが可能
・やられ状態中の一部下段攻撃は、上方向に方向キーを入れると回避可能
これらのシステムを使うと、一見連続ガードに見えた連携に割り込めたり、ヒット数がつながっているはずのコンボを抜け出せたりするので、ここらへんのシステムを考量にいれたキャラクターたちを作れば、より本作の深みが増すはずです。
バトルプランナーの仕事というとかなり多岐に渡りますし、この『格ゲー野郎 Fighting Game Creator』とはくらべものにならない深い作業を求められますが、調整の流れとしては近いものも多いです。技を実装してみて、対戦をまわしてみて、程よいところを目指すという工程は、格闘ゲームの制作現場ではよくあることです。その流れを、もの凄くイージーに楽しめるという意味では、この作品は唯一無二のものになっています。
格闘ゲームプレイヤーの方は、是非この作品を遊んでみてください。こんなイージーなゲームでも、”調整”って意外と大変なんだなと思うかもしれませんし、もっと細かいところ、フレームやダメージについてもいじってみたいと好奇心を抱くかもしれません。バランスのいいゲームが必ずしも面白いわけではなく、かといってキャラクターだけをみて面白さを追求していくとバランスが破たんするという、格闘ゲーム制作におけるジレンマを感じる方もいるかもしれません。
そう、このゲームは、格闘ゲーマーを成長させてくれる作品でもあるんです。
ちなみに、おれとナカジマと回転王はこのゲームを遊んで「おれら、バランス調整向いてるわ(真顔)」となりました。
ゴジラインに格闘ゲームを調整してほしいというサークルさま、メーカーさまがおられましたら、気軽にご連絡ください。