【レビュー】『ロリポップチェーンソー RePOP』は素晴らしき「リミックス」版だ

チアガールがチェーンソーでゾンビをバタバタとなぎ倒し狂った世界を軽快に駆け抜けていく『ロリポップチェーンソー』は個性ある登場人物、物語、世界観を詰め込んでかきまぜたゲームで、全方向に尖りまくった作品であった。オリジナル版の発売から随分時間は経つが、同じような作品はついぞ現れなかった。美少女×ゾンビという要素をかけあわせたゲームはいくつか遊んだが、それらはやはり別物であった。絶妙なグロさとポップさ、そして生命力溢れるキャラクターが躍動する『ロリポップチェーンソー』は唯一無二の作品だったのだ。

2022年に角川ゲームスから独立したドラガミゲームズは、『ロリポップチェーンソー』のリメイク版を制作中であることを発表した。あの尖った世界に飛び込める日がまたやってくるという高揚感と同時に「リメイク」という言葉に少しの不安を覚えた。筆者を含む多くのプレイヤーは「そのまま」の移植だってかまわない。むしろ「リメイク」によって少なからず行われるアレンジは、ギリギリのバランスのうえに成り立つ『ロリポップチェーンソー』の魅力を破壊することにならないだろうかと心配した。そもそも、オリジナル版とは時代も異なる。キュートとバイオレンスが融合したあの表現は、リメイクにおいて守られるのだろうか。

2024年9月に発売された『ロリポップチェーンソー RePOP』は、そうした心配を吹き飛ばすような、過激で、ポップで、痛快なリメイク作品だった。ゴアでセクシーな表現はそのままに、アレンジされた部分が原作の雰囲気に不思議とマッチしていて、より遊びやすく、深くやりこめるようになっていたのだ。オリジナル版、アレンジ版となるリメイク版、今ではそのどちらもが愛おしい。

この記事では、『ロリポップチェーンソー RePOP』の魅力を語る。

タイトル:ロリポップチェーンソー RePOP


ジャンル:アクション
プラットフォーム:プレイステーション5、Xbox Series X/S、Nintendo Switch、Steam
発売日:発売中
メーカー:ドラガミゲームズ
公式サイト:https://repop.lollipopchainsaw.com/jp/

『ロリポップチェーンソー RePOP』とは

本作の舞台はアメリカ西海岸のサン・ロメロ・ハイスクール。主人公のジュリエットはチアリーディングを愛するキュートな女学生だが、その正体はゾンビを狩る「ゾンビハンター」。プレイヤーはジュリエットを操作し、学園に現れたゾンビの群れを、多彩なアクションで撃破していくことになる。底抜けに明るいジュリエットと、危険なゾンビたちの戦いは、物語としても超個性的だ。チアリーディングの動きを活かした打撃技と、武器のチェーンソーによる斬撃を組み合わせたアクションは爽快そのものだし、首だけになってしまった「彼氏」を使ったアクションなどはいわゆる「バカゲー」の空気に満ちている。ゾンビの首や体がばっさりと切断される様は過激なゴア表現で描かれるが、それと同じくらいのパワーでバカゲーとしての表現も盛り込まれている。移動や攻撃アクションの操作難度は低く、すぐに多彩なアクションを楽しめるのも嬉しいところだ。

▲『ロリポップチェーンソー』が帰ってきた。主人公のジュリエットを操作する三人称視点のキュートで過激なアクションゲームだ。

ゲームの難度は「ノーマル」の場合はやや高めに感じる方もいるかもしれない。というのも本作は、プレイすることで得られるゲーム内通過を使ってジュリエットを少しずつ強化していく仕組みがあるためだ。つまり、同じステージを何度かプレイして、ある程度ジュリエットを強化すれば新しいステージを楽に攻略できるという仕組みなのだ。スムーズに攻略を進めたいという方や、アクションゲームが苦手という方は難度を下げて「イージー」で遊ぶのもおすすめだ。この難度であれば、ジュリエットの育成をしなくてもそれほど苦労するシーンはないだろう。イージーで一周クリアーしたら、難度をあげて、アクションゲームとして歯ごたえのある部分を楽しめばいいのだ。

▲過激なゴア表現も本作のウリのひとつ。ゾンビたちの血しぶきどころか首まで飛びまくる過激表現が満載。

ジュリエットの衣装集めも楽しい要素だ。最初から使えるキュートなチア服以外にも、魅力たっぷりな衣装が30種類以上用意されている。衣装の中にはゲーム内マネーで購入できるものもあるので、アクションゲームとして楽しんでいたはずが、攻略や育成をそっちのけにして衣装集めに夢中になってしまうということもあり得る。衣装を着替えると同じアクションでも見違えるように印象が変わるものもあるので、気分のままに衣装を変えて、いろいろなステージで暴れまくりたくなる。

オリジナル版との比較

この作品の移植やリメイクで懸念していたのは、オリジナル版の醍醐味でもあるゴア&セクシーな表現の部分だ。
オリジナル版の発売当時よりは自主規制などが強くなっている現在においては、ゴア&セクシーな表現に規制が行われる可能性を想像した方も少なくないはず。もしそうだとしたら、気の抜けたコーラのように味気ない『ロリポップチェーンソー』遊ぶことになるのではと思っていたのだが、蓋を開けてみると、ゴア&セクシーな表現はそのままに、画質が大幅に向上した『ロリポップチェーンソー RePOP』が飛び出してきた。本作の制作には、オリジナル版に関わった須田剛一氏とジェームズ・ガン氏が不参加であることが明かされているが、ドラガミゲームスの安田善巳氏をはじめとするオリジナル版を制作したスタッフの一部が引き続き制作に参加していることで、『ロリポップチェーンソー』らしさは色濃く継承されている。
この時点で、リメイク版の制作陣マジ頑張ったな……と超上から目線だが、めちゃくちゃ感動してしまった。

▲「貝殻ビキニ」などの過激衣装もそのまま収録されていて力強い。

残念ながら「版権曲」や「版権が絡むコラボ衣装」については本作には収録されていない。寂しいといえば寂しいが、失ったものもあれば得たものもある。(そして本作の公式サイトではこのことについて正直に書かれている!)
BGMについては、版権曲やボス戦曲が刷新されており(オリジナル版の楽曲の7割近くがそのままの実装)、コスチュームに関しては新しいものも追加され合計で30種類以上となっている。ちなみに、新規の曲はシーンに合った楽曲が多くなっている。オリジナル版の版権曲の主張の強さは、オリジナル版の個性のひとつであったが、新規曲のフィット感も新鮮である。追加された要素が『ロリポップチェーンソー』の中に絶妙に混ざりこみ、オリジナル版とはまた違うフレーバーを味わわせてくれる。

▲版権の関係などで亡くなった要素もあるが、それ以上に得たものも多い。ヘアカラーのバリエーションも増えている。

表現の部分が限りなく崩さずに移植されていることで、『ロリポップチェーンソー』らしさは失われておらず、変更されたものも世界にマッチしている。この時点で筆者としては、とても満足のいく移植だったのだが、なんと本作では、アクションややりこみパートに手を入れるという大胆なこともやっている。アクションゲームとしてのプレイフィールが変わる可能性のある変更は、正直かなり大胆な取り組みではあるが、これが遊んでみると実に心地が良い。

オリジナル版を遊んだ方なら、アクションのテンポが向上していることにすぐ気づくだろう。連撃数に応じて攻撃速度が上昇するうえ、キャラクターの移動も速くなっているため、サクサクと進んでいく爽快感がる。ただし、テンポが向上したとはいえ、チェーンソーアクションのずっしりとした感覚は健在で、敵をぶった切っていく爽快感はしっかりと残されているので安心してほしい。また、カメラレスポンスやボタン入力レスポンスが改良されたことで、オリジナル版にあったカメラによって殺されるストレスがなくなっている。

▲アクションのスピード感が増したため、ゲームのテンポが向上して遊びやすくなっている。

また、オリジナル版は難度がやや高めでだったが、『RePOP』では、最初からコンボアクションが使用可能になっていて、序盤を多彩なアクションを楽しみつつ攻略できる。一部ミニゲームの難度が緩和されるなどの配慮もあるので、アクションゲームが苦手という方でも安心して遊べるはずだ。また、デフォルト設定の場合、QTEをオートでこなしてくれるという仕様になっているのも人によっては嬉しい変更点だろう。オリジナル版のQTEは、楽しさにつながっている部分ではあるものの、気を抜いているとやり直しになってしまう悩ましい要素にもなっていた。

▲オリジナル版では難所だった「野球」も若干簡単になっている。歯ごたえを求める方は、難度を最大にして挑戦してみよう。

『ロリポップチェーンソー RePOP』は素晴らしいリミックスである

本作は『ロリポップチェーンソー』のリメイク版であり、完全移植ではない。原作の良さを継承しつつ、新解釈を加えた新しい『ロリポップチェーンソー』といっていいだろう。

原作のいまやレトロな、やや荒削りなプレイフィールは、ゲームであるにも関わらず、アートのような存在感へとつながっていた。やや重たく感じるアクションや、当時にしてもやや不安定なカメラの挙動は、アクションゲームとして観ると爽快感や奥深さの面で物足りなかったことも確かだ。しかし一見物足りず、不親切ともいえるアクションパートに、強烈なキャラクターと世界観が融合することで、唯一無二の作品というイメージを作り出したことがオリジナル版の大きな成果であろう。万人受けはしない作品ではあるものの、強烈に刺さってしまった筆者のようなプレイヤーがゾンビのように次々と誕生し、「このゲームの良さがわからないかあ……」なんて優越感のようなものに浸ることができたのだ。

『RePOP』では、こうしたアクションパートに手を入れることで、スムーズに遊べる作品となっている。オリジナル版のアクションパートの良さを煮崩れしないように繊細に加工しているため、それでもまだ今風ではない部分もあるが、『ロリポップチェーンソー』のリメイクであるならば、これが最適な調理加減だと感じる。塩をひとつまみ入れたことで、味がさらによくなったみたいな作品になっているのである。

オリジナル版『ロリポップチェーンソー』は荒削りで、素材の味を活かしたゲームだった。リメイク版の『RePOP』も、素材の味を活かした部分は変わりなく、荒削りだった部分を丸くなりすぎないように絶妙に加工した作品だといえるだろう。結果として、オリジナル版にはオリジナル版の良さがあり、リメイク版にはリメイク版の良さがあるという理想的な着地を迎えているように思う。オリジナル版に夢中になった方は、リメイク版でその変化を楽しみつつ、またオリジナル版に戻るというのもいいだろう。本作から始めて『ロリポップチェーンソー』を遊ぶという方は、キュートでちょっと狂った唯一無二のゲームを隅々まで楽しんでもらいたい。

とか記事を書いていたらなんか追加要素の気配が……!こちらも楽しみですね。

▲より遊びやすくなった『ロリポップチェーンソー』をRePOPで楽しもう!

PS5&Xbox Seies X/S版、Steamは60fps対応
Switchで遊ぶのも良い感じなんだよなあ

PS5&Xbox Seies X/S版、そしてSteam版は60fpsで動作する。また、アップデートによって2560×1440以上の解像度で60fps以上を維持して遊べるようになることも発表されている。美しくキビキビと動くジュリエットを眺めるという目的であれば、これらのプラットフォームでの購入がおすすめ。
Switch版はフルHD30fpsでの動作だが、携帯モードで気軽に遊べる『ロリポップチェーンソー』も捨てがたい。
というのも、本作のオリジナル版は30fpsで動作していたため、Switch版では懐かしい当時の雰囲気を味わっているような感覚になるのだ。もともと30fpsで動作していた作品のためか、特に違和感もなく、ときたま起きる処理落ちなんかはちょっと当時を思い出させてくれる。かつての『ロリポップチェーンソー』ファンは、Switch版も遊んでみてはいかがだろうか。 

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