ゴジライン結成以前、古の時代から続く、浅葉vsナカジマシリーズ。
『ウルトラストリートファイターⅡ』もまた、おれたちの戦いの舞台だ。
初日のウォーミングアップ的な対戦を終えて、おれとナカジマは同じ”答え”にたどり着きつつあった。
このゲームには、3人の”要注意人物”がいる。
神速の移動技を持つ洗脳されたケン。
凄まじい火力とガード崩し能力を誇る殺意の波動に目覚めたリュウ。
そして、『スーパーストリートファイターⅡX』の隠しキャラクターであり、そのあまりの強さから当時は”使用禁止”のゲームセンターが続出した豪鬼。
この3人の中の誰かが、最強キャラクターとなる可能性は高い。
初日は、空中から弾の雨を降らせる豪鬼を、洗脳ケンが迎え撃つという形まで行き着いた。
そして、おれたちは、おれたちの中の”最強”を探すまで、立ち止まらず戦い続ける。
必殺技をワンボタンで出せる、LITE操作を武器に。
LITE操作:『ウルトラストリートファイター2』で実装された、カジュアルに格闘ゲームを遊ぶための操作タイプ。このモードをオンにすることで、ワンボタンで必殺技を繰り出すことが可能になる。なお、このLITE操作は、ダウン時のリバーサルには対応していない。さらに、ガイルのソニックブームなど、溜めを必要とする必殺技も、溜めを完了してからLITE操作対応ボタンを押すという流れで繰り出す必要がある。手練れの格闘ゲーマーに”悪用”させないような配慮も垣間見える。
ナカジマ「殺意リュウはちょっと微妙かもしれんね。豪鬼やケンみたいに、ぶっ壊れた技がない」
浅葉「わりと素直だよね。ちょっとコンボでも調べてみるか」
そんなやりとりから15分、俺はあるコンボを発見した。
立ち強Kから始動する、必殺のコンボ。
立ち強K【C】中竜巻旋風脚→昇り強竜巻旋風脚→強昇龍拳
おれ、20年前からの殺意リュウ使いだった気がしてきた。 pic.twitter.com/zk2aXdWtMJ
— GZL|浅葉 (@asabataiga) May 26, 2017
このコンボなら、体力の低いキャラクターなら、ワンチャンスで即死まで持ち込める。
昇りの強竜巻旋風脚のタイミングが非常に難しいが、そこはニンテンドーSwitch版ならではの、1ボタンで必殺技を繰り出せる「LITE操作」を使うことで解消できる。人力でやると成功率が10%を切るので、マジありがとうSwitchと念じながらLITE操作対応ボタンを押すのが成功のポイントだ。
浅葉「ナカジマさん、仕上がったわ。対戦しよう」
ナカジマ「立ち強K始動のコンボ、確かにめちゃ凄い。でも、このゲームで、その始動技を決められると思ってんのか?」
長年格闘ゲームをやっているプレイヤーなら確実に気づくであろうポイントをいち早くついてくるナカジマ。そう、この作品のベースとなっている『スーパーストリートファイターⅡ』でも、密着状態で強攻撃が入るというシチュエーションはそれほど多くない。同じような条件であれば、即死させられるキャラクターも多くいるが、彼らは決して、強キャラクターではなかった。
格闘ゲームの世界において、当たらない即死コンボなど、何の意味もないのだ。
そして、『スト2』においては、相手を寄せ付けない「立ち回り」の強さがものをいう。
ナカジマ「まぁいい。おれも殺意リュウでいく。同キャラでわからせる」
立ち強Kを執拗に狙うプレイは見透かされ、リーチの長いしゃがみ中Kと波動拳で地味に体力を削られていく。
やはり、立ち強K始動は夢に過ぎなかったのだ。
実戦で決まるはずのないコンボは、強いコンボなどではなく、大道芸に過ぎない。
ナカジマ「SNSでちやほやされるだけのコンボ、あまりにも愚か」
浅葉「仕方ない、未完成だけど、新技使うわ」
ナカジマ「は?竜巻くらったらぴよって即死したが?今のなに?」
浅葉「浅葉サイクロン」
ナカジマ「見つけたネタにプレイヤー名をつけたがるのやめろ。それが許されるのは30歳までだから」
浅葉「昇り空中竜巻旋風脚を、ワンボタンでこなせるLITE操作モードだけに許された、禁断のコンボだ」
立ち強K始動のものとは違い、空中竜巻旋風脚始動の即死コンボは、奇襲として大きな武器となる。
一目見てパクれると判断したナカジマも、瞬時に戦術へとこの技を組み込んでくる。空中竜巻旋風脚同士がぶつかり、お互いに吹き飛んだとしても、すぐに明かりに群がる虫のごとく、次の空中竜巻旋風脚を仕掛ける。
しかし、そんな不毛な闘いの中でも、勝ちたいという気持ちはお互い失ってはいなかった。
次第に、空中竜巻旋風脚を昇龍拳の先端で迎撃しはじめ、地上の中竜巻旋風脚にも手痛い反撃が付き始める。
凄まじく早い再戦機能に助けられ、同キャラを積み重ねること2時間。
お互いの中で戦術が蓄積され、互いに「うまい」と相手を褒めるような余裕さえ生まれている。
これ以上ないというタイミング、おれたちが唯一大事にしているルールを解放するときがきた。
浅葉「次、ラストで」
ナカジマ「うむ」
浅葉vsナカジマシリーズでは、最後の一勝が一億勝となる。
その日どんなに勝っていても、負けていても、最後の一試合ですべてが決まるのだ。
ナカジマ「ハイ一億勝。雑魚が」
浅葉「最後の瞬獄殺、飛んだって!立ち弱Pから出してミスってるやんけ!」
ナカジマ「おれの”圧”に震えて、ジャンプが入らなかったことを認めろ」
20年以上遊んだ格闘ゲームで、そんなことがあるだろうか。
敗北後、すぐにトレーニングモードに移り、通常技→キャンセル瞬獄殺の連係をCPUに記憶させ、ジャンプを入れる。
浅葉「ナカジマさんこれ、連続ガードで出された瞬獄殺に上を入れても飛べない」
ナカジマ「つまり」
浅葉「HAMEじゃねーか!」
ナカジマ「趣深い。ナカジマ式瞬獄殺、完成していたのか」
浅葉「ゲーム内のテクニックにプレイヤー名をつけるのはやめろ」
ナカジマ「LITEモードのタッチパネルで瞬獄殺出すと、コマンドの初動の弱Pが出るから微妙かと思ってたけど、そんなことはなかったか。神調整」
浅葉「神ゲー。また明日もやろう」
ナカジマ「明日は洗脳されたケンをやろう」
空前絶後の激しさと切なさと心強さを持つ、『ウルトラストリートファイター2』を舞台に、おれたちの闘いは、まだまだ続きます。
そういやケンちゃんが、「仕上がった」とか言ってたからぼこしてくるか。