科学アドベンチャーシリーズをこよなく愛するファンボーイ・浅葉です。アニメ版『カオスチャイルド』、皆さんご覧になりましたか。有村雛絵ちゃんの可愛さが半端ないことになっていたかと思います。
第一回の放送は一時間枠で、前半30分を『カオスヘッド』の振り返りにあてるという非常に親切な構成でした。しかし、この流れの中で、アニメ版の振り返りを観た方の中には、何かしらのかたちで『カオスヘッド』の物語を知っておかなければちんぷんかんぷんな話ではと警戒した人もいるのではないでしょうか。(ゲーム版の『カオスチャイルド』は、『カオスヘッド』を未プレイでも97%楽しめる作品です。アニメのほうもおそらくそういう構成をとってくるのではと考えています。)
今回の記事では、そんな心配事を抱えた方々がさくっと読める記事として、『カオスヘッド』と『カオスチャイルド』の大まかなリンクについてご紹介します。ゲームにしろ、アニメにしろ、プレイしたり観たりするのにはかなりの時間がかかりますから、”時間がない”という方はまずこの記事に目を通してみてください。先に書いたように、ここらへんのことを知らなくても楽しめる作品ですが、知っておけばより楽しめるかもしれません。
大きなネタバレをしない程度に紹介していくので、気になった方は是非ゲーム版をプレイしてみてくださいね。(途中、ゲーム内の造語がいろいろ出てきますが、深く考えず読み流していくだけでOKです!)
2008年4月25日に発売されたアドベンチャーゲーム。本作を原作とするアニメやコミックなど、多彩なメディアミックスも行われた。
2009年2月26日には、本作の完全版ともいえる『カオスヘッド ノア』が発売された。
妄想科学アドベンチャーと銘打たれているように、本作のテーマは”妄想”。妄想を具現化することのできる能力者”ギガロマニアックス”たちの、数奇な運命を描いた物語が展開される。
”能力”や”超常現象”といった要素を描きつつも、そこに科学的な裏付けや情報を付加することで、リアリティを演出しているのが大きな特徴のひとつ。また、近年のアドベンチャーゲームで多く採用された”テキスト選択”による分岐をとらない分岐手法”トリガー”システムは、独特の没入感を味わわせてくれる。
以降、制作、発売元の5pb.(MAGES.)からは、これらの手法を軸とした”科学アドベンチャーシリーズ”がリリースされている。
キーワードを拾い出す
まずは、ゲーム版公式サイトに書かれている『カオスチャイルド』のプロローグを引用したものを掲載します。ここに書かれている内容に関しては、アニメ版の1話でもほとんど語られているので安心してください。
渋谷地震と呼称される震災から6年後の西暦2015年10月。
復興中の渋谷で奇妙な事件が続発する。
ネット生放送中に視聴者の前で謎の死を遂げる者。
ストリートライブ中に歌いながら死にゆく者。
ラブホテルの天井から吊られ回っている死体。
人々は気づき始めた。
事件の発生日は、6年前の渋谷を騒がせたとある事件の日付と一致する。
――そう、これはニュージェネレーションの狂気の再来なのだと。
ただ――ひとつだけ違うことがある。
事件の現場に残されている謎のシール。
不気味な力士を模したようなシールが事件のカギになることを、まだ誰も知らない。
暗躍する300人委員会。
覚醒しつつある妄想具現者たち。
彼らの”胎動”により、妄想の扉が再び解き放たれる……
(ゲーム版『カオスチャイルド』公式サイトより引用)
『カオスチャイルド』を楽しむうえで、おさえておきたいのは赤字の部分です。これらのキーワードさえおさえておけば、よりディープに『カオスチャイルド』の世界に浸れるはずです。
渋谷地震と呼称される震災
2009年11月6日に渋谷区で発生したマグニチュード7.8の局地的な地震。渋谷の市街地に大きな被害をもたらし、死者は3000人を超えた、この地震には専門家の理解を超えた点も多く、渋谷区以外の場所では被害が極端に小さかったこと、地震直後に多くの人が見たという光の柱など、いまだ多くの謎を抱えている。この地震は『カオスヘッド』の物語終盤で起きたとある出来事に起因している。
ニュージェネレーションの狂気
2009年の9月から11月にかけて発生した猟奇殺人事件の俗称。この期間に、7つの事件が発生し、14人が死亡した。どの事件も常軌を逸した惨劇だったことから、ネットユーザーを中心に”祭り”のような反応となった。当時のメディアは、このゲームの中の出来事を楽しむかのようなネットユーザー、若者たちの反応から「ニュージェネレーションの狂気」というキーワードを生み出した。
■ニュージェネレーションの狂気 事件概要
事件名 | 発生日時 | 事件概要 |
第一の事件 集団ダイブ |
2009.9.7 | 渋谷、コーネリアスタワーで発生した集団飛び降り自殺事件。5人の手には、他の自殺者の肉片が残されていたことから”手をつないで”飛び降りたと考えられる。 |
第二の事件 妊娠男 |
2009.9.19 | 殺害された男性の腹に、胎児が埋め込まれていた猟奇事件。殺害された男性と胎児には、DNAの関連性なし。 |
第三の事件 張り付け |
2009.9.29 | 男性が十字を模した杭で張り付けにされ、殺害された事件。現地に設置されていたカメラには、不審な行動をとる高校生らしき人物が映りこんでいた。 |
第四の事件 ヴァンパイ屋 |
2009.10.10 | 全身の血液を抜かれた男性の遺体が、渋谷井の頭線のトイレで発見された。ネットオークションに、”ヴァンパイ屋”というハンドルネームから、男性遺体の写真が出品された。 |
第五の事件 ノータリン |
2009.10.23 | 総合病院の医師が殺害された事件。被害者は、頭部を切り取られ、脳が取り除かれていた。 |
第六の事件 美味い手 |
2009.10.28 | 自らの手を嚙みちぎって失血死した女性の変死体が発見された。死因は噛みちぎった手による失血死。TVアニメ版ではこの事件が発生した描写がない。 |
第七の事件 DQNパズル |
2009.11.4 | 3人の被害者を出した猟奇殺人事件。3人の被害者は、遺体をばらばらに切断されたのち、異なる遺体同士で縫合されていた。 |
『カオスチャイルド』の世界では、この事件をなぞるかのように猟奇殺人事件が発生。これらの事件は、”ニュージェネレーションの狂気の再来”なのだろうか。
300人委員会
科学アドベンチャーシリーズ、『カオスヘッド』、『シュタインズ・ゲート』、『ロボティクス・ノーツ』などでも暗躍する謎の組織。その正体はいまだ明らかになっていないが、世界規模で強力な力を行使できる組織として描かれている。『カオスヘッド』では、妄想の力を利用して人々を管理する”プロジェクト・ノア”計画を推進していた。
妄想具現者
妄想を現実へと変換できる能力者たちを指す。『カオスヘッド』では、この能力者たちを”ギガロマニアックス”と呼んだ。この能力を持つものたちは、妄想の剣・ディソードを使うことで、妄想を現実へと干渉させる”リアルブート”を行うことができる。
『カオスヘッド』作中では、ギガロマニアックスたちが行う妄想の具現化は、妄想を人間の視覚の盲点となる(デットスポット)に落とし込み、その妄想を多くの人の周囲共通認識として拡大することで実行されると説明されている。本来そこにあるはずのないものを、多くの人が”ある”と認識することで、その妄想が現実として確定するのだ。
『カオスヘッド』を未プレイの方から、”面白いの”と聞かれることも多いのですが、個人的には是非遊んでほしい作品のひとつです。サイコスリラーとしても楽しめますし、後半は主人公の熱い成長の物語として楽しめます。主人公の西條拓巳は、作品発売当時の”オタク像”をかなり強調して描かれたキャラクターで「フヒヒ」とか言ってしまうやつなので、正直序盤を遊ぶのはつらいという方もいるかと思いますが、この仄暗いところがあるからこそ、後半のヒーロー化がたまらなく格好よく、愛おしいのです。
PC版のカオスヘッド、Xbox360版、PS3版の『カオスヘッド ノア』、PS Vitaの『カオスヘッドデュアル』(『カオスヘッド ノア』と『カオスヘッド らぶChu☆Chu!』の両方を収録したもの)がありますが、最も快適に遊べるのはPS3版です。他のプラットフォームのものは、今遊ぶと、スキップ機能やロード時間などがやや重めに感じられるはず。
『カオスヘッド』に登場するヒロインたちとの恋愛が楽しめるスピンアウト的な作品です。『カオスチャイルド』を楽しむうえでは、主人公・拓巳のPCに突如現れるエリンフレイ・オルジェルの外見だけおさえておけば問題ありません。
物語は、拓巳の妄想の世界を舞台として進んでいき、ギャルゲーライクな展開多めになっています。『カオスヘッド』のキャラクターが好きな方であれば幸せなひと時を過ごせるはず。Xbox360版の主題歌『シンクロしようよ』(後発のPS3版にも収録されています)は、素晴らしきギャルゲーソングだと思います。
以上、駆け足で進めたほぼネタバレなしの『カオスヘッド』振り返りですが、いかがだったでしょうか。今回書いたことをざーっと流し見しておけば、より物語を楽しめるかもしれません。
『カオスチャイルド』はサスペンスやサイコホラーに慣れている人にもしっかりと刺さる物語になっているので、是非ゲームやアニメで触れてみてくださいね。