【インタビュー】前職はゲーム会社社長!?そして小説家へ!謎多き作家「喜多山浪漫」先生にインタビューしてみた

コアなゲームファンの間で、「小説家になろう」や「カクヨム」で連載をはじめた「喜多山浪漫」という人物が密かに話題である。
氏のアカウント名は「喜多山浪漫@元ゲーム会社社長、人生2周目はじめました。」となっている。つまり、どこかのゲーム会社の社長が、小説家として第二の人生を送り始めたというわけだ。しかもSNSアカウントのアイコンは、ヴァニラウェアの神谷盛治氏の手によるもの。

謎の経歴と人脈を持つ喜多山浪漫とは何者なのか……。

作品を投稿しだしてから間もないものの、その動きは実にアクティブ。
第一作である『エトランジュ オーヴァーロード ~反省しない悪役令嬢、地獄に堕ちて華麗なるハッピーライフ無双~』は長編連載が終了。この作品は、キャラクターイラストや3Dモデルなども発表され、コミカライズまで決定したという。現在は新作となる『魔法捜査官』が連載中。ここまで活動開始から1年半の動きというのだから驚きだ。

「これたぶんあの人かなぁ……」とかいろいろな想像をしつつ、ご本人にコンタクトを取ったところ、なんと快くインタビューをさせていただけることに。本記事では、その模様を詳細にお届けする。

喜多山浪漫先生の作品群

『エトランジュ オーヴァーロード ~反省しない悪役令嬢、地獄に堕ちて華麗なるハッピーライフ無双~』
https://ncode.syosetu.com/n4606ib/

【魔法×警察ドラマ×サスペンスホラー】『魔法捜査官』
https://ncode.syosetu.com/n9247io/

ゲーム会社元社長という異色の肩書について聞いてみた

――今日はインタビューを受けていただき、ありがとうございます。某社のファンでもあるので今日お会いできたことに感動しています……!この時点で喜多山先生が誰か僕らにはわかってしまったのですが、これは記事で明かすのはNGですよね(笑)

喜多山浪漫:頑なに隠しているわけではないのですが、今のところ自分からは名乗らないことにしています。推理していただくのは歓迎ですよ。そう難しい問題ではないと思いますが(笑)

――では、その推理のヒントとして、前職である「ゲーム会社社長」について少し伺わせてください。どのような経緯で、ゲーム業界に入ったのでしょうか。

喜多山浪漫:若い頃に入ったゲーム会社で、営業や広報を経て、ゲーム制作に携わり、そして社長をやらせていただきました。25年くらいはいましたかね。もともとゲーム業界に入ったのは、就職の際に「ゲームを作ってみたい」と漠然と考えていたのがきっかけなのですが、当時のわたしはゲーム制作に関してスキルがあったわけではなかったんです。プログラムができるわけでもない、絵がかけるわけでもない、当時は企画という職業も今ほど確立されていませんでしたから。なので、最初に与えられた仕事は、作った作品を営業し、広報するというものでした。これも正直、右も左もわからない状態だったのですが、ゲームの仕事に関わるのが嬉しくて夢中でやっていましたね。

――そこからゲーム制作に携わるようになったきっかけについてお聞かせください。

喜多山浪漫:あるゲームのミーティングに参加していたところ、「シナリオを誰がやるんだ」という話になったんです。そこで素早く手を挙げたのがきっかけです。プログラムや絵はできませんが、文章なら書けるかもという気持ちに後押しされた形です。経験もなかったので、チャンスを掴みたい一心でしたね(笑)

――急展開ですね(笑)初めてゲームシナリオを書いたときは、スムーズに進んだのでしょうか。

喜多山浪漫:シナリオのボリュームがあるゲームではなかったこともあって、苦労はそれほどなかったですね。あとは、ゲームをたくさん遊んでいたことが幸いして、「ゲームシナリオはこういうものだろう」というのが、なんとなく予想できたのは大きかったですね。ちゃんと学んだわけではないので、我流ではあるのですが、書き上げる糧としては十分でした。

――そこからは、完全にゲーム制作側に移られたのですか?

喜多山浪漫:小さな会社だったので、営業も広報も続けつつ、シナリオを手掛ける時期が続きました。忙しかったことは確かですが、やりがいのある仕事だったので、楽しみながら続けられましたね。大手の量販店に営業にいくときに、ゲームの説明をする際に「これ実は私が作ってるんですよ」というと面白がってくれる人がいたんですよ。「君、面白いなあ。説明詳しく聞くよ」みたいな。そこから話が広がって、仕入れていただけるということも多かったです。広報の仕事では、ゲームメディアさんとのやりとりが印象深いです。ゲームメディアさんの場合はゲームの中身にさらに踏み込んでくるんですね。感想や意見をくれることがほとんどだったので、メモして会社に持って帰って、そのアイディアを実装してしまうということもやっていましたね。次回会ったときに、「直してきました」というとゲームメディアの方が喜んでくれるんです。で、こちらのゲームに愛着を持っていただいて、ページ数が増えたりする(笑)

――うわーそれすごくわかります(笑)自分もゲームメディアの端くれにいたのですが、自分の意見が反映されているとすごくうれしいですもん。で、そのメーカーや開発さんのことを好きになったりします。ちょろいなーと自分でも思います(笑)

喜多山浪漫ゲーム会社の広報さんは是非真似してください(笑)自社のゲームを深く知っておくとやりやすいかもしれません。会社の体制や開発規模によっては難しいですけどね。

――制作、営業、広報をこなし、社長になられたのですね。

喜多山浪漫:そうですね。社長は10年以上やらせていただいて、その間も、制作にも関わっていましたし、引き続き営業、広報みたいなことはやっていました。社長という立場になり、いろいろな方と出会えましたし、これもとてもやりがいのある仕事でしたね。貴重な経験もたくさんさせていただきました。ただ当然、制作、クリエイティブな仕事に費したり、関わっていける時間は、年々減っていったんです。そういう時間を過ごす中で、自分がクリエイティブの仕事を次々と手放したあとに、どれだけ会社のために活躍できるのだろうと考えるようになりました。そう思い始めたら、前向きに「できるだけ早くいなくなったほうがいい」という結論になったんですよね。そこで会社と相談して、去ることを受け入れていただきました。

――前向きに「早くいなくなったほうがいい」というのはパワフルな決断ですね。会社を去られることで驚いた方も多かったのではないでしょうか。

喜多山浪漫:会社も周辺の方も驚いていましたね。引継ぎなどもしつつ、円満に退社したつもりではあるのですが、会社内でも知っている人は少ない話でしたから。退社後いろいろな人に何かあったの?と聞かれることも多かったのですが、気持ちは新たなフィールドを走ることに向いていましたから、元気そうで驚いた人もいたみたいです。

――今日喜多山先生にお会いしたので言うんですが、実は僕らもある人の退社にはすごい驚いたんですよ。えええーなんでーって。あの作品今後出ないんじゃないの、みたいな話もよくしました。

喜多山浪漫:前職の会社の作品の今後は私が語れる立場ではないですが、作品は求められれば世に出ることも多いですから、私が誰か気づいたあとは、引き続き応援してあげてください。

――第二の人生として、小説家を選んだ理由についてお聞かせください。

喜多山浪漫:道楽のように小説家を始めたととられるかもしれませんがそうではないです。働かないで生きていけるみたいなこともないので、そこは先に言っておきます(笑)正直にお話すると、創作への欲求と、コンテンツ作りをするという目的を考えたとき、に一人で始められることだったからという理由ですね。よくある、「好きなことを仕事にする」というものの第一歩でもあります。というのもさっき言ったように、絵も描けない、プログラムも書けない、ということはコンテンツを作るにしても漫画もゲーム作りもわたし一人ではできません。とはいえ、前職の経験を活かしてゲーム会社を立ち上げるみたいなことは、不義理でもありますし、同じ人生をループするような気もしますから、まず一人でやれる小説家を選びました。簡単に発信できる「小説家になろう」や「カクヨム」といったサイトにそれを載せてみたんです。そして、これらの作品を多くの人に読んでもらおうと活動しているというのが現在ですね。

――『エトランジュ オーヴァーロード』は、東京ゲームショウで冊子を配布していたのも印象的でした。

喜多山浪漫:創作したものをみんなに見てもらうということについて、今はいろいろなやり方があるなと思っているんです。たとえば、SNSやイベントで宣伝を積極的にされる方もいますよね。じゃあ、そこまでわたしもやってみようと、一人で読者を増やすための活動もやっています。先人の方のやり方を参考にしたり、わたしなりのやり方で作品の一人広報をやっています。

――漫画分野では、最近SNSを使った作者自身のプロモーションなどが増えてきましたよね。ショートストーリー的に、漫画の見どころの部分を切り出して、それを読んだ読者を本編に誘導するというのもよく見かけます。わたしもこうしたプロモーションに惹かれて、作品を買うことが増えました。と、ふと思ったのですが、喜多山先生の作品を広めていくという活動には、ゲーム会社の経験が活きそうですね。

喜多山浪漫:確かにそうかもしれませんね。ゲーム会社の頃も、自分の作ったゲームを遊んでほしい思いで営業や広報をやっていたんです。そのときは「こういうの作ったんで買ってください」でしたが、今は「こういうの書いたので読んでみてください」ですね。大きく違うのは、会社の経営を意識しなくてもよいところでしょうか(笑)「この作品にはたくさんの社員の将来がかかっている」というような意識がないところは楽ですし、自由です。前職は私だけの作品ではないですからね、開発規模が大きくなるに連れて、会社のためにということで緊張感がありました。これもやりがいはもちろんありますし、成功体験ができると気持ちが良いですよ。

――ここまでのやりとりで正体がわかる方も多いような気もします。シナリオを書いていた社長さんというと……。

喜多山浪漫:皆さんで推理してみてください(笑)

作品について聞いてみた

――次は作品について伺わせてください。『エトランジュ オーヴァーロード』は悪役令嬢を描いた作品ですが、発想の源泉についてお聞かせください。

喜多山浪漫:悪役令嬢は人気のテーマで、いろいろな作品を読ませてもらいました。わたしが楽しんでいた悪役令嬢ものの多くは、悪いことをした悪役令嬢が処刑されたりした後に生まれ変わって、反省しつつ人生をやり直すものが多かったんですよ。じゃあ、「反省しない悪役令嬢ってどうなんだ」と思ったのが執筆のきっかけですね。

――第一話で、そのことが高らかに語られますよね。一度や二度死んだぐらいで自分の生き方と自由を奪われてたまるものか」という部分などは、まさに作品の最初から最後まで貫かれるテーマですね。

喜多山浪漫:最初に宣言しておいたことで、物語の中でもキャラクターがぶれずに動いてくれたので、楽しく書くことができましたね。創作活動ではありますが、会社を辞めたという人生の転機にはぴったりの作品でした。中に残っているものを外に放り投げるような感覚があって、かなり好調なペースで書き進められました。

――シナリオを書くのは前職の経験があると思うのですが、小説については今回が初めてなのでしょうか?だとすると、楽しく書けたというのはすごいですね。

喜多山浪漫:ゲーム関係の出版物で、巻末に載せるショートストーリーなどは書いたことがありますが、今回のような長いものを書くのは初めてですね。ゲームのシナリオと小説は表現としては似ているようで違いますから、書き始める前は書き切れるだろうかという不安は少しありましたね。ゲームシナリオの場合は、プレイヤーの目の前に映像が出ることを考えて、文章での説明を控えるケースも多いんですよ。対して小説は文章だけで伝えない要素がゲームシナリオよりも多いですから。でも、いろいろ悩んでいても進まないので、とにかく日々、少しずつでも書くということを意識していました。マラソンみたいな長い道のりがあるとして、少しでも足を動かしていればゴールにたどり着くというようなイメージです。一作書き切れたことが自信になったのは経験として大きかったです。

――媒体として小説投稿サイトを選んだのはなぜでしょう。

喜多山浪漫:時代に合っているというのもありますし、気軽に発信できるというのが理由ですね。作品さえ書いてしまえば、自分の手ですぐ投稿できますから。そして投稿さえしてしまえば、「こういうの書いてるよ」と言いやすいですから。

――現在は2作目となる『魔法操作官』が連載されています。こちらについては、どのような発想から生まれた作品なのでしょう。

喜多山浪漫:わたしが楽しいと思っているテーマを一か所に集めて、物語にしてみようというのが執筆の動機ですね。バディものであり、ホラー要素もあり、サスペンス要素もある……みたいな。これらのテーマには各ジャンル傑作が存在しますが、混ぜて、さらに魔法ものという枠の中にいれると面白くできそうだなと考えました。

――ホラーものであり、バディものであり、サスペンス要素もある。こういうの好物です(笑)好きなものを混ぜているとのことですが、普段はいろいろな作品を鑑賞されたりするのでしょうか。

喜多山浪漫:漫画や映画鑑賞は趣味なので、これらがインプットになっている場合もありますね。特に好きな作品は、面白い要素を自分なりに分析しつつメモを取ったりもしますね。前職からの癖です。

――ちなみに、好きな映画は何でしょうか?即答は難しい質問かもしれませんが。

喜多山:これは即答できます。『エイリアン2』ですね。いつかこの作品を、ほかの表現手段で再構築したりする機会があるなら、是非スタッフとして参加したいと思っているくらい好きです。ゲーム業界にいた頃は、ゲーム化したいという想いもありましたね。本当に素晴らしい作品で、今でも多くの人に響くと思うんですよね。さまざまな要素を詰め込みつつ、無二の傑作を作り出しているというところに憧れます。

――『魔法捜査官』を読ませていただきました。魔法の絡む事件の捜査官である主人公の駿と、強力な魔法の力を持つアルペジオのタッグの今後に注目しています。魔法の力を恐れる人間たちが作り出した社会で、魔法使いであるアルペジオは今のところユーモアと人情あるキャラクターとして描かれています。ただ、「魔法使いが迫害を受けている」社会において、アルペジオの中に溜まっているものも確かにあるんですよね。そういった負のものが、どういう形で出てきて、二人の関係がどういう方向に向かうのか楽しみにしています。

喜多山:読んでいただいてありがとうございます。魔法の力がそれを恐れる魔法を持たない人間たちの管理下に置かれた社会で、どういう人間関係がありうるのかということを描いていきます。アルペジオは捜査の間だけ、魔法の能力を使うことを許可されます。しかしこの許可は、魔法の力を持たない人間たちが、「この状況にはこの程度の力まで使ってよい」と判断するものなので、捜査は駿にとってもアルペジオにとってもとてもリスキーなものになります。そんな状況の中で、二人が下す決断や、感じた理不尽、育っていく絆などを描ければと思っています。

――描写を見ていて気になったのですが、ゲームっぽい表現が登場しますよね。アルペジオに魔法を指示する際に、ゲーム風の選択肢が登場したり。設定周りもゲーム向けのような気がして、いろいろ妄想して読み進めていました。シミュレーションRPGとかダンジョンRPGとかよくないですか?

喜多山:そこまで読み取ってもらえているのはうれしいです。実は、ゲーム化までいけますよ、という密かなアピール要素も少し入れています(笑)『エトランジュ オーヴァーロード』の前書きににも書いたのですが、メディアミックスしていただけると嬉しいなあと。興味のある方、お待ちしています(笑)

――喜多山先生の作品がメディアミックスされるまで、特に「ゲームになるまで」楽しみにしています。『魔法捜査官』のほうはゲームとして見てみたいですね。今日喜多山先生にお会いして、いろいろな答え合わせができて、「ゲーム化してほしい、してよ」みたいな気持ちでいっぱいです(笑)喜多山先生が誰かわかったら、同じ気持ちになる人たくさんいると思うのですが……。作品のほうも、引き続き追いかけていきます!

喜多山:前職ではインタビュー慣れしていたのですが、やっていることも違う今はうまく答えられるかなと心配していましたが、楽しかったです。またいつでもインタビューしにきてください。

――え!?社交辞令を真に受けるタイプなので、またインタビューしに来て良いですか?『魔法捜査官』のゲーム化が決まるまで……とか。

喜多山:それだといつの話になるかわかりませんが、今後もこういう機会があれば喜んで参加します。

――じゃあ絶対次もお願いします。喜多山先生が正体を世間に明かすときは事前に連絡ください!

喜多山:わかりました(笑)

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