【インタビュー】20年ぶりにシリーズ最新作が発売!『TETRIS THE GRANDMASTER4 -ABSOLUTE EYE-』開発陣が語る本作の見どころとは

どこまでもやりこめる『テトリス』が帰ってきてしまった!

2025年4月4日にSteamにて、『TETRIS THE GRANDMASTER4 -ABSOLUTE EYE-』がアリカより発売となった。

奥深く独特のやりこみ要素を備え、プレイヤーの挑戦を待ちうける『テトリス』として知られる『『TETRIS THE GRAND MASTER』シリーズの最新作である。
前作から20年ぶりの新作となる本作では、初心者から上級者まで楽しめる多彩なゲームモードを収録されている。その充実っぷりは、コアなシリーズファンはもちろん、『TGM』シリーズにはじめて触れる方にもきっと受け入れられるだろう。
ハイスコアを目指すMARATHONモードや、素早くラインを消していくNORMALモードは実に遊びやすく設計されている。中級者向けモードであるASUKAは『TGM』らしい超高速で落下するテトリミノを組み立ててライン消しを狙う。超高速で落下するテトリミノは、「落下してからも考え、動かすことができる」ため、遊びこんでいくとただ理不尽な『テトリス』ではないことがわかるはず。
そして上級者向けモードとして用意されたMASTERに、CPUとの対戦を楽しむSHIRANUIは、超高難度で、死にゲーと言ってもいい歯ごたえを誇る。とはいえ、死にゲーは繰り返し死ぬことでいつかクリアーできたりするものだが、『TGM4』は死にゲーのように優しくはない。

そう、『TGM4』は入り口は広く、塔の頂上は遥か高い作品なのだ。
シリーズ集大成ともいえる本作には、『テトリス』と『TGM』を愛するクリエイターたちの情熱が込められている。
本記事では、『TETRIS THE GRANDMASTER4 -ABSOLUTE EYE-』の制作キーマンたちにお話をうかがった。 本作のプロデューサーでありプログラマーを務めた平嶋 仁 氏。初代『TGM』の制作にも携わった柄澤 光宣氏。そして、シリーズファンならご存じの方も多いであろう、生みの親の三原 一郎氏である。

※このインタビューは発売前日に収録されたものです

ついに『TGM』が帰ってきた

――今日はよろしくお願いします。まず自己紹介からお願いできますでしょうか。

平嶋:開発ソフトウェア部のプログラマーの平嶋です。『TETRIS THE GRANDMASTER4 -ABSOLUTEEYE-』のプロデューサーもやっております。

柄澤:ソフトウェア開発の柄澤です。『TGM4』ではロジックやCPUモードを担当しました。

三原:あとは、今回のインタビューにはいませんが、技術全般をサポートしてくれた増田と、デザインの細羽がいます。

▲左から『TGM4』チームの、増田氏、細羽氏、平嶋氏、柄澤氏。

増田 氏:株式会社アリカの技術研究責任者。代表作に『ファイティングレイヤー』や『超ドラゴンボールZ』(バンダイナムコエンターテインメント)のシステム等。アリカが開発協力した『鉄拳7』、『鉄拳8』(バンダイナムコエンターテインメント)のロールバック制作に携わっている。 今作ではSteamへのサポートやPC特有の問題に対応。 初期の無敵AI制作を担当。

細羽 氏:株式会社アリカのデザイン部部長。カプコン時代には”スパイラル”や”シュマゴラス”等のドットを担当した。今作では旧『TGM4』のデザインを全て一人でアップデート。追加UIデザイン等を全て一人で制作させられたとのこと。

――豪華なメンバーですね。そして……。『TGM』シリーズの産みの親である”三原さん”ですよね。いつもXのスペースでお会いしていますが、今日はよろしくお願いします(笑)

三原:はい。今日はインタビューということで。よろしくお願いします。

※Gozilineの浅葉とアリカ三原氏は、不定期でゲームの話題を中心としたスペースを開催している。

――はい。『TGM4』、いよいよ発売ですね。

平嶋:そうなんです。発売にも、インタビューにも緊張しています。

――まず『TGM』シリーズ最新作を制作することになったきっかけについて教えていただけまか?

平嶋:『TGM』の新作が世に出るのは20年ぶりなんですが、実は15年くらい前に今の『TGM4』のプロトタイプ版が社内ではできていました。そのときは諸事情で発売できなかったんですよね。

三原:『テトリス』って一大ブランドですから、いろんな『テトリス』のゲームがありますよね。簡単に説明するとシリーズの発売スケジュールの中に、我々の『TGM4』がうまく潜り込めなかったというのもあります。同じような時期に『テトリス』の新作が重なるというのも避けなければならないですから。商品としては出していませんが、プロトタイプ版をWindowsで動かすこともやりましたし、ご存じの方もいると思いますがアーケードでも動くようにしたこともあります。現行のSではじまるハードでも遊べるところまで組み立てました。

柄澤:僕はアリカ側のスタッフなんですが、作っていたんだと驚いたことがありますね。

――そのプロトタイプ版をもとにしたのが、今回発売された『TETRIS THE GRANDMASTER4 -ABSOLUTE EYE-』なのでしょうか?

平嶋:そのままというわけではなくて、もちろん今に合わせたチューニングをしています。ただ、企画としてはいきなり飛んできたのでびっくりしましたね。僕は『TGM』のテストプレイヤーをしていたことがきっかけでアリカに入ったのですが、『TGM』の制作には関わってこなかったんですよ。それに、プロトタイプのこともあったので、新作はないかなーと思っていました。

三原:平嶋Pが入社した頃は、まだ『TGM』のプレイヤー寄りだったんですよね。『TGM3』を作っていた後に入社したんです。

平嶋:制作に関わってしまうとプレイヤーとしての『TGM』への関わり方が変わってしまうかなと揺れていた時期だったので、その気持ちを汲んでくれていたのかなと勝手に思っていました。それから時間も経った頃に、アーケードアーカイブスの『TGM』移植の監修などを任されましたが、新作を任せてもらえるとは思いませんでした。

三原:任せたはいいけれど『TGM4』って、驚くくらい小規模なチームで作っているんですよ。それなのに制作期間も短いという。

平嶋:そんな状況なのに三原さんがあれもやりたい、これもやりたい……と。

三原:いやいやいやちょっと待て。「前半」やりたいことをいろいろ言っていたのは平嶋Pだから。2024年の年末までを前半とするなら。それは私もすぐ作って出したかったですよ。でもね、間に合わないなということがわかってきて、「じゃあ2025年の3月を目指そうとなって」から、いろいろ言い始めたんですよ。ちょっと時間増えたしやりたいことを前に出すことにしたんです。

――なすりつけあいが始まった……。でも、短期間で作る、そして間に合わないから延期するのに、新しいことを盛り込もうとするのがおかしくないですか????

平嶋:おっしゃる通りです。三原と二人で意見を交換していると盛り上がってしまうんですよね。盛り上がって「やりますか!」みたいに仕様が決まることも多々あり……。

三原:濃いものを作る方向に進んでいったんですよね。平嶋Pとはどれだけ議論したことか。

平嶋:結果としてプロトタイプの面影はあまりないですね(笑)ゲームモードや、その中にある遊びを増やしまくったので。

柄澤:僕はもともとほかのプロジェクトをやっていて手が空いたところで合流した感じです。何か面白そうなことをやっているなと。

三原:柄澤は初代『TGM』を一緒に作った仲間なんです。

――本作の特徴について教えてください。『TGM』シリーズということで、やはり歯ごたえのあるテトリスが楽しめるのでしょうか。

平嶋:歯ごたえはもちろんありますが、初めて遊ぶ方でも楽しめるような要素も入れています。上達してもらうことを目的として組み込んだ要素もあるので、怖がらずに遊んでみてください。『TGM』シリーズにはじめて触れる方や、他の『テトリス』を遊んでいたという方はMARATHONやNORMALから遊ぶと良いかもしれませんね。クリアーまでとなると難しいですが、コツコツ遊ぶ楽しさがあると思います。ビックブロックで遊ぶKONOHAは、序盤はどこに置くといいかわかる”ガイド”が表示されるので、これも楽しんでもらえると思っています。全消しするとボーナスイラストが解放されますよ。中級者~上級者の要素に関しては……、ご期待通り、いや、ご期待以上に難しいと思われます(笑)

三原:最高速でテトリミノが落下してきてくるASUKAというモードでは、制限時間内にどこまでレベルを上げるか競えます。『TGM』の最高速で落ちてくるテトリミノでいきなりはじまるので、未体験の人はびっくりするでしょうね。ただ、この最高速で落ちてくるテトリミノは、ただ落ちてくるだけじゃなくて、落ちたあとでも左右に動かしたり、回したり、最適解を考えながら移動させられるんです。『TGM』1作目からの伝統なのですが、いろいろな方に体験してほしいですね。あ、でも、今回は「21G」です。

▲ビックブロックで遊ぶKONOHAモードでは、全消しする毎にボーナスイラストが解放さる。 序盤は、全消しするためのガイドが表示されるので、初心者の方にもおすすめのモードとなっている。

――Steamのストアで、上級者用とされているMASTERモードの説明文を見たのですが、「すべての『テトリス』力が試される上級者向けのモードです」ってあって、すごい高難度の香りを感じたんですが。

三原:『テトリス』や『TGM』に慣れていれば、途中までは意外といけるんじゃないかなーと……思いますよ。いろいろなギミックがでてくるので、それをどう攻略するかが鍵ですね。「サイクロン」というギミックが出てくるんですが、これは最初面食らうと思います。鬼畜です(笑)この「サイクロン」を頭の中でうまく整理して、気にならないような人がでてきたとしたら、「その先」を見られるでしょうね。人類が超えてくれると信じています。

――壮大な話になってきた……。

三原:サイクロンを克服したら、その先もいけるよね?

平嶋:えええー……。どうでしょう。三原はプレイヤーを信じているんですよね。柄澤はどう思っているか聞いてみたいです。

柄澤:僕には想像もつかないレベルの話です(笑)

三原:MASTERモードでは何日か前に平嶋Pが気づいた攻略法があるんですよ。で、それ潰すかみたいなところまで考えたんですが、それ潰すとさらにクリアーできなくなるかなと踏みとどまりました。ちなみに、難攻不落の後半、そして最後の塔を登ったとしても……本当にそこで終わりかなというような作りになっています。何回か塔が出てくるので頑張ってください。

平嶋:開発中にギミックはいろいろ変わりましたね。「ヤバイギミックを考え付いたので差し替えたい」みたいな。

――このMASTERモードが本作の最難関コンテンツというわけですか?

平嶋:うーん。最難関だとは思うのですが、SHIRANUIの高難度も大変難しいですね。

三原:CPUと戦うモードは柄澤が作ってくれたんですが、これは開発中に本当に人に勝てるのか?みたいな疑問も浮かんできて。というのも、CPUが成長していくみたいな要素があったんですよ。なので、プロのプレイヤーを呼んで、どんなものか体験してもらいました。「あめみやたいよう」さんと「ともくん」さんにこのモードをプレイしていただいて、どのように攻略していくのか見させてもらったんです。さすがに対戦シーンの『テトリス』を代表するプレイヤーということもあって、攻略の仕方や、攻略の糸口の探り方を見ていて楽しかったですね。彼らのプレイを見て、修正を加えていきました。

▲エンドコンテンツの難度はきわめて高いが、その分遊びごたえは十分。『テトリス』に自信のある方は、是非挑戦してもらいたい。

――結果、難度はどうなったんです?

平嶋:大変難しいですね(笑)MASTERモードとはまた違う歯ごたえがあります。

三原:どのCPUと当たるかはある程度コントロールできるので、激ヤバなのは避けつつ、対戦テトリスのセオリーでよく言われる「REN」というテクニックを駆使すればきっと勝てると思っているんですよ。いつ勝てるとはわからないですけど、勝てるはず。でも、私や平嶋Pは『TGM』側の人間なので、どちらかというと、対戦テトリスに慣れた人が『TGM』ルールに慣れるほうが、このモードを打ち倒す可能性があると思います。

平嶋:TGMルールは独特なので、そこに慣れるまでが大変でしょうけど、対戦テトリスの方のチャレンジも見てみたいですね。実際に、プロの方の積み方を見ていて、驚くことばかりでした。そんな手があるのかと。

三原:2年くらい前に、「あめみやたいよう」さんを最初に見たときは衝撃を受けたんですよ。「テトリスの、別の世界の積み方を見た」くらいに驚きだったんです。ゲームのセオリーって、攻略法が生まれたら、それをほかの人が磨いて少しタイムを縮めたり、少しダメージを出したりという感じで発展するじゃないですか。『テトリス』は歴史の長いタイトルで、わたしも先人の攻略や積み方が成長していくというようなところはよく見てきたんですが、あめみやたいようさんの積み方は「新しかった」んです。今ではその積み方をもとにほかのプレイヤーが練習や研究を重ねて、強いプレイヤーが生まれていますが、パイオニア感のあるプレイヤーが次に出てくるのはいつなのかなあと楽しみにしています。

――次に、『TGM』を支える一要素であるサウンドについても聞かせてください。僕『TGM』めっちゃ下手ですけど、サウンドはめっちゃ好きです。

平嶋:ほとんどが新曲で、過去最大曲数になっています。アレンジも入っていますが、新しい曲の多さに驚くと思いますよ。サウンドはスーパースイープさんももちろん、アリカ側としても楽しんでほしい要素なので、音が楽しめる環境で遊んでほしいですね。

三原:なぜ、制作の時間がない中、過去最大曲数になってしまったのか。

――なぜでしょう?

三原:わたしがめちゃくちゃ要求リストを作ってしまったからです……。気づいたら曲数が大変なことに。

――犯人こんなとこにいた!

三原:要求したリスト通りに届いた曲を、自分で並び替えしたりもしていましたね。時間がないと言いながら、時間を削る作業に突っ込んでいくという制作でした。ちなみに、旧作の音も鳴らせるようにしてくれという要望もいただいていたんですが、そういった仕様はいれていません。アレンジは入っていますけどね。私の感覚なんですが、古いサウンドトラックを入れると、思い出補正で人はそっちを再生しがちなんですよ。いい試みだとは思うんですけど、新しい曲を聞いて欲しいので、今回はこの形で行こうと思います。

▲サウンド面も『TGM』の魅力のひとつ。ほとんどが新規楽曲かつ、そのボリュームも膨大!

『TGM』のはじまりから、今まで

――サントラも検討お願いします。ここまでお話をうかがってきてわかったのは「初心者でも楽しめるけれど、上を見ると果てが見えない」みたいな雰囲気です。そびえたつ塔のような『TGM』ですが、これはシリーズ共通のイメージのような気もします。一作目を作ったとき、「難しいテトリス」を目指して制作したのでしょうか。

三原:もともとアリカが『テトリス』をやろうと思ったのは、対戦に特化したテトリスを作ると面白いかもと考えたところから始まりました。テレビのコンテンツとコラボしたようなものというのを考えていたのですが、これは結局没になったんです。それからちょっと時間が経って、「アーケードでテトリスを作る」と決めたんです。作るときに意識したのが『セガテトリス』の「テトリミノが落ちても終わりじゃない」という部分です。落ちてからもまだそのテトリミノの未来は動かせる、プレイヤーが考えられる、ということが、最適解を短い時間で出す楽しみにつながるかなと。ちなみに、「テトリミノを速く落下させて」と当時柄澤にお願いしたら、速すぎて下から出てくるようなものがあがってきて。これが当時の20Gとかに繋がっています。

柄澤:ちなみに僕は当時反対していました。『テトリス』がうまいわけではないですから、「こんなの無理でしょう」って(笑)

三原:当時も人の言う事を聞かなかったので、自分のカンでその意見は却下しましたが(笑)『TGM』は偶然の産物といえるようなネタがいくつも入りました。たとえば、弊社の事務の人がプレイしているのを見ていると、テトリミノが壁の横で回転しないことを不思議がっていたんです。当時のテトリスだと当たり前の仕様です。でもそれを見て、ここを回せるようにしてみてはどうだろうと入れてみたり。あとはIRS(先行回し)というテクニックがあるんですが、これは開発中は最初入力の猶予を1フレームにしていました。難しいけど決まったら格好いいみたいなノリで。でも、これも事務の人が、ボタンを押しっぱなしにしていたら毎回IRSになっていて。それを見た柄澤が「バグだから直しますね」と言って席に戻ろうとしたのを止めたんです、「このままでいこう」って。結果として良かったですねこの判断は。猶予1フレームは格闘ゲームでもなかなか見ないですし(笑)

――隠しコマンドなども話題になりましたよね。

三原:今の『TGM』につながっているものもありますね。

柄澤:ビックブロックは、デバック用に用意しておいたものを、開発チームで楽しそうに遊んでいる人がいるので、隠し要素として入れましたね。

三原:ウキキモードは当時マスターアップしたくらいのタイミングで知って「ナニコレ」ってなりましたね。2では消してもらいました(笑)別のゲーム用の音の中に面白いのがあったらしく、隠し要素に柄澤がねじこんだという。

――三原さんが作るゲームは隠し要素が多いイメージがあります。『TGM4』ではどうでしょうか。

三原:『TGM4』では結構オープンにしています。というのも今の時代、隠しても解析されてしまいますからね。解析されにくくするみたいなのにも手間がかかるので。

――平嶋さんは初代『TGM』の頃は、まだアリカに入る前ですよね?

平嶋:私は三原が初代『TGM』を作っていた頃、まだ学生でプレイヤーだったので、話を聞いたときは新鮮でしたね。

――平嶋さんと『TGM』はどのように出会ったのでしょうか。

平嶋:最初に出会ったのは高校生のときです。初代『TGM』の稼働前に、ゲーム雑誌ですごい『テトリス』が出ると見て、興味を持っていたんです。でも、いざプレイしてみると、物凄いスピードのゲームで……。そこで撃沈して、いったん距離を置いたんですよ。それでも気になって、次に触るときにはクリアーできるようにまでなりました。なるほど段位は「S級」かということで満足していたんですが、「GM」というランクがあることを知ったんですよ。で、これにチャレンジしていたんですけど、近づいたり、離れたりするような感覚でした。

――やはり初代から歯ごたえのあるゲームだったのですね。

平嶋:そうですね。自分にとっては極めたなんてとても言えるようなゲームじゃなかったです。それでも『TGM』コミュニティに誘われて、いろいろな人に教えてもらったり、プレイを見たりするうちに上達していきました。

――『TGM2』以降のシリーズはどのような経緯で発売したのでしょうか。

三原:当然商売として出しましたけど、作り手としては初代『TGM』で想像以上にプレイヤーが喰らいついてきたので、また戦おうと。ここまではやってくるだろうと思っていたところを乗り越えてきた人が出て来ていたんですよ。アーケードで発売するとなったときに、当時仲良くさせてもらっていた彩京さんのボードが破格の安さだったというのも追い風になりました。当時アーケードゲームの基板が高くなっていっている中で、販売価格も控えめにできましたし、何より生のボードの卸値が安かったんです。新しいモードで「ダブルス」を入れましたね。相当無茶な企画だったなと思います。柄澤に投げたら程よくなっていたという。

三原:『TGM3』は企画マンが別にいたゲームですね。筐体ごとにプレイヤーデーターを収録できるようになった作品です。平嶋Pがやりこんで全一になった作品でもありますね。

平嶋:『TGM3』の発売が2005年で、GMという称号を世界で最初に取れたのが2007年。2年かかっていると考えると『TGM』は怖いですね(笑)最初に段位認定試験が急に始まったときはびっくりしました。MASTERモードをやろうとしたら、いきなり”段位認定試験”なるものが始まったんです。最初は緊張してぜんぜん振るわない成績でした。好成績を取り続けると段位認定試験が出現するという仕様で、本当に突然来るんです。

三原:その緊張の一発勝負の中で、お前の腕を見せてみろというのがコンセプトですからね。

――『TGM Ace』はXbox360のローンチタイトルでしたよね。

三原:この時は『テトリス』のガイドラインで、『TGM』的な仕様を使ってはダメという話になってきていたんですよ。クラシックルールやワールドルールが主流になっていたので。TGMの要素や操作方法は控えるべきと。で、結局どうしたかというとナンバリングを外して、外伝っぽくしたんですよ。Microsoftのローンチということで許してもらえた部分もありましたね。こうしたTGMルールを控える方針の中で、『TGM』新作に踏み切れない時もあったんです。こういう方針になるというのもわかるんですよ。たくさんルールがあると混乱するというシンプルな理屈です。競うならなおさらですよね。いろいろルールがあると、対戦のレギュレーションとかが難しくなる。そういう事情でお休みしていたというのもありますが、令和になってまた再始動することになりました。時代によってガイドラインも変わりますからね。

――わー!なるほど。『TGM Ace』から、そうつながるのですね。いかがでしたか『TGM4』を作ってみて。

三原:まだぜんぜん終わりじゃないです(笑)問題が発生したら直しますし、簡単と言われたら難しくするし、弱いと言われたら強くしたいですし。あと平嶋Pの「やりたいリスト」もあれば、私の「やってくれたほうが嬉しいんだけどリスト」もあります。ここらへんまでいけるかは皆さんの応援次第というか、売り上げ次第なところもありますが。

平嶋:やりたいことはまだありますね。感想などももらえると嬉しいですね。

柄澤:『TGM』シリーズに参加したのは久しぶりですが、いろいろな人に遊んでほしいですね。難しい部分のインパクトが強いんですが、難度の低いものもありますしね。ちなみに、僕は高難度からは逃げています。

三原:でも、柄澤も『TGM』がうまくなっているんですよ。横から見ていて、「いつのまにそんなことできるようになったの」とびっくりしますもん。

平嶋:厳しいだけのゲームではないので、そこは安心してください。MARATHONやNORMALは『テトリス』未経験者でも楽しめますし、遊んでいるうちにうまくなるような設計もしています。

『TGM4』はライバルにも、優れた指導者にもなりうる

――高難度コンテンツのクリア者はどれくらいで現れると思いますか?

三原:ASUKAのファイナル称号は初日にとられるんじゃないかなあ。マスターは人類頑張れと思っています。SHIRANUIはどう思う?

平嶋:難しいんじゃないですか。しばらく出なくてもおかしくないような気が。

三原:対戦テトリスの猛者が挑めば我々の想像していないクリアー方法をしてくれるのかなと思ったりもするんですよ。

――そういえば、聞き忘れていたんですが『TETRIS THE GRANDMASTER4 -ABSOLUTE EYE-』のABSOLUTE EYEにはどのような意味合いがあるのでしょうか。絶対的なまなざし、のような意味合いなのか、「AI」とかけているのかとか、いろいろ想像しますが。

三原:特に意味はありません。以上。

平嶋:ええ!?

三原:ABSOLUTE EYEは指導碁からイメージした言葉です。相手に楽しんでもらうように打つ、相手に上達したもらうために打つ指導碁の先生側には、絶対的な強さや目線が必要なのかなと。『TGM』におけるそういう目線を持つ存在という意味を持たせています。腕前は気にせず、先生に教えてもらうようなつもりで遊ぶのも良いかもしれませんね。

――しっかり遊ばせていただきます。今日はありがとうございました。

『TGM4』の頂上は遥か高く、そこにたどり着くまでにはさまざまな困難が伴うかもしれない。
しかし、遊んでみると本作はただ理不尽なゲームでないということがすぐにわかるはず。
MARATHONやNORMALは『テトリス』の面白さをゆっくりと伝えてくれるモードになっていて、遊んでいるうちに上達を実感できるような仕組みになっている。「気が付けば『TGM』という塔を登りはじめるための筋力がついている」ということすらあるだろう。
そして、一度『TGM4』の塔を登り始めたら、なかなか辞めらず、なかなか諦められないものになっているはずだ。

世の中にはさまざまな『テトリス』があり、作品ごとに個性やレギュレーションが異なるものもある。
『テトリス』に慣れている方でも、『TGM』をはじめて遊んだとしたら、独自の要素に戸惑う場合もあるだろう。
しかし、さまざま『テトリス』には、それぞれ固有の面白さや爽快感がある。
『TGM』には、『TGM』でしか得られない興奮が詰まっているのだ。

コツコツとつき合える、もしかしたら一生の付き合えるかもしれないゲームを探している方は、本作を一度遊んでみてはいかがだろうか。

なお、『TGM4』は現在高い評価を得ているが、インタビューの三原氏は「まだぜんぜん終わりじゃない」と語ってくれた。
反響次第ではさらなるアップデートが行われる可能性もあるので、塔がまだまだ伸びていく可能性もある。
既にプレイしたという方は、本作の変化や進化にも注目してもらいたい。

2025年5月21日
緊急インタビュー


――昨日、2025年5月20日ですね。『TGM4』で初の「グランドマスターラウンズ」が誕生したとのことです。
そのクリア方法についても話題になっていますが、開発側としてはどう受け止めていますか?

三原素直に人類凄いな~と思っています。 夏ぐらいまでは時間かかるかな?と思ってたのですが、一日に何時間もプレイされてるみたいで、頭がさがる思いですね。 masterモードの攻略法としては、開発としてはおおよそ3つの方法を想定していました。 その一つが今回の、我々の言う所の「タワー」攻略です。 タワーに至るまでの道筋の難易度と、タワーが完成させてからの難易度を総合的に判断して「GM級である」と思ったので道筋として残しました。

――最後に時間を稼ぐ方法は想定されていたのでしょうか?

三原:タワー攻略に限らず、Standardモードではガイドライン上Infinity(無限回転)が許容される手法なので、その為だけの対策を入れるのは不公平だなと思っていました。 TGM本来の難易度はTGMスタイル基準で設計しているため、Standardスタイルはどうしても「見逃され」がちになってしまいましたが。

――ということは、Infinityも含めて「想定された攻略法」のひとつなのでしょうか?

三原:プレイヤー批判をしてる訳じゃないという前提で、そこまで行く腕前の人がこのご時世動画化するんで、 見ててちょっと……というプレイをしないんじゃないかな?とは思ってたので、そこは想定外でした(笑)ただ、SNSでも言ってますが、「だからダメ」じゃないんです。「システムが許容してるので問題はな」と思っていますよ。 それにそこまで行ける人は最終的にタイムアタックなので、詰めてくる方もいるんじゃないですかね。

――余計なお世話かもしれませんが、「回転数制限」を入れる方法は検討されなかったのでしょうか?

三原:TGM3でstandardスタイル(ワールドタイプ)が入った時に、その仕様を入れました。 それはアーケード市場の為、延々プレイをされると困るという特殊な環境だったので例外的に許された仕様です。
 
――ちなみに、これでゲーム内のマスターモードは攻略完了となるのでしょうか。

三原:「現時点ではここまで」です(笑)今後の追加仕様アップデートにご期待下さい。

――追加仕様ですか?(笑)

三原:そもそもSteamでリリースした作品なので、どんな細かい条件とか隠しを入れても解析されるんでしょうから、最初から全てのギミックや仕様を入れるという考えはしていないんです。 まずはその製品を100%楽しんでもらえたら、お祝いのように追加が出来ればいいなーと思っています。もちろんこういうアップデートのためには、 売り上げも無視できない要素なので、応援よろしくお願いします(笑) 例えば、ASUKAは近いうちにHARDモードを追加する計画です。 masterはもう少し攻略に時間かかると思ったので、まだ未計画ですがHARDモードの設定はあります。 解析者により、称号メダルが晒されてるみたいですが(笑)もうそれは仕方ないかなーと、そういう時代なのかな、と。 

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ゲームを最大限に楽しむことを目的としたゲーミングチーム。
様々なジャンルのゲームを大人気なく遊びます。

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