【連載企画】「喜多山浪漫」先生インタビュー第二回:小説用の楽曲をオカモトタカシ先生に作ってもらったってどういうこと!?

元ゲーム会社社長で、現在は小説家という異色の経歴を持つ喜多山浪漫先生のインタビューを行った際に、「またインタビューしにきてよいですか」と聞いたところ「喜んで」とのことだったので、社交辞令を真に受け再びインタビューに行ってきた。実は我々、前回のインタビューでパワフルに活動する喜多山先生に激しく影響され、ゴジラインの新マスコットキャラ「持続重ゆうり」ちゃんプロジェクトを始動したりしてしまったのだ。

聞くと元気になる喜多山先生のインタビュー第二回となる今回の記事では、創作物の広げ方から、驚きの連載中の小説用のBGMを作っちゃった話などを伺う。

前回記事:【インタビュー】前職はゲーム会社社長!?そして小説家へ!謎多き作家「喜多山浪漫」先生にインタビューしてみた

自作のプロデューサー&営業は楽しい

――先生、お久しぶりです。とはいえ、一か月ぶりくらいですが(笑)先生のスピード感がすごいので。SNS見るといろいろなところに顔を出しているし、意外と『魔法捜査官』のゲーム化も早めに決まってしまうんじゃないかとか思っていて。振り落とされないように来てみました。

喜多山浪漫:ありがとうございます(笑)作品を書いて待っているというのが性分には合わないので、作品を持っていろいろな人に会いに行ったり、新しい取り組みをしたりしているという感じですね。最近では、自分の作品を売り込むプロデューサーであり、営業でもあると思っています。前のインタビューでもお話したように、前職を辞めて、残りの人生どうやって生きていきたいかを考えた結論が「創作に携わりたい。コンテンツを作りたい」というものだったんですその目標に向かって、まずは一人でできることとして文章で作品を書きはじめたんですね。ただ、わたしの思うコンテンツというのは、必ずしも小説というわけではないんです。むしろ、自分の力だけではできないようなものに憧れややりがいを感じます。アニメ、コミック、ゲーム。中には一人で全部できてしまうクリエイターもいますが、大半の人はそうではないですよね。絵もプログラミングも書けない私の場合は、まず原作となるものを自分で書いて、同時にそれをコンテンツにするよう営業し、プロデュースしようと考えたんですよ。小説を原作に、アニメ、コミック、ゲームみたいなものができたらいいなと思いますし、アナログゲームみたいなものやグッズでも良いと思うんです。いろいろな人と関わり合いながら、コンテンツを作りたいですね。

――なるほど。ゲーム会社にいらっしゃった頃も、プロデューサーや営業をこなされていたと前回のインタビューでお聞きしました。絵や小説を書いて、自分でSNSで広めるというのはよく見かけますよね。こういう行動もプロデューサー的であると思うのですが、喜多山先生の場合はSNS以外でも活動されているんですね。

喜多山浪漫:SNSは今のところゆったり運営ですが、足で稼いでいるような感じですかね。読者さんに向けたものはもちろん、読者獲得のための活動をしています。そしてコンテンツ化のための活動もしていますね。読者さんに向けたものですと、自分の原作の外側を補強するために、絵をつけたり、音楽を作ってもらったりすることですかね。こうした活動はほぼ自分の持ち出しです。作品に気づいてくれるくれる人を増やすためであったり、読んでくれている人により楽しんでもらうためにやっています。コンテンツ化に向けては、商品化することでどういうメリットが先方にあるのか、どれくらいの売り上げが見込めるのかというところを現実的にプレゼンテーションするなどの活動もしています。原作を書いて、広めて、営業する。これが私の新しい仕事なんです。小説を書くのは楽しいですし、これからも続けていきたいことなんですが、道楽というわけではないんです(笑)

――道楽ではない(笑)ここ、強調しておきます。実は前回のインタビューを見て、ゲーム業界の方から僕に個人的に連絡をいただいて、「引退して小説家羨ましいなあー」みたいな声がいくつか届いたんですよ。

喜多山浪漫:そうだったんですか(笑)引退して道楽できるような状態で引退していないので、「コンテンツを作る」という業務に本気で取り組んでいますよ。

――先生の話を聞くと元気や勇気をもらえます。これはぜんぜんお世辞とかではなくて、実は自分たちも影響をものすごく受けているんです。実は、つい最近「ゴジライン」のマスコットキャラクターを発表したんです。もともと企画していたことで「いつかはやりたい」と思っていたことなんですが、喜多山先生のアクティブさを見て、「やるなら今だな」と思ってとりかかりました。名前と設定を考えて、キャラクターデザインをお願いして、公開まで進めたんです

喜多山浪漫:ゴジラインさんっぽい名前のキャラクターだなと思って感心していました(笑)どうですか?コンテンツを世に出す面白さみたいなのを感じませんでした?

――実は、凄く感じています(笑)小説みたいな長いものも書いていませんし、名前や簡単な設定、今後の企画を考えたくらいで、イラストレーターのYuyi先生の絵の力に頼り切っているのですが、それでも読者の方から反応してもらえると嬉しいですね。その嬉しさで、また次の展開をやりたくなるのだなと実感しています。喜多山先生の気持が少しわかってきたぞ……と思って今日はここに来たのですが、自分の創作物をコンテンツにしていく具体的な動きやヒントが聞けて、感動しています(笑)

喜多山浪漫:それはよかったです。わたしもコンテンツを作ってビジネスをやるみたいなことを言いつつも、根底はやっぱり「楽しい」なんですよ。儲けるためだけなら、きっと選ぶべきではない仕事です。前職で自分の作ったゲームを売り込みにいったり、記事の枠をもらいにいったりする時というのは、仕事でもありましたけど、それ以上にやりがいを感じていたんです。

『魔法捜査官』のBGM
実はオカモトタカシ先生が作ってます

――そういえば、絵をつけたり、音楽を作ってもらったりというお話がありましたが、『魔法捜査官』は既に楽曲が公開されていますよね。作曲はオカモトタカシ先生ですよね。

喜多山浪漫:これは先ほど言ったように、コンテンツのプロデュースの一環ですね。小説サイトの作品だと、キャラクターデザインや絵を添えているものは見かけますが、音楽というのは珍しいかもしれないと思ったのがきっかけです。『魔法捜査官』を書きはじめたのは去年の秋くらいなのですが、そのタイミングでオカモトタカシさんと食事に行くことになったんです。その席で相談してみたところ、「曲を書いてみます」といっていただけたんです。もともと前職で縁はあったのですが、クリエイティブについて直接やりとりするということがなかったので、飲み会の最初はお互い手探り状態だったと思います(笑)「この人会社やめて何をするんだろう」とか思われていたかもしれませんし、わたしは「曲の相談やお願いがしたいけれど、どう説明しよう」みたいな雰囲気でした(笑)

オカモトタカシ 氏:『セイクリッドブレイズ』、『少女地獄のドクムス〆』、『オバケイドロ』など、数多くのゲームの楽曲を手掛けるサウンドデザイナー。BGMはもちろん、効果音や主題歌の制作も行っている。12sound合同会社(公式サイト)代表。

――オカモトタカシさんというと、ファンタジーRPGの曲などを多く手掛けているイメージがあります。『魔法捜査官』は、サスペンス、ミステリーの気配が強い作品ですよね。魔法というテーマはありますが、現代劇っぽいイメージです。

喜多山浪漫:そうなんですよ。なので、そもそも引き受けていただけるかわからなかったんですが、『魔法捜査官』のあらすじや世界観に興味をもっていただけたみたいで、サンプル曲をいただけることになりました。そのサンプル曲が送られてきたときに「これでダメならほかの人を探してください」というようなこともおっしゃっていたので、こちらも緊張しながら聴きました。そうすると「求めていたのはこれだ!」と思えるような出来栄えで、即制作に取り掛かっていただきました。世界観に合っているというのもありましたし、一緒にお仕事することでオカモトタカシさんという作曲家の新境地に立ち会えるぞという手応えを感じたんですよね。すぐに完成版を発注させてもらいました。

――聞かせていただきましたが、世界観に合っていますよね。聴いてほしいシーンとしては、やはり読書中ですか?

喜多山浪漫:そうですね。読みながら聴いていただけると、作品をより楽しめると思います。音を聴きつつ文字を読むのが苦手という方は、作品を読む前に聴いてもらうのも良いかもしれません。私も曲を聴いてから、執筆にとりかかることがあります。世界観に身を浸す儀式みたいな感じですかね。いつもより筆が進む気がしています。メインテーマとバトルの曲のコントラストも面白くて、同じ世界観の中にある楽曲なのですが、謎を追う緊張感と戦いの緊張感、種類の違う緊張感が伝わってくるようで気に入っています。

――コンテンツにおける音の力って大きいですよね。ゲームやアニメ、映画の名作って、サウンドとともに思い出すことが多いですし。喜多山先生は前職で、サウンドの力を感じたことが多いのではないでしょうか。と、無理矢理喜多山先生の正体のヒントをインタビューの中に盛り込もうと思います(笑)

喜多山浪漫:ゲームにおけるサウンドの力は、それはもうよく知っていますね(笑)たしの初期の作品で、まさに「音楽の力」を信じた作品を手掛けたことがあるんです。その作品はジャンルとしてはRPGなのですが、勝負どころを「歌」と「歌って踊る演出」に置いていたんですよ。ただ、制作中に、「RPGをつくるのですら大変なんだし、こんなに歌が流れるシーンを作りこむ必要があるのか」という声も出てきたんです。結局それを削るか、作り切るのかという選択を迫られるような時期がきて、私としては「作り切らないのならわたしはこの作品に関わるのを辞める。会社も辞める」みたいな心構えで会議に出たことがあります。若かったなあ(笑)結果としては、多くの方が、歌にこだわったその作品を評価していただけました。なので、「音楽は大事」ということをよく知っていますし、それを説得するだけのエピソードもお話できるんです。『魔法捜査官』がまだ小説の段階なのに音楽をやりたかったのも、こういう体験があるからですね。

――今後もサウンドは増えていく予定なのでしょうか。

喜多山浪漫:はい。できれば今後も増やしていけたらと思っています。小説だと文字だけでいいはずなんですが、目指しているのはコンテンツなので。音楽については、これから先の作品の伸びや広がりにもよりますが、『エトランジュ  オーヴァーロード』のようにキャラクターデザインもつく予定があります。これも、出来上がり次第報告させてもらいますね。

――え?もうキャラクターデザインが進んでいるんですか。

喜多山浪漫:はい。これも書き始めた頃からイメージはあって、リアルな等身かつ、シリアスな絵を描ける方がいい。男性同士のバディものということは、女性にも見てもらえる可能性があるかも、とかいろいろ考えていたんですが、結果として「とある人」に書いてほしいと思い始めたんです。それが実現したので、私としてはとても幸せですし、見た方も驚いてもらえると思います。発表できるようになったら、すぐゴジラインさんに連絡しますね。

――了解しました。誰か想像しつつ、待っていようと思います。そういえば、3月27日からは、『エトランジュ オーヴァーロード』のコミカライズ版も始まりますね。こちらの見どころもお聞かせください。

喜多山浪漫:人気ジャンルの悪役令嬢ものではありますが、新しさも詰めた作品を書いたつもりです。コミカライズ版の絵柄はポップで可愛いものになると思うので、鋭い台詞とのギャップを楽しんでください。私自身も、とても楽しみにしています。感想などはどんどんSNSに書いてください。

新コーナー:おしえて喜多山先生 第一回
小説を最後まで書ききるためのアドバイス

――前回のインタビューのあと、記事への感想と喜多山先生への質問がうちのお問い合わせフォームに届いていました。「正体はこの人でしょう」みたいなものもあったのですが、その中で是非お答えしていただきたい質問があったので持ってきました。

喜多山浪漫:感想や質問をいただけるのはありがたいですね。答えられることであれば是非。

――「記事にも書かれていましたが、喜多山先生のパワフルな活動に圧倒されています。私も創作活動(小説)を書いてみたいと思っているのですが、なかなかうまいスタートが切れません。設定を考えて書いてはみるものの、途中でやめて、また1に戻ることを何度か繰り返しています。作品を書ききる秘訣やアドバイスがあればお聞きしたいです」とのことです。

喜多山浪漫:創作をしたいと思って、創作を始められない方というのもいる中で、この質問者の方は「途中まで書いている」時点ですごいと思いますよ。直接会って話しているわけではないですし、私の経験からの話になるので、参考になるかはわかりませんが、わたしなりに答えてみます。まず、書き切るための準備として、書き始める前に物語の最初と最後を少しだけ決めておくというのは、よくある手法だと思いますが、やっていないのであればおすすめさせてください。どういう世界観や人物の話を書きたいのかという部分が最初にきて、自分が見せたい、書きたい物語が最後にある場合が多いと思うので、まずはその欲求をもとに最初と最後だけなんとなく決めておくんです。最初と最後を決めたら、その間にエピソードをいくつか考えて、最初から最後への流れを作ります。これで「プロット」を作るんですね。コツとしては、最初から順にプロットを作らないところです。最後が決まっているほうが格段に書きやすいと思います。ただ、これはやりやすい方法であって、良い作品を書く方法とはまた違う可能性もありますから、まずは助走するためのコツとして活かしてもらえると。

――前回のインタビューで、実際に作品を書くときは、とにかく日々、少しずつでも書くということを意識すると言っていましたね。長い道のりも、毎日手を動かしていればいつか終わるということですよね。

喜多山浪漫:その通りです。プロットができたら、できるだけ毎日それに従ってコツコツ書いてください。途中で、これはつまらないかもな、うまくこの先書けないかもなとか、自分で自分の足を止める理由を探したりしないほうがいいと思います。最初の作品から大傑作が出来上がることって確率としては高くないでしょうから、文章での創作を志す方は、「書き切る」という体験をまず優先しましょう。1作でも書き切れれば、大きな自信になりますよ。最初は「1日1時間ずつ机に向かう」とかでも良いんじゃないでしょうか。最悪この1時間で書けなくてもいいんです。「書くために机に向かう時間を作る」ことを続けていれば、作品はいつか完成すると思います。

――ありがとうございます。自分にも刺さりました(笑)毎日記事を書く時間を作れば、ゴジラインももっと記事が増えるかもしれませんね。でも、先生ものすごくマメですよね。小説の更新ペースも早いですし。

喜多山浪漫:ありがとうございます。でも、私はすべてにマメだったり、真面目というわけでもないですよ(笑)小説を書いているのは、コンテンツを作るという目的の足掛かりなので、今の私にとっては「仕事」なんですよ。楽しいだけだと、このモチベーションがあるかはわからないですね。ゴルフを楽しいと思って始めたことがありましたが、これは趣味としてはじめたせいか、次第にフェードアウトしちゃったり。どうしても作品を書きたいという人は、いつか必ず仕事にするという目的意識でやるのもありかもしれませんね。でも、今ある仕事や勉強を放り出すというのはおすすめしません。並行して続けてください。会社を辞めて小説を書いている私が言っても説得力はないですけどね(笑)

――ありがとうございました。

ゴジラインでは喜多山浪漫先生インタビューの感想や質問を募集しております。

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