【格ゲーレビュー】Nintendo Switchで『FIGHTING EX LAYER -ANOTHER DASH-』配信開始!オリジナル版との違いと魅力を紹介する

アリカから発売されている『FIGHTING EX LAYER』(以下オリジナル版)の別バージョンである『FIGHTING EX LAYER -ANOTHER DASH-』(以下 -ANOTHER DASH-)が2021年4月1日にニンテンドーSwitchにて急遽配信開始となりました。エイプリルフールにリアルにソフトを出す漢気に乾杯!

別バージョンということで変化があることは予測していたのですが、遊んでみたところ”一部技性能”と”システム面”が大きく変化しており、プレイフィールは別ゲーといっていいレベル。オリジナル版の地上戦の要だったダッシュが削除され、どこか懐かしい地上戦を楽しんでいます。

▲技性能もいろいろと変化しており、別バージョンというよりはもはや別ゲーに。昨晩はゴジラインでオンライン対戦を楽しみました。

今回の記事では、オリジナル版と-ANOTHER DASH-の違い、そして両作品の魅力について語ります。

まず、オリジナル版の話をしよう

オリジナル版は斬新な作品でした。キャラクターの基本ムーブには懐かしいものが多く、格闘ゲームに慣れたプレイヤーが動かせば通常技や必殺技の性質はすぐに把握できました。しかし全キャラクター共通のシステム面は不思議なプレイフィールを持っており、超スピードで突進してくる今風のダッシュ、スムーズにつながるチェーンコンボなどは想像の範疇ですが、「強氣」と呼ばれるオリジナルのシステムが異様な存在感を放っていたのです。以下は初期バージョンの際に撮影した動画ですが、その尖った能力の一端が見られるはずです。

バトル中の画面下に5つのアイコンで示される「強氣」は、それぞれに強力な特殊能力となっています。この強氣の発動条件を試合中に満たすことで、その強氣の特殊効果が発動。一つ一つの強氣には、発動条件が設定されており、「6秒間相手に触れられない」というものから、「累計で12回ダウンする」といったものまでさまざま。それで発動される能力は「ゲージが自動回復」、「前方へのテレポート」、「ガードキャンセルが解禁」など、明確に強い要素が多く、強氣をいかに発動させるかが試合の軸にもなっています。この強氣発動を意識した戦いは、従来の格闘ゲームとは戦術の組み立て方が異なり、「当てたい技」、「当てたくない技」などが変化する試合すら生まれました。筆者としてはこれがなかなかいい味を出しており、従来の格闘ゲームにはない手ごたえを感じていたのですが、この手の新しいシステムというのは評価も大きく分かれるもので、「前衛的すぎる」みたいな声も少なくなかったように思えます。実際に一部の強氣はぶっとんだ性能をしていたこともあるでしょう。

▲こちらが強氣。プレイヤーは対戦前に強氣がセットになった”デッキ”を選択して対戦します。

2つ用意された操作モードもかなり尖っていました。従来の波動拳、昇龍拳コマンドなどの必殺技コマンドを軸に操作するモードを”クラシック”、必殺技を方向キー+ボタンで出す”プログレッシブ”と名付けているのですが、このプログレッシブモードの手触りがとにかくユニーク。格闘ゲームというと、必殺技コマンドの敷居が高いと言われることが多いジャンルですが、プログレッシブではそれを1方向+ボタンでやらせようというのです。最近の格闘ゲームでも、必殺技コマンドの難しさに目を向けてイージーモードなどが実装された作品は多いのですが、結局のところその多くのイージーモードは、必殺技コマンドありきの操作に比べてできることが減り、拡張性がなく弱いケースがほとんど。イージーモードで慣れてきたら通常の操作で遊んでねというわけです。
ただ、本作のプログレッシブモードは、理論値を想定するならプログレッシブモードのほうが上回ることが多く、拡張性の面でも従来の操作よりも伸びしろを感じます。従来の操作を”クラシック”と名付けるくらいですからね。スーパーコンボも方向キーを2方向入れてボタンで発動するものがほとんどで、歩いてきて超威力の技をぶっぱなすということも可能でした。

▲スーパーコンボなどもプログレッシブ操作なら素早く入力できるので、格闘ゲーマーの大好きな”見てから余裕でした”もしばしば成立します。

オリジナル版を総括すると、一見見慣れた動きの中に尖りすぎたシステムや操作を持ち込んだ作品ということになります。尖りすぎたシステムや操作は斬新かつ楽しい要素ですが、制御の難しい面もあり、バランスの悪い部分や暴発といった問題も抱えています。しかしそれ以上にこれがこのまま伸びていったらどうなるのだろうという期待を抱ける作品であり、できることならこういった路線の作品の次も見てみたいですね。

-ANOTHER DASH-の話をする

『FIGHTING EX LAYER -ANOTHER DASH-』では、オリジナル版の肝であった強氣システムが撤廃。同時に超スピードのダッシュも削除され、対戦模様は懐かしい空気のする地上戦メインの格闘ゲームへと変わりました。一部状況以外ではチェーンコンボもなくなり、目押しで技を組み立てる場面が多いです。『ストリートファイター2』や、アリカ製の『ストリートファイターEX』シリーズを楽しんでいた人なら、しばらく格闘ゲームから離れていてもすんなりと遊べるでしょう。

▲強氣がなくなって画面上のUIがシンプルに。より遊びやすいゲームになりました。

また、格闘ゲームを遊んだことがないという方であっても、基本的なかけひきがわかりやすいので、入門用タイトルとしてもお勧めです。しかもこの作品、基本無料形式でリリースされていて、基本無料版では4キャラクターが使用可能で、CPU戦を楽しめます。他のキャラクターの解禁や、オンライン対戦、トレーニングモードの解禁には有料版を購入する必要がありますが、価格はリーズナブルです。

▲-ANOTHER DASH-は基本無料版が存在します。基本無料版はNintendo Switch Onlineに加入していなくてもダウンロードできます。

といった風に説明すると、レトロな格闘ゲームや初心者をターゲットにした作品であると受け止められてしまうかもしれませんが、対戦を重ねていくと、コアな格闘ゲームが楽しめる要素がごろごろと出てきます。通常技や必殺技をキャンセルしてダッシュできる”EXダッシュ”、相手の位置をサーチして素早いジャンプを繰り出し、動作中に空中チェーンコンボが解禁される”EXアロー”、ガード硬直をキャンセルして前方へ小さく飛び上がる”EXイリュージョン”、ガード不能でヒットするとよろけ状態を作り出す”ガードブレイク”などを使い始めると、動きの幅が大きく広がり、マニアックなかけひきが発生するようになるのです。しかも、操作自体は簡単なので、一度やられた動きを真似するのもそれほど難しくない場合が多く、どんどんお互いが成長していくという対戦を楽しめます。本作のシステムの簡単なまとめは以下の動画でわかるかと。

https://twitter.com/asabataiga/status/1378438823433043972

目立ったEXダッシュ、アロー、イリュージョン、ガードブレイク以外にもシステム面に変更点がいくつかあり、スーパーコンボゲージのたまり方や、ジャンプ攻撃をどうくらうかでのけぞりが変化したりするのですが、こういった部分もやりこんでいくとオリジナル版とは違うところにたどり着きそうです。

また、オリジナル版から技性能なども変化しており、一部の技は”これ強くね”的な強化をされていてアッパー調整を楽しめます。一部アッパーすぎて現状だと危険なコンボがいくつか存在したりしますが、本作は次回アップデートが存在することが名言されており、ユーザーと近い位置で情報収集が行われているので、危険なコンボはそのうちなくなるでしょう。個人的な希望としては、今回のアッパーな調整が技においても、システムにおいても結構好みなので、あまりマイルドになりすぎないことを祈っています。

▲通常時のダッシュがなくなったことで、技の強い要素も変化しています。意外と反撃が難しい技が多いです。シリーズの共通要素である立ちガードとしゃがみガードでガード硬直が変化するといった要素を使いこなすと意外な攻略の糸口が見られるシーンも。

見逃せない要素としてオンライン対戦は頗る快適です。ニンテンドーSwitchというと、あまり格闘ゲームがリリースされておらず、マルチプラットフォームの作品では若干動きに不安があったりするタイトルもありますが、本作はニンテンドーSwitch用タイトルとして緻密にチューニングされており、そのうえゲーム容量も驚くほどコンパクト。アリカの超技術が垣間見えるポイントになっています。オンライン対戦のプレイヤーマッチは2名部屋だけで、観戦モードもないため、あくまで1vS1の対戦がメインですが、友人を誘って遊ぶなら何の問題もありません。

アリカの新しい提案を楽しむ

格闘ゲームを長く遊んでいると感じる”いつものやつね”という要素を楽しんでいると、初めての出会いのような衝撃的な要素がごろりと出てきて驚かされるのが『FIGHTING EX LAYER』シリーズの醍醐味でしょう。両作品ともに好感度が高いのは、こうした冒険する要素をしっかり輪郭をつけて持ち込んでいるところ。格闘ゲームというジャンルのファンをやっていると、あまりに尖ったシステムが出てくるとついつい保守的な考えになってしまうのですが、本シリーズで培われた強氣やプログレッシブ操作、EXアローやEXイリュージョンなどの提案は楽しんだほうがお得かと。”新しいこと”ってもっと知られてほしいし、プレイされてほしいと願います。(パッドでも十分遊べるのでお気軽に。)

オリジナル版と -ANOTHER DASH-で、似て非なる格闘ゲームを生み出すというのもかなりアグレッシブで、今後の動きなども楽しみです。『ストリートファイターEX』や『ファイティングレイヤー』という過去のタイトルはあるものの、この時代に新しい格闘ゲームを出してくれるアリカを応援しております。

個人的には個人的にはオリジナル版と -ANOTHER DASH-、両方の対戦シーンが生まれてほしいと思います。大会などで並行して見られたら楽しそうですよね。

この記事を”こんなの載せますね”と報告したところ。
良かったらこれも載せてくださいとメーカーコメントが到着したので、そのまま掲載する。

「ROM作成の手続きのミスで問題のある技、キャラクター性能が混在しているため、現在修正と承認作業を行っております。必ず皆様の納得してもらえる調整になりますので、お待ち下さい」
2021.4.10
FEXL_ADディレクタ 氏家

今後の調整にも期待だ!

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浅葉 たいが

浅葉 たいが

ゴジライン代表。ゲーム、アニメグッズのコレクター。格闘ゲーム、アドベンチャーゲーム、RPGをこよなく愛する。年間100本以上のゲームを自腹で買い、遊ぶ社壊人。ゲームメディア等で記事を書くこともあるが、その正体はインテリアデザイナー、家具屋。バンダイナムコエンターテインメント信者かつ、トライエース至上主義者。スマートフォン版『ストリートファイター4』日本チャンプという胡散臭い経歴を持つ。

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