【ブックレビュー】格闘ゲーム×ガールズラブ『対ありでした。 ~お嬢さまは格闘ゲームなんてしない~』が最高に良いので全ゲーマーに読んでほしい

格闘ゲームを題材にした漫画ということで読んでみた『対ありでした。 ~お嬢さまは格闘ゲームなんてしない~』がすごくすごく良い!格闘ゲームものにはわりと目を通すようにしているのですが、本作は”女の子同士の格闘ゲームもの”となっていて、いざ読んでみると格ゲーと百合ものの不思議な相性にすっかりやられてしまいました。

一人でも多くの格闘ゲーマー、いや、ゲーマーにもゲーマーじゃない人にも読んでほしい!
格闘ゲームを知らないと話の内容が入ってこないというタイプの作品ではないのでご安心を。

△格闘ゲーマーには”わかる”要素満載でありながら、女の子同士の対戦シーンをキラキラと描く異色の作品『対ありでした。 ~お嬢さまは格闘ゲームなんてしない~』。マジ最高です。上はお嬢様学校に入学した主人公の綾。下はヒロインであり、皆に慕われるお嬢様・白百合。

https://twitter.com/comic__flapper/status/1273903350883536897?s=20

2D格闘ゲームの対戦をめぐる、熱いかけひきを描く作品はいくつか見てきました。そんな作品を見つけると、格闘ゲーム界隈で使われるテクニックやスラングがどのように使われているか気になるのが格闘ゲーマーというもの。この作品でも、格闘ゲーマーならピンとくるであろうスラングがところどころに登場し、その描写から、この作者相当なオタクなのではと思わせてくれる瞬間さえあります。それでいて、主人公もヒロインである白百合さまも、普段はそんなスラングを使わずに、彼女らがそれぞれに思い描く「女の子像」を演じていて、格闘ゲーマーと認めた相手にのみ”スイッチ”が入るのがわかりみが凄いんです。SNSとかは別にして、実際の生活において、格闘ゲーマーがスラングを使うのは”同じ匂いのする仲間を見つけた時”がほとんど。「それってハメじゃん」、「ぶっぱなしじゃん」、「そのキャラ圧あるわ」なんてやりとり、通じるのはその道の人しかいません。日常に身を置く時の”立ち回り”と、格闘ゲーマーとしての”立ち回り”は異なり、本作でコミカルに描かれるそのギャップに果てしないわかりみを感じてしまうのです。

△主人公とヒロインのお嬢さまが熱いバトルを繰り広げるのは、某人気格闘ゲームをモチーフにした『π4』。格闘ゲーマーにはおなじみのテクニックやスラングも満載。

△対人戦の勝ち負けに真剣になる瞬間の切り取りが凄まじくわかりみに溢れています。

格闘ゲームを題材にした漫画のスパイスとなるスラングだけがこの作品の魅力ではありません。むしろテクニックやスラングをしっかりと盛り込んだ作品は他にもありますが、この作品の一番の魅力は、”格闘ゲームもの”と”百合もの”を絶妙に混ぜたところにあると感じます。百合ものというにはあまりにも激しい”怒り”が、格闘ゲームの対戦の中で生まれては消えていくのがたまらなく良いんです。対人戦において、キャラクターを戦わせている間は”相手が予想もしていないこと、嫌がることを仕掛ける”のがセオリーのようなもの。そんなバトルの中で、惹かれているはずの相手に瞬間的に、爆発的な憤りを感じる。これがものすごく尊い。実際自分を振り返ってもそうなのです、仲がいい格闘ゲーム友達のほとんどは”対戦していて楽しい”ことも確かですが、”ムカつく戦術を仕掛けてくる”ライバルでもあるんですね。普段はいいやつだけど、対戦のプレイスタイルはクソみたいなこと、僕たちはなんども経験してきました。そして、対戦のプレイスタイルがクソだからといって、友達になれないわけではなく、親友にだって、もしかしたら愛する人になる可能性もあるんですね。
そして、記事の冒頭にも書いたように、格闘ゲームの知識がなくとも本作は楽しめます。二人の女の子が出会って、惹かれて、戦いの中で怒って、認めあっていく。”格闘ゲームもの”ということを時に忘れてしまうほどの瑞々しい感情の動きが次々と描かれるため、すらすらと物語が入ってきます。筆者の場合、格闘ゲームが好きだから本作に触れたというのが正直なところですが、本作を見て格闘ゲームに触れる人もいるのではないでしょうか。題材としているスポーツについて知らなくても楽しめるスポーツ漫画をたびたび目にするように、本作もまた、格闘ゲームへの入り口となってくれるでしょう。

△対戦の中で感じる怒りが、二人の関係の不思議なスパイスとなります。この必要のないぶっぱは、「わからせるためのぶっぱなし」として我々ゴジラインの対戦シーンでも飛び交っています。

本作の作者は『柚子森さん』などで知られる江島絵理先生。『柚子森さん』でもマニアックな格ゲー描写があり「この作者……」と勝手に格闘ゲーマーオーラを感じていましたが、今回は前面に格闘ゲームネタを押し出し、そこに繊細な描写でガールズラブ的雰囲気を添えた作品となっています。格闘ゲームの漫画なのに”尊い”と感じるコマがすごく多くて、物語を楽しんだあとも、美しいコマを求めてページをめくってしまうのです。”格闘ゲームを題材にする”というある意味修羅道を選んでくれた本作に感謝しつつ、以降の連載を楽しみにしていきます。現在は第一巻が発売され、物語が動き始めたばかりですが、今後も格闘ゲームものとして、百合ものとして、ますます熱く、美しいシーンを見せてくれることでしょう。

皆様もぜひ読んでみてくださいね。

△おれも今日から、対戦で勝ったら「対ありでした!」とニコニコしながら言うことにします。

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浅葉 たいが

浅葉 たいが

ゴジライン代表。ゲーム、アニメグッズのコレクター。格闘ゲーム、アドベンチャーゲーム、RPGをこよなく愛する。年間100本以上のゲームを自腹で買い、遊ぶ社壊人。ゲームメディア等で記事を書くこともあるが、その正体はインテリアデザイナー、家具屋。バンダイナムコエンターテインメント信者かつ、トライエース至上主義者。スマートフォン版『ストリートファイター4』日本チャンプという胡散臭い経歴を持つ。

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