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【ゲームレビュー】アークシステムワークス×トイボックス『ワールドエンド・シンドローム』に心惹かれる、夏

   

アークシステムワークスといえば、格闘ゲーム制作に長けたメーカーという印象を持つ方も多いはず。しかし、僕は、この会社の、格闘ゲーム以外のジャンルで時折見せる、挑戦とでもいうべきものに心惹かれ続けている。突如としてリリースされた『星霜のアマゾネス』という3DダンジョンRPGは面白かったし、韓国のゲームをローカライズした『WHITEDAY~学校という名の迷宮~』では、その凄まじい難度に圧倒された。『神宮寺』シリーズの新作を作り続けているところも良い。新作もとても楽しかったです。

今回の記事で紹介する『ワールドエンド・シンドローム』も、こうしたアークシステムワークスの、いろいろなことをやってやろうという意識が前面に出た作品だ。制作を手掛けるのはトイボックスという、不思議なプレイフィールのゲームを送り出している会社だ。本作の公式サイト見ると、本作にかける意気込みが伝わってくるかのようで、ゲーム内の舞台マップ、4コマ漫画、ゲーム内のミステリ要素を一昔前の個人ホームページのようにまとめたコンテンツなどが用意されている。このゲームは、ひょっとするかもしれない、そう思いつつ、土日で一気にプレイした。

本作を遊び始めてすぐに、大きな魅力を発見した。キャラクターたちの立ち絵が表示される背景が、とても緻密に作りこまれ、その一部、風鈴や風車といった風を感じるオブジェクトに細かく揺れるアニメーションが施されている。作中の舞台は夏、背景のささやかな場所に、涼しさを感じさせる演出が潜んでいる。そして、この演出は、本作の舞台である「魅果町」に漂う秘密や恐れの気配をほのかに演出している。「魅果町」はただの田舎町ではなく、死者が蘇り、禍をもたらすといわれる「黄泉人伝説」の伝承が残る幽玄な場所なのだ。そんな街の背景が、どこからともなく吹く風でかすかに揺れていて、何か深い意味や伏線が用意されているかのように感じる。可憐なヒロインたちを、一目で信じることができないのは、物語の性質上というのもあるが、こうした表現の妙によるところも大きいだろう。

死者が蘇る「黄泉人伝説」という設定を聞くと、なるほどそうきたかと思う方も多いはずだ。こうした蘇りをギミックにしたサスペンスやヒューマンドラマには、メジャーな作品も多く、僕はまず最初に『Another』(著者:綾辻行人 氏)を想像した。『Another』もいわゆるサスペンスもので、本作と同じく「蘇った死者は本当にいるのか、死者がいるとしたらそれは誰なのか」という点が見所の一つになる。プレイヤーに心を揺さぶる瞬間一つ一つを拾っていけば、いわゆる蘇りものならではの再会と別離にスポットを当てたものも少なくはないのだが、僕としては、個別ルートで描かれている、ヒロインたちの秘密や葛藤が、本作の最大の見所だと思っている。「黄泉人伝説」というオカルトめいた伝説がほのかに残る魅果町に深く関わるヒロインたちは、来訪者である主人公(プレイヤー)に、いろいろな秘密を明かしてくれる。このプレイヤーだけが知ることができる秘密や真実を繋ぎ合わせれば、魅果町や黄泉人伝説の輪郭が徐々に見えてくるのだ。

ミステリ部分の見せ方だけでなく、恋愛アドベンチャーとしても、本作は秀逸だ。一枚一枚のCGから、ヒロインの色気とでもいうべきものが伝わってくる。イベントCGは特にすばらしく、仄かな頬の赤らみの表現などはこの色味しかないと言えるほど絶妙なものになっている。立ち絵で描かれるシーンも、凄まじいクリエイターの執念を感じる。主人公とヒロインの恋愛模様は、いわゆる古き良きギャルゲーたちが積み上げてきた、お約束な展開に満ちているが、それを表現するCGやボイスは、研ぎ澄まされた最先端のものになっている。

惜しい点としては、ユーザーインターフェースがあげられる。本作は、ただのアドベンチャーゲームを作りたくなかったためか、共通ルートを終えて本編に入ると、マップを移動しつつヒロインと交流するタイプの、古き良きアドベンチャーゲームに変化する。ただ、ゲーム側のユーザーインターフェースがこの仕組みに追いついておらず、1日に3回移動先を指定できるにも関わらず、1日の終わりにしかセーブができなかったり、ゲームの性質上、同じ場面を何度か通過するにも関わらず、既読スキップが緩慢だったりする部分は、次回作やアップデートがあるなら、ブラッシュアップしてほしいポイントだ。(スキップを爆速にしたり、「次の選択肢までスキップ」機能をつけると、ゲームの寿命が縮まるという話を聞いたことがありますが、そこでゲームの寿命を心配するのなら、周回プレイを前提にする作りをやめればいいのではと思います。)

アドベンチャーゲームの評価というのは、プレイヤーの好みによってどのようにでも変化する。そして、『ワールドエンド・シンドローム』は、ユーザーインターフェースの弱点もあるので、ゲームの粗に怒りやすい人にはおすすめできない作品とも言える。しかし僕はというと、プレイしていた20時間くらい、夢中になって物語を読み進め、時には美しいシーンをスクリーンショットに収めたりした。ミステリとしても恋愛アドベンチャーとしても楽しかったし、グラフィック、サウンドなど、このゲームの持つ豊かな表現力は、他のゲームにはちょっとない、何かを持っている。
本作の制作チームが過去に作ったゲームはどんなだろうと気になって、クリア後すぐに『7’scarlet』(セブンスカーレット)』という乙女ゲームを注文してみた。このゲームもまた、トイボックスが手がけたゲームかつ、その主題歌が『World’s End Syndrome』となっている。世界観も近そうなので、こちらも近々記事で紹介しようと思う。魅果町にモチーフになった場所があるかどうかは不明だが、もしあれば、舞台探訪などもしてみたい。それくらい、本作を気に入っている。
そんなわけで、僕のように、心の広いゲーマーは、是非騙されたと思って本作を遊んでみてほしい。プレイしたあと、騙された、と思っても、心の広さでこのレビューを許してもらうことを祈る。

『ワールドエンド・シンドローム』

発売日     :2018年8月20日
プラットフォーム:プレイステーション4、プレイステーションVita、ニンテンドーSwitch
ジャンル    :ミステリー×恋愛アドベンチャー
販売元     :アークシステムワークス
価格      :PlayStation®4、PlayStation®Vita Nintendo Switch™ 共通 パッケージ版:5,800円(税抜) ダウンロード版:5,800円(税込) CERO C

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浅葉 たいが

浅葉 たいが

ゴジライン代表。ゲーム、アニメグッズのコレクター。格闘ゲーム、アドベンチャーゲーム、RPGをこよなく愛する。年間100本以上のゲームを自腹で買い、遊ぶ社壊人。ゲームメディア等で記事を書くこともあるが、その正体はインテリアデザイナー、家具屋。バンダイナムコエンターテインメント信者かつ、トライエース至上主義者。スマートフォン版『ストリートファイター4』日本チャンプという胡散臭い経歴を持つ。

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