1本だけしか好きなゲームを手元に残せないと言われたら、今なら『サガスカーレットグレイス 緋色の野望』を選ぶだろう。時点は『スターオーシャン3』か『FINAL FANTASY XII THE ZODIAC AGE』、いや、『ブレス オブ ファイアV ドラゴンクォーター』も良いですね。周回プレイが楽しい、もしくは周回プレイがしたくなるRPGって良いものです。
『サガスカーレットグレイス 緋色の野望』はプレイステーションVitaで発売された『サガスカーレットグレイス』の完全版とも言える作品だ。オリジナル版の弱点だったテンポの悪さもすっかりと改善され、ロード時間と戦闘前の「Ready」の長さがも大幅に短縮された。さらに、新要素もたくさん追加された。仲間や技の数が増えたり、ボスが増えたり。本作はこの変化によって、最高のRPGになったような気がする。プレイステーションVita版をトロフィーコンプリートするまでやったので、ちょっとだけやってみようと思ったら沼のようにこのゲームに引き込まれ、毎日少しずつ遊んでいる。(そのおかげで、最近はこのサイトの更新も滞っている。)
プレイステーションVitaで発売されているオリジナル版からのデータ移行はできないが、本作のプレイ開始時に、オリジナル版のプレイ経験を聞いてくるアンケートが挿入される。このアンケートは、どのキャラクターの物語をクリアーしたかを問うもので、ここで既クリアの項目を選ぶことで、本作から追加された新イベントを楽しむことができる。その代わりに、ここでクリアしていると表明することで、1週目からややネタバレありのイベントが走ってしまう。はじめてプレイするということは、正直に答えることをおすすめします。ちなみに、僕は本作をもう一度最初から遊びたくて「はじめて遊ぶ」ことを選択した。ウルピナ、レオナルド、タリア、バルマンテ。魅力的な主人公の物語をもう一度最初から楽しみたかったし、極上の戦闘があるから退屈することはない。本作では、ゲームスタート時の質問に答えることで主人公キャラクターが決まる。そして、この形式で選ばれた主人公には、能力値にちょっとだけボーナスがかかる。違う主人公で遊びたいという方は、ここで別の主人公を選ぶこともできる。この質問パートは、攻略本などを読み込んで仕組みを知っていれば、結果をコントロールすることも可能だが、能力値のボーナスは、普通にゲームを楽しむ分には些細な差なので、はじめて本作を遊ぶ人は深く考える必要はないだろう。ゲーム側が選んでくれた主人公を使うのもよし、自分の好きな主人公を選び直すのもよし、自由に旅を始めるといい。僕は久々のプレイなので、ぼんやりと質問に答えていたら、バルマンテでゲームを始めることになった。処刑人というちょっと危ない職業についているものの、登場人物の中では、考え方が一番ふつうの人に近いような気もする。そうそう、本作ではなんと、主人公のボイスが追加されており、デフォルトとアレンジ、2種類のパターンからゲーム開始時に選択することができる。
主人公の決定後に物語が始まると、意外とあっさりと、フィールド画面に放り出される。最近のRPGは、壮大なオープニングとともに始まるものが多いが、ものの数分で、フィールドの探索や戦闘に向かえるのだ。倒せそうな敵のいるところを冒険しつつ、気になるイベントを追いかけていけば、物語がゆっくりと動き始める。ちょっとあっさりしすぎではないかと思う人も、とりあえず気の向くままにマップの上を歩き回って、何かがありそうな場所を訪れてみるといい。本作は、各主人公のメインシナリオは個別のものとなっているが、エンディングまでにさまざまな寄り道をすることができるし、クリアするイベントを減らすことも、増やすこともできる。プレイヤーによって、エンディングまでの軌跡が異なるのも、本作の魅力であり、周回プレイが楽しいと評される理由なのだ。
世界を彩るグラフィックや音楽もとても素晴らしい。あまりにも戦闘を繰り返しすぎて、頭の中に音楽のフレーズが浮かんでくるくらいになっても、まだサントラをたまに再生したりしてしまう。イベントシーンは、ムービーなどはないまま、アドベンチャーゲームの会話シーンのように進んでいくうえ、キャラクターの台詞のみで描かれているため簡素に感じられるが、その行間にある何かを読み取りたくなるような深みが、このゲームのあちこちに漂っている。描かれている物語が全てではなく、主人公たちがどのような人となりなのかということもプレイヤーに委ねられているような気がする。
本作の一番面白いところはバトルですと断言したくなるほど、本作のバトルは面白い。戦闘では、コマンド実行前にタイムラインと呼ばれる行動順が表示される。このタイムラインを見て、相手の行動を妨害したり、強い技を打たれる前に集中攻撃で倒したりするといった戦術をプレイヤーが考えることになる。このタイムラインによる戦術構築をより面白くしてくれるのが、敵や味方が戦闘不能になった直後、同陣営のキャラクターがタイムライン上で繋がることで発動する連撃というシステムだ。 連撃に加わったキャラクターが多いほどその威力は上昇し、さらには次のターンの消費BP(攻撃を繰り出す際に消費するコストのようなもの。大技ほど消費BPが多い)が軽減されるボーナスが付与される。ボスとの戦いでは、同時に出現するモンスターをうまく撃破し、連撃を効率よく発動させて、序盤から消費BPの多い技を繰り出していくのが勝利の近道となる。
小難しいことを考えなくても、いわゆる「育成してごり押し」で敵を倒すことができるので、だらだらとプレイすることもできる。そしてなんといっても、『サガ』シリーズの多くの作品でプレイヤーを魅了する技の閃き、これは本作でも健在です。電球のアイコンが頭の上に灯り、ピコンと新技を繰り出す。何度味わっても、この瞬間はテンションが上がります。ちなみに、閃きが起きた際には、タイムラインを必要以上に乱さないように、あらかじめ選択した技も実行されるので、閃きによって戦術が乱れるということもほぼないのでご心配なく。
僕は今、バルマンテ編を終えて、ウルピナ編を遊んでいます。とりあえず4人の主人公を遊び終えて、そのあとはトロフィーコンプリートを狙おうと思っています。自分が最強と思えるところまでキャラクターを育成してみたり、タイムアタック的な遊び方をしてみたり。プレイヤーによっていろいろな楽しみ方ができるのも本作の良いところ。オリジナル版をかなり遊びましたが、本作もまだまだ楽しめそうです。
新要素があるので、オリジナル版を遊んだ人でも新鮮さを感じるポイントも多いはず。あまりに快適になった戦闘まわりのテンポに驚く人も多いでしょう。オリジナル版は、人を選ぶものの傑作だと思っていますが、本作はより間口の広がった傑作だと感じます。どこか懐かしい『サガ』らしさもありつつ、本作ならではのオリジナリティもしっかりと備わった傑作なので、まだ遊んでいないという方がいましたら、是非手に取ってみてください。本作は、プレイステーション4やニンテンドーSwitch、Steamといったプラットフォームに加え、iOS版やAndroid版も用意されています。動作環境を満たしていれば、スマートフォンで遊んでも快適に動くので、自分のライフスタイルに合わせたものを買うと良さそうです。
発売日 :2018年8月2日
プラットフォーム:プレイステーション4、ニンテンドーSwitch、Steam、iOS、Android
ジャンル :RPG
販売元 :スクウェア・エニックス
価格 :限定版(e-STORE専売Limited Box【邪神】):18,500円+税
PS4、ニンテンドーSwith、Steam版:5,800円+税
iOS、Android版:4,444円+税