ゲームを最大限に楽しむ集団・ゴジラインでは、日々の情報交換やぐだぐだとした会話、はたまたゲーム対戦後の感想などをLINE上で交わしている。そして、その会話の内容の7割くらいは、”煽り”なので、結成以来、非常にお世話になっているLINEスタンプがある。
それがこの、面倒だがトリあえず返信シリーズ、通称”めんトリ”スタンプだ。
このめんトリ、非常に煽り能力が高く、さらに、煽りに対するカウンター技としても重宝するため、ゴジラインでは一日何十回もこの鳥が会話上を飛び交っている。
そして、今日、2016年3月22日、この『めんトリ』が、iOSとAndroid対応のスマートフォンゲーム『めんトリぱんち』として配信された。過去にも、『パズルボブル』等とのコラボがあったものの、ゲーム単体としてめんトリが出て来るのは初めてのこと。おれたちゴジラインの心のスタンプたるめんトリさんのゲームをやりこまないわけにはいかない。
おれ「ついに『めんトリ』のゲームが来ちまった」
ナカジマ「連打しつつ、いもうとを避けるゲームね。理解した」
ミズシナ「スマホといえば、おれみたいなところある」
がちょ「おれはめんトリにはうるさいよ。スタンプの使いどころ、かなりやりこんでる」
回転王「仕方ない、このゲームでも”回転式”攻略見せるわ」
とりあえず、各人どんなスコアが出るか試してみようというところでスタートした闘いは、意外なところに向かうことになる。
めんとりパンチでトリあえず、にせめんトリを467匹やっつけた!https://t.co/c12P1qacwa #めんトリ 妹つええええ pic.twitter.com/29Gr6NYAGp
— GZL|コイチ (@koichinko) March 22, 2016
ひたすらにせめんトリをパンチパンチパンチ!
1プレイした時点で、思いのほか手が疲れるゲームということが判明するが、画面の中で華麗にパンチするめんトリを見ていると、生半可なスコアではいけないという気持ちが身体の内にわいてくる。ゴジラインの愛するマスコットのゲーム、一度や二度遊んだだけでやめるわけにはいかない。自らの出したスコアをtwitterやLINEに貼り付けているうちに、「あれ?ナカジマさん、スコア低くない?」、「浅葉、もしかして500出ず?」など、煽りが加速していく。
おれ「540でたわ。おれはここら限界くさい。シナさん、500出てねえとか、完全に雑魚じゃん」
ミズシナ「あ????おめえ、今、血管キレる音。頭の中で鳴ったぞ。待ってろテメェ」
はま寿司でカリフォルニアロールを3皿注文して、ミズシナを放置する。
あいつは最近『シャドウバース』のβテストにお熱だし、どうせすぐに脱落するだろう。おれが出した540スコアも、全国ランキングからいくとたいしたことのない数値だが、とりあえずゴジライン内での威厳は保った、そう思っていた。
ミズシナ「オイ、テメえら。これ見ろ」
おれ「624……。全国10位」
ナカジマ「600越え、かなり圧ある。どうやってんのこれ」
ミズシナ「おれの”フィジカル”、そこらへんのオタクとは違うわけよ」
おれ「キレた」
ナカジマ「シナさんより連打遅いは、”ない”」
こうして、血で血を洗う『めんトリ』バトルが始まった。
画面サイズの小さいiphone6+は、6S+に不利なのではないか。iPadが必要なのではないかなどと、デバイスの差についても議論や言い訳の会話が飛び交う。
しかし、600というハードルはあまりにも高い。
はずだった。
回転王「おれもこれ、”壁越えた”わ」
700間近のスコア。あらゆるゲームの攻略に通じるといわれる”回転式”が炸裂した瞬間だ。
おれ「おれは620が限界。ムリっす」
ナカジマ「600は壁あるね。いもうとの持続百貫がマジでやばい」
持続百貫とは、いもうとのプレスをかわしたと思いきや、プレスの思いのほか長い持続時間にヒットし、即死してしまう現象をさすゴジライン内のスラングだ。エドモンド本田の比ではない圧倒的な攻撃力の高さは脅威以外のなにものでもない。
連打を繰り返し、消耗していく両腕。
回転王の出したスコアが、ゴジライン内の最高スコアになるだろう。
そんな甘い考えを、34歳を過ぎてもトルネードマートを着こなす男・ミズシナが破壊する。
ミズシナ「全一、とっちまったよ。煽ってくれたコゾーども、見てるぅ????」
おれ「あ……あ……あ…」
ナカジマ「これは……、全国一位スコア」
驚き、崩れ落ちるおれとナカジマ。おれたちはこの日、ミズシナに完全敗北したのだ。
全一のスコアは、並大抵の努力で抜けるものではない。
回転王にいたっては、戦意を喪失したのか、LINEの既読すらつかない。
ミズシナは気分をよくしたのか、勝手に攻略を一人語りしはじめる。
ゴジラインのLINEグループは、地獄と化していた。
地獄からの脱出を図るように、おれはスターバックスにコーヒーを買いに、ナカジマは『ストリートファイターⅤ』を立ち上げることにした。この屈辱を、敗北を忘れたいのだ。
しかし、そこはまだ、地獄の入り口にすぎなかった。
回転王が、無言で送りつけてきた画像、そこには、狂気のスコアが刻み込まれていた。
回転王「1位とれんなぁ」
ミズシナ「回転王くん???まだ2位?」
回転王「ミズシナさん、画面みて。シナさんはもう1位の人とおれに抜かれて、全国4位だよ」
ミズシナ「は?」
そうミズシナのとった全国一位は、数分の間に塗り替えられ、回転王もそれに肉薄するスコアを出していたのだ。おれたち以外にも、この『めんトリパンチ』を極めんとする人がいる。おれとナカジマは、610の壁の前に力尽きた。しかし、1位を目前にして、回転王が、ミズシナが、黙っているはずがないのだ。どちらかが全国一位をとるまで、ひたすらにせめんトリをパンチするしかない。
そして、ついに、その時は訪れた。
1位を塗り替えるのは、情熱と狂気。そして、回転式。
回転王「1位、きました。800いかなかったのが悔やまれるわ」
794という驚異的なスコアは、2位に30近い差をつけている。
しばらく抜かれることはない、圧倒的なスコアだろう。
この差はもうどうしようもない。おれとナカジマどころか、ミズシナですら、挑むことは厳しい頂だろう。
回転王の1位が、戦いの終わりといつから錯覚していたのだろう。
突如としてLINE上に、画像が貼られた。
見慣れた、めんトリのランキング画面。
しかし、そこにある1位の名前は。
がちょ。昇龍拳に全てをかける男の名前だった。
がちょ「君ら、まだそこ?800の世界みたやつ、おらんかー」
823という常軌を逸したスコアが、ゴジライン内で最も対空の出る男・がちょから飛び出した。閉じることを知らない地獄の釜の底はまだ見えない。
そうだった。おれたちゴジラインは、一人残らず、全国1位になるよりも、全国大会で優勝するよりも、ただただ、目の前にいるゴジラインのメンバーに勝ちたい人間ばかりなのだ。
がちょ「780越えたくらいから、処理落ちっぽくなって、ちょっと楽になるんだよ。あ、でも君たちにはわからんか」
誰も理解できない攻略を含んだ煽りが、限界に達した両腕に響いた。
左手の感覚は限りなく鈍く。
もう勝てないとはわかっていても、iPhoneを、Xperiaを、iPadを叩きまくる。
めんトリを、ひたすら、殴る、殴る、殴る。
この端末が壊れようとも、がちょを倒したい。
その執念が、奇跡を生んだ。
回転王の別アカウント、”すぴきん”(SPINKING)が、がちょを射抜いた。スマートフォンという既成概念を捨て、iPadの封印を解くという”回転式”が、全てのスコアを過去にした。
回転王「まだ、やるかい?」
がちょ「もう腕が、限界」
ミズシナ「今日のところは勝ちを譲る」
回転王「ランキングは月曜ごとにリセットされるらしい。おれも1000狙うように詰めとくわ」
こうして、ゴジラインで繰り広げられた、血で血を洗う、『めんトリパンチ』対決は一旦幕を閉じた。しかし、回転王も、がちょも、ミズシナも、しばしの休息を終えれば、また戻ってくるだろう。なぜなら、この記事を公開したということは、読んでくれているゲーマーの方々の参戦が予想され、今回のスコアも、やがて抜かれてしまうはずだからだ。
腕に自信のある方、『めんトリパンチ』、是非遊んでみてください。