ゲームを最大限に楽しむ集団・ゴジラインの夜は長い。
3月8日25時30分、何千回目になるかわからないおれ(浅葉)とナカジマの戦いが、始まった。
おれ「今日はバルログ仕上げたわ」
ナカジマ「ダルシムも仕上げた。5分も練習したわ」
おれとナカジマの間の、”仕上げた”は、とりあえず技を出せるようになったことを意味する。
今まで、ゴジライン用に攻略記事を書いてきたものの、自分たちがこの作品を遊ぶうえで長く付き合うキャラクターを決められずにいたおれとナカジマは、ここ数日、いろいろなキャラクターを5分ほど練習して、荒々しくぶつけ合っていた。この日ナカジマが選んだキャラクターは、巷では強いという説も囁かれるダルシム。おれが選んだのは、別人のような火力と苛烈な攻めを手に入れたバルログだ。
なにひとつ成功しないコンボ、醜い弱攻撃連打、気分だけで繰り出すハイリスクな行動が飛び交う第一試合は、使いやすさで一歩リードしたバルログが勝利した。練習の5分間が全く生かされていない試合が見たいという奇特な方は、以下の動画をご覧ください。
一試合勝っただけで、態度が尊大になるのが人というもの。この時点で、”ダルシムはナカジマのキャラクターではない”という予感が、おれの中で広がり始めた。
おれ「おれのバルログ、深みとコクがあるね」
ナカジマ「なにひとつコンボできてないところに、”仕上がり”を感じたわ」
おれ「うむ、コパンからVトリガーすらできないところ、おれも震えてる。それより、ダルシム、あんた向いてねえんじゃ」
ナカジマ「回転王の攻略とか、周りの評判とか聞いていろいろなことやりすぎた。ちょっとおれが今閃いた”スタイル”でいくわ。あと、キーコンフィグ間違ってた、これ、リュウ用だった。PPPとKKK入れて、ヨガテレポートをスムーズに出せるように変える」
おれ「キーコンフィグをキャラ別に変えるのやめろ」
社会人とは思えない時間から始まった明日を省みない戦いは、ナカジマのキーコンフィグを経て、使う技の種類が減り、空中ヨガテレポートの回数が増えていく。ゲージも何もたまらない空中ヨガテレポートだが、放置しておくと調子づいてヨガファイアを吐いてきたりするため、非常にうざい。
おれ「空中ヨガテレポートが増えた。うぜぇ」
ナカジマ「この技も、30歳を超えると対応できなくなる系の技っぽいな。もうちょっとギアを上げるわ」
加速する空中ヨガテレポート。バファリンの半分は優しさでできているとのことだが、おれとナカジマの戦いの半分はヨガテレポートでできていた。トレーニングモードの5分間で仕上げたはずの、EXフライングバルセロナアタックを使った表裏の攻めも、ダルシムの無情なスライディングの前に蹴散らされていく。トレモで練習した唯一ともいえる武器が砕かれ、バルログ退場の時が訪れた。
ナカジマ「次のキャラ来いよ。あんたキャミィとか昨日練習してたろ」
おれ「お前、完全に調子に乗ってるけど、おれのキャミィ、バルログとか比べ物にならん”仕上がり”だよ」
ナカジマ「おれはもうたどり着いたよ。ヨガの境地に」
空中から急降下してくるキャノンストライクは、通常技対空が主力のダルシムにはつらいはず。昨日10分トレモして、1時間近く対戦したおれのキャミィなら、イケる。そう思っていた。
おれ「一生消えててもはや対空がどうとかいう動きじゃねえ。下手に踏み込むとジャンプ強Pくらっちまうこのスタイル、おれじゃなきゃ完全にキレてるよ」
ナカジマ「後ろへの空中ヨガテレポートが、攻防一体の戦術になってる。心を揺さぶる効果も期待できる」
おれ「完全に、心揺さぶられてる。前方のテレポートは『スト4』と対策同じだけど、後ろどうするんだろうねこれ」
ナカジマ「わからん。これがヨガの新たなスタイル。あんたのトレモ10分シリーズじゃもうこの領域には届かない。メインキャラクターっぽいかりん来いよ」
おれ「おれが今までどれだけのダルシムを屍にしてきたか知らねぇなお前。オワったぞ」
ランクマッチで、LPを4000まで上げていたとき、何度かダルシムと当たった経験がある。そこでおれは、”ダルシムのけん制技をくぐりやすい大蛇を連打してメチャクチャにする”というスマートな戦術に行きついていた。そして、大蛇は攻撃の出ている時間が長いため、ダルシムのワープに対しても有効なはずだ。そして、その考えは、的中していたかに見えた。暇で、時間の無駄をしたいという人は、以下の動画を見ていただきたい。まともなコンボすらやる気もなく、不利な状態からのごり押しをつづけるゴリラかりんから、キャラクターの差を感じていただきたい。
ナカジマ「大蛇がうぜえ」
おれ「やっぱ、突進技、なんだよなぁ。空中ヨガテレポート、破れたり」
ナカジマ「ちょっと立ち向かおうとしすぎた。大蛇にワープと引き中K意識するわ」
おれ「これ以上はお前が辛くなるぞ。もう夜中の2時過ぎてるから、眠くなったらいえよ」
ナカジマ「優しさに見せかけた、勝ち逃げへの一手は通らねえぞ」
ゲームを最大限に楽しむ集団・ゴジライン、そしておれとナカジマの戦いは、その日どんなに勝とうが、負けようが「その日の最後の試合の勝者」が、一億勝というルールで行われている。
ナカジマに、悟りの瞬間が訪れた。
かりん四連敗。空中ヨガテレポートが、突進技を凌駕した瞬間だった。
空中ヨガテレポートの、空中ヨガテレポートによる、空中ヨガテレポートのための戦術がそこには完成していた。
おれ「これが……、東京テレポート」
ナカジマ「コミケの日のりんかい線くらいの見た目圧あるな、この戦術」
ナカジマ「思った通り、大蛇は、空中ヨガテレポートと引き中Kでリスクを負わせられるっぽいな」
おれ「空中ヨガテレポートが、試合の半分を超えてる気がする」
ナカジマ「画面にやられ判定が出てる時間、かなり減ってきてる自信ある。空中ヨガテレポート、コパンで落とす対策もっと練習しとけよ」
おれ「途中から我を忘れて突っ込んでたけど、この戦法、実際つええのでは?」
ナカジマ「あんたがチンパンジーなだけという説も濃厚だけど、ちょっと他の人で試してみるか。ランクマッチかバトルラウンジでやってみよう」
東京テレポート、それは、顔も知らない対戦者に試すには、あまりにも危険な技だった。
おれとナカジマは、そのことを身をもって知ることになる。
おれ「4回連続で対戦中に回線切断された。闘う気がなさそうにみえるのが、この戦法一番やべえ」
ナカジマ「おれも切断されてる。ぴよらせたあとにヨガテレポート連打してからコンボするのは、さすがにサイコパスすぎるから身内とやるときだけにしよう」
おれ「何のためにヨガテレポートしてるのそれ」
ナカジマ「ヨガテレポートを相手に印象づけることで、心をかき乱してる」
おれ「この戦法つええのかな……」
ナカジマ「わからん。EVOまでにこのスタイル、模索してみるわ」
こうして、ナカジマによって、新たなバトルスタイル”東京テレポート”が生み出された。
最後に、この戦術の流れを、簡潔に説明する。
1・後ろ低空ヨガテレポートからジャンプ強Pをとりあえず連打する
2・相手が飛んできたら空中ヨガテレポ―ト→ジャンプ中Pで迎撃
3・地上から来る相手には、下がりを多く見せ、前低空テレポ→ジャンプ強Pで奇襲する
4・相手が攻めて来なかったらヨガファイアを撃つ
5・空中ヨガテレポートを落とされたらリバ―サルヨガテレポート、しゃがみ弱P、Vリバ―サルをこする
そして、1に戻る。
ポイントは、1の行動を咎めるのがなかなか難しそうというところで、ここに下手に前方テレポート対策の歩き弱Pとかやってると上から殴られることもあります。あまりにも危険な戦法なので、取り入れる際は自己責任のうえでお願いいたします。