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『ファイアーエムブレム無双』をウチのオカンに遊んでほしい

      2017/10/17

ニンテンドーSwitchで『ファイアーエムブレム無双』を遊んでいる。
『ファイアーエムブレム』シリーズは、おれにとって、家族との思い出が紐づいたゲームの一つだ。
『ファイアーエムブレム』という言葉が目の前に現れるたびに、いつも1994年の冬を思い出す。

『ファイアーエムブレム無双』
発売日:2017年9月28日
プラットフォーム:Nintendo Switch Newニンテンドー3DS
ジャンル:アクション
価格:Nintendo Switch 7,800円+税、Newニンテンドー3DS 6,800円+税
プレミアムBOX:Nintendo Switch 10,800円+税、Newニンテンドー3DS 9,800円+税
トレジャーBOX:Nintendo Switch 15,800円+税、Newニンテンドー3DS 14,800円+税

1994年1月21日、スーパーファミコン版『ファイアーエムブレム 紋章の謎』の発売日であり、おれにとっては中学受験の直前となる時期。
おれはこの時期、お受験ブームに乗ったオカンにより、当時住んでいたマンションで軟禁状態に近い状態で勉強に向き合わされていた。目を離すとすぐにゲームセンターや友達の家へと脱走するおれに勉強させる方法として選ばれたこの軟禁は、部屋のドアを、外側からつっかえ棒のようなもので防ぐという雑なもので、物理的に脱出することはそう難しいことではなかった。しかし、受験前のこの時期はオカンが絶対合格をモットーにマンションに張り付いていたため、おとなしく勉強しているふりをする日々を過ごしていた。時折、部屋の外にオカンの気配がすることがあり、中の様子をうかがっているような感覚がしたからだ。

ウチのオカンが特別に怖かったというわけではなく、当時の教育ママというのは、だいたいこんなものだった。

ご飯が食べられるのも、お小遣いが得られるのも、ゲーム機がウチにあるのもオカンのおかげであると薄々感じていたからか、逆らうことはしなかった。ゲーム機を捨てられたり、隠されたりした友達の話を聞いていたため、下手に反抗してもろくなことにならない予感がしていたというのもある。ただ、軟禁とはいえ、何をしているか常時見張られているわけではないので、つかれないくらいに勉強をして、あとは本を読んでいるという時間も多かった。ゲームはオカンが寝てから、ばれないように遊ぶというのが当時のおれの楽しみだった。オカンの寝る時間は24時前後。オトンが布団に入るのは2時くらいだったが、オトンは放任主義の見本のような人なので、おれの部屋から物音がしようが全く気にしない。今思えば、とんでもないライフスタイルかつ、親の教育にかける情熱を台無しにしたことを申し訳なく思うものの、力の5000題であるとか、自由自在といった参考書の分厚さは、当時のおれのやる気を奪うには十分だった。あの分厚い参考書は、今でもあるのだろうか。

しかし、『ファイアーエムブレム 紋章の謎』は発売日を迎えたばかりのソフトで、ソフトが手元になければ遊ぶことはできない。他のタイトルならまだしも、このタイトルだけは一刻も早く遊びたかった。真夜中に『ファイアーエムブレム』を遊ぶ計画を実行するためには、ゲームショップの開いている間、11時から22時くらいの間に、『ファイアーエムブレム』を手にいれなければならない。当時は24時間空いているようなゲームショップのようなものはなかったのだ。しかし、この時間は、オカンが家にいて、起きている時間でもある。部屋の外にあるつっかえ棒を部屋の内側からとるためには、扉に力をかける必要があり、つっかえ棒がとれた時に音でもしようものなら、すぐバレてしまうだろう。
今ならいろいろと他の悪知恵も浮かぶだろうが、当時のおれが外に出るために選んだ方法は、おれの部屋からも入ることができる2Fのベランダからジャンプして脱出するという何のひねりもない方法だった。帰りは、持っている鍵を使って、そっと扉を開け、外側からつっかえ棒を音のしないように外し、自分の部屋に戻ればいい。最悪、見つかったとしても、ゲームソフトを隠しきることはできるだろう。今思えば、異常な情熱だ。

2Fのベランダから飛び降りた時のことはよく覚えていない。着地の衝撃を感じないくらい、高まっていたのかもしれない。
一階部分の構造がそれほど高くないマンションで、着地点は砂地だったこともあって、当時はこの高さなら大丈夫と言う謎の自信があった。
今思えば明らかにこれは危険なことで、他人が2Fから脱出しているところを見ると青ざめるだろう。

よくよく考えると、着地を失敗していれば、骨折してもおかしくない高さだったことは間違いないのだが、この脱出は無傷で成功した。自転車に飛び乗り、当時の行きつけのゲームショップ「ライトホビーショップ」へと走り、お目当ての『ファイアーエムブレム 紋章の謎』を買う。凄まじい達成感と背徳感が同時に押し寄せ、ソフトの入った紙袋をトレーナーの内側に入れて店を飛び出した。部屋に戻るのも、この調子なら失敗することはないだろう。勉強をしているふりをしつつ、夜ご飯に呼ばれたらそれを食べ、24時を待てばいい。

バレないように、早く帰らなければ。
早く、『ファイアーエムブレム』の説明書を見たい。
急げ、急げ。自転車が最高速に達し、火照った体に心地よい冬の風を感じた次の瞬間、自転車が何かに乗り上げたことを自覚した。そして、そのまま、どちらかの方向に一回転するかのように自転車と体が宙を舞った。普段は気をつけるはずの段差を、ついスピードを出して走り抜けてしまったのだ。
一瞬時間が飛び、気がつけばズボンが破れるほどの擦り傷ができていた。そして、起き上がろうとすると、左腕に激痛が走った。
体を動かすと、痛みが体の内側から出てくる。今までに経験したことのない痛みをどうにかしたいという一心で、近くの小さな電気屋に駆け込んだ。
ぼろぼろのおれを見た店員さんに、「怪我をしたんで休ませてください」という、RPGの登場人物のようなことを言った記憶がある。休んで治るような類の痛みでも、傷でもなかったのに。

ソフトが無事だったことだけは確認したものの、体の痛みはどうにもならない。体を折り曲げて店の隅で休ませてもらっていたが、一向に痛みが引く気配はなかった。電気屋の店員さんから「骨折しているかもしれないから、これは親御さん来てもらった方がいいよ」と言われ、初めて意識する骨折への恐怖が湧きあがり、おれは観念した。オカンのいる家に電話をかけ、助けを呼ぶことにした。

「もしもし、今外にいるんだけど、怪我して近くの電気屋さんにいる。骨折れてるかも」

一瞬の沈黙、そしてオカンの絶叫。

「なんで外におるん。大丈夫なの」

「痛いから病院行きたい」

「迎えに行くからそこにおりなさい」

10分もせず店に駆けつけたオカンは、冬にも関わらず汗だくで。店員さんに謝りながらも、息子の怪我の様子を気にしていた。
市民病院に向かう車の中、オカンが「なんで外に出てたの」と穏やかな声で聞いてくる。
程よく痛みが和らぐ体制だったからか、自分が成績以外のことで心配されているのを久々に感じたからか、おれは本当のことを伝えた。

「どうしても欲しいゲームがあったんよ」

「そんなにゲームが好きなの。いい学校行ったら、将来ゲームばっかりできるようになるわよ」

今になれば、その気持ちもわかる。子供を良い学校に行かせて、幸せな未来の糧となるよう願う。おれが親になったら、同じことを思うかもしれない。

「今が一番楽しいゲームがあるんだよ」

「お母さんには、よくわからんわ」

結果は左腕の骨折だった。ギプスでぐるぐる巻きに固定された左腕を下げ、家に帰ると、なぜかオトンも早く家に帰っていた。今、書いていて不思議に思ったけれど、オトンなりに心配してくれたのだろう。
オトンは、ギプスを着けたおれを見て、「僕の息子なのに勉強が好きなわけがないだろ」と今日の出来事を笑い話にする。
オカンはまた泣き始める。そして、思わぬ提案をしてきた。

「今日はゲームしていいわよ。しばらく、勉強にならんでしょ」

この時のおれは、不意に得られた権利をためらうことなく行使することを選んだ。
ギプスで左腕が不自由でも、ボタンを押すことくらいはできるのだ。
あの時、いや、受験前だからやっぱりやめとくよと言っていたら、違った人生の分岐があったのかもしれない。

「ゲームって、そんな面白いもんなんかなあ。ちょっと見せてみてよ。リビングのテレビにも映せるでしょ」とオトンが言う。

その夜は、両親二人が後ろのソファに座って、おれが『ファイアーエムブレム』をしているのを見ていた。

見られていることへの恥ずかしさと、ゲームオーバーになったらどうしようという気持が混ざりあって、いつもより慎重に、時間をかけてゲームを進めた。

「何が楽しいのか、全然わからんわ。その小さいキャラクターのどこがいいかわからん」とオカンが笑う。
「勉強よりは楽しそうやけど、ようわからんなぁ」とオトンも笑う。

ゲームの楽しさは二人に伝わることはなかったけれど、なんだかくすぐったい夜だった。
その日から、部屋に軟禁されることはなくなり、「もうちょっとで受験だから勉強しときなよ」と言われるくらいになった。
あとになって聞いた話では、骨折してまでゲームを買いにいく息子を見て、いろいろと諦めがついたらしい。

この数日後に行われたお受験には、なぜか合格した。
試験の後に、面接があった。

「その左腕はどうしたのですか」

「数日前に、自転車で転んで骨折しました」

「普段からよく自転車に乗るのですか」

「通学はそうではないのですが、塾などには自転車で通っています」

「そんな大きなギプスを着けてウチの受験に来た人は初めて見ました」

「チャンスは一度しかなかったので、どうしても来たかったんです。直前のことで戸惑いましたが、試験は精一杯頑張りました」

こんな受け答えをしたことを覚えている。嘘はついていない。
当時の自己採点で、国語は100点、算数は半分もとれているか怪しいところだった。面接での点数付けがあったのだとしたら、合格したのは、腕を折ってまで受験に来たことが評価されたからではないかと、今でも思っている。
オカンに「骨折ってなかったら落ちてたわ」と言うと、「アホいうな」と笑いながら怒っていた。

そんなオチまでついていて、自分にとって『ファイアーエムブレム』は忘れられない作品であり、大好きなシリーズだ。
シリーズは欠かさず遊んでいるし、コラボ作品とも言える『スマッシュブラザーズ』も『幻影異聞録♯FE』も遊んだ。

『ファイアーエムブレム無双』は、シリーズの人気キャラクターが揃い踏みしたアクションゲームだ。マルスがいて、シーダがいて、チキがいて。クロムがいてルキナもいる。最近出会ったエリーゼやマークスもいる。カムイは三國や戦国『無双』シリーズにいてもおかしくないような見た目だなと笑いそうになる。(できればミカヤもいてほしかった!)『無双』シリーズをベースにした爽快なアクションゲームだけど、武器の特攻的な要素や、シミュレーションRPGのようなCPUユニットの移動設定などは『ファイアーエムブレム』らしさとして残っている。
また、オールスターのゲームだからこそ、シリーズの時代を超えた主人公たちが共演し、その中では、「父や母」との関係も小さなテーマとして描かれている。そんなだから、おれもオカンに「あの時遊んでたゲームのキャラ、今はこんなに綺麗に描かれてるんやぞ」と見せたくなるのかもしれない。

オカンは、つい最近、「VRをやってみたい」とか言っていたから、あの頃とはゲームへの興味が違うかもしれない。
今ならもう少し、面白さや遊び方をうまく伝えられるかもしれない。
あの時、「オカンもやってみたら」と言えなかったから、今度はきっと言う。

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浅葉 たいが

浅葉 たいが

ゴジライン代表。ゲーム、アニメグッズのコレクター。格闘ゲーム、アドベンチャーゲーム、RPGをこよなく愛する。年間100本以上のゲームを自腹で買い、遊ぶ社壊人。ゲームメディア等で記事を書くこともあるが、その正体はインテリアデザイナー、家具屋。バンダイナムコエンターテインメント信者かつ、トライエース至上主義者。スマートフォン版『ストリートファイター4』日本チャンプという胡散臭い経歴を持つ。

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