【MAAB特別企画.01】シリーズ最新作は格闘ゲーム!?『ミリオンアーサー アルカナブラッド』が生まれるまで【琢磨尚文プロデューサーインタビュー】

『ミリオンアーサー』シリーズの新たなチャレンジとして発表された『ミリオンアーサー アルカナブラッド』はなんと、ゲームセンターで稼働する2D格闘ゲーム。スクウェア・エニックス初の2D格闘ゲームであり、『ミリオンアーサー』初のアーケード進出作品はどのようにして生まれ、どこを目指すのか。今回の取材では、本作の開発のキーマンである琢磨尚文氏にお話を伺った。聞き手は、ゲームを最大限に楽しむ集団・ゴジラインの浅葉たいが。筋金入りのゲーマー同士のマニアックなやりとりにも注目だ。

△『ミリオンアーサー』シリーズの新たな展開はなんと、2D格闘ゲーム!かってないクオリティのドット表現で描かれた、美麗で爽快バトルを楽しめるのだ。

△『ミリオンアーサー アルカナブラッド』の無料体験会にて、実況解説としてマイクをとる琢磨氏(右側)と、ゴジラインのケンちゃん(左側)。ゲームセンター好きのプロデューサーが世に送り出す格闘ゲームということで、イベントには多くのプレイヤーが駆けつけた。

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琢磨尚文:『ミリオンアーサー アルカナブラッド』のプロデューサー。ゲームセンターに通い詰めていた時期もあるという、「ガチ」の格闘ゲーマーでもある。本作の新着情報は、琢磨氏のtwiitter(@montandesu)などでも続々公開中。

※記事内では、『ミリオンアーサー アルカナブラッド』を、略称の『MAAB』と表記している。

広がる『ミリオンアーサー』の世界
アーケード・2D格闘ゲーム化までの道のり

——『ミリオンアーサー』シリーズが格闘ゲームにやってくるというのは、全く予想していなかったので意外でした。どういった形で、この『MAAB』というタイトルが立ち上がったのでしょうか。

琢磨:『ミリオンアーサー』の世界を広げようという話が出たときに、格闘ゲームが浮かんできたんです。ゲーム業界に入ったときから、格闘ゲームを1本は作りたいと思っていたのですが、色合い豊かな『ミリオンアーサー』にはこのジャンルが合うのではと思ったんですよ。僕自身、2D格闘ゲームは、プレイヤーとして触れている時間が長いので、このジャンルなら目利きのようなことができるという自信もありましたね。

——今回の『MAAB』は、NESiCAxLive 2対応のタイトルですよね。スクウェア・エニックスのアーケードタイトルというと、『ガンスリンガー ストラトス』や『ディシディア ファイナルファンタジー』のように「特殊な筐体」がセットになったプロダクトを想像します。アーケードで展開するには、何か変わったことをしなければいけないという縛りがあるのかなと思っていました(笑)

琢磨:確かに、弊社のアーケードタイトルというと、専用筐体というイメージがあるかもしれませんね。でも、会社としてはそういった縛りはないんです。今回のプロジェクトでは、2D格闘ゲームの面白さを広げたいという裏のテーマのようなものもあるんです。だから、操作デバイスは皆さんの見慣れたものを選びました。今回『MAAB』が動くことになるNESiCAxLive 2という環境は、見た目の新しさというのはあまり感じないかもしれませんが、ゲームセンターでオンライン対戦ができるという強みがあるんですよ。企画自体は2年くらい前から一人で作っていたんですが、NESiCAxLive 2に載せられるかもしれないとわかったときは、新しい可能性を感じましたね。

—私も出身が徳島県なので、オンライン対戦には可能性を感じます。アーケードゲーム界隈では、「都内」と「地方」というカテゴリ分けをすることがあるんですが、徳島県のようないわゆる「地方」は、対戦相手を見つけるのに苦労するときがあるんです。都内の人が言う「いない」とは全然違うんです(笑)

琢磨:都内の「対戦相手がいない」というのは全くいないというのではなく、一人や二人はいたり、ゲームセンターを移せばいたりすることもありますね。僕もそういう意味では「地方」なので、本当にいない悲しみがわかります。タイトルに人気がないというより、そもそものゲーム人口が少なくて、対戦がなかなか成立しないから、対戦の面白さを感じる前にやらなくなってしまうという流れができたりするんですよね。オンライン対戦は、そういう流れに一石を投じてくれるのではないかと期待しているんです。

——『MAAB』のオンライン対戦は、どのような形で対戦相手とマッチングするのでしょうか。

琢磨:オンライン対戦は、同じくらいの強さの相手とあたるランクマッチ的なものを基本にしています。そこで勝っていくと、ポイントのようなものが溜まり、より強い相手とマッチングします。稼働直後はみんな0からのスタートなので、同じ強さの相手とはマッチングしにくいと思いますが、一週間もすれば実力に応じたところで遊べるはずです。そのほかにも、距離の離れた友人同士で対戦できるフレンドマッチも用意しています。こちらは強さに関係なく、お互い了承した相手と対戦できる仕組みになっています。

——何度か実施した、無料体験会の手ごたえはいかがですか?

琢磨:無料体験会の環境では、通信も快適でしたね。このまま想定通り稼働してくれれば、格闘ゲーマーがデリケートになりがちな「通信ラグ」によるストレスもなさそうです。ただ、これは環境によるところが大きいので、稼働後も慎重に観察をしたいですね。

『MAAB』を構築する
さまざまなこだわり

——今作の製作は、「チームアルカナ」が手がけていますが、このチームはどのような組織なのでしょうか。結成したきっかけなどについてお聞かせください。

琢磨:チームアルカナには、キャラクターを活かした格闘ゲームづくりを得意とする方たちが所属しています。実際に開発をスタートするまでは、僕一人で企画を作っていたんですが、チームアルカナとして動き始めて、物凄いスピードでいろいろなことが決まり、走り始めましたね。実は、このプロジェクトが立ち上がるずいぶん前に、一回メンバーの方々に挨拶に伺ったんです。「いつか、格闘ゲームを作りたいです」と言ったんですが、『MAAB』で最高の形でチームを組めましたね。

——無料体験会版では、キャラクターの動きや演出に驚きました。設定を活かしつつも、躍動感が凄いですよね。

琢磨:格闘ゲームは、めちゃくちゃキャラクターが動きますから、原作から動きをつけていくのは大変だろうと思っていたのですが、チームアルカナの方々が『ミリオンアーサー』の世界から、うまくキャラクターを立ち上げてくれました。すごく細かいところがちゃんと拾われているので、『ミリオンアーサー』のファンの方も満足していただけると思っています。

——『MAAB』に登場するキャラクターの選定は、どのように進めたのでしょうか。

琢磨:一作目ということで、限られた開発期間の中で作りこめるキャラクターというのは制限がありますから、とても悩みましたね。一番意識したのは、格闘ゲームにいて楽しいキャラクターをバランスよく配置することですね。バランスタイプのキャラクターがいて、パワー、スピードといった形で割り振っています。ただ、そうは言っても、みんな出してあげたいんですけどね(笑)

——まだ数プレイしかしていないのですが、バトルのテンポの良さに、ぐっと惹きつけられましたね。小気味よく動きがつながりますし、攻撃を繰り出すのが楽しくて、つい何度も遊んでしまいました。

琢磨:爽快なゲームにしたいというのはずっと思っていたんですが、同時に、爽快にするためにできることってなんなんだろうというのは色々と考えましたね。開発中は、派手な演出で、スピーディで、操作周りのストレスを取っていくということをやっていました。あとは、直感的に遊べるというところにもこだわりました。「システム的にこうだから」というものは、疑いながら制作を進めましたね。「この技は強すぎるから、システム的にこういう制限をつけます」というのは、バランスをとるうえでの一つの方法なのですが、その制限が直感的に理解できないと違和感がありますから。デッキの部分では、ちょっとシステム的な解釈をしなければならないところもありますが、ゲームのルールはわかりやすく作れたと思っています。

——相手が何をやっているかがわかりやすい作品だと感じました。稼働からしばらくの間は、負けると熱くなって、自分も相手のキャラや、動きを真似してしまいそうです(笑)

琢磨:熱くなってもらえたなら嬉しいですね。『MAAB』は、格闘ゲームの持つ、対戦の熱さにこだわっているんです。新しい体験もたくさん入れていますが、コアな格闘ゲーマーの方には、やりこむ安心感を感じてもらえるのではないかと思います。こう言うと、格闘ゲームの「敷居の高さ」みたいなところが強調されてしまうように感じるのですが、本作から始めようという人のことも考えて、難しすぎないところに着地させるつもりです。このバランス感覚については、ある程度プレイしてみないとピンとこないと思いますが、稼働したら格闘ゲームだからと敬遠せずに遊んでみて欲しいですね。

——本作ならではの、サポート騎士を組み合わせて配置するという「騎士セットシステム」は、「属性」と絡んで不思議なプレイフィールになっていますよね。プレイヤーによって、いろいろな組み合わせが見られそうです。

琢磨:騎士セットと属性のシステムは、本作の「新しさ」の一つですね。キャラクターを動かして、サポートを呼んで戦うという形式のゲームは今までにもたくさん出ているのですが、こういったゲームは、やりこみが進んでいくと「組み合わせの最適解」ができてしまいやすいんです。そこで今作は、属性という概念をいれつつ、立ち回りで強いサポート、コンボパーツとして有用なサポートなど、性能の細分化もしています。こんなことを言っておきながら、「最適解」が出てきたらどうしようと思っていますが(笑)

※本作では、メインで操作するキャラクターを選んだあと、戦いを補助してくれる「サポート騎士」を選択する。このサポート騎士は、複数体選ぶことができ、この編成を「騎士セット」と呼ぶ。

——ランクマ20連勝「○○の最強騎士セット!」という記事ができそうですね(笑)

琢磨:カードゲームのデッキ編成のような考察が出てくると面白そうですよね。人の騎士セットを見て、真似してみて、自分には合わないなとか、これは真似しようとか。僕たちが想定していないデッキなども、たくさん出てきそうです。

——プレイヤーのやり込みは、開発の想定を超えてくることがありますからね。

琢磨:そうなんですよ。超えてくることがあるというか、ほぼ超えられます(笑)そこが格闘ゲームやアクションゲームをやりこむ面白さの一つだと思うんですよ。それはズルでしょというようなものも、戦術や攻略法として「良し」としてしまうのって、プレイヤーによってゲームキャラクターの動きが変わるジャンルの醍醐味だと思うんですよね。もちろんバランス調整の方は、放棄するというわけではないので、安心してください。

——バランス調整については、稼働後も行っていく予定ですか?

琢磨:マニアックな質問ですね(笑)バランス調整に関しての考え方はいろいろあると思いますが、「調整する」となったときに、「丸い玉」を作るような方向性にはしたくないですね。強すぎたので出来なくしましたというのは、自分も格闘ゲーマーとして何回か経験して、ちょっと寂しかったんです。強すぎる技がもし出てきたとしても、安易に削るというのは避けたいです。止むを得ずに削るとしても、別の面白さを持たせてあげたいですね。

——すごくいいと思います!動かしていて楽しい作品になってほしいですね。

琢磨:僕自身が、稼働をすごく楽しみにしています。稼働からしばらくして、攻略が共有されてきたら、プレイヤーとして対戦していこうと考えています。ただ、最近のゲームは、本当に攻略が早いので、そんな悠長なことを言ってたら上級者の人にボコボコにされてしまいそうですが(笑)ゴジラインさんでも、攻略をやってくれるとコイチさんやケンちゃんから聞いているので、楽しみですね。

——期待に応えられるよう、頑張ります。格闘ゲームといえば、やはり大会やイベントなどが気になります。

琢磨:プレイしてくれている人たちが、楽しい体験をできるようなイベントを予定しています。弊社は、アーケードゲームのタイトルでイベントをやることも多いので、本作でもその流れは継続していきたいです。アーケードタイトルということで、ゲームセンターで何かをやりたいですね。

△この作品をきっかけに、ゲームセンターの面白さを知ってほしいという琢磨プロデューサー。イベントなども企画しているとのことなので、今後の展開にも注目だ。

——締めに、お決まりの質問になってしまいますが、本作の稼働を楽しみにしているファンや、格闘ゲーマーにメッセージをお願いします。

琢磨:『ミリオンアーサー』ファンの方は、稼働したら是非、画面を見にゲームセンターに行ってみてください。できればプレイもしてほしいですが(笑)『ミリオンアーサー』のキャラクターたちが躍動感たっぷりに暴れていると思います。格闘ゲームをやったことがないという方も、楽しみながら上達していけると思います。格闘ゲーマーの方は、僕と対戦しましょう!稼働までまだしばらくありますが、良い作品を届けられるよう努力しますので、よろしくお願いします。

『ミリオンアーサー アルカナブラッド』ロケーションテストのお知らせ
【開催日時】
2017年9月9日、10日
AM11:00〜PM22:00【開催店舗】
北海道「MAXIM HERO」
仙台「タイトーステーション 仙台クリスロード店」
秋葉原「Hey」
愛知「タイトーステーション 大須店」
大阪「タイトーステーション 梅三小路店」
博多「タイトーステーション 福岡天神店」
※本イベントは無料体験会ではございません。ゲームのプレイは有料となります。

(C)SQUARE ENIX CO.,LTD. All Rights Reserved.

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浅葉 たいが

浅葉 たいが

ゴジライン代表。ゲーム、アニメグッズのコレクター。格闘ゲーム、アドベンチャーゲーム、RPGをこよなく愛する。年間100本以上のゲームを自腹で買い、遊ぶ社壊人。ゲームメディア等で記事を書くこともあるが、その正体はインテリアデザイナー、家具屋。バンダイナムコエンターテインメント信者かつ、トライエース至上主義者。スマートフォン版『ストリートファイター4』日本チャンプという胡散臭い経歴を持つ。

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