【プレイレポート】ホンモノのキャラゲーの変遷を追う『NARUTO-ナルト- 疾風伝 ナルティメットストームトリロジー』

漫画アニメを原作とするキャラクターゲーム、いわゆるキャラゲーというジャンルに、皆様はどういうイメージをお持ちでしょうか。僕は趣味や仕事でゲームについて語ることが多いのですが、よく「(でも)キャラゲーでしょ」という言葉を聞くことがあります。こういった場合の「キャラゲーでしょ」は、なんとなく軽く受け流すようなニュアンスや、ネガティブな雰囲気が漂います。
こうした反応が返ってくる大きな原因は、キャラクターゲームには笑えないクソゲーが多いという否定しようのない歴史があるからなのかもしれません。
しかし実際には、ここ最近のキャラクターゲームには、「でもキャラゲーでしょ」と言わせないような迫力を持つ作品も沢山あります。
そして、今回紹介する『ナルティメットストーム』シリーズはその中でも、とびきりの作品のひとつです。
よく作られたそつないゲームではなく、キャラクターや原作を活かし切り、ゲームとしてできることにこだわり続けた、職人魂溢れる、いや、変態性すら感じる作品です。
今回の記事では、その変態ゲームの凄味を、7月に発売されたメモリアル作品PS4『NARUTO-ナルト- 疾風伝 ナルティメットストームトリロジー』(『ナルティメットストーム』の1、2、3を収録)を通じて、語っていきたいと思います。

『NARUTO-ナルト- 疾風伝 ナルティメットストームトリロジー』
発売日:2017年7月27日
プラットフォーム:プレイステーション4
ジャンル:忍道対戦アクション
価格:PS4パッケージ版:6,800円+税
ダウンロード版早期購入価格6,120+税(2017年8月23日まで)
発売元:バンダイナムコエンターテインメント
開発:サイバーコネクトツー

△『ナルティメットストーム』シリーズのナンバリングタイトル3作を収録したお得なソフト。

変態的「超アニメ表現」

『ナルティメットストーム』シリーズの特徴といえば「超アニメ表現」と名付けられたクオリティの高い表現技法です。これは、アニメの世界を、ゲームとして楽しめるような感覚をもたらすもので、本シリーズの主な遊びである「対戦型アクションパート」では、アニメで見たナルトやサスケを操作しているかのような感覚に陥ります。2009年に発売された『ナルティメットストーム』を最初に見た時は、この感覚に驚かされました。静止画が綺麗なゲームというのは当時もたくさんありましたが、『ナルティメットストーム』は動いている時のグラフィックが抜群に素晴らしかったのです。以下の動画は、『ナルティメットストームTRILOGY』の公式PVですが、このレベルの表現が飛び交う「バトル」が繰り広げられます。

そしてシリーズを追うごとに、超アニメ表現は加速していきました。作品を重ねるごとにド派手な技が増え、トーリーモードではゲームが変わったかのようなイベントバトルまで追加されました。ストーリーモードに組み込まれている、大型の尾獣とのバトルは別のゲームを遊んでいるような感覚で、グイグイ動く3Dグラフィックに圧倒されます。

△『ナルティメットストーム3』、ストーリーモードでの九尾バトル。プレイヤーは三代目火影を操作しながら、建物を飛び移りつつ戦います。

キャラクターたち動作の一つ一つに、凄まじい原作の読み込みと、表現への挑戦が感じられます。バトル中に惜しみなく使われるエフェクトは、切れ味を感じるほど鋭い。しかも、キャラクターはめちゃくちゃ多いのです。シリーズ最新作のPS4『ナルティメットストーム4』では100人を超える忍が登場しています。キャラクター数が100もいると、動作の似通った「コンパチ」キャラが多いのではと思う方もいるかもしれませんが、本作は同じキャラクターのバージョン違いであっても、技モーションや性能などが作り変えられている場合がほとんどです。キャラクターの数だけ変化があると言っても過言ではなく、開発現場のことが心配になったりします。

△切れ味すら感じるエフェクトは必見。キャラクターの一挙一動が見せ場になります。プレイステーション3時代の表現とは思えない演出が盛りだくさんです。

ゲームで体験する『NARUTO-ナルト-疾風伝』の物語と世界

キャラクターゲームに期待されるのは、ストーリーへの没入感です。『ナルティメットストーム』シリーズは、「超アニメ表現」だけでなく、ストーリーをゲームとして楽しむことにもこだわっています。『ナルティメットストーム』の1、2では、街を移動しつつイベントをこなしていくタイプのストーリーモードが設けられていました。当然、街のグラフィックもものすごいつくり込みですから、プレイヤーは『NARUTO-ナルト-疾風伝』の世界を闊歩しているような感覚になります。

△1や2のストーリーモードでは、街を移動するパートが用意されています。

△『ナルティメットストーム』シリーズを順に遊べば、『NARUTO-ナルト-疾風伝』の物語を追いかけることができます。

3では、アドベンチャーゲームのように分岐していくストーリーモードが搭載されています。基本的に『ナルティメットストーム』シリーズのストーリーモードは、アニメの流れに沿って進行していくのですが、3と4は、ゲームならではの流れが、原作の魅力を損ねない絶妙なバランスで組み込まれています。『ナルティメットストームトリロジー』には収録されていませんが、PS4『ナルティメットストーム4』のストーリーモードのエンディングは、あらゆるジャンルのゲームのエンディングの中でも、とびきりの「熱さ」と「泣き」を感じられるものとなっています。ゲームならではのストーリーの魅せ方に対する、一つの答えのようなエンディングになっているので、原作ファンも是非ご覧になってください。

「対戦」を見据えたキャラゲー

対戦型のキャラクターゲームというと、「対戦が楽しめる」だけで良しとされることが多いのですが、プレイステーション3参入以降のバンダイナムコエンターテインメントの対戦型キャラクターゲームは、「コアな対戦ゲーマー」に向けた配慮にも目を向けつつあります。『ナルティメットストーム』もまさに、そうした流れの影響を受けつつ進化してきた作品です。1では、「動かしていて楽しい」というところに重きが置かれているように感じましたが、シリーズを追うごとにキャラクターの性能はもちろん、システム面にもバランスを意識した変更が度々行われ、格闘ゲーム的なトレーニングモードも途中で実装されました。2や3はオンライン対戦も対応し、「対戦ツール」としても存在感を発揮するようになりました。

△対戦バランスなんてとれるはずがないだろうというキャラクター数ですが、「やり込み」に耐えうる設計となっています。

『ナルティメットストーム』は操作の一つ一つは簡単な操作で実行できますが、自由度が非常に高く、「変わり身」や「忍具」といった、他の対戦格闘ゲームにはないシステムが存在するため、プレイフィールはオンリーワンのものになっています。ほどほどに格闘ゲームの経験がある我々ですら、攻略の糸口を見つけるのに時間がかかったくらいなので、多くのゲーマーの方には新しいバトルを体験させてくれるはずです。

ホンモノのキャラゲーの変遷を追う

『ナルティメットストーム』シリーズは、挑戦的な、変態性すら感じる作品です。『ナルティメットストームTRILOGY』はその歴史を贅沢にも3本分凝縮した作品で、表現の細やかな進化や、あえて当時のまま残されているUIなどを見比べれば、制作側の思考の動きがなんとなく想像できます。このシリーズの原点となった1は、クリエイターの中に強烈に描かれていたビジョンが、ソフトの中に収まりきらず、暴れ動いているような感覚を今でも受けます。荒削りな凄みを感じる、アートのような作品です。
荒削りな1は、今見るとUI周りに無理があるように感じますが、3ではその弱点をうまく吸収するような作りになっています。ソフトの醍醐味とも言える部分が固まってきた3では、「対人戦」を意識した試みが多く盛り込まれています。こうした改良を見ていると、丸い球体のように磨かれていったように感じますが、シリーズを追うごとにより尖ったものを作ろうとし、毎回変化と進化を交えながら突き進んできています。その尖りっぷりはあまりにもマニアックで、大人にも響く、大人にしかわからないところがあるような作品として仕上がっています。あえてそのままの収録(解像度はアップコンバート、一部DLC削除)としたことで、見えてくる作品の歩みは、ゲームファンとして味わい深いものがあります。

△プラクティスモードは、3のものはシンプルですが、4ではより進化しています。

キャラクターゲームの最前線である『ナルティメットストーム』シリーズの歩みを振り返る作品としてはもちろん、『NARUTO-ナルト-疾風伝』の原作を知らないという方にもオススメしたい一本です。作品世界には、『ナルティメットストーム』から入っても全く問題ありませんからご安心を。ストーリーモードがとてもしっかりしているのです。きっと、遊び終えたら、次は原作漫画やアニメが見たくなるはずです。
最新作の『NARUTO-ナルト- 疾風伝 ナルティメットストーム4 ROAD TO BORUTO』は別売りですが、こちらはシリーズの集大成で、「ストーリーモード」と「対戦ツール」が極めて高いレベルで同居しています。キャラクターゲームに欠かせないストーリー体験が味わえる作品かつ、対戦も楽しい。とても贅沢な作品となっています。
「でも、キャラゲーでしょ」と言われたら、「今のキャラゲーって凄いんだよ」と言いたくなる、そんな体験を『ナルティメットストーム』で是非お楽しみください。

『NARUTO-ナルト- 疾風伝 ナルティメットストーム4 ROAD TO BORUTO』
発売中
プラットフォーム:プレイステーション4
ジャンル:忍道対戦アクション
価格:PS4パッケージ版:6,800円+税
『NARUTO-ナルト- 疾風伝 ナルティメットストーム4』からのアップデートパックは2,411円+税
発売元:バンダイナムコエンターテインメント
開発:サイバーコネクトツー

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浅葉 たいが

浅葉 たいが

ゴジライン代表。ゲーム、アニメグッズのコレクター。格闘ゲーム、アドベンチャーゲーム、RPGをこよなく愛する。年間100本以上のゲームを自腹で買い、遊ぶ社壊人。ゲームメディア等で記事を書くこともあるが、その正体はインテリアデザイナー、家具屋。バンダイナムコエンターテインメント信者かつ、トライエース至上主義者。スマートフォン版『ストリートファイター4』日本チャンプという胡散臭い経歴を持つ。

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