【ゲームレビュー】『ゾイドワイルド キングオブブラスト』は、今こそ必要な対戦格闘ゲームなのかもしれない

『ゾイドワイルド』を原作とする格闘ゲームが発売されるというニュースを知ったのは昨年のこと。
発売元は当然、ゾイドシリーズを幅広く展開するタカラトミーさん。ゴジライン編集部的には、「プリントス」や「昭和家電シリーズ」などのユニークな玩具を楽しませてもらっている大好きなメーカーだが、「タカラトミーから格闘ゲームが出る」ということが一番大きな驚き。かつてのタカラ発の格闘ゲームを知るプレイヤーからすれば、わくわくしてしまうのだ。
今回の記事では、そんな期待の作品ニンテンドーSwitch専用ソフト『ゾイドワイルド キングオブブラスト』の魅力を、ゲーマー視点でお届けする。

△今回紹介するのは、『ゾイドワイルド キングオブブラスト』。『ゾイドワイルド』を原作とする、対戦格闘ゲームです。

また、今回の記事は、タカラトミーさんに「記事を載せたい」というお願いをしたところ快くOKをしてもらい、そのうえメールでのインタビューにも応じてもらった。記事の2P目に掲載しているので、こちらも見逃さずにチェックしてほしい、

『ゾイドワイルド』を描き出すゲームという素晴らしき舞台


まず、このゲームを語る上で外せないのがゾイドの描写について。本作では「金属の肉体と、動物の本能、闘争心」を併せ持つゾイドを、ゲームという媒体の強みを最大限に生かして表現している。格闘ゲームというアクションがぶつかり合う舞台の中で、細かい動きにこだわり、憧れのゾイドを動かしているかのようなプレイフィールをもたらしてくれる。ワイルドライガーの空気を引き裂くような疾走感、ガブリゲーターの怪しいしなやかさ、ギルラプターのトリッキーなステップ。そして、デスレックスの圧倒的な存在感。金属の肉体に宿るものが浮かび上がってくるかのような迫力がある。ゴジラインのメンバーには、『ゾイド』シリーズの熱心なファンがいるが、そういった人ですら納得させてしまう表現力が本作にはある。

△ゾイドの造形がたまらなく良い!とゴジラインのおじさんたちも大満足。

玩具、アニメ、玩具など、多彩なプラットフォームで展開されるゾイドだが、本作を遊んでいるとプラットフォームごとの違いにはっとさせられる。玩具では、自らの手でゾイドを触り、ギミックを楽しみつつ目の前で動かすことができまる。そのリアルな体験には大人ですら驚くほどだ。最近のゾイドには、ただ動くだけではなく、かなり派手なギミックが搭載されていたりする。アニメでは、キャラクターを織り交ぜたドラマが語られる。画面という無限の可能性がある舞台の中で、キャラクターを交えた熱いドラマが体験できるのはこの媒体ならではだろう。そしてゲームは、アニメと同じく、リアルを飛び越えた表現を楽しむことができるうえ、操作して動かすことができる。玩具にも、アニメにも、ゲームにも、それぞれおいしいところがあり、それらがすべて高いクオリティで発信されているのが『ゾイドワイルド』の魅力なのだ。

△『ゾイドワイルド』の玩具。過去のゾイドよりも格段に組み立てやすくなり、ギミックのバリエーションが増えました。子供向けと侮ることなかれ、大人でもハマってしまう魅力を備えています。

一人用モードで『ゾイドワイルド』の物語を楽しもう


一人用モードでは、『ゾイドワイルド』の世界設定に基づくストーリーモードを遊ぶことができる。ストーリーモードは、ステージクリア型になっており、キャラクターごとに用意された物語を追いかけていく形式となっている。クリア報酬として、新しいゾイドや、ギャラリーモードで鑑賞することができるコンテンツが増えていくので、まずはこちらのモードを遊ぶのも良いだろう。

△ストーリーモードでは、”亜種”も登場。ゲームオリジナルの要素となっているので、ファンにはたまらないはず。「戦う」だけのゲームではないのだ。

格闘ゲームとしての『ゾイドワイルド キングオブブラスト』



本作のバトル操作は非常にシンプル。ボタンの組み合わせだけで、通常技のコンビネーションはもちろん、必殺技を絡めた連続技も可能。格闘ゲームというと「コマンド入力」がハードルになることもあるが、本作の場合はアクションゲームのような感覚で遊び始めることができる。対戦モードは、気の向くままにボタンを押すだけでも、派手な技が飛び交う激しいバトルとなる。さらにここから「勝ち負け」にこだわってプレイしていくと、ゲームを支える奥深いバトルシステムが顔を出し、勝つと嬉しい、負けると悔しい、でもどちらにしろもう一回対戦したくなるという最高のプレイフィールを生み出してくれる。

△必殺技もシンプルなコマンドで繰り出せます。性能の解説が書かれているのも嬉しいところ。

バトルの肝となるのは、”速こうげき”と”強こうげき”の2つの攻撃に、回避手段である”ステップ”が絡んだ駆け引き。速こうげきは攻撃モーションがコンパクトな技が多く、攻撃発生が早くある程度相手の方向をサーチしてくれるという性質を持つ。強こうげきは、サーチ能力は低いものの、速こうげきを受け止めながら攻撃できる。つまり、横移動やステップで動き回る相手には速こうげきで捉える、速こうげきを読んだら強こうげで迎え撃つ、強攻撃を読んだらステップや回避でいなして隙に速攻撃を狙う、という3つのセオリーが本作の立ち回りの軸になる。攻撃がヒットすると大ダメージを与えられる連続技へとかんたんにつながるため、試合中はバチバチとした読み合いが発生する。弱攻撃を読んだ強攻撃がヒットしたとき、強攻撃を読んだ回避からのカウンターが決まったときのしてやったり感にはたまらないものがある。

△ガブリゲーター(左)の速こうげきを、強こうげきで受け止めつつ反撃するワイルドライガー(右)。画面上に”もちこたえた!”とアナウンスが出るため、何が起こっているかわかりやすい。

△強こうげきは、速こうげきとかち合うと勝つが、ステップなどで回避されると反撃を受けてしまうことも。

速こうげき、強こうげきを両方防げる”ガード”については、耐久値が存在するため、ガードしてばかりだとガードクラッシュが発生し、無防備な状態となってしまう。共通システムとして”ガード破壊攻撃”という、ガード耐久値を大きく削る攻撃も存在するので、攻めている側にアドバンテージが生まれやすいのもこのゲームのわかりやすさに繋がっている。「チャンスを見つけたら、一気に攻める」というシンプルな戦術が強いため、バトルのテンポは非常にスピーディだ。

△ガードは、速こうげきも強こうげきも防ぐことができる。

通常技の駆け引きのスパイス的な存在として、各ゾイドの特徴を活かした必殺技「ワイルドアクション」が3種類用意されている。ワイルドアクションの性能はどれも高めで、ガードされても反撃を受けない高速の突進技だったり、無敵時間のある切り返し技だったり、追い込まれた状況から一気に脱出できるワープだったり、出しているだけで強い技の目白押し。格闘ゲーム好きはもちろん、このジャンルを初めて遊ぶ人も、ワクワクするような技は繰り出しているだけでも楽しい。ワイルドアクションを使うためには、画面下部に表示されたゲージが満タンである必要があるが、このゲージは空っぽになると自動回復する。連発するには強すぎる技を、ゲージというコストで絶妙な塩梅で制限しているのは見事だ。ゲージが溜まるまでの時間は比較的早く、試合中は必殺技が飛び交うことになるのだが、実際にコントローラーを握ってみると、このゲージが溜まる時間が長く感じるほど熱くなってしまう。

△本作の技の多くは、ガードでは反撃しにくいものがほとんど。

△飛び道具系の技は、相手の出鼻をくじくのに役立つ。相手にした場合は、ガードでワイルドゲージを消費させてから近くのがセオリー。

ワイルドブラストとデスブラスト


ゾイドの切り札とも言えるシステムとして、”ワイルドブラスト”と”デスブラスト”が用意されている。ゾイドによってどちらが使えるかは異なるが、このシステムを発動すると、一部の技の性能や威力が変化するパワーアップ状態に突入する。発動は、攻撃を仕掛けている途中や、相手の攻撃を受けている際でも可能で、攻めに使う場合は強攻撃などからキャンセル発動するのがセオリー。相手の攻撃を受けている場合は、緊急回避的に使うことが多くなる。試合の流れを大きく変えられるシステムなので、戦術はもちろん、どのゾイドを使うかによってもいろいろと悩みがいがある。

△ワイルドブラストは、試合中にマジレナリンゲージがMAXになると使用可能で、発動するとマジレナリンゲージは失われるが、再度最大まで貯めると同じラウンドに複数回発動できるのが強み。

デスブラストは、1ラウンドに1回好きなタイミングで発動できるものの、パワーアップ効果中は体力が減少していくというペナルティもある。

△ワイルドブラスト、デスブラストを絡めた連続技は、非常にダメージが大きい。

『ゾイドワイルド キングオブブラスト』こそ
今必要なゲームなのかもしれない


『ゾイドワイルド キングオブブラスト』はとにかく丁寧に作られていて、子供向けゲームとは思えない作り込みが随所に見られる。説明はわかりやすく簡素に、読みにくい文字にはしっかりと読み方が書かれており、操作方法をあまり覚えなくても、好きな攻撃を押しているだけでも楽しいのだ。ありふれたフレーズで言うなれば「シンプルながらに奥深い」。このフレーズがこれほど似合うゲームはなかなかないはず。対戦格闘ゲームというと、子供向けのゲームとしては難しいものがほとんどだが、本作は対戦の面白さを知るきっかけとして非常に優れたゲームである。どうして負けたのか、この強い技をどうするのか、もっとダメージを与えるためにはどうすればいいのか、そういった上達のための糸口が非常に身近なところに用意されていて、僕らのような大人ですら熱くなってしまう。事実、4月の上旬に行った”お花見”では大人のゲーマーたちが、本作の対戦に夢中だった。当日初プレイの人の興味も引き、すぐにかけひきを理解して楽しんでいる人も多かったのが印象的だった。

△ゾイドごとの動きの個性付けもしっかりしている。操作はほぼ共通なので、気分転換にキャラクターを変えて遊びやすいのも嬉しい。

格闘ゲーマーとしては、オンライン対戦機能がないため、気軽に対戦という部分では敷居が高いかもしれないが、その分オフライン対戦モードのレスポンスの良さは素晴らしいものがある。特に対戦後の再戦機能のレスポンスは爆速で、一線級の格闘ゲームと比べても遜色ない。オンライン対戦がないことで、必然的にプレイヤー同士、顔を突き合わせてプレイすることになるが、この顔を突き合わせての対戦というのはたまらなく楽しい。オンラインモードがない理由については想像することしかできないが、このゲームのプレイ層を考えるとこれでも良いのかもしれないとすら思ってしまう。実際、筆者の友人の子供たちは、友達を家に招いたりして、楽しく本作を遊んでいる。それに、ニンテンドーSwitchの特性を活かして、ハードとゲームを持ち運べばどこだって対戦がスタートする。我々も、今年の花見で本作を対戦したが、初プレイの人も、とても楽しそうに本作を遊んでいたのが印象的だった。

次ページでは、タカラトミーさんへのメールインタビューを掲載!

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浅葉 たいが

浅葉 たいが

ゴジライン代表。ゲーム、アニメグッズのコレクター。格闘ゲーム、アドベンチャーゲーム、RPGをこよなく愛する。年間100本以上のゲームを自腹で買い、遊ぶ社壊人。ゲームメディア等で記事を書くこともあるが、その正体はインテリアデザイナー、家具屋。バンダイナムコエンターテインメント信者かつ、トライエース至上主義者。スマートフォン版『ストリートファイター4』日本チャンプという胡散臭い経歴を持つ。
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