【インタビュー】安田善巳プロデューサーが語る『ロリポップチェーンソー RePoP』の歩みとこれから

2024年の秋に発売された『ロリポップチェーンソー RePoP』が快進撃を続けている。

オリジナル版で120万本を売り上げた『ロリポップチェーンソー』を丁寧にリメイクした本作は、各プラットフォームでのユーザーレビューは好評、売れ行きも絶好調で、今後は更なるアップデートも予定されている。2月にはゲーム内のアクションパートを、さまざまな角度から撮影できる「フォトモード」が追加される。また、4月頃には、新たなゲームモードも披露されるというのだ。

「『ロリポップチェーンソー 』をリメイクする」という発表があった時、期待半分、不安半分といった方もいたのではないだろうか。というのも、オリジナル版『ロリポップチェーンソー』は唯一無二の世界観を持つ作品である。チアガールの衣装を纏った主人公・ジュリエットが、立ちはだかるゾンビをチェーンソーでバラバラにして突き進んでいくという作風は、セクシー&キュートな表現としても、ゴア表現としても尖っており、当時にしてコンシューマーゲームにおけるギリギリの表現かに思われた。リメイク版が発売される2024年ともなると時代も変わり、「リメイク版では、今の時代に応じたセンサーシップにより表現面がマイルドになるのでは」という事態が予想された。そして、過激な要素がなりを潜めた『ロリポップチェーンソー』であるならば、リメイクする意味はあるのだろうかと考えた方もいるだろう。

発売された『ロリポップチェーンソー RePoP』はそんな懸念を吹き飛ばす痛快な作品となっていた。オリジナル版の魅力的な表現はそのままに、映像としてはより美しく繊細にリメイクされている。そのうえ、より遊びやすくチューニングされるなど、丁寧な配慮も見てとれる。完全にそのままというわけではなく、版権的に難しい音楽や衣装については、新しいものと「入れ替わる」形のリメイクとなっているが、この違いも「やっつけ」ではなく「新しさ」に感じる。

タイトル:ロリポップチェーンソー RePOP


ジャンル:アクション

プラットフォーム:PlayStation4、PlayStation5、Xbox One、Xbox Series X/S、Nintendo Switch、Steam、DL site

発売日:発売中

メーカー:ドラガミゲームス

公式サイト:https://repop.lollipopchainsaw.com/jp/

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『ロリポップチェーンソー RePoP』の発表時から、プロデューサーの安田善巳氏は積極的に発信してきた。オリジナル版に関わったグラスホッパー・マニファクチュアや、ジェームズ・ガン氏が関与していないことなど、オリジナル版のプレイヤーにとっては不安になる要素ですら正直に開示し、時にはそれらがファンの議論を呼んだ。しかし、本作を遊べば、『ロリポップチェーンソー RePoP』は、『ロリポップチェーンソー』を深く理解し、愛する開発者たちによってリメイクされたことがよくわかる。

本記事では、『ロリポップチェーンソー』および『ロリポップチェーンソー RePoP』のキーマンである「安田善巳」氏にお話を伺った。

安田善巳 氏:ドラガミゲームスの代表取締役社長。オリジナル版『ロリポップチェーンソー』ではディレクター、『ロリポップチェーンソー RePoP』のプロデューサーを務める。代表作に『√Letter ルートレター』、『GOD WARS 日本神話大戦』など。

オリジナル版『ロリポップチェーンソー』は「大勝負」だった

――まず、『ロリポップチェーンソー RePoP』発売後の反響についてお聞かせください。

安田おかげさまで好評をいただいています。Steamはプレイユーザーの86%がポジティブとの評価ですし、コンソールも、PS5では5点満点でユーザー評価が4.5点と高い評価を頂戴しています。一方、販売の方も、我々の想定を大きく上回っており、本年1月上旬に世界累計販売本数が20万本を突破しました。また、現在、SteamやPS5のウィッシュリストには、およそ53万人のゲームユーザーが登録してくださっており、このウィッシュリストの登録人数は、発売当初よりも増えています。

――遊ばせていただきましたが、大変丁寧かつ、新しい味のあるリメイクでした。作り手の愛情のようなものが漂っているような感じがしました。安田さんにとって、『ロリポップチェーンソー』はどのようなタイトルなのでしょうか?

安田『ロリポップチェーンソー』は、ワーナーブラザーズさんと組むことで、成功を手に入れましたが、そのプロセスは決して順風満帆ではありませんでした。いくつもの試練を乗り越え、なんとかゴールに辿りついたのですが、その達成感は強烈なものでした。私の人生においても三本の指に入る大勝負でしたね。

――大勝負というのは、具体的にどのような状態だったのでしょうか。

安田:まず、最初に、私が制作した企画でワーナーさんと合意したのですが、ワーナーさんからの開発契約は、開発責任者が私となり、納期や品質を遵守しなければ開発費は全額角川ゲームスが負担するという厳しい内容でした。また、開発体制は、角川ゲームスとグラスホッパー・マニファクチュアさんとの共同開発でしたが、若手スタッフが中心であり、1年後に早くも壁にぶち当たり、開発期間の延長が不可避となりました。私は、ワーナーさんの協力を仰ぎながら、開発現場に入り、棚上げになっていた未決定の仕様を迅速に決定し、不必要に長いステージをばっさり削るなどの荒療治をして、なんとか計画より1年遅れでマスターに漕ぎつけました。

――胃が痛くなるようなお話ですね。『ロリポップチェーンソー』の開発において、安田さんはディレクターでありつつ、作品を世に出すための交渉ごとにも参加していたのですね。

安田:当時は、開発リーダーらしく振舞おうと、表面的には淡々と行動していましたが、内心では、本当にこの判断で良いのかもがき苦しみ、どんどん眠れなくなっていきました。しかし、苦労ばかりでもなく、素晴らしい経験をさせていただきました。たとえば、創業間もない角川ゲームスが最大で10億円の開発リスクをとることを決断してくださった角川ゲームス取締役の皆さまのチャレンジ精神や、私のオーダーを実現しようと命を削って開発してくれた角川ゲームスやグラスホッパー・マニファクチュアさんの開発スタッフの集中力には、感激するとともに心から感謝をしました。

――結果、作品として高い評価を得ていますよね。自分もオリジナル版を遊ばせてもらいましたが、尖った内容のファンになりました。

安田:血の滲むような踏ん張りが実を結び、ワーナーさんは全世界の販売網を駆使して60万本のオーダーを獲得してくださり、日本とアジアを入れて初回出荷が75万本という好調な販売がスタートを切ったのです。私は、『ロリポップチェーンソー』という言葉を聞くと、開発で苦労した4年間のことが思い出され、今でも胸が熱くなります。

『ロリポップチェーンソー RePoP』にこめたこだわり

――そんなタイトルだからこそ、RePopが凄みのあるタイトルになっているのかもしれませんね。単なるリマスターではなく、リメイクとして生まれ変わった部分も多く見られますが、「リマスターとしてそのままの移植」という選択肢をとらなかったのはなぜでしょうか。アクション部分では大胆なアレンジも行われていて、プレイして「懐かしくも新しく、そして面白いもの」と感じましたが、濃いファンの多い作品だけに「変更を加えることに対する恐怖」のようなものはありませんでしたか?

安田RePOPについては、開発途中でオリジナル版を忠実に再現する戦略に転換しました。これは、まず、忠実な移植版を発売し、発売後にリメイク要素をアップデートで追加する開発方法に変更するという決断でした。この決断に至るプロセスで、もっとも大きな判断根拠となったのが、ユーザーからの「まずは前作を忠実に復活させて欲しい」との強い要望でした。我々は、タイトル発表後からメッセージを送り続けてくれたファンの皆様の想いに寄り添うことが最優先事項であると確信しました。

一方で、開発者の使命として、現代のアクションゲームに復活させる以上、技術革新の成果を取り入れたり、オリジナル版で修正して欲しいとの指摘を受けたもっさり感の解消や難易度の調整不十分なミニゲームの修正などに積極的に取り組みました。技術革新の成果ですが、たとえば、オリジナル版では、当時の技術では対応できず、特殊処理をして解決したのがジュリエットのイベントシーンでした。当時は、美顔ライトというライト技術を使ってジュリエットのイベントシーンを作りましたが、今回のRePOPでは、自然体のジュリエットの美しさを表現できるようになりました。こうした技術の進化をRePOPに取り込むことは、ごく自然なことですし、前作を開発した我々が説明すれば理解してもらえると考えていました。

△RePop版はアクション面のテンポが改良され、難度もややマイルドになったことで、非常に遊びやすくなっている。

――最も驚いたのは、オリジナル版、もっというなら『ロリポップチェーンソー』の大きな特徴である、ゴア表現やセクシーな表現などはそのまま収録されているように見えます。ゲームファンの感覚としては、オリジナル版発売時よりも、「さまざまな表現が規制されているのでは」と感じることも増えました。そんな中、なぜこの作品はオリジナル版の映像表現をベースとした形でリリースできたのでしょうか。リメイク・リマスターを行うと考えた際、こうした部分は懸念点にはならなかったのでしょうか?

安田センサーシップによる仕様を変更しないという要素こそ、ロリポップユーザーが我々開発チームに託した最大の要望であったと理解しています。RePOPのタイトル発表時には、SNSに公式ウェブサイトやメールに来たものを含めると、5千件ものメッセージを頂戴しました。その大半がLOLLIPOP CHAINSAW(以下LOLLIPOPと言う)の復活を歓迎する内容でしたが、その中には、「忠実な再現」を求めるユーザーも沢山いました。

――5000件、すごいですね。私も「忠実な再現」で遊びたいと願っていたプレイヤーの一人です。過激であれば良いということでもなく、リメイクやリマスターはオリジナルに忠実であるべきと思っているわけではないのですが、この作品に関しては、表現がマイルドになると、別物になってしまうような気がします。キャラクターと世界観のバランスが肝だと思いますから。

安田:まず最初に、版権曲の再現は難しいことをユーザーに伝えました。その後、私のX(旧Twitter)は、「無修正でなければ買わない」と主張するユーザーと「無修正のLOLLIPOPの復活なんか絶対無理」と反論するユーザーが意見をぶつけ合うコミュニティとなりました。運営者である私は、「出来るものならやってみろ」という期待と「裏切ったら許さないぞ」という強烈なプレッシャーを受ける立場に変わったのです。本件について言えば、前作を忠実に再現して欲しいというユーザーと、無修正でロリポップの復活を疑うユーザーの要望は同じであり、しかも、我々、開発スタッフも同じ考えでした。そうであれば、あれこれ悩んでもしようがないので、堂々と正面突破をするスタンスで腹を括り、レーティング機構やプラットフォーマーへの申請を行ないましたが、意外なことに、彼らからは何のクレームも修正指示もありませんでした。今、私に言えることは、ロリポップユーザーの期待に応えられて本当によかったということだけです。

▲「無修正で復活させる」ことはオリジナル版ファンからの強い要望であったという。

――リメイクすること自体が大変なことだったのではと想像します。映像以外の部分では、一部の版権衣装や音楽が変更されています。とはいえ、遊んでみるとそれを埋めるに十分な新要素や楽曲などが入っています。こうした新要素は、どのように決定していったのでしょうか。

安田:楽曲については、信頼している作曲家に楽曲をお願いしました。まず、作曲家の福廣秀一朗さんには、オープニングテーマ曲やエンディングテーマ曲を依頼しました。二人で話し合ったのは、オリジナル版の楽曲は、パンク、ロック、ファンク、サイケという4つのジャンルで構成されていたので、RePOPでは、アクセントをつけるためオープニング曲にラップを持ってこようということでした。福廣さんは、現在、映画やドラマの主題歌制作などを中心に活躍されていますが、ロリポップはけっこう気に入っていただいて、楽曲制作を楽しんでいました。
また、オープニングテーマ曲やエンディングテーマ曲を歌っていただいたmaimieさんは『グランブルーファンタジー』をはじめ数々の人気ゲームやアニメの主題歌を歌っている実力派のボーカリストです。

ボス戦曲ですが、セガのAM2研時代にアーケード版『バーチャファイター』や『バーチャファイター2』のBGMをてがけた中村隆之さんに依頼をしました。中村さんには、オリジナル版のテイストを取り入れながらスピード感溢れるBGMを制作していただきました。

△新しくなった部分にも作り込みやこだわりを感じられるのも本作の評価が高い理由のひとつだろう。結果として、オリジナル版にはオリジナル版の魅力が、リメイク版にはリメイク版の魅力がしっかりと備わっている。

――発売後、ユーザーからの意見を広く聞きながら、積極的にアップデートされているのが印象的です。また、今後も新要素がアップデートで増えると発表されていましたが、これらの新要素は開発中から検討していたものなのでしょうか。

安田:この春に実装しようとしているリメイクモードは、開発当初に企画していたものとは異なりますが、「ジュリエットが最強のゾンビと繰り広げるハイスピードバトル」というコンセプトは変わっていません。このリメイクモードを、我々は「Nightmare Mode」と呼んでいます。4月頃にはお見せできると思いますので、楽しみに待っていてください。すこしだけ頭出しをしますと、同級生を全員救出しハッピーエンドを獲得すると、ジュリエットの潜在能力を覚醒させるいくつかの強化アイテムを手に入れられる「Nightmare Mode」が開放されるという仕組みです。しかし、「Nightmare Mode」には、これまでのオリジナルモードやリポップモード、タイムアタックでは出会うことのなかった凶悪なネームドゾンビがジュリエットを待ち受けています。もし、まだハッピーエンドを見ていないユーザーの皆さまには、ゾンビをジュリエットに引き寄せる特殊な力を持つエクストリームチェーンソーの活用をお薦めします。果たして、ジュリエットは、最強になったゾンビを倒して潜在能力を覚醒させる強化アイテムをすべて手に入れることができるのか。「Nightmare Mode」の実装を楽しみにお待ちください。

△『ロリポップチェーンソーRePop』はまだまだ進化していく。フォトモードの実装は2月予定とのことなので、既にプレイしたという方も、アップデートを再度適用してみるといいだろう。

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