この人……メルブラが好きすぎる。
EVO2022の『メルブラ』(『MELTY BLOOD: TYPE LUMINA』)部門で優勝という偉業を成し遂げた「ジン」選手にインタビューを行った。
優勝
I am the MBTL champion for evo2022!!!
— Aporia | ジン (@Jing_K5) August 7, 2022
我々ゴジラインとも付き合いが長いジン選手、いや「ジンさん」は、2D格闘ゲームがとにかく好きである。熱心に取り組んだタイトルでは好成績を残してきている。
中でも『メルブラ』は大好きなゲームで、いつか『メルブラ』がEVOの種目として選ばれたら、選手として参加してみたいと考えていたそう。
そしてその願いは叶い、『メルブラ』がEVO2022のメインタイトルに選出され、そこでしっかり優勝してきてしまうやりこみと度胸を見せつけた。ちなみにジンさんは、サイドトーナメントの『電撃文庫 FIGHTING CLIMAX IGNITION』、『アクアパッツア』、『ミリオンアーサーアルカナブラッド』も優勝。すごすぎる。
ジンさんのEVO結果
電撃、パッツァ、アルブラ、メルブラ、4冠王
出場タイトル全部優勝ヤバすぎ pic.twitter.com/QtYw7Wz5yB— GZL|コイチ (@koichinko) August 7, 2022
今回はそんなジンさんに、「メルブラ」について聞いてみた。
EVOで得たこと
――遅くなりましたが、EVO優勝おめでとうございます。海外のプレイヤーと対戦した感想を聞かせていただけますか?
ジン:ありがとうございます。向こうに行く前に、海外のプレイヤーや情勢を少し調べていきましたが、海外のやりこみや強さは想像以上でした。大会は嬉しい結果で終えられたものの、大会前に対戦したときには、負けることもありました。
――EVO本戦でも、蓋を開けてみると海外のプレイヤーが大活躍していましたよね。最初は会場の空気に日本のプレイヤーが吞まれているのかなと思っていたのですが、後半の試合では、どうもそういうわけではなく、実力が拮抗しているのではと感じていました。
ジン:そうですね。海外の強豪プレイヤーは攻めに特化した戦い方をしてくるなという印象です。渡航前にその雰囲気は掴んだうえで、「いつも通りに丁寧にやれば大丈夫だろう」と思っていたのですが、対戦してみると思った以上の怖さがありましたね。日本で主流のプレイスタイルとは明らかに違うのに、しっかり強かったですね。
印象的だったのは、ムーンドライブという要素の使いどころです。ムーンドライブは、このゲームで攻守にどちらでも使えるシステムなので、海外の方はこれをとにかく攻めにまわしてきます。対して、日本のプレイヤーは守りの場面で使ったり、攻めに使う際も「保険」的な使いかたをするんですね。
――対戦してはじめてわかる強さがあったんですね。
ジン:キャラクターによっては海外の攻撃的なスタイルも正解なのかもと感じるほどでした。海外では、ヴローヴというキャラクターの評価が高いのですが、実際に対戦してその理由が分かりましたね。このキャラクターは、強力な飛び道具を持つキャラクターで、弱点としては守りが弱いという部分をよく挙げられます。なので日本では強みはあっても安定感はないキャラクターという評価をされることが多かったのですが、向こうの「やられる前にやる」スタイルとはかなりかみ合っていました。
――確かに試合を見ていると、とにかく積極的にムーンドライブを発動していましたね。
ジン:ムーンドライブをどんどん発動して、ゲージを稼いで、強い行動の頻度を増やしていくんです。ムーンドライブが守りに回せないので防御時のリスクが増えるものの、その分攻めがかなり強力になるという形でした。
こう言うと荒らしみたいに聞こえるかもしれませんけど、安定して勝てているように見えました。キャラクターの強みを出せる状況を維持することにこだわるというスタイルなんでしょうね。
メルブラの魅力を深堀り
――日本と海外で大きく戦い方が異なるのに、どちらにも「強さ」や「良さ」があるというのは面白いですね。
ジン:メルブラの自由度の高さがよく現れているのが昨年のEVOだったのかなと思います。メルブラはダッシュやジャンプが軽快ですし、システムも多彩でできることが多いんです。なので、そういう要素の組み合わせで作れる戦術も豊富なんですね。
そういう私も、海外に行くまでは「今回はこういうセオリーになりそうだ」と思っていたりした部分があったので、向こうのプレイヤーが新しい可能性を見せてくれたのは楽しかったです。日本でも、刺激を受けたという人も多いと思います。
――今回のメルブラは、新しいプレイヤーも多く参入しているように見えますね。
ジン:大会などで結果を残しているプレイヤーを見てみると、今作からメルブラを始めたという人も見かけますね。今作は意外と旧作のセオリーが通用しないんですよ。過去作と同じ名前のシステムでも、その性質は随分違ったりします。
たとえば、シールドは、今までの作品の中でもかなり強力な防御システムに変わっています。一応、最初のバージョンから弱体化した要素ではあるのですが、試合を動かす重要な要素だと思っています。
――新規しやすいタイトルであると?
ジン:コンボの難度などだけを見るともっと簡単なゲームはたくさんありますが、2D格闘ゲームの中では遊びやすい方かなと思います。自由度は高いものの、軸になる戦術は意外とシンプルだったりするんです。キャラクターの強みやシステムを活かしてコンボのチャンスを作る、コンボを決めたら起き攻めを仕掛けて、またコンボを狙うというような形が基本になる場合が多いですね。
――なるほど。確かに私も今作を遊んだときに、馴染むまでは意外と早かったですね。プレイするまでは、過去作のテクニックやセオリーを一通り知って、こなせないと全く勝てないのかなと思っていましたが、意外となんとなかりそうだなと変な自信を持ったり(笑)
ジン:今回も、昔ながらのテクニックが活きる部分はあります。でも、それができないと勝てないみたいなゲームではないですね。メルブラのセオリーで有名な「遅立ち」は、テクニックとして有名ですし、できると強い場面も確かにあります。
――遅立ちは『メルブラ』ではよく聞きますね。
ジン:一応、他のゲームでも使える場面はあるんですけど、『メルブラ』の印象は強いですね。簡単に説明すると、ジャンプ攻撃をしゃがみで回避しつつ、ジャンプ攻撃がしゃがみに当たりそうなタイミングで素早く立ちに切り替えて、そのあと素早くAなどの攻撃ボタンを押すという流れの行動です。これをやることで、打点の高い攻撃はしゃがみでかわしつつ、その後に繰り出した立ちAで着地をとれる。低めのジャンプ攻撃は、立ちガードが発動して防げるという形になります。
――これ、説明されると簡単ですが、実際にやると、ジャンプ攻撃によって微妙にタイミングを変えたりする必要があって、かなり難しいですよね(笑)
ジン:そうですね。でも、遅立ちができないと勝てないというわけではないです。私もそれほど得意ではないですね(笑)現状の攻略だと遅立ちができるようになったからといって劇的に勝率があがるわけでもないのかなと思います。
でも、こういう細かいところを詰めていくと、少し強くなっていくのも確かです。実際こういう細かい部分が試合で活きたときは楽しいんですよね。細かすぎるやりこみポイントは、ほかの格闘ゲームをやっているプレイヤーに気づかれなかったりするんですけど(笑)メルブラプレイヤー同士だけでわかる、「今のうまいね」みたいなシーンも多いですね。
メルブラの魅力を深堀り
――EVO JAPANの見どころについて聞かせてください。
ジン:EVOには出場していなかった国内の強豪プレイヤーがたくさん出るというのはわかりやすい見どころですね。あとは、EVOにいったプレイヤーが体験した海外プレイヤーの活躍にも期待したいですね。ロアや軋間を使うScraw Vermillion選手、マーリオゥを使うKR_Wrestligman選手などは、大会でも注目してもらいたいですね。
――海外のプレイヤーが強いというのは楽しみですね。
ジン:メルブラもそうですが、最近は海外勢が本当に強いですね。ロールバックネットコードに対応しているからか、今まで『メルブラ』の対戦環境が作りにくかったプレイヤーが、どんどん試合数を重ねて強くなっています。
――EVOにジンさんたち日本勢が参戦したことで、海外のプレイヤーも影響を受けた部分などが見られるかもしれませんね。
ジン:それもありそうですね。EVOの時点で日本勢は「ガードキャンセル解放」の封じ方などを調べて実践しているプレイヤーが多かったので、そういった部分を取り入れてくるかもしれませんね。気軽に解放を発動されてしまうと、体力の回復要素などもあって逆転を許しやすくなりますから、ここは本作で勝ちにいくうえで詰めて損のないポイントだと思います。
『MELTY BLOOD: TYPE LUMINA』
ジンの考えるキャラランク(2023.3.20時点)
――現在のキャラクター情勢、ぶっちゃけジンさんの思うキャラランクを教えてください。
ジン:そろそろ公開しようと思っていたので、作ってきました(笑)打ち合わせの時に、キャラランクも入れたいなみたいな話をしていたので。
――おお、ありがとうございます(笑)
ジン:現在のバージョンだと、強いと思うのではロアと青子ですね。ロアは今回のバージョンではコンボダメージが安定して高めだったり、シールドの仕様変更によって攻めか継続しやすくなったりした部分で評価が高いです。青子は設置技が強力だったり、ダメージを取れる状況が豊富なのが強みです。コンボを決めて勝ちパターンに持ち込むというのをやらせにくキャラクターでもありますし、やりやすいキャラクターでもありますね。
――シールド周りは細かく調整されているのを感じますね。
ジン:初期のバージョンでは、しゃがみシールドで立ち攻撃を取れたのですが、最新のバージョンでは立ち攻撃にしゃがみシールドを貼っても、シールドが成功しないんです。この仕様になったことで、前進しつつ攻撃できるC攻撃を持っているキャラクターは、より多彩な攻めができるようになりました。
――Aランクには、ノエルと武装シエルを置いているのですね。
ジン:ノエルは画面端での強力な起き攻めが見つかって、決定力のあるキャラクターになりましたね。立ち回りは元々強めなところに、無敵技が追加されたのも追い風です。武装シエルもシールドの仕様変更によって、相対的に強くなったのかなと思います。Aランクに置いている軋間はEVO Japanで試合が映ったら是非見てほしいですね。機動力がなくて苦しそうに見えるキャラクターですが、相手の攻撃を受け止める「アーマー」を活かした立ち回りはパワフルです。海外勢にも強い使い手がいるキャラクターですね。
――Bランクについてはいかがでしょう。
ジン:マーリオゥも起き攻めが強力なキャラクターですね。ノエルと同じく、端付近だとさらに強力な起き攻めを仕掛けられます。前バージョンから若干強化されたことで、かなり強いキャラクターになりました。秋葉は固めや起き攻めが強力なキャラクターですが、現バージョンでは「体力が高め」という点も強みです。志貴はこのゲームではスタンダードキャラクターの部類ですが、ハイスペックな突進技と地上技を持っています。普通の格闘ゲームなら、この技許されないのでは……みたいな技を持っている気がするのですが、ランクにしてみると最強ではないというも『メルブラ』の楽しいところかなと。
――EVOで注目されたヴローヴはCに置いているんですね。
ジン:ヴローヴは海外のスタイルは印象的でしたが、現状ここかなと思いますね。守りが弱いという部分はやっぱり厳しいものがあります。ただ、CランクのキャラクターがAランクに勝てないかというとそんなことはないと思っています。D以下においたキャラクターたちはちょっと弱めかなと思いますが、こういうキャラクターたちも伸びしろはあります。ネコアルクはネタキャラっぽい枠ですが、このキャラクターを使っていて、油断ならない強さの人もいますから。大会では、そういう部分も見てもらいたいですね。
――新キャラのマシュ、牛若丸、巌窟王は現環境だとちょっと弱めなんですね。
ジン:そうですね、個人的にはマシュがもう少し強ければ良かったかなと思ったりもします。人気キャラクターだと思うので(笑)でも、マシュの弱いところが気になるレベルというのは、『メルブラ』への理解が進んできている段階だと思うので、気になれば新しいキャラクターを試してもいいと思いますね。もちろん、マシュで続けるというのも楽しいと思います。それに、このキャラランクは、わたしの主観強めなうえに、あくまで今のバージョン、今の環境の話です。バージョンアップで今後強くなる可能性もありますし、何かすごい発見があれば評価が変わるということもあるかもしれません。
――キャラランクの話は面白いですね。ゴジラインでは格闘ゲーム経験者を集めて『メルブラ』をやっていた時期があるのですが、自分を含めてあまり『メルブラ』に触れてこなかった人は、どのキャラも強く感じていたんですよ。たとえば僕は初期の秋葉を使って「強いなー」と思っていたし、セイバーやノエルを使って「強い」といっている人もいて。
ジン:そんな時期もありましたね(笑)
――その後やりこみ勢のキャラランクを追いかけてたら、「どうも俺らのキャラ強くはないっぽいな……」と気づいたり(笑)『メルブラ」初心者とはいえ、結構格闘ゲームをやっていると、意外とキャラの強弱ってわかったりするじゃないですか。それなのに、みんな自分のキャラを強いと思っていたんですよ。そういうのが、メルブラの自由度が作っている面白さなんでしょうね。
ジン:どのキャラクターも、「ここは強い」という要素はありますからね。遊びやすいゲームだと思うので、EVO Japanを見て、気になった方がいたら気軽にプレイしてみてほしいですね。キャラランクを見てキャラクターを選ぶというのも一つの遊び方ですが、動かしていて楽しかったり、好きなキャラクターを使っても意外となんとかなります。(了)
goziline
様々なジャンルのゲームを大人気なく遊びます。
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