ダンジョンRPGにうるさい男・浅葉です。
角川ゲームスから発売された『The Lost Child』。こいつがなかなかハードコアなダンジョンRPGで、とても気に入っています。おれの大好きなやりこみ系のダンジョンRPGであり、序盤からいろいろなやりこみを規制せず、遊び方によってはバトルバランスをぶっ壊せる懐の深さ。しかも、かっておれを熱くさせたGB版『ウィザードリィ外伝』的対戦要素っぽいものまであるということで、沼です。
ちなみに本作には「神と悪魔と人間の物語であり、敵を仲間にして戦うというゲームシステム、主人公が使う銃」といった要素が出てきます。ちょっとしたゲームファンなら、これもう『真・女神転生』じゃないかという要素の集合体ですが、某メディアに金子一馬さんと本作の開発陣との対談が掲載されていたので、「似ているのでは」という問題点については、「大丈夫だ、問題ない」という力強いアンサーが放たれたと信じましょう。
今回の記事では、『The Lost Child』の怪しく、尖った魅力についてご紹介いたします。
発売日:2017年8月24日
プラットフォーム:プレイステーション4、プレイステーションVita
ジャンル:神話構想RPG
価格:パッケージ版:6,800円+税、ダウンロード版5,800円+税
デジタル限定版:7,300円
(デジタル限定版には、パッケージ版の初回特典である “神話構想”DLC 「ダーク・イーノック イーノック悪魔Ver.」「ネフィリム サリーボーイVer. 」に加え、ゲーム内楽曲や「エルシャダイ」の楽曲を加えた計23曲、大ボリュームの「デジタルプレミアムサウンド」が特典として付随。)
発売元:角川ゲームス
ダンジョン内のギミック
『The Lost Child』のダンジョンには独特のギミックが盛り込まれているところが多く、先に進むためにはちょっとした閃きが必要になります。ギミックが多いと聞くと身構える人もいるかもしれませんが、ひとつひとつのギミックはそれほど難しくなく、何度かトライ&エラーをしていると仕組みが明らかになってくるものがほとんどなので、攻略中に何度も達成感を味わえるのが嬉しいところ。自分はあまり、ギミックが過多な作品は好まないのですが、本作のギミックは久々に解く楽しみを感じることができました。
また、最近のダンジョンRPGでありがちな「ここは先に進めない、一度帰ってみよう」的なやりとりもほとんどありません。ダンジョンに一度入ればそのまま最後まで攻略できてしまうものがほとんどなので、プレイ中のストレスは低めです。ダンジョンマップは広めですが、アイテムなどを駆使すればサクサクと埋めることができるので、空いているマスがあるといてもたってもいられないというプレイヤーにも優しいです。(マップの全踏破はトロフィーとして存在しています。)
アストラルの育成
神様や悪魔が出てきて、敵を仲間にできるというと『真・女神転生』的ですが、本作はこの過程が非常にスムーズです。手順としては、出てきた敵(作中ではアストラル)を、ガンゴールという銃のようなものを使って撃破する事で、「捕縛」状態にする事ができます。捕縛したアストラルは、タブレットの中に封印され、一定量の「カルマ」(戦闘などで得られるポイント)を使う事で、仲間として使役することが可能になります。普通に育成しつつ本編を進めていれば、この流れを失敗することがほとんどないため、どんどんアストラルを仲間にすることができるのです。
アストラルは、様々なスキルを使用できるため、戦闘では大きな戦力になってくれます。また、アストラルはレベル上限に達すると、「SIN化」というシステムで、次の形態へと移行できるようになります。SIN化すると、外見が変化するうえ、新しいスキルを取得したり、レベル上限も上昇します。アストラルの間に強弱はありますが、スキルを戦闘中に閃いたり、スキルを譲渡したり、「転生」という強化をリセットして初期ステータスを強化する要素などもあるので、育成の幅は広め。気に入ったアストラルを極限まで鍛えるというのも、本作のやり込み要素の一つです。
装備を求めてダンジョンを潜る
ダンジョンRPGの醍醐味である、敵や宝箱から強力なアイテムを入手する「ハック&スラッシュ」的な要素もバッチリ押さえています。本作の主人公、ヒロインは、レベルアップによって成長していきますが、それ以上に「装備品」によって大きく強さが変化します。同じ名前の武器であっても、ランダムで付与される能力は変化しますから、複数回攻撃を繰り出せる武器や、状態異常を付与する武器、HPやMPを大きく上昇させる防具、状態異常耐性を付与するアクセサリーなど、上を見ていけばキリがありません。こうした強力な装備は、敵を倒した後に出現する宝箱から入手できるのですが、中盤以降から強力なアイテムがゴロゴロ登場してくれます。
本作には、全100階層から成るダンジョン「ルルイエロード」と、オンラインを介した「擬似対戦モード」が用意されています。この2つがあるだけで、装備集めとアストラルを強化するモチベが湧いてくるのです。
ルルイエロードは、50Fくらいまでは本編クリアーくらいの難度ですが、そこを越えるとエンドコンテンツにふさわしい難度に変化します。そして、一階層ごとに、かなり手の込んだギミックが用意されていて、フロアによってはクリアー方法に頭を悩ませることになります。自分は今コツコツと攻略を進めていて、まだこのコンテンツを踏破できていません。本編のギミックはそれほど難しくありませんが、ルルイエロードのものはかなり難解です。謎かけのようなメッセージを読み、それを元にスイッチを順に押すギミックなどは、おれがアホすぎたのか2時間くらいかかりました。
擬似対戦モードは、ルルイエロード内にある「幻影の樹木」に触れることで、他のプレイヤーがオンラインで登録したパーティと戦闘をすることができるモードです。敵のパーティはアストラルのみですが、レベル、能力値、スキルがそのまま反映されるので、高レベルなプレイヤーとの対戦はなかなかヒリヒリします。GB版『ウィザードリィ外伝』で、ニンジャを並べて運だめしてきな対戦をした日のことが胸に蘇るのはおれだけではないはず。もちろん、自分のパーティも登録できるので、倒すのが大変な組み合わせや、状態異常攻撃などを考慮したパーティを育成したりしてニヤニヤするのです。
PS4版を遊んだ限りでは、オプション設定を色々といじることにより、ゲーム全体のテンポが非常に快適になりました。やりこみ要素も、ここ最近のダンジョンRPGの中では群を抜いており、クリアーしてもやれることがたくさんあるのは嬉しい限り。
一見『メガテン』かと思いきや、本作ならではのオリジナリティを感じる瞬間も多く、ダンジョンRPGというジャンルが好きという人には是非とも遊んでもらいたい作品です。
しかし、歴史あるダンジョンRPGというところで、シビアに本作を見回すと、一作目ということもあってか、粗も目立ちます。特に、アイテム関連のUI周りはかなり癖があり、ダンジョン探索をしているとすぐにアイテムがいっぱいになってしまいます。アイテムの整理もまたダンジョンRPGの醍醐味であるといえばそうなのですが、本作には、敵を倒すことで入手できる換金用の素材がかなりの数用意されており、この換金以外で何の役にも立たないアイテムがすぐにアイテム欄を埋め尽くしてしまうのです。また、アイテムのスタック数が種類によって異なるという仕様は回復アイテムの使用制限などのバランス調整のためにしたのかもしれませんが、正直バランスよりもストレスを感じる部分が多いです。
あとは、アストラルの種類については十分なのですが、もう少しボスモンスタークラスの強さを持つ敵をルルイエロードに配置してくれれば、より終わりなき冒険を楽しめそうです。
こうした部分が解消されれば、とても奥深く、遊びやすいダンジョンRPGになると思うので、次回か、アップデートがあれば何かしらの形で対応してくれることを期待します。近年の角川ゲームスは、『GODWARS』という良作をリリースし、この作品はなんと発売後に大型アップデートも発表されましたから、『The Lost Child』にも何かしらの動きがあると嬉しいです。
本作のストーリーはなかなかあっさりしていて、ストーリーに期待して買うという方は『エルシャダイ El Shaddai: Ascension of the Metatron』などで予習をしておくといいかもしれません。おれはダンジョンRPGのストーリーに関しては、好きなパーティで遊ぶことに集中できる程度、つまり、うるさすぎない程度が好みなので、ストーリーに関して大きな不満はありませんが、明らかな伏線かと思っていた部分がスルーされたまま終わったりするのは人を選びそうです。ストーリーを楽しみたいという人には、ちょっと肩透かしに感じる部分も多そうですね。早期購入特典のパッケージ版についてくる設定資料集から、「神話構想」を紐解いていけば、本作もまたその一つの世界として楽しむことができるので、ゲーム以上の広がりを感じたい方は、早めにパッケージ版を購入することをオススメします。
2016年、2017年といろいろダンジョンRPGを遊びましたが、その中でも屈指の面白さを持つ作品だと思うので、興味のある方はぜひゆるっと遊んでみてください。全体的な難度としては低めなので、ダンジョンRPGの入門用としてもオススメです。