【獣道】「綺麗に身を引くのも彼の役目」Evo Legends『ウメハラvs.MenaRD』への想い【スト6】

ウメハラメナ獣道

2026年”獣道”Evo Legends『Daigo vs.MenaRD』

数多の音楽イベントが開催されてきた「クラブチッタ川崎」で”梅原大吾”、”Daigo The Beast”ことウメハラとMenaRDが10先(FT10)でぶつかる。

獣道。ウメハラ自身がプロデュースする、賞金もタイトルも賭けない、ただプライドだけで殴り合うイベント。30年のキャリアを背負った男と、『ストリートファイター6』シーンを完全支配する現役王者。世代を超えた一騎討ちが、ついにセッティングされた。

ウメハラメナ獣道正直に書く。データや実績を並べれば「ウメハラの勝ちは厳しい」だろう。
内容は決して悪くなかったが、つい先日の『SFLワールドチャンピオンシップ』で、メナのブランカはウメハラの豪鬼を3-0で完封している。

ウメハラはチームREECTの優勝記念ファン感謝イベントを欠席。本来チーム全員で祝うはずだった4月18日を、彼はメナ対策の修行に充てた。「精神と時の部屋」と一部で揶揄された11日間。それだけのコストを払っても、勝率は決して高くないだろう。

そして、もう一つ。これが今日の本題なんだけど。

僕は、こう思っている。
「ウメハラがここで負けて、綺麗に身を引く姿を見せることもまた、彼にとって最後の大きな仕事」
なんじゃないかと。

ここで一度、筆者の自己紹介

私、今更自己紹介ですが、「ケンちゃん」という一介の格闘ゲーマーです。でした……と過去形にするほうが正しいかも。

20年以上、格闘ゲーム業界で物書きをやってきた。『ネオジオフリーク』から始まって、『月刊アルカディア』で格ゲー担当として動いていた頃が一番濃かった。プレイヤーとしては、ギルティギアゼクスの3on3で全国優勝(ミリア使い)。チームメイトの一人は今もプロゲーマーとして第一線で活躍してる、ときど。

△中学生時代のときど。麻布中学の山岳部のキャンプをキャンセルして組んでくれたことは今でも感謝。あの成田悠輔が同じ山岳部だったことはこの20年後に知ることになるのだけども…。

 

『KOFマキシマムインパクト2』では世界王者、『ファイターズヒストリーダイナマイト』でEVO Las Vegas 2019優勝。スマホゲーム『白猫プロジェクト』の公式実況、『ミリオンアーサーアルカナブラッド』や『サムライスピリッツ』の公式解説もやってきた。

『ギルティギアゼクス』で優勝した時は、一日10時間以上プレイしていた。当時日本最高級のミリア使い”有坂(ありさかしんや)”と同キャラを一日7、8時間、一ヶ月以上泊まり込みでやり込んだ。圧倒的最強キャラのミリアを、同キャラ戦でさほど負けずに勝ち切れたのは、あのやり込みがあったからだと今でも思っている。プレイヤーとしての知名度はときどはおろか、伝説のりきにも遥か及ばないけど、当時のチームでは自分が一番強かったのは事実だ(自画自賛)。

僕が『ストリートファイターZero3』や『ヴァンパイアセイヴァー』の頃から、手の届かない噂の最強プレイヤーとして、ウメハラを前にすると、ただのファンボーイになるのはたぶん同世代の格ゲーマーなら誰でもそうだと思う。

△『ファイターズヒストリーダイナマイト』Evoで優勝した時

一瞬の接点、『ギルティギアイグゼクス』時代

新宿モア全盛期、『ギルティギアイグゼクス(=GGXX)』の頃。 あの頃すでにカプコン格ゲーの王者だったウメハラの取り組み方は、異常だった。

ゲーセンの一人用筐体でCPU戦をラスボスまで進める。そこで終わらせない。隣の筐体に移って同キャラのコンボ練習。それが終わったら、また最初の筐体に戻ってラスボスまで進めるループ。閉店までこれを延々と繰り返す。

知人から聞いたエピソードもある。誰かとソル対ソルの同キャラ戦を、両者がコインを入れ続けて閉店時間まで延々とやり、最後にウメハラがコインを投入した瞬間、店員に強制で電源を落とされた——という笑い話。 カプコンゲームの王者がギルティギアという当時まだ新しいフィールドに挑むときの「向き合い方」が、他のプレイヤーと一線を画していた。

『月刊アルカディア』で、最初にウメハラ単独のインタビュー企画を立てたのは僕だ。後にウメハラの連載企画として確立していくあの路線、その根幹を作ったのは僕だと、ここでは少し胸を張らせてほしい(笑)。飲み屋で取材して、彼が放った

「別に昇竜がガードされても死なないじゃん」 

この台詞を聞いた瞬間。 僕がいかに怯えながら格闘ゲームをプレイしていたか。大会で脚が震えるほど緊張していた、その理由を思い知った。 ああ、この人は『アカギ』みたいな漫画的な無頼漢だな、と本気で思った。

闘劇のパンフレット、闘劇魂の編集現場で、ハメコ。たち(今ストリートファイター6で実況・解説をやってる、あのハメコ。)と一緒にプレイヤーへスポットライトを当てる仕事をライター主導で進めていたのも、シーンが立ち上がる初期の話。 要するに、僕は格ゲーシーンの「物語」を書く側の人間だった。

△闘劇魂やパンフレットでプレイヤーの方々に取材させていただいた日々。青春だった。楽しんでいただけていれば…。

だから、データの話を冷静にしたい

ウメハラの長期戦の強さは、神話レベルだ。

2013 PAX Prime: vs Xian 10-0
2013 Special Exhibition: vs Infiltration 10-2
2018 獣道2: vs ときど 10-5
2020 Topanga Concept Match: vs ガチくん 10-5

これは事実だ。準備期間が与えられたウメハラは、その時点での世界チャンピオンクラスの相手を叩き潰してきた。
「準備期間のあるウメハラは最強」と、事前の煽り動画でもさまざまな人が語っていた言葉には、ちゃんと根拠がある。

でも、これは別の話。

格闘技、野球、その他あらゆる競技スポーツを観察してきて分かるのは、経験と肉体のバランスが最高潮になるのは30代前半。
経験で何とか肉体の衰えを誤魔化せるのが40歳まで。それ以降は、もう経験論ではカバーしきれない領域に入ってくる。文献を当たれば、視覚的反射神経や集中力の維持に関するデータは、この体感を裏付けている。

ストリートファイター6で言えば、26フレーム反応のドライブインパクトを返す確率は、ベテラン勢の方が明らかに落ちている。若手プレイヤーが「インパクトをジャストパリィするには、あえて遅らせてボタンを押す必要がある」なんて発言を平気でする時代だ。あの感覚は、僕らの世代にはもう絶対に取り戻せない。

そして、もう一つ。

格闘ゲームのプロという職業は、まだ業界として若い。プレイヤーのメンタルケアがどこまで仕組み化されているか、僕には分からない。どうあがいても「強さ」は衰える。勝てなくなる。ファンの目線は冷たくなる。それでも続けようとした時、心が削られて病に至る可能性を、誰が否定できる?
プロというスポットライトを一度浴びてしまったからこそ、その光から降りる難しさは、自分も経験したことではあるし嫌になるほど想像がつく。

僕自身もゲーム系インフルエンサーとして数字を背負った時期があるし、今も競馬予想家として、毎週末「当たり外れ」の数字に晒されている。スケールはまったく違うけど、その一端は理解しているつもりだ。

だからこそ、思う。

格闘ゲームのプロシーンを切り開き、看板として引っ張り続けてきたウメハラには、「綺麗に身を引く姿を見せる」ことが、最後の大きな仕事なんじゃないか。彼が引退の手本を示さない限り、後輩たちは身を引くタイミングを見失い、心を病んでしまうかもしれない。先頭を走る者の責任とは、戦い続けることだけじゃなくて、辞め方を提示することでもある。

ネモ、マゴ、ときど、sakoさん。同世代に近いプレイヤーたちが今も一線にいる。応援してるし、見守っている。でも、いつかは光り輝く舞台から降りる日も来る。その日のために、最初に降りる人間が必要なんじゃないか。それは、最初に登った男であるべきではないのか。

▲プロ野球の山本昌は40代後半まで現役でしたが、本当に稀有な例のはず…。今は競馬で競争馬のオーナーやってたり楽しそう。(山本昌という生き方』より)

……と、ここまで書いておいて

これを、僕は飲みの席で、当時を知る格闘ゲーマーの知人にも語ったりする。 語りながら、最近気づいてきたことがある。

これ、全部、僕の言い訳じゃないか?

僕も初老に片足を突っ込んだ46歳のおじさんだ。ウメハラと近い世代を生きてきた人間だ。彼が負けるのを見たくない。 「データを見れば不利」「年齢的に厳しい」「身を引くのも仕事」——この理屈、全部、彼が負けた瞬間に僕の心が崩れないように、あらかじめ用意している防波堤じゃないのか?

言い訳を、僕が勝手に作りたいだけだ。 彼が負けた時の理由を、僕が事前に揃えているだけだ。 俯瞰した顔をして「身を引くのも役目」とか言いながら、本当は彼が負けた現実を直視できない自分のために、論理武装してるだけだ。

素直に応援できない、というよりも、素直に応援するのが怖いんだと思う。 心の底からウメハラに勝ってほしいと願って、それで負けたら、自分の中の何かが折れる気がする。だから先回りして「負けても仕方ない理由」を並べ立てている。 これに最近、ようやく自覚が追いついた。


本当のところを書くと…

僕の心の奥底に、まだ残っている少年の僕は、こう叫んでる。

「ウメハラ、勝ってくれ」

僕自身、直接拳を交えたタイミングはごく僅かだったが、ファンボーイとしては数十年、彼の戦いを見てきた
『Zero3』の頃から、『3rd』、『ヴァンパイアセイヴァー』、『ギルティ』、『ストリートファイター4』から『ストリートファイター6』まで。
EVOの背水の陣、闘劇のウメヌキという伝説や、「見てから昇竜拳」など嘘か真か分からない噂まで全部見てきた。そんな中、彼が「準備期間」を本気で使った時、何かをやってのける男だということを信じたいし、信じさせてほしい。

今のメナ相手に長期戦で勝利することは確かに厳しいだろう。それは大会の実績を見ても、ウメハラのみならず世界すべてのトッププレイヤーにとってそれは同じこと。

でも、ウメハラの真骨頂は、相手の癖を一試合一試合の中で剥がしていく観察力だ。最強だったインフィルトレーションを完全攻略したときのように。挑んできたときどに圧倒的な差を見せつけたように。10先という長い時間軸の中で、メナに「プレッシャーをかけられるか」。
チームメイトのふーどがSFL決勝で実践したように、その可能性はゼロじゃない。

ファンイベントを欠場してまで練習に注ぎ込んだ11日間の沈黙の中で、何を掴んできたのか。僕にはわからない。 わからないけど、信じたい。厳しいのは知ってる。 でも、勝ってほしい。
そして、同世代の格闘ゲームを生きてきたプレイヤーたちには、この戦いを見届けてほしいな。

(ウメさんの今回への意気込みの動画もぜひ見てほしい。この心を未だに持ち続けてくれてるところが、俺のヒーローたる所以だよ。)

△これがウメハラだよ。俺たちのウメちゃんだよ。この動画見て、このシーンで流石に泣いたな…。勝ってくれ。(引用:獣道 ウメハラという生き方 The Scene: To live is to game

 

イベント名

Evo Legends Live Kemonomichi FT10 The Beast vs The Bull.『Daigo vs MenaRD』(獣道10先 ザ・ビースト vs ザ・ブル『ウメハラ vs MenaRD』)

日程

2026年4月29日(水・祝)

会場

神奈川県 – 川崎 CLUB CITTA’

PAGE TOP