【レビュー】尖った個性と細やかな作りこみが踊る『エトランジュ オーヴァーロード』。SUSHIレーンミュージカルアクションアドベンチャーを名乗る怪作の正体とは?

制作へのこだわりをあらわす「クラフトマンシップ」という言葉は、ゲームレビューにおける便利ワードでもある。
しばしば「作家性」や「属人性」と混同されて使われるが、本来これは別物だろう。クラフトマンシップは一つひとつの仕事に判断と手間が注がれていることを指し、属人性は作り手の顔が見えることだ。つまり、属人性がなくともクラフトマンシップが宿る作品はあるし、強い属人性の影で細部の作りが粗い作品もあるのだ。

強烈な属人性を感じる作品には独特の魅力がある。一方で、細部まで磨き上げられたクラフトマンシップの結晶にも別種の満足感が宿る。しかし、この二つが同時に成立している作品は意外にも少ない。

2026年3月26日発売の『エトランジュ オーヴァーロード』は、属人性とクラフトマンシップが絶妙に絡み合った作品である。”SUSHIレーンミュージカルアクションアドベンチャー”なるジャンルを名乗る本作は、ミュージカルを盛り込んだアドベンチャーパートと遊びやすくも個性的なアクションゲームを融合させた意欲作となっている。実は本作は、元日本一ソフトウェア社長の新川宗平氏が独立後にはじめてプロデューサーを務めるコンシューマー向けタイトルなのだ。新川氏といえば『マール王国』シリーズ、『ディスガイア』シリーズ、『流行り神』シリーズといった、ユニークなシナリオとゲームシステムが融合した作品を得意とするクリエイターだ。
そして、ゲームの制作を手掛けたジェムドロップは、名作リメイク『STAR OCEAN THE SECOND STORY R』を世に送り出した職人集団だ。

本作は新川宗平氏の作家性を、ジェムドロップの丁寧かつユニークなゲーム制作術が支える良作である。
個々のシーン、バトルの一挙動、UIの一要素、細部に至るまで、作り手のこだわりが積み重なっていると感じられるのだ。

▲アクションパートは遊びやすいものの、攻略する楽しさのある良バランス。プレイヤーの”気づき”が攻略の糸口になる。

ゲームクリアーまでは15時間程度。プレイ時間を聞いて短いと思う方もいると思うが、これは遊びが凝縮された退屈しない15時間でもある。
いろいろなものが所狭しと詰まっていて、最初から最後まで心地良いスピードで駆け抜けていくからだ。
本記事では、その魅力の一端をご紹介しよう。

悪役令嬢もの

本作の大きな見所はタイトルにもなっている主人公・エトランジュ・フォン・ローゼンブルクの生きざま(?)であろう。といっても、エトランジュはゲームの冒頭で身に覚えのない王族暗殺未遂の罪で処刑されてしまうのだが、なんと彼女は”地獄”で目を覚ますことになる。地獄とは罪人を責める悪魔たちがひしめく恐ろしい場所……のはずが、エトランジュは強力な闇魔法と強烈なカリスマ性で”地獄でハッピーライフ無双”を目指すというのだ。悪魔、猫、メイド、傭兵、サキュバスなど、さまざまな仲間を引き連れて、地獄をものともせず突き進むエトランジュの歩みは痛快そのものだ。

▲一見して唯我独尊系の主人公・エトランジュだが、実は仲間思いだったり、大事な信念は曲げないという凛とした魅力もある。いつの間にかプレイヤーも、彼女のカリスマ性の虜になるかも?

こうした概要だけを聞くと、若年層向けの「わかりやすい悪役令嬢もの」に感じるかもしれないが、本作、エトランジュならではの外連味的な要素が次々と登場する。新川宗平氏の描くシナリオは”飛躍”とその”収束”がいつも楽しい。シンプルな悪役令嬢ものと思いきや、シナリオ上にはさまざまなギミックがある。なぜエトランジュは処刑されてしまったのかといった謎かけの部分や、何気ない会話シーンで仲間キャラクターの意外な背景が明かされていくといった要素は、大人でも十分楽しめるものになっている。

▲エトランジュ以外の物語を大きく動かすキャラクターたちの動向も見ごたえがある。一見子供向け……と思えるような要素が、後に意外な展開へとつながることも。

▲バトル中のステータスを上昇させる「食事」は、おまけ的な要素かと思いきや、食事シーンや食レポがしっかりついてくる素敵仕様。

シナリオを盛りあげるのが”ミュージカル演出”である。本作では随所で、物語を歌に乗せたミュージカルシーンが見られるのだ。ミュージカルシーンはゲーム内の絶妙な位置に配置されており、意外なアクセントとなってプレイヤーを楽しませてくれる。ミュージカル演出というと新川氏の代表作である『マール王国の人形姫』(1998)を想像する方もいるかもしれないが、一目見れば過去作の”延長線上”のものではないことがわかるはず。『マール王国の人形姫』のミュージカルは2Dグラフィックを軸にしたほんわかとしたものだったが、本作は3D表現となっている。本作が3D表現なのは時代や技術の違い、制作の都合によるものなのかもしれないが、3Dキャラクターだからこそできるメリハリの効いた動きが見られるのは嬉しいポイントだ。もちろん、その表現にマッチする声や音も盛り込まれている。

▲本作はミュージカルシーンも大きな見所。ストーリーなどがミュージカル仕立てで表現されるのだ。歌詞もキャラクターの動きもさまざまで見ごたえがある。

実は『エトランジュ オーヴァーロード』の原作は新川氏(ペンネーム:喜多山浪漫)の執筆した”小説”で、本作はその物語をゲーム化したものである。原作のあるゲームとなると、作りによっては「知っている物語」を読み直すような感覚になってしまい、退屈に感じることも少なくない。しかし、本作では小説版、そしてそのメディアミックス作品として発売されている漫画版を読んだ方であっても、ミュージカル演出の導入によって物語が真新しく感じられるはずだ。

SUSHIレーンが彩る
わかりやすく戦略性のあるバトル

本作はステージクリア型アクションとなっている。SDキャラクターを操作して、ステージごとに設定された目標を達成することでステージクリア―となる。クリアー条件は、敵を全滅させるステージもあれば、防衛対象を守り抜くステージ、陣取りゲームのようなルールが適用されるステージなどさまざま。基本的には、クリアー条件に関わらず敵が次々と出現し、それがお邪魔キャラ的な役割になっているため、敵を倒しつつ目標達成を狙う必要がある。キャラクターの操作は非常にシンプルだが、「4人のパーティーで出撃し、いつでも操作キャラクターを切り替えられる」ようになっているため、手元はなかなか忙しい。
ステージには、アイテムなどが次々と流れてくる「SUSHIレーン」というギミックが発生する。いろいろなネタの寿司がレーンにのって回っている「回転寿司」を想像するとわかりやすいだろうか。ステージ上に突如回転寿司のレーンが出現し、そこに出てくるアイテムを取得することで、バトルを有利に進められるというユニークな仕組みになっている。

▲操作はシンプルだが、ステージによってルールや戦略が変化するため、遊びごたえがある。

▲戦闘には最大4人までのキャラクターが出撃可能。状況に応じてキャラクターを切り替えるのも戦略のひとつだ。

アイテムの種類と効果はさまざまで、強化アイテムを取ってから敵を倒しにいったり、複数の敵を爆弾や投石機を使って一気に倒したり、必殺技アイテムを入手して、強力な必殺技をぶっぱなしたりということが可能。ステージの現状をすばやく見極め、どのタイミングでSUSHIレーンに近づき、どのアイテムを活用するかという戦略の部分がうまくハマったときの爽快感はかなりのものだ。

▲ステージ上にあるSUSHIレーンをどう活かすかはプレイヤー次第。ステージごとに「制限時間」があるため、SUSHIレーンでの強化にこだわりすぎると、バトルのための時間がなくなってしまうことも。

▲大型敵とのバトルは、敵の攻撃パターンを理解したうえで攻略する必要がある。リトライ機能が実にスムーズなのも嬉しい。

こうしたゲーム部分はジェムドロップが開発を担っている。攻撃のヒット感や敵を撃破した瞬間の爽快感は確かなもので、長時間プレイしても飽きのこない設計になっていた。アクションパートについては、アクションゲームが苦手な方でも楽しめるようにしたとのことで、歯ごたえについては正直期待していなかったのだが、ただ簡単というわけではなく「考えながらプレイする」楽しさがある。序盤はごり押し気味にプレイしてもクリアーできるが、中盤以降はプレイヤー自身が「攻略の糸口」を見つける楽しみを用意しているステージが多いのだ。糸口をつかみ、プレイの方針さえわかれば、それを再現するのは簡単という作りになっているため、一周目は是非ノーヒントで遊んでもらいたい。
また、シナリオだけ楽しみたいという方、より高難度なものを遊びたいという方に向けて、難度設定も用意されているのでご安心を。

また、本作にはおまけ要素としてマルチプレイが用意されている。これは用意されたステージを最大4人まで参加できるマルチプレイで攻略していくというもので、ステージの数こそ少ないが、歯ごたえはなかなかのもの。一人用をクリアーしたあとでマルチプレイを遊んでみたが、後半のステージはかなり苦戦させられた。本編をクリアーした方は、こちらにも是非チャレンジしてもらいたい。

▲マルチプレイモードはおまけ的な要素だが、後半のステージはかなり歯ごたえあり。ゲーム実況のネタとしてもアリなのでは?

凝縮された旨味を味わう

プレイ時間は15時間程度、グラフィックはSDキャラクターが中心。正直な感想のひとつとして、AAAタイトルを遊んだときに感じるようなリッチな印象は本作にはない。しかし、潤沢な予算をかけたゲームが必ずしも面白いわけではないし、創意工夫がこらされた小規模開発のゲームが面白いということも往々にしてある。『エトランジュ オーヴァーロード』は、小規模開発の作品ならではの面白さがある。AAAを狙うようなタイトルではなかなか難しいいくつもの冒険的な要素が詰め込まれていると感じるのだ。

本作は、いろいろな具材やソースが摩訶不思議に重ねられたハンバーガーのような作品である。その具材やソースの中には、多くのゲーマーにとって未知のものも含まれている。上からがぶりと噛みつき、ひとつ食べ尽くしたあとには驚きと満足感があり、もう1個食べてみたいと思えてくるような。

▲プレイ時間は短めだが、退屈しないゲーム体験を味わえる怪作だ。「そういうところ作りこんでるのね」と驚ける要素も多々ある。

シナリオも、バトルにも、UIにも、追加されていく要素にも好ましいクラフトマンシップが宿っている。潤沢な予算がなかったとしても、妥協の形跡は見られない。それどころか、与えられた条件の中で、条件をはみ出すかのような創意工夫が織り込まれている。サウンド面などもその形跡が顕著で、ミュージカルはもちろん、BGMやSEなどは新規IPとは思えないボリュームになっていて、繰り返し使うことを想定していないような楽曲も多数ある。注意深く本作を遊ぶと、目の前のシーンのためだけに用意された素材が、宝石のように光って見えるだろう。

▲ミュージカルシーンはもちろん、全編通してさまざまなサウンドが聴けるのも嬉しいところ。ヘッドフォンやイヤフォンを使い、没入しながら遊ぶというのも良いだろう。

属人性とクラフトマンシップの宿る作品というと、インディーゲームを想像する方もいるかもしれない。最近では何をもって「インディーゲーム」と言うかは謎だが、『エトランジュ オーヴァーロード』を遊び、この作品をとりまく要素を確認していくと、やはり本作は商業ゲーム・コンシューマーゲームと言えるだろう。しっかりと物語を畳むシナリオ、遊びごたえのあるゲームシステム、そして、豪華な声優陣を器用し、作りこまなくてもよさそうな場所を作りこみ、さまざまなイベントに出展し、パッケージ版を発売し、限定版まで制作している。徹底していろいろな部分が「作り切られている」と好印象を抱くのだ。
こうした取り組みのいくつかは、開発陣の情熱だけではなし得ないことだっただろう。新規IPを、それも一見してユニーク寄りな題材のゲームを、コンシューマー向けに送り出すという判断をしたパブリッシャー・ブロッコリーの決断にも注目したい。パッケージ版の限定版などは手にとって嬉しくなるような出来栄えだった。ずっしりとしたBOXの中に、本作のサウンドを詰め込んだ3枚組のサントラ、テーマソングCD、80Pを超えるアートワークも収録されている。ゲームファンの求める特典を詰め込みつつ、「これはお得なのでは」と感じるような限定版を作れるところには、ブロッコリーというパブリッシャーのクラフトマンシップを感じた。

盛りだくさんな内容の本作だが、プレイヤーには趣味嗜好の違いというものがある。ゲームの魅力となる要素すべてを目の前に並べられたとして、人によっては興味がない要素もあるだろう。筆者も本作がウリとしている部分であっても、刺さらなかった要素がいくつかある。どの要素が刺さらなかったかは書くのは野暮だが、その要素があったからといって本作の評価は変わらないし、むしろそうした要素があることで興味を持つ人もいるだろう。本作は「詰め込み」によって、プレイヤーの趣味嗜好の違いを乗り越えようとしている節があるのだ。ミュージカルにピンとこなくても、悪役令嬢にピンとこなくても、キャラクターが好みでなくとも、アクションゲームが苦手であっても、他の要素でプレイヤーを満足させようとしてくる。新しいもの好き、珍しいもの好きの方は是非手にとってもらいたい。

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『エトランジュ オーヴァーロード』


ジャンル
SUSHIレーンミュージカルアクションアドベンチャー

発売日
2026年3月26日(発売中)

プラットフォーム
Nintendo Switch / PlayStation 4 / PlayStation 5 / PC(Steam)

価格
【Nintendo Switch】パッケージ通常版/ダウンロード版 8,580円(税込)、パッケージ初回限定版 12,980円(税込)
【PlayStation 4/PlayStation 5】ダウンロード版 8,580円(税込)
【PC】ダウンロード版 8,580円(税込)

発売元
株式会社ブロッコリー

©SuperNiche LLC. Published by BROCCOLI Developed by Gemdrops, Inc.

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